9月19日 木曜日
【アメリカ】 ロサンゼルス
ヘンリーの部屋汚ねえ……
ゴミと脱ぎ散らかした服が散乱する床。
テーブルがないので、床の上で食事してるみたいで、空の食器が放置してある。
これまた汚れまくりのキッチンのシンクには、当然のごとく洗ってない皿や鍋が山盛りになっている。
暗いワンルームの部屋の中、マットレスの上で黒人のディーが爆睡している。
ヘンリーは小さなソファーから足をはみ出して寝ている。
昔たまり場にしていた男友達の部屋を思い出す。
若い男2人の共同生活なんてこんなもんだよな。
神戸の歌い手、田中孝治の部屋はこれの5倍くらい汚かったし。
男には女が必要。
「ヘーイ、フミ、オハヨウゴザイマス。」
皿を洗ってキッチンを掃除しているところにヘンリーが起きてきた。
タイ人のヘンリーは日本語がほんの少しだけ話せる。単語程度だけど。
「ヘンリー、彼女作って部屋掃除してもらいなよ。」
「どうやったら彼女なんか出来るのかわからないよ。」
俺が彼女いるんだよと言うと驚いてるヘンリーとディー。
そんなことだけど、ちょっと誇らしい。
シャワーを浴び、久しぶりにヒゲを剃り、それから一緒にマクドナルドへ。
「マクドナルドは安いからね!!」
「でもケミカルだよね。アメリカ人ってそういうの敏感じゃん。ヘンリーは気にしないのかい?」
「そんなの気にしてたらアメリカのチキンは全部食べられないよ。薬品まみれなんだから。安くてお腹いっぱいになるんだから問題ないさ!!」
そんなどこにでもいる若者であるヘンリーの飾りっ気のなさがとても心地がいい。
ビッグマックを食べながらFacebookを見てニヤニヤしてるヘンリーの横でブログを更新。
今日もメールが大量に来てる。
みなさん、あんまりしっかりお返事出来なくてゴメンナサイ。
スパー!!っとメールの返事を送って、それから部屋に戻る。
お泊まりはゆうべだけにして、またビーチに戻ろうと荷物をまとめていたら、ディーが言った。
「フミ、フミは良いやつだね。もしフミさえよければ何日でもいていいんだぜ?」
「そうだよフミ、俺たちはいつだってフミにオープンだぜ!!映画観ようよ今夜!!」
んー………寝泊まり&シャワーがあるのはめちゃありがたい。
でもここからビーチに通うとバス代が5ドルはかかるし、かなり歩かないといけないから大変なんだよな。
しかしこう言ってくれてる好意はありがたい。
もう1泊だけさせてもらうことに。
というわけで荷物を置かせてもらってギターとバッグで部屋を出た。
バスに乗ってマンハッタンビーチに到着した時には16時になっていた。
急いで桟橋に行き路上スタート。
雲が若干かかっており、海風がビュービュー吹いてくる。海に飛び出した桟橋の上なのでモロに風が吹きすさぶ。
気温自体はそんなに低くないんだけど、たえず風にあたっていると体の芯から冷えてきてしまう。
上半身はまだニットを着てるからいいんだけど、ズボンがペラッペラの寝巻きみたいなやつなので風がスースー入りこんで寒くてしょうがない。
オシッコ我慢してる人みたいに足をくっつけながら歌い続け、今日のあがりは48ドル。
まぁ一応目標額はいってるか。
それから30分歩いたところのバス停から2本乗り継ぎ、ヘンリーの家へ。
帰る途中に好きなハンバーガー屋さんを見つけたので晩ご飯。
このお店、ハンバーガーがめちゃ大きいからかなり食べ応えがある上に、肉の味がしっかりしていて美味しい。
さらに値段も1.5ドルとかだからマクドナルドよりも重宝する。
部屋に戻ると、物が散乱した汚い部屋に2人が寝っ転がっていた。
「ビール買ってきたからみんなで飲もうか。」
「ヘーイ、マジかよ。気を遣わなくていいのに。でもそういうことならもっと飲もうぜ!!」
俺が買ってきた1.5リットルほどのビールでは足りないみたいで、3人で買い出しに。
ぺちゃくちゃ喋りながら夜道を歩くと、俺もロサンゼルスの住民みたいな気になって嬉しくなる。
「俺は有名になりたいのさ!!」
「何の分野で有名になりたいの?」
「クレイジーさ!!クレイジーで有名になるんだ!!アヒョヒョ~~!!」
「そんなの簡単じゃねぇか!!ポオォォォォウウ!!!」
「マイケルジャクソンかっこ良いよね。」
「うん、彼は偉大だね。」
その流れから、話はアメリカの偉大なシンガーは誰?ということに。
日本人が思う偉大なシンガーとアメリカ人が思うのとでは違いはあるのかな?
「そりゃやっぱりマイケルジャクソンだよ。」
「それかジェイムス・ブラウンかな。」
「エルビスは?」
「もちろん!!あとはレイ・チャールズとかジョニー・キャッシュとか。」
「ビートルズもね。」
「ビートルズはイギリスじゃん。」
「俺この前ポール・マッカートニーに会ったんだよ。」
「ウソー!!それマジヤベェ!!」
そんなほのぼのした会話をしながらビールを買い込んで部屋に戻り、飲みながら映画鑑賞開始。
ほのぼのした空気の中、選んだ映画は………
オーメン(´Д` )
ほのぼのしてねぇ(´Д` )
オーメンシリーズの最初のやつのリメイク版。
まぁストーリーは知ってるけど、細かいところが少しアレンジされててなかなか新鮮でした。
オリジナルの方が怖いね。
ていうかもっとほのぼのしたやつ観ようぜ。
「じゃあこれどうだい?これお気楽な映画だよ。」
ディーがチョイスしてくれたのは、グリーンホーネットって映画。
まぁアメリカらしいお決まりのヒーロー物。
このヒーロー2人組なんだけど、1人はヒーローに憧れる冴えない白人のアメリカ人。
もう1人が、中国人。
この中国人が、カッチョいい武器やらスーパーカーやらを作ったりできる上にカンフーの達人で、さらにピアノは弾けるはコーヒー入れるのは上手いは男前やらで、まぁパーフェクトなキレる男。
んー、こういうの見てアメリカの子供たちはアジア人に対してイメージを作り上げていくんだろうなぁ。
誰でもカンフー出来るみたいな。
「フミもカンフー出来るのかい!?ブルースリーみたいな!!」
「おい、それは人種差別だぞ?黒人だってラップできないやつもいるんだぞ。」
ヘンリーとディーの会話を聞いてると、アメリカの若者のリアルな一面を見ることができて面白い。
てなわけで寝たのは夜中の2時すぎ。
明日から週末。がっつり歌うぞ。