9月16日 月曜日
【アメリカ】 ロサンゼルス
さて、カッピーたちがいなくなってから数日経つけども、毎日何かと忙しく過ごしています。
そして今日も面白い出来事があった。
ことの始まりは5日ほど前。
Facebookにある人からメールが来た。
金野さんという男性からで、なにやら仙台で音楽事務所をやっているプロデューサーさんとのこと。
レコーディングでロサンゼルスに行くので、路上見に行きますとご連絡をくださり、それが今日というわけだ。
プロデューサーさんかー。
まぁ僕はメジャーの音楽業界には興味ないですからね。
これまでもメジャーとはかけ離れた音楽をやり続けてきましたから。
オリコン?
ふ、あんなアイドルとダンスグループばかりのチャラチャラしたランキングなんてチンチンで茶が沸かせますよ。
チンチンだけにチンチンに沸かせますよ。
というわけで、すぐさまカッコいい服を買ってきて美容室で髪の毛切って、体をすみずみまで洗って、夢はなんですか?はい、紅白に出場することです、という質問に土下座で答えるイメージトレーニングを………
というのは冗談で、ほぼ何もせずにいつものようにビーチへ向かう。
ひとつやったことと言えば、金野さんが到着するという時間より早めに演奏を始めたこと。
ある程度喉を温めて恥ずかしくない歌を歌えるようにしとかないとな。
いつもの遊歩道は月曜ということもあって人がほとんど歩いていないので、初挑戦で桟橋の上でやってみることに。
見るからに禁止っぽい雰囲気だけど、他にパフォーマーもいないし、もしかしたら大丈夫かな………とやってみたところ、管理人の兄さんも親指を立ててグッジョブと言ってくれた。
なんだ、マンハッタンビーチ最高じゃねぇか。
こんなことなら週末もやればよかった。
今日はこんなにまばらな人通りだけど、週末はここが人で埋め尽くされる。
そして他にバスカーがいないってんだからたまらない。
今週末までここでかましてやるぞ。
黒人のイカした兄ちゃんがやってきて、彼のジャンベでセッションしたりして、ものすごく気持ちよく歌を歌う。
ホント世界中の色んなシチュエーションで歌ってきたけど、こんな晴れ渡る空の下、桟橋の上で歌えるなんて最高だ。
最高………なんだけど。
さっきからアジア人が歩いてくるたびに緊張してしょうがない(´Д` )
ど、どれが金野さんだろう(´Д` )
あ、あのサーファーみたいなロン毛の人かな!?
あ、あのドギツいビッチみたいな女連れてるギャル男かな!?
そ、それともそこで地球の歩き方片手に写真撮ってる大学生みたいな人かな!!
金野さん、Facebookに写真載せてないからどんな人なのか想像がつかねぇ(´Д` )
やっぱあれかな。
プロデューサーってくらいだから肩にセーターかけてハマショーみたいなサングラスかけて赤ずきんちゃんのことズキアカのチャンネーとか言うのかな。
それともバリバリのミュージシャン上がりで、全身に鋲だらけの服を着て、おうクソガキ、歌ってみろ、とか言われるのかな怖えええ(´Д` )
「あ!!金丸さんだー!!すごい!!会えましたねー!!」
その時、TSUTAYAの店員さんが声をかけてきた。
あれ?このどっからどう見ても、TSUTAYAの店員さんでしかない親切丸出しのお兄さんは誰だろう?
「うわー、会えて嬉しいですー。金野です。はじめまして。」
うわー、めっちゃなごむー。
めっちゃ居酒屋一緒に行きてー。
金野さん。想像していた方とはだいぶかけ離れた柔和な方だった。
3人でいらしてくださったんだけど、もう1人の男性がアライさんという方。
なんとソニーの社員さん。
そしてもう1人女性の方。
素朴で可愛らしい女の子で、お友達か誰かかな?と思ったんだけど、実は彼女、金野さんの事務所に所属してるシンガーさんだった。
へー、ふーん、そうなんだー。いやーやっぱりさー、歌ってやつはさ、ソウルなんだよね、ソウル。分かる?タマシイで歌っちゃう?みたいな?可愛いだけじゃやっていけないんだよ。石の上にも3年っていってさ、努力してればいつかきっとむく…………
「いやー、おかげさまで去年レコード大賞の新人賞もらえてねー、頑張ってるところなんだ。」
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク(´Д` )(´Д` )(´Д` )(´Д` )
お母さーーーーーーん!!!
怖いよおおおおお!!!
この人たち怖いよおおおおお!!!!
ティーナカティーナちゃんっていう名前でやってるみたいで、大阪出身ということもあって、大阪弁の歌で女心を歌う路線のようです。
やしきたかじんに抹殺されないことを願います。
まぁこんなすごい面子なわけだけど、とにかく皆さん腰が低い。
音楽業界の人間なんてだいたいみんな偉そうに振る舞うんだけど、そういう人に限って詐欺師みたいなことやってんだよな。
彼らみたいなマジの業界人は本当に人当たりがいい。
仕事となったら厳しいんだろうけど。
「今回は彼女のレコーディングで来たわけですけど、金丸さんみたいに音楽一本で旅してる人の根性を見せたくて連れて来たんですよ。今の若いアーティストって熱が足りないんですよね。ラジオに出てもサッと喋って終わり、はい次の場所、次の場所ってこなしていくみたいな。金丸さんの旅って、歌で想いを伝えないと日本に帰れないどころか飯も食えないじゃないですか。そういう、本気で聴衆に伝えるってところを学んで欲しかったんですよね。」
とか言われてしまうのだが、
ずっとずっと、悩みしかない。
どうすればもっと伝えられるだろう。
素晴らしい声を持って生まれた人なら簡単に人を感動させられるんだと妬み、自分を慰めることなんてしょっちょうだ。
でもそれじゃそこで終わってしまう。
それじゃ前に進まない。
1パーセントの才能と99パーセントの努力っていうじゃねえか、と自分に言い聞かせて、どんなに折れそうになった時も這いつくばって進んで来た。
オッさんが、俺も昔はなぁって昔話をしてくるのがゲロ吐くほど嫌いで、絶対そうはならねぇと歌い続けてきた。
ひどい罵声もとことん浴びてきた。
でも諦めたら終わりだから、張り詰めた糸を切らないようにやってきた。
そうして今。
外国で歌っていてテキトーな歌を歌っていたらお金は入らないっていう、状況はさらに過酷なことになっているんだけど、なんだか最近はあまり気負わずに歌えてるような気がする。
もちろん今も試行錯誤の毎日だけど、20代のころみたいな切迫した感情は少なくなってきてる。
中学生のころから歌ってきて、やっと最近歌を楽しめるようになってきたのかなって思えてる。
きっとティーナちゃんは、苛烈な音楽業界の中で俺が抱いていたような不安の何倍も大きなプレッシャーと戦っているんだろうな。
もちろんそれが歌い手を成長させるんだけれども。
桟橋の上、ティーナちゃんと一緒に歌った。
若くて、可愛らしい歌声。
これからもっともっと場数を踏んで立派な歌い手になっていくんだろうな。
人だかりが出来て、たくさんの方が拍手を送って下さった。
久しぶりに日本でガンガンやってるミュージシャンと会えてとても嬉しかったな。
時差ぼけで大変な中、明日からレコーディングだというのにみなさん折り鶴を作るのを手伝って下さったりと、本当に心から感謝します。
レコ大新人賞歌手に折り鶴を折らせる。
渋い。
あ、羽がパタパタする鶴の折り方教えてもらった。やっぱり女の子だね。
金野さん、お会いできてとても嬉しかったです。
ありがたいお話、感謝いたします。
アライさん、帰ったらビール堂々と飲みましょう(^-^)/
そしてティーナちゃん、いい歌が録れるのを願ってるね。
みなさん本当にありがとう!!
それから1人になって暗くなるまで歌い、桟橋の外灯にあかりが灯ったころにギターを置いた。
今日のあがりは69ドル。
スターバックスに移動してバッテリーを充電しながら、さて晩飯にしようかな。
晩飯晩飯。
ねー、晩飯だねー。
ユージン君。君の置いていった電熱コイルがしばらく大活躍しそうだよ。
うわああああああああああああああああああ!!!!!!
金野さあああああんんんん!!!!!
差し入れ死ぬほど感謝しますうううううううううううううううううう!!!!!
た、宝の山だ!!!
晩ご飯どれにしようか悩みすぎて困る(´Д` )
スターバックスということなので、緑のタヌキ、いっちゃいました。
日本のカップラーメン、世界最強。
ぬおおお、贅沢………
緑のタヌキとかアメリカのジャパニーズマーケットで買ったら450円はするから(´Д` )
至福の晩ご飯でした!!
荷物を抱えて今日も桟橋の下へ。
寝床を作り寝袋にくるまったら、晩酌タイム。
今夜のビールのお供は………
ああ、至福だ………
冷たい浜風に吹かれながら、ギターをポロポロ弾いた。
いつからかなぁ、メジャーに興味がなくなったの。
思えば旅を始めてからかもしれないなぁ。
それまでは結構、心のどこかに憧れを抱いていたような気がする。
日本の人ってのは極端なもので、音楽をやっていても、メジャー、要するにテレビに出ることを目指さないのならば、それは遊びでしかないと断ずる人がほとんどだ。
なんでテレビに出るつもりがないのに歌ってんだ?
俺が旅をしながら歌うことに、どれほどの人がこの質問をしてきたことか。
テレビの中の音楽なんて、広大で底の知れない音楽という世界の中のほんのわずかな一角でしかないのに。
音楽ってのは生き様だ。
その人間の人生がそのまま現れる。
千差万別ある人間の人生と同様に、千差万別の音楽がある。
ダメ人間の情けない歌があれば、真面目で面白味のない歌もあるし、方言でまくしたてるような歌もある。
技術は最低限必要なものだけど、それ以上に想いがあるからこそ人は感動するんだ。
仕事の合間でやってる人の弾き語りでどれほど素晴らしい歌があることか。それを知らない人がどれほどいることか。
俺は俺の生きたい道を生きる。
そしてこれからも、やべー!!これ名曲だぜ!!って自分で思えるような、そんな曲を作っていきたいな。
ばちあたりもんみたいな。
あれ名曲。
あー、この世界一周はこの1曲のためにあったみたいな曲が作れたらいいな。1曲でいいから。
さて、明日は数日ぶりに何にも予定がないからゆっくり眠るとするかな。
金野さんたち、明日いい仕事できるといいな。
おやすみなさい。