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トラブル捏造

9月13日 金曜日
【アメリカ】 ロサンゼルス





ゆうべあれからジミークリフのライブが終わり、人々が帰って行くのをぼんやりと眺め、浜辺にひと気がなくなるのを待ってからパームツリーの下に寝床を作った。


ビールも入っていたのでゆっくり眠れたんだけど、朝になってオシッコ臭いのに気づいた。

photo:01




どうやらゆうべパームツリーの木に誰かがオシッコしていたみたいで、知らずにその上にテントを敷いてしまっていた。


わたりどりたまに飛ぶさんはテントの中で寝てるところに、外から酔っ払いにオシッコかけられたみたいだけど、僕の場合みずからオシッコに立ち向かって行くという。



最近トラブルがないからってトラブル捏造してる場合じゃないですね。







photo:02




朝から最高の天気の下で虚しくテントを洗い、乾かし、ご飯を食べに。


いつものサブウェイでオムレツサンド。5ドル。に消費税で5.5ドル。

photo:03





しばらく日記を書いたりネットしたりして、ビーチに戻る。







今日もこのサンタモニカで歌おう。
砂浜に面した綺麗なアパートメントの前が俺の定位置。

ここで座ってノンビリと折り鶴作り。

千羽鶴用の束がふたつと、ノーマルサイズのやつが5束くらい。
他にも綺麗な和紙のやつがたくさんあって、もはや旅中どころかあと10年くらいもちそうな勢いの折り紙がバッグの中を支配している。

誰か折るの手伝って(´Д` )







せかせかと鶴を折ってる横で、ホームレスのオッさんがひたすらハーモニカを吹いてる。

完全に頭がイカれてるんだけどなかなか面白い。


「ヘイ!!俺の超絶テクニックを聴くかい!?」


「カモン!!かわい子ちゃん!!俺のテクでメロメロにしてやる!!」


「ヘイガイズ!!驚く準備はいいか!?世界でまだ聞いたこともない音を聴かせてやる!!」



もちろんただ、すーはーすーはーとテキトーに吹いてるだけの物乞い。

なかなか哀愁のある音色だ(´Д` )


路上にはよくこうしたどっかで手に入れてきた壊れかけの楽器をテキトーに音を出してお金をせびってるオッさんがいる。


「チクショウ、なんで誰も金くれねーんだ。なぁブロー!!」


ブローじゃねぇ(´Д` )


タバコくれよと言ってきたから、自分で稼ぎなと言うとこのクソケチ野郎!!と歩いて行った。







さて俺もそろそろ始めようかなと、ギターを取り出す。


歌詞ノートを立てて、財布からピックを取り出して………









あれ?財布がない。










あれ………?












瞬時に気づいた。



サブウェイだ!!!
サブウェイでご飯食べた時にトレーの上に財布を置いてたんだけど、ゴミと一緒にゴミ箱の中に突っ込んだんだ!!!!



慌てふためきながらギターをしまう!!!

あわわわわわ、ゴミ箱に突っ込んだのは間違いない。

あれはお昼時だった。
だとしたらゴミの量も多いからゴミ袋を交換しているはず。

ああいう店舗なら外のゴミ箱なんかには捨てずに、ちゃんとストックヤードみたいなのがあって、そこに集積してるはず。
ならばまだそこに残っている。

いや待てよ、今日は金曜日。お客さんの数も多いから収集車も頻繁に来るんじゃないか?
いやそんなことはない、まだストックヤードにマヨネーズとかコーラにまみれてベロベロになって残ってるかもしれないっていうかウギャアアアアアアアアア!!!!!!残っててくれええええええええええ!!!!!!


荷物を抱えて猛ダッシュ!!
カッピーたちがいたら荷物を見ててもらってダッシュ出来るんだけど、1人なので荷物全部持ってダッシュ!!!


息を切らしてサブウェイに飛び込んだ。


メキシカンのお姉さんが突如踊り込んできたアジアンにビックリしている。




「………ど、どうしたの?何かあったの?」


「ハァハァ……ウォ……ウォレット………ゴミ箱………ゴミ袋見せてください!!!」


ただのホームレス(´Д` )




ことの次第を説明してまずは俺が財布を突っ込んだ店内のゴミ箱を漁らせてもらった。

飲み物とかソースとかでベロベロになってるけど仕方ない。
お姉さんがビニールの手袋をくれた。
ありがとうございます。





しかしいくら底まであせくりかえしても見つかりゃーせん。


「裏にゴミ箱とかありませんか!?」


「あ、あるわよ。でももうないと思うわよ………」


「見させてください!!」



お願いしてお姉さんに着いて建物の裏に回ると、ゴミが山盛り入った大きなコンテナがあった。


「この袋が今日の分よ。びちゃびちゃに濡れてるけど。」


「構わないです!!お姉さんのもびちゃびちゃにしたいです!!(言ってない)」



そこから格闘です。
もはやお客さんが出したゴミだけでなく、お店の業務ゴミまで混ざりまくったぐちゃぐちゃべちょべちょの袋に結構たじろぐも、あの財布にはそこそこ現金が入っている。

photo:04




財布っていうかただの筆入れみたいなやつを財布として使ってるだけだけど。

思い切って袋を開け、コーラやらマヨネーズやらコーヒーフレッシュやらで汚れまくっている中に手を突っ込む。









そして、










photo:05




発見。









焦ったあああぁぁぁぁ(´Д` )


最近トラブルがないからってトラブル捏造してる場合じゃないですね(´Д` )



もう、あれだ。
世界旅はトラブルだらけって言うけど、俺の場合ほぼ自作自演だな。


iPhone、ギター、財布。
旅で絶対になくしたらいけないものから順になくしていくという脅威の忘れ物シンガーソングライターです。


日記に書いてないだけで、細かいものは週イチペースくらいで足がはえてどこかに脱走していきます。

強盗とか来ねぇのに勝手に物なくしすぎ。






とにかく………よかった。

ホッとしながらビーチに戻り、もう一度ギターを取り出して歌った。

あー、疲れた………










photo:06




ビーチで遊ぶ人々。
散歩の人々。
ランニングをする人。
観光客の人々。


たくさんの方が歌を聞いてくれた。
目の前のアパートメントからおじさんが出てきて、怒られるかなと思ったらお金を置いてキープゴーインとウィンクしてくれる。

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暑い日差しが傾き、桟橋の観覧車の後ろに落ちていく。
そして外灯にあかりが灯り、俺を照らし出したころにギターを置いた。

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すると、目の前のベンチで聴いてくれていたおばさんがお腹空いてる?と聞いてきた。
はい、と笑顔で答える。


ちょっと待っててねと言ってアパートの中に入って行ったおばさん。
しばらくしてから手提げ袋を2つ持って出てきた。


「色々入ってるから食べてね。あとこれも。」


そう言って俺の手に何かを握らせてくる。
お金だ。


「こ、こんなにしてもらって………」


「いいのよ。あなたの歌には心があるわ。あなたの旅を感じたわ。何かさせて欲しいのよ。」


おばさんの俺のことを心から心配してくれてる優しい表情が胸を締めつける。
母親の大きな優しさに包まれると思わず抱きしめたくなる。
もう31歳だけど、女性の母性は1番の癒しであり、そして全てのものから守りたくなる儚さがある。

いたわるようにハグをした。
エリナおばさん、ありがとう。


今日のあがりは152ドル。








photo:09




このいただいたご飯をどうやって食べよう。
こんなに優しさに溢れたものを1人で食べるのは、とても寂しい。

少しでも誰かと食べている気分になりたくて、まだ光がこうこうと夜を照らしている桟橋に向かった。


賑やかな土曜日の桟橋は、レストランや遊園地がまだ営業しており、たくさんの人で溢れている。

photo:10





1人でいい。
旅は1人だ。
でもこんな優しさをもらった時は、逆に1人が身に沁みるな。

楽しげな人たちを眺めながらベンチで袋を開ける。

サンドイッチやフルーツ、スナックなんかが入っていた。

頬張る。
うまい。

photo:11









1人はいい。
感性が敏感になる。

孤独の影は大きいけど、でもその分優しさが胸を鷲掴みにする。

この感覚。

生きてる感じだ。






砂浜に浮かぶ月。

今夜も綺麗。

さて、そろそろ寝床作ろうかな。
おやすみなさい。

明日も忙しいぞ!!


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