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デッドタウンで稼げるか

8月19日 月曜日
【アメリカ】 ヒューストン




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ジョージブッシュ国際空港の地下には、各ターミナルをつなぐ列車が走っている。

ほんの小さなトロッコみたいな列車で、カタコトゆっくりと走る様子が遊園地のアトラクションみたいで楽しい。

photo:01









さて、このデッドタウンのヒューストンにはもはや長居する理由はなにもない。

今夜のグレイハウンドバスをすでに予約している。

目的地はオクラホマシティ。
ここから乗り換えをあわせて12時間の距離だ。


なにがあるかはわからないけど、オクラホマって名前だけでそそられるものがある。

あ、カウボーイミュージアムがあるって聞いたな。

とにかく、荒野の中にポツリと取り残されたような町といったイメージ。

本物のカウボーイたちがそこらじゅうにいるんだろうな!!

そしてオクラホマからはひたすら西に一直線でグランドキャニオンとラスベガス、そしてアメリカ横断最後の街、ロサンゼルスが待っている。


実はロサンゼルスでとあるライブのチケットを購入している。

ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、エスペランサ・スポルビングなどなど、ジャズ好きの人たちにとったら狂喜以外のなにものでもないようなメンバーが一堂に会するライブ。

カッピーとユージン君は、もう鼻息を荒くして、ヤバイんだよ!!これ行かなかったら一生後悔するから!!ホントに!!と言っているが、ジャズのことほとんどわからない俺にはふーん、といったところ。

俺が、ドゥービーブラーザーズだよ!?!リッスントゥザミュージックをリッスンせんとダメだよ!!ドゥービイィィィ!!!と言ってる時にみんながキョトンとしてたみたいなもんか。


でも俺でもハービー・ハンコックくらいは知ってる。
大御所だよな。

その贅沢すぎるライブのチケットがなんと15ドル。

音楽にまみれてきたアメリカバスキング旅の最後を締めくくるに相応しいライブだ。

そのライブが今月の28日。
あと9日。

あと9日でなんとしてもロサンゼルスまで行かないといけない。


もう途中の小さな町に立ち寄ってる時間はない。
カッピーたちのアメリカ滞在の期限も迫ってきている。


飛ばしつつ、なおかつ稼ぎつつ。



アメリカ横断も佳境に入って厳しさを増してきたな。


バスが出発するのは夜の22時。
それまで望みは薄いがこのデッドタウンで少しでも稼ぐぞ。








と、その前に今更ですがアメリカのミニお国情報。

うわ、久しぶりだな、これ書くの。
書こう書こうと思っててなかなか手をつけなかったんだよな。



★首都………ワシントンDC
★人口………3億1千万人(3位)
★言語………英語
★宗教………プロテスタント
★独立………1776年 イギリスより
★GDP………世界1位
★通貨………アメリカドル
★レート………1ドル = 97円
★世界遺産………文化12件、自然8件、複合1件




カナダをまたいでアラスカ、太平洋のど真ん中にハワイ、さらにプエルトリコとか様々な離島を領土として持つ。
また核兵器などの大量破壊兵器も保有している。


1492年のスペイン女王の命を受けたコロンブスによるアメリカ大陸到達に始まり、ヨーロッパ諸国から調査団、移民が流れ込み文化を形成。

その地に1万年以上前から暮らしていた先住民族の土地を奪い、殺戮し、支配しながら開拓を進め、さらにはアフリカから大量の黒人奴隷をつれてきて大規模な農場で強制労働を行わせ、ものすごいスピードでパワーを身につけ、そして建国。


そのフロンティアスピリットという名の強欲さと傍若無人ぶりは、ご存知の通り現代もなんら変わりない。




もはやアメリカについての豆知識など日本人にとったら必要ではないでしょう。

程度の違いはとてつもなくデカイだろうが、誰もがアメリカというものにそれぞれのイメージを持っているはず。


世界一の強国、
歴史の浅い移民の国、
ロックンロールやジャズやブルースが生まれた音楽の国、
ディズニーなどのエンターテイメントの国、
日本に原爆を落とした国、
世界の警察として世界中の重要な拠点に軍事基地を持ってる国、



世界においてアメリカがどういう国なのか書こうと思ったら、俺の拙い文章と考察力では3日くらいかかってしまいそうなので、それは日々の日記の中で少しずつ触れていきます。


自分たちの正義のためには手段を選ばない。
それはだいたいどこの国民にもあることだろうけど、アメリカはそれが異常だよな。

その結果あらゆるものを勝ち取っている。

ヨーロッパや中東を回って、ようやく、国、という概念に対して深く考えられそうになってきたのに、ここアメリカにまたぶち壊されてしまう。

もはや地球はアメリカの統一国家か。
力こそが、抑止力こそが平和をもたらすのか。
武器を持つことが心の平穏につながるのか。

あまりにも考えさせられることが多すぎて、逆に見えなくなってしまう。




ただ、すでに2ヶ月近くこの国に滞在して思うことは、そんなに他の文明国とたいして変わったところはないってことだ。


暮らしてみなきゃ見えないことだらけだろうけどね。


アメリカも残りあとわずか。
ラストスパートでいろいろ見てやるぞ。








photo:03




お世話になったジョージブッシュ国際空港を後にして、市バスに乗ってヒューストンのダウンタウンにやってきた。


うん、ボチボチ人は歩いている。

これだけの高層ビルがあるんだ。
平日なのでシャツを着こんだビジネスマンの姿が多い。




しかし、それにしてもたったこんだけか?


謎の答えは簡単だった。
ここはテキサス。
アメリカ最南部。
夏の酷暑は凄まじい。






そう、地下があったのだ。

このダウンタウンに林立する高層ビルの地下に巨大な地下街が広がっており、それらが網の目のようにトンネルで繋がっていた。





photo:04




降りてみると、綺麗に整備された宇宙船みたいなトンネルが張り巡らされ、フードコートや理髪店など様々なお店が並んでおり、たくさんの人びとが行き交っていた。


こんなところに隠れてやがったのか!!




しかし地下街は地下街。
トロントでさんざん歌ってきて、さんざん止められてきた。

こりゃおそらく止められる。

でももうここしかやる場所はない。


カッピーたちの楽器ではとても音が大きくてこのトンネルでは出来ないので、街の中の公園でトライしてみると出かけて行った。

夜にグレイハウンドで待ち合わせ。

さぁ、お互い少しでも稼ごう。







人通りの多い、でもあまりビルの管理下になっていないような独立したトンネルを探して回り、ようやくいい場所を見つけた。

photo:05





早速ギターを取り出す。
音の響きは申し分なし。

やかましくならないように、静かな曲を丁寧に歌う。

さぁ、ヒューストンどうだ……?




最初のお金、5ドル札。

よし!!






あ、警備員さん来た。



終わった。











と、思ったら目の前を通り過ぎた。



もらったああああああああああ!!!!!!!


首からIDカードをぶら下げた仕事中の人たちがコーヒー片手に歌を聴いてくださり、わずか20分くらいで20ドルほどになった。

よっしゃ、稼げる!!!











はい、止められました。


あああああああああはあぁぁぁ(´Д` )


「この地下はどこもやったらダメなんだ。みんな聴いてるし、君の音楽を気に入ってるけど、ごめんな。」




すごすごと路上へ上がる。

おとなしくこの寂れたメインストリートでやっちまうか。
それしかねぇ。


でも物乞いの数が異常なんだよな………

すべての角に2人ずつくらいのボロボロの服を着たやつらが立ってて、金くれー金くれー、とゾンビみたいにフラフラしている。



ここで歌ったら、この暇なオッサンたちに群がられて終わりってパターンなんだよな………


でももう贅沢は言ってられん。


通りの真ん中でギターを取り出し、歌をビルの底に響かせた。








そしてすぐに人だかりができた。






物乞いの(´Д` )


10m以内に小便の臭いをまき散らしている物乞いたちが5人、俺の周りを取り囲んでニヤニヤと笑っている。

爺さん、オッサン、兄ちゃんまで。

やりづらいことこの上ないが、集中だ。

通り過ぎる人びとへ、手のひらを上に向けて金くれー、金くれー、と言ってる物乞いたち。




イライライラ………




なんとか足を止めて歌を聴いてくれる人のところにすぐ寄っていって金くれー、金くれー。

迷惑そうに歩いて行く人々。




イライライラ………




お金を入れてくれようと財布を取り出す人の元に群がって金くれー、金くれー。

財布をしまって離れていく人。




イライライラ!!!!!




要人を守るSPがごとき物乞いによるバリアーが完成してしまっていて、誰も得しない足引っ張りあいの図。


頑張って声をあげる俺をずっとニヤニヤと見ている彼ら。



そしてその状況を見兼ねたのか、後ろのビルの警備員さんがやってきて、ここではやらないでくれと言われてしまう。


まぁ予想通り、っていうかおらあああぁぁぁぁぁああああ!!!!

このボケどもがあああああ!!!!


そりゃ俺はよそ者だから、あんたらの邪魔にならないように、ちゃんとあんたらの仕事場らしき美味しいポジションをはずして、少し寂しいところでやってるってのに、わざわざ寄ってくんなよ!!


たった3ドル………

今日のあがり23ドル。




photo:06




力なくトボトボと歩く。

カッピーたちとはグレイハウンドで待ち合わせになっている。

地図を見ると、グレイハウンドのターミナル近くにスーパーマーケットがあるみたいだ。


最後にそこに望みをかけるか、と豆がひどいことになっている足を引きずって歩いていってみると、見事スーパーマーケットは雑草だらけの廃墟となっているというオマケつきですか、さすがヒューストンさん最後まで徹してます。





最後の希望も潰えてターミナルにやってきた。

しばらくしてからカッピーたちがやってきた。

前回カッピーが辻井のぶゆきさんとアメリカを回った時にお世話になったというヒューストン在住のご夫婦とご一緒だった。

日本人の奥さんと黒人の旦那さん。
2人とも気さくで面白いご夫婦。

美味しいものご馳走になったみたい。


ぐおー………俺、マック(´Д` )




カッピーたちは今日は街中の動物園や博物館が入っている広い公園でやったみたいなんだけど、狙いが的中して60ドルほどのあがりを出していた。

やられたー。








ターミナルの中に飛び交う会話の言語がどこか耳慣れないと思ったら、すべてスペイン語。

そう、ここはすでにメキシコとの国境地域。
街を歩いていてもそこらじゅうにメキシカンがいるし、お店の看板文字もスペイン語表記だ。

いくら国境があっても、その境目ではこうして混ざり合っているものなんだな。


「オクラホマに行くのかい?ははは、あそこは本当に何もないど田舎さ。レッドネックさ。気をつけなよ。」


そう言ってご夫婦は帰っていった。
レッドネックっていうのは外仕事ばかりやっているので首が日焼けしている、つまり田舎モンの町っていう意味。

オクラホマ、どんなとこなんだろうな。









さてー、アメリカ横断、バスを使い始めてからペースが早え!!

でもこの辺りは本当に何もないからこれくらいでもいいと思う。

この荒野ばかりの田舎でウダウダやってるよりも、とっととラスベガス、ロサンゼルスに行って面白い出会いを探したほうが楽しそうだ。




テキサス、まじでなんもないわ!!
州の標語が、ローンスターステイト、孤独な星っていうだけある。

まだまだ荒野が続くぞ!

夜22時、オクラホマ行きのバスに乗り込んだ。





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