9月30日 月曜日
【メキシコ】 エンセナダ
「よーし、ホナ、ウチの後に真似して言うていきよー。1日100個は単語覚えるでー。これからの南米のためやからなー。いくでー、ケレールデスペラードタコスタコス。」
「そんなに覚えられないです。エレタベレケー。」
「ちゃうやろ!!そこは動詞が活用の変化する言うたやろが!!ケレール・キエロ・キエレス・ケレモスや!!何回言うたらわかんねん!!このアカンタレ!!」
朝からジェニファーさんのスペイン語講座。
言葉遣いが輩なんだけど、クリアファイルは吉田松陰モデルという筋金入りの歴女というジェニファーさん。
「そんなすぐに覚えらんないです。」
「なにゆーとんねん。アソコついとんのかいな。あんた男の志っちゅーのはなー、身はたとえメヒコの野辺に朽ちぬとも、とどめおかまし大和魂やでー。」
スペイン語ってやつは、英語ととても似ている。
例えば、
「美味しい」
英語→デリシャス
スペイン語→デリシオソ
「練習」
英語→プラクティス
スペイン語→プラクティカ
こんな具合で、全部がそうじゃないけど、読み方が少し違うだけでだいたい同じような言葉になる。
動詞の活用は難しいけど、コツをつかめば簡単な会話くらいはできるようになるかもしれない。
スペイン語は世界で1番多くの国で話されてる言葉。
人口でいったら中国語や英語の方が話す人は多いだろうけど、国数でいったらダントツスペイン語。
これからの中南米では、ポルトガルの植民地だったブラジル以外は全部スペイン語のはず。
3ヶ月はスペイン語圏が続くわけだ。
こいつはさすがに少しは理解してないとマズイよな。
というわけで路上のレパートリーにも何か1曲スペイン語の曲を入れといたほうがいいので、何人かのメキシコ人に誰でも知っててみんなが好きなスペイン語の曲は?とアンケートをとったところ、やはりこの曲をみんな口にする。
べサメムーチョ。
べサメがキスミー。
ムーチョがたくさん。
スパニッシュらしい情熱的で哀愁漂うメロディ。
そしてとても簡単。
これをマスターしておけば、これからの中南米でおそらくあらゆる場面で俺を助けてくれることになるはずだ。
現地ミュージシャンとのセッション、可愛いラティーナを口説く時、1人の寂しい街角、
これから何回歌うことになるかな。
そのあとはなぜか筋トレをさせらる。
「はいー、その姿勢で10分なー。ホールドやでー。ホールドー。オイコラ、何足降ろしとんねん。」
「無理です、ごめんなさい。」
「何ゆーとんねん!!そんなことやと立派なオカマになられへんで!!ホラ、背筋やってみぃ!!」
立派なオカマにはなりたくないこれからの中南米。
その入り口であるメキシコのミニお国情報!!!
★首都………メキシコシティー
★人口………1億1千万人
★宗教………カトリック
★言語………スペイン語
★通貨………メキシコペソ
★レート………1ペソ = 12.5円くらい
★世界遺産………文化24件、自然3件
ご存知の通り、マヤ文明やアステカ文明などの高度な文明が発達した地であり、それらの古代遺跡が数多く残る神秘の国。
宇宙人説とか、オーパーツとか、人間を超越できる石仮面とか、男のロマンをかきたてずにはいられないウウウリリイイイイイイ!!
やべぇ、石仮面見つけてしまったらどうしよう。
「ジョジョ!!俺は人間をやめるぞ!!」
ズギュウウウウウウンンン!!!!!
はい、そんな独自の文明を築いたジョジョ発祥の地なんだけども、16世紀の大航海時代にスペイン人が到達。
アステカ帝国を滅ぼし、そこから植民地支配が続きます。
スペイン語が喋らるのはこのためですね。
その後はスペインが力を失うにつれてアメリカに侵攻されたり、フランスに征服されたりと、メキシコの地は数々の変遷ののちに今の国土に落ち着きます。
現在、僕がアメリカからやってきて町を見てみて抱く感想は後進国の空気だけれども、GDP世界13位という数字は後進国には当てはまらないのかも。
実際メキシコシティーの人口は2200万人。
世界屈指の超大都会。
GDPや人口数が国の経済力や先進性と比例しないのは当然のことだけど、ポテンシャルを秘めていることは間違いないよな。
大都会の力強さや田舎の廃れ具合、ありのままの姿はこれからメインランドを回って見ていくとしよう。
観光においては、もちろん前述した古代遺跡群。
ジャングルの中のピラミッドの数々は世界屈指の観光地だし、メキシコシティーの古い街並みも人気がある。
現在いるバハカリフォルニア半島は鯨の生息地として有名で、いくつもの落ち着いたリゾートビーチが点在しており、リタイアしたアメリカ人たちの移住者たちが多い。
国民性については、まぁとにかく陽気で愛すべきキャラクター。
ずんぐりした、赤ちゃんがそのまま大人になったような体型で、首がないほど優しいという特性を持つ。
純粋で、恥ずかしがり屋で、いつも笑顔でニコニコしている音楽をこよなく愛する人々。
豆食いすぎ。
そんな人々だけれども、治安が悪いのも事実。
麻薬がらみのマフィアがとてもおおいらしく、近年では観光客を狙った強盗などの犯罪も多い。
レイプをしたあとにバラバラに刻んだり、生贄といって子供を殺したりするようなカルト集団もいる。
貧困もまた犯罪の温床となっており、平均月収は4万円。
カリフォルニアに行ってシュワルツェネッガーの家のプール掃除員になるしかないね、みたいなジョークがよく言われるんだって。
ここはあまり辺鄙なところには行かずに、常に情報収集を怠らずに危険に対してアンテナをはっておく
ことを心がけないといけない。
トルコと同じく、江戸時代初期にメキシコの船が和歌山の御坊沖で遭難し、漁村民が彼らを保護し手厚く歓待したことからメキシコとの国交が始まり、その後、日本の使節団もメキシコで歓迎を受けた。
印象はとてもいい。
大戦中にメキシコへとたくさんの移住者がうつり、今もその子孫が暮らしている。
この日本料理屋のオッちゃんは関さん。
昨日会ったこの若者はダイスケキムラという名前だ。
この顔で。
隣国のアメリカからはいつもバカにされていて、アメリカのコメディアンには、カタコトの英語しか喋れないメキシコ人を演じて笑いをとる人もいるそう。
日本人が、なになにアルネ~、アチャーオチャーゲンマイチャーとか言ってるのと同じようなことかな。
まぁこんなとこかな。
中米は一気にかけ抜けようと思っていたけど、いきなりしょっぱなから興味深すぎる国。
何日かかるかわからないけど、この愛らしい国をとことん楽しんでやる。
今日は月曜日。
リゾート地であるエンセナダは週末の喧騒も去り、静かで穏やかな空気に満ちている。
でもこれこそがリゾート地の楽しみ方なのかな。
今日はあまり外を出歩かず、ホテルのプールサイドでゆっくりと過ごした。
べサメムーチョの練習をしたり、中南米に向けてスペイン語の看板を作りなおしたり。
ジェニファーさんはご機嫌でトロールの眼帯を作ってくれている。
暖かい風が吹き、タバコの煙をかき消す。
穏やかな時間。
ふとわけがわからなくなる。
俺は放浪旅をしている。
なのに今、こんなにもゆるやかな時間にまどろんでいる。
隣には数日前に出会った女の人が、トロールの眼帯を編んでいる。
あれ?この人は誰だっけ?
なんで俺はこの綺麗な女性とメキシコの片田舎のホテルでのんびりしているんだろう。
なぜこの人はこんなにも俺に良くしてくれるんだろう?
まったく知らない人なのに。
実はこの人は昔、俺が雪の日に傘をかけてあげた地蔵さんじゃなかろうか?
もしくはトイレに行ってるとこをのぞいたら鶴になってるんじゃなかろうか?
そんな恩を誰かにあげたことなんて、思い当たらない。
「細かいこと気にしたらアカンでー。私はこの時間を目いっぱい楽しんどるだけやでー。」
俺のブログを読んでいて、メキシコ入りどうしようかなぁって俺が書いてるのを見て、これはもう行かな!!と思っていてもたってもいられなくなって信号待ちの車の中でアメリカ行きのチケットを取ったというジェニファーさん。
隣でかっこ良く笑ってるこの人がもはや他人になんて思えない。
この信じられない、幻想のような出会いもまた旅なのかな。
人生って不思議だとこれほど感じたのは初めてかもしれないな。
「そういえば佐土原に住んでたんですよね?僕と何か縁ありました?」
「んー?全然知らんでー。」
「そうですかー。あ、佐土原だったらコツコツトンネルとか行ってました?」
「あ!!あの怖いとこやな!!みんな行くよなぁ!!ウチなー、廃墟好きやねん。」
「僕も!!若い頃って夜中に廃墟に入ってロケット花火を飛ばしたりしましたよね。懐かしいなぁ。」
「そうそう!!懐かしいなぁ!!男たちのお尻にロケット花火突っ込んで海に向かって発射させとったよなぁ!!ホンマあれないと夏休み始まらへんよな!!懐かしいわぁ。」
だからエピソードのレベルが違いすぎるから!!