8月25日 日曜日
【アメリカ】 ラスベガス
朝方、オシッコに行きたくなって目を覚まし、目をこすりながらノソノソとベッドを出る。
隣のベッドを見る。
オナゴが寝とる。
部屋の中に知らない人がいる。
誰ぞ、このベッドに寝とるオナゴは。
無防備に気持ち良さそうに寝とるこのオナゴは誰ぞ。
どうしよう………とりあえずオッパイ触っとこうかな。
…………オシッコ行ってもう一回眠る。
「あ、金丸さーん、おはようございます。ニコリ。」
それから数時間後。
鈴の音のような声で目を覚ますと、目の前にオナゴが立ってた。
そう、彼女がカッピーの知り合いの女子大生の子。
顔出し、名前出しNGなので、ここでは仮名をネコ娘ちゃんにしよう。
鳥取の子だし。
「金丸さんがブログで変なことばっかり書くけぇ、ごっつ困るわぁ。」
え?なんのことですか?
僕が何か変なこと書きましたか?
中出し、ガンガン、OK。NGOとかそんな下品なこと言いませんよ。
こんな上品を絵に描いたようなお嬢様に対して。
いやほんとに清純とはこのこと。
まるで大山の尾根に吹き渡る透き通る風に揺れるイチリンソウのように汚れなき可憐さ。
この世の汚いことなど何も知らないような、捨て猫とかすぐ拾ってきそうな優しい子。
そう、国境のカスタムで全裸にさせられるようなことになど一生無縁な子です。
これから4日間ほど行動を共にするわけですが、彼女がいるうちは野宿とかヒッチハイクとかハードなことは避けないといけない。
全力で危険から守りつつ、観光を楽しんでもらわないといけない。
いつも、大丈夫でしょ?と自分の旅に合わせようとしてしまい、他の人を巻き込んできたのを教訓にして、今回はキチンとエスコートしよう。
とは言っても、このネコ娘ちゃんはカッピーのお客さんだ。
俺がとやかく言うことはひとつもない。
俺は俺でいつものようにやる。
宿に関しては、カッピーたちを2人にさせたほうが良いかなと思っていたんだけど、カッピーが言うには、全然そんな関係じゃないから宿代を安く済ませるためにも一緒の部屋に泊まってくれ、とのこと。
そしてネコ娘ちゃんも、2人で泊まるのは変だからみんながいた方がいいと言ってるみたい。
そういうことなら遠慮せずに泊まらせてもらおう。
ちなみにこの広々とした豪華すぎる部屋が1人10ドル。
守るぞー!!
箱入りお嬢様が1人でアメリカなんか来たんだ!!
汚い物乞いが、金くれー金くれーって寄ってきたら、わけもわからず10ドルくらいあげてしまいそうな子だからな。
危険なこと全部ブロックしてやる!!
関係ないけど三朝温泉、大好き!!
あの山奥の小さな村、緑に囲まれた河原の野天風呂。大好き。
21歳の時に有刺鉄線と柵をこえて、崖をロッククライミングして、投げ入れ堂によじ登って行って死にかけたことは内緒。
さて、ゆうべは時差がひどいだろうということでネコ娘ちゃんを部屋にほったらかして、3人ともバスキングに出かけていた。
今日は少し案内してあげようということでカッピーが無料のショー巡りを調べている。
クオリティの高い一流のショーを見られるのは惹かれるけど、今俺は路上を休んでる場合じゃない。
エスコートはカッピーとユージン君に任せて、俺はギターを持ってホテルを出た。
昨日と同じファーマシーにやってきた。
ゆうべの窓拭きのオッちゃんは今日は来ていなかった。
その代わり別の物乞いが2人いて、お店にやってくる人たちにお金をせびって回っている。
彼らにとってもここは稼ぎ場。
ちょいとお邪魔させてくださいとタバコをあげると、ブロー!!ここはお前のステージさ!!とにこやかにスペースを分けてくれた。
歌った。
ひたすらに。
たくさんの人が聴いてくれる。
聴いてくれるのは嬉しいんだが、そのままお店の中からビールを買ってきて俺の周りで飲みはじめてしまう。
気持ちはわかるんだけど、あんまり見栄えのいいものではない。
案の定、お店からここでは歌わないでくれと言われてしまった。
そうだよな。俺がいればここでたむろされてしまうわけだもんな。
おとなしく少し移動して、お酒を飲んでる兄ちゃんたちにもここでは飲まないでくださいとお願いし、演奏再開。
ゆうべに比べて人通りが少ないのは日曜の夜だからか。
ようやく足を止めてくれた人に、さっきから周りをウロついてる物乞いたちがフラフラ寄って行ってお金をせびるという、いつもの足の引っ張りあいの構図が出来上がってしまい、全然チップが入らない。
まぁ、彼らにも敬意を払わないとな。
ここは彼らの稼ぎ場なんだから。
4時間。声をからして、指を痛めて、頑張って歌い続け、今日のあがりは37ドル。
さびしすぎる…………
ホテルに戻り、1人で部屋でカップラーメンを食べていたら、0時をすぎた頃にカッピーたちが帰ってきた。
ラスベガスの夜を楽しんできたネコ娘ちゃんは嬉しそうにニコニコしていた。
火山の噴火や海賊ショー、お決まりの噴水ショーを観て回ったみたい。
田舎の鳥取から、いきなり世界イチのイカれた欲望の街、ラスベガスだなんて、めまいがするような驚きだろうな。
世界が違いすぎる。
そんなラスベガス観光の1日のシメはやっぱり、これだろう。
4人でカジノへ。
カジノの中ではキワドイ格好をしたウェイトレスさんが飲み物を運んで回ってるんだけど、なんと飲み物全部無料。しかもビールまで無料。
もちろんチップを払わないといけないんだけど、それでも1ドルでコロナが飲めるわけだ。
あんまり稼げなかったので、地味にスロットを少しだけ。
でもこうしてカジノの賑やかな空気の中でビールを飲んでるだけでも、とてもいい気分だ。
贅沢な気分になれる。
そりゃあお金をたくさん持っていれば、天井知らずにどこまでも楽しいことをやれる街だ。
でも大金を使わなくたって、こんなに贅沢な気分にさせてもらえるラスベガス。
観光客に対するサービスがどこまでも徹底されている。
こんな着古した服を着た俺にでも、とても丁寧な対応をしてくれる。
これで稼ぎが良かったら、とことん最高の街なんだけどなぁ………
さて、明日からちょいとラスベガスを離れてグランドキャニオン攻めになります。
とうとうアメリカ最大の観光地であるグランドキャニオンだ。
今までもたくさん観光地に言ってきたけど、その中でもまさに、ザ・観光地の名にふさわしい場所。
世界一周に出た理由は、色んなものを見たいから。
世界中に散らばる美しい自然や遺跡を見ずして、俺の世界一周はあり得ない。
「楽しみですー。大山とどっちが綺麗じゃろなぁ。」
そう嬉しそうに話すネコ娘ちゃんは、さっきからスロットが揃いまくってて、俺たちを差し置いてそこそこ勝っている(´Д` )
ルールも全然知らないくせに(´Д` )
明日は早起きだから早く寝ようと言っていたのに、結局部屋に戻ったのは深夜の3時。
この無計画な3人+お嬢様のグランドキャニオン巡り。
一体どうなることやら。