9月11日 水曜日
【アメリカ】 ロサンゼルス
ロサンゼルス空港のラウンジの隅っこ。
目を開けると、ガラス張りの外に滑走路と飛行機が見える。
よく眠れた。
「あー、今日も天気いいねー。」
「そうだねー。ユージン君まだ寝てるの?」
「まぁそのうち起きるよ。ちょっとトイレ行ってくるね。」
トイレで身だしなみを整え、荷物を片付け、ターミナルの前から出ているシャトルバスに乗り、バスターミナルへ。
ここでベニスビーチ行きのバスに乗りかえる。1ドル。
いつものようにiPhoneのGPSを見ながら現在地を把握し、次降りるよーと指示をくれるカッピー。
バスを降りて歩いて行くと、いつもの慣れ親しんだベニスのビーチに出た。
平日のビーチは人通りも少なく、俺たちは最初にここにやってきた時と同じ芝生の上に寝転がる。
暖かい日差しが体に降り注ぐ。
「今日はどっちでやる?ピザ屋の前?ピアのとこ?ご飯どうしようか?俺中華食べたいかなー。」
芝生に寝転がってる2人に、いつものように聞く。
しかし返事はない。
だって全部幻覚だから(´Д` )
あひいいいいいいいいいいいい!!!!!!!
寂しいよおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
1人で旅とかできないよおおおおおおおおおおおおお(´Д` )(´Д` )(´Д` )
あの2人はアメリカで思うようにお金が貯められなかったことで、このままだとメキシコで鼻ヒゲはやしてタコスを作る一生を送ることになりかねないということでオーストラリアに出稼ぎに行きました。
海を越えて出稼ぎ。ワールドワイド。
決して仲が悪くなったからではありません。
ロッキーの撮影中にユージン君のテンガから水滴が飛び散って腕について、きったねぇんだよコノヤロウ!!とかってケンカになったわけではありません。
洗ったから大丈夫だよ!!で済みました。
オーストラリアはバスカーたちにとって、ものすごくいい場所らしいです。
稼げるそうです。
楽勝で100万くらい作って南米に戻るから!!でもそんなに稼げなかったらアジアに行って豪遊するよと言ってました。
あの2人のことだから間違いなくアジアでグータラすることでしょう。
GOGOバーとか行って。
いや、もはやGOGOバーとか人の多いとこ嫌とか言って、宿でゴロゴロしてることでしょう。
あ、あれ?
俺はベニスビーチの芝生の上で1人で何をやってるんだろう。
何独り言しゃべってるんだろう。
あ、これか、ホームレスの変なおじさんが1人でうわ言をブツブツ喋ったり、イヤー!!マジサイコーだぜー!!てめーってやつはよー!!って空気に向かって爆笑してるあれは、こういうことだったのか。
浜風が寂しく吹き抜ける…………
よ、よし、歌おうかな。
そうだ、歌お歌お。
俺の心情のせいか、平日の静けさのせいか、それとも浜に吹く肌寒い秋風のせいか、なんだかひとつの大きな季節が終わりを告げたような、そんな虚無感がある。
灼熱のアメリカ大陸横断。
その果てにたどり着いた西海岸の陽気な人々と、肌を焦がす太陽。
お祭りのような日々だった。
あの日々が幕を閉じ、潮騒が次の季節へといざなう。
終わりにするにはもってこいの季節。
しかし旅はまだまだ続いて行く。
壊れそうな心を抱いて。
なんだか気分が乗らず、そしてお金の入りも信じられないくらい少なく、夕日の時間にギターをしまった。
あがりはたったの5ドル。
2ヶ月以上続いた3人旅からいつもの1人旅に切り替えるには時間がいる。
トイレに行くにも、なにをするにも、荷物を全て持ち歩かないといけない。
今日の出来事を笑い話にする相手もいない。
んー、今まで1年以上もどうやって1人で旅してたんだっけなぁ。
早く感覚を取り戻さないとなぁ。
ご飯を食べて、すでに閉まっているスターバックスの前に行き、お店の外に座ってWi-Fiを拾う。
誰かと話したいけど彼女は仕事が最近異動になったみたいで、忙しくて相手をしてくれない。
仕方なく荷物を抱えてビーチに向かった。
砂浜の上に寝床を作り、1人でビールを飲みながらギターを弾く。
怪しげな月がぼうっと光り、黒い海に線をつける。
ポロポロと弦をつま弾いていたら、ホームレスのおじさんがいい曲だと話しかけてきて、向こうに歩いていった。
いつもならみんなでビールを飲みながら楽しく話をしている時間。
潮騒が耳につく。
寂しい。
でも今日は、この孤独に酔いしれよう。
お月さんも付き合ってくれている。
明日にはきっと良いことがある。
もう眠ろう。
おやすみなさい。