8月11日 日曜日
【アメリカ】 メンフィス
体がだるい。
太ももが痛すぎる。
ゆうべの全力疾走で身体中のエネルギーをすべて使い切ってしまったみたいだ。
ただ立ち上がるのにも動悸が起きるほど消耗している。
でもだからって動かないわけにはいかない。
次の目的地はアメリカの深南部、ニューオリンズ。
ジャズ発祥の地としてあまりにも有名な音楽の町。
ここから高速道路で10時間の距離だ。
今日は頑張って中間地点のミシシッピ州ジャクソンくらいまでは行きたい。
ヒッチハイクするぞ。
バッキバキの筋肉痛の体で市バスに乗り、郊外のエルビスプレスリー大通りにやってきた。
この道を真っ直ぐ下ればミシシッピ州に入る。
ロバジョンが悪魔に魂を売ってギターの腕を手に入れたという伝説のクロスロードがあるミシシッピ州。
かつてアフリカから連れてこられた奴隷の子孫たちが暮らすエリアで、閉ざされた未開の地といったイメージ。
きっと面白いことがある。
出会いを求めて道路脇で親指を立てる!!
のだが………体力があまりにも枯渇しており、腕を道路にのばすのもしんどい。
立ってるだけで息がきれる。
「座ってなー。俺たちが捕まえるからー。」
そう言ってくれるカッピーたち。
言葉に甘えてアスファルトに座り、そして寝転がった。
小石が背中に痛いが、ろくに動けずに死体のように体を投げ出した。
太陽が照りつける。
カッピーたちは頑張って親指を立てる。
俺は熱いアスファルトの上で焼かれる魚のように汗ダクで横たわるのみ。
捕まらない。
いや、本当は何台も止まってくれている。
しかしすべての人がこう言ってくる。
「いくら払えるんだ?」
タクシーじゃなく、すべての乗用車がお金を求めてくる。
ここはすでに黒人地域。
走ってる車はぼっこぼこに凹んでおり、バンパーがとれ、窓が割れて、塗装のはげた車ばかり。
貧しいということが一瞬でわかる。
同じ国内、白人と黒人でここまで違うか。
夕方まで頑張った。
でも止まる車はお金を要求する黒人しかいない。
ダメか………
よし、もうアメリカ横断はやり方変えよう。
止まらないヒッチハイクで無駄に時間を浪費するくらいなら、その時間をバスキングに充てて確実に稼いでバスでガンガン移動したほうが逆にお金も貯まる気がする。
出会いは減るだろうが、仕方ない。
アメリカの滞在日数はすでに40日。
あと50日で出国しなければいけないというタイムリミットもある。
早くロサンゼルスまで進んで、ガッチリ稼がないとアメリカ出国までに10万円貯めるという目標が達成できない。
ヒッチハイクを諦め、マクドナルドに避難。
カッピーとユージン君は荷物を置いて近くのスーパーマーケットにバスキングに出かけた。
俺はこの体調では歌なんかとても歌えないので、荷物番。
この夜は市バスがなくなってしまい空港に帰れなくなったので、近くの公園でテントを張った。
アメリカで2番目に治安の悪い町の、それも黒人エリアでの野宿ってのはさすがにちょっと怖かった。
「うおっ!!!あ、ああ……びっくりしたー………」
カッピーが足元を照らす。
怖え(´Д` )
今日はもう早めに眠った。
きつい。
明日には体力回復してますように……