7月6日 土曜日
【アメリカ】 ニューヨーク
「お世話になりました。1人じゃ絶対体験できないニューヨークを見せてもらいました。」
「まぁ、ニューヨークなんて普通ですよ。有難がるものじゃないです。日本人はステイタスと思ってますけどね。」
天上人が住む天高の原から下界へと降りた。
そこはクラクションと排気ガスと軽薄な笑いに満ち満ちていた。
暑い。
周りのビルの室外機、地下鉄の換気口から熱風が吹き出しており、むわりと体を包む。
湿気がひどく、ベタベタと都会の喧騒が肌にへばりつく。
見上げれば高層ビルが空をえぐり、幾つもの窓が青空を反射して強烈に光っている。
あそこから見下ろす人々、
どん底から見上げる人々、
人間の価値は一緒か?
いや、人間の価値は天と地ほど差がある。
ただし命の重みは、どれも同じだ。
ニューヨークの地下鉄構内は茹で上がってしまうほどに熱気がこもっている。
汗だくになりながら、サウナにもほどがある地下鉄に乗ってやってきたのはクイーンズブリッジ駅。
地上に上がると、カッピーが可愛い女の子と待っていた。
「あ、この子俺のセフレ。」
「ちょっとやめてよー!!嘘だからね!!」
彼女はアメリカで音大に通い、卒業後、ニューヨークで音楽でチャンスを掴むため夜はバーで演奏しながら様々なオーディションを受けたりしているそう。
世界を相手に頑張ってるんだなぁ。
「まぁ、俺のセフレだけどね。」
「よし、じゃあ今夜は乱交だね!!」
「だからやめてよー!!」
駅から近くのホテルにやってきた。
ゆうべカッピーたちが見つけたホテル。
ていうか初日ハーレムの宿、ゆうべムーンパレス、今夜はここってなんで毎日宿かえてるんだよ(´Д` )
「いやー、なんか面白くなくてさー。ムーンパレスに泊まってる人って面白くなかったし。」
「もうこのままニューヨークの安宿全部泊まろうぜ。」
今夜の宿はただの綺麗なホテル。
クイーンサイズのベッドが2つあるファミリールームで、料金が140ドル。
でも5人で泊まるので1人28ドル。
気の合うメンバーがいれば、下手に35ドルとかのドミトリーなんかに泊まるよりはるかにマシ。
「よーし、じゃあ稼ぎに行こうか!!」
「そうだね!!今日の目標は200ドルだね!!」
「ニューヨークに見せつけてやろうぜ!!」
「あ、もうちょっとクーラーの温度下げて。」
「よーし、頑張って稼ぐぞー。あ、Wi-Fiのパスワード教えて。」
誰も動こうとしねぇ。
このメンバー、腰重すぎ。
「よし!!そろそろ行こう!!行かないと路上の時間なくなるよ!」
「そうだねー、路上の時間なくなっちゃうねー。」
「うーん、でも俺カナダでいっぱい稼いで来たから大丈夫なんだよね。今日暑いし。」
「うん、暑いよね。」
「そうだよ、こんな中で路上とかやったら倒れちゃうよ。」
「よし、ビール買いに行こう。」
「お前ら稼げええええ!!!」
朝からテンション高すぎるボストン在住のてっちゃんに尻を叩かれて、しぶしぶみんな荷物を抱える。
てっちゃんは過激なまでにお世話焼きな男。
頼りになる。
「もしボストンに来るなら宿とか全部俺が面倒見るから!!金は払ったらいけないよ!!」
「あ、じゃあ1ヶ月くらいお願いしようかな。」
「もちろん個室だよね。」
「お前らーー!!!」
いやー、面白いメンバーだ。
てっちゃんも短期だけど世界中を旅するのが好きな男で、ブログランキングにいる旅人たちとたくさん交流を持っている。
もちろん、それ以外の旅人とも。
みんなでてっちゃんに誘導尋問して、旅人たちの噂話や裏話をたくさん暴露させる。
へー、あの人とあの人が。
ほー、あの人とあの人は間違いないとおっしゃる。
羨ましくて吐きそうですな!!
俺たち男5人で切なすぎる(´Д` )
というわけであまりにも女っ気がないので、せめてということで女神に会いに行きました。
「あ!!テンガ忘れた!!テンガ持って同じポーズしたかったのに!!」
ユージン君(´Д` )
凄腕ギタリストの山梨県民。
なんか最近までハリケーンの影響で女神がいる島に上陸出来なかったんだけど、昨日くらいから立ち入り禁止が解除されたみたい。
でも上陸には10ドルくらいかかってしまう。
一般的なのは、女神の前を通りすぎる渡し船のようなローカルフェリーに乗り、船の上から見るという方法。
このフェリー、なんとタダ。
金がなさすぎる俺たちが10ドルも払って上陸なんかするはずもなく、無料のフェリー乗り場へ。
そこには、まぁ凄まじい数の観光客たちが溢れかえって次のフェリーを待っていた。
おおお、ここはエジプトか?
エジプトとヨルダンの国境か?
土曜日ってのもあるんだろうけど、それにしてもさすがは自由の女神。
世界中から観光客を集める、世界一有名なスタチューだ。
乗船が始まると、もう民族大移動。
でもここはアメリカ。
白人もアジア人も黒人も、みんな押し合いへし合いすることなく、譲り合いながらゆっくりと前に進んでいく。
こういう場面になったら、1mmでも先に進もうと他人を押し飛ばして突進する、あの我慢するということを知らないアラブ人たちでさえ、みんなちゃんと順番を守っている。
たくさんの観光客を乗せた船が出港。
振り返ると、マンハッタンの摩天楼が青空にそそり立っている。
大小様々な形のビルが密集して伸び上がって、まるでシメジみたいだ。
その近代的な建築と、圧倒的な存在感。
とても現実のものに見えない。
そして……………
これです。
アメリカの象徴。
自由の象徴。
かつてどれほどのアフリカやヨーロッパからの移民たちをお出迎えしてきたんだろう。
アメリカ建国100年を記念してフランスから贈られたこの女神像。
モデルはフランスの自由の象徴であるマリアンヌという女性。
松明と本を持ち、足には引きちぎられた鎖がついてる。
自由と平等を表してるんだね。
世界遺産にも登録されており、当時、自由の女神は白人なのか黒人なのかという議論が起こったらしいんだけど、見た目が緑色なので緑人ということで決着したそう。
そんなのでいいの!?
いやー、こうやって時代背景や様々な人生を思いながら接すれば、観光地ってやつにガッカリすることなんてまずない。
夕日が照らすハドソン湾に浮かぶシルエット。
うん、いいもの見た。
甲板から船の中に戻ると、ベンチでボケーっとお喋りしてるカッピーたち。
「ちょ、お前らせっかくだから見たらいいのに。」
「えー、別に興味ないもんー。甲板風強いし。」
腰が重いにもほどがある(´Д` )
対岸に着いたら、すぐに横に停泊している折り返しのフェリーに乗り換えて、もと来た港に戻ります。
帰りも一切外に出ないメンバー。
何しに来たんだろう(^-^)/
いやー、いいもん見たなーと満足してフェリーターミナルを出ると、そこにどこかで見たことのある人がいました。
え!?う、ウソ!!?
あれってアレじゃん!!!
ジャスティンビーバーじゃん!!!!
すげええ!!!!
ブログランキングのユーキ君です。
インマイライフっていうブログをやってるユーキ君です。
僕、彼のブログが好きで、ずっと見てました。
僕がブログランキングに参加する前からいる古株さんで、さすがは大阪人という、ハイセンスな笑いが散りばめられた、ブログランキングのお笑い担当といったところです。
やべー、本物だ。本物のユーキ君だ。
ブログ読んでます、とはよく言われるけど、逆の立場になるとこんなにドキドキするんですね。
やべー、マジカッコいいー。
マジユーモラスー。
マジ病的に痩せてるー。
一緒に旅してる彼女の翔子さんもいました。
可愛らしい女性です。
あまり喋らないので、ちょっと恥ずかしがり屋さんなのかなと思いました。
でも今思ったら、俺たちがひどい下ネタしか言わないのでキレていただけかもしれません。
だからモテないんですね。
翔子さん、女の子紹介してください。
「ちょっとだけそこでやろうか。目標200ドルだし。」
夕暮れが迫るフェリー乗り場の前の広場でちょいと路上を始めるカッピー&ユージン君。
ちなみに俺はギターすら持ってきてない。
暇そうなオッさんたちがベンチで寝っ転がってて通行人もあまりないこの広場。
カッピーたちならイケると思ったんだけど、みんなBGMとして聴いてるだけで誰もお金を入れる雰囲気はない。
こりゃ稼げねぇかなぁ。
30分後。
サックスケースの中には4ドル。
ヨーロッパでは1日平均100ユーロは稼いでいたこの2人。
うーん、やっぱり路上は場所が大事だ。
「はーい!!こっちですよー!!ハイ!!これがウォール街でーす!!このビルがニューヨーク証券取引所で、ここがウォールストリート!!あそこの闘牛の像が有名でキンタマを触ってくださいねー!!はい、次はワールドトレードセンター、グラントゼロに行きますからこっちに着いてきてくださーい!!」
アメリカ在住のてっちゃんはひたすらテンションが高く、お世話焼きで、俺たちの要望をこれでもかってくらい叶えてくれる。
しかもなぜかめちゃくちゃ詳しくて、ニューヨークのことが全部頭に入ってる。
「てっちゃん、もうお腹空いたー。」
「あ!ごめんなさい!!ここだけ、もうすぐそこにグランドゼロがあるから!!そこは見といて!!あ、あと少し歩いたらブルックリン橋ってのがあって、そこから見る夜景が、いわゆるザ・マンハッタンの夜景なんだよね。ここからだいたい40分~50分かな!」
「もう疲れたからご飯行こー。チャイナタウンー。」
「そうか!そうだね!!よし!チャイナタウン行こう!!チャイナタウンまではここからだと、あそこで乗り換えて、あそこで………よし!!こっちだよ!!」
これがワールドトレードセンターの新しいビル。
足元にはモニュメントが設置されている。
こういうモニュメントを作ってしまうところがアメリカ的だよなぁ。
それにしても、てっちゃんがいなかったらとことんグータラになってしまってたな(^-^)/
「よし、てっちゃん、一緒にメキシコまで下ろうか。」
「え!えぇぇぇ~~!!それは無理だよ~~!!俺だって仕事があるんだから~~~!!」
「大丈夫だよ、ネットで出来る仕事やろ?」
「そうだよ、旅しようよ。旅。」
悪魔のささやきでてっちゃんを誘惑しながら、チャイナタウンにあるギョウザ屋さんにやってきた。
カッピーおすすめのこのお店。
なんと、大きなギョウザ4個で1ドル。
大量に買いこんで、みんなでそこらの地面に座り込んでギョウザパーティー。
「あ!お母さん見て!!汚いアジアンたちが安いギョウザにありついて嬉しそうな顔して食べてるよ!!」
みたいなことにはなりませんね。
ここはチャイナタウン。
臭いし、汚いです。
白人たちもみんなそこらに座って食べてます。
たらふくギョウザ食い散らかして、そろそろ宿に帰ることに。
ユーキ君と翔子さんはムーンパレスへ。
オサダ君はケーズという宿へ。
どちらもニューヨークでは有名な日本人宿。
ちなみにケーズにもバッグパッカーはほとんどおらず、短期のオシャレな旅行者ばかりだそう。
女の子3人組にオサダ君が明るく笑顔で挨拶したそうなんだけど、思いっきり無視されて、「あのー、スタッフさーん、ここって女性専用じゃないんですかー?男の人いるんですけどー。」ってオサダ君の目の前で言ったんだそう。
他にも、「フードコーディネーターの斎藤ゆうこ」と名乗るナイスキャラがいたらしく、ものすごく高飛車で性格悪くて、フードコーディネーターってセレブでカッコいいのよアピールをしてきてすごくうざくて、でもそもそもフードコーディネーターがどういうものかわからなくて困惑したんだそう。
ていうかそんなセレブなのに安宿のドミトリーになんでいるの(´Д` )?
面白そうだから、フードコーディネーター、斎藤ゆうこ、でGoogle検索したら、確かにしっかりした教室を持ってらっしゃるフードコーディネーターの斎藤ゆうこさんが出てきたのだけど、そこにある写真と、宿のはまったく別人だったそう。
憧れの人のこと言っちゃったのかな。
謎ですね。
ニューヨークに来る日本人は、とにかくステータスが大好きな気取ったやつが多いということですか。
気取っててもいいから挨拶くらいしようよな。
さて、ビールをしこたま買いこんで宿に帰り、ソッコー酒盛り開始。
ゲスな話で盛り上がっているところに、コンコンとドアを叩く音。
こんな夜中に誰だ?
やってきたのは、俺がカナダのハミルトンで路上をしている時に出会った日本人の男性、ヨシキさん。
ワーホリでカナダに来ており、ちょうどニューヨークに行くタイミングが一緒ですねと話していたんだけど、飲みましょうと連絡を取り合っていたのだ。
「て、ていうか、なんでみんな地べたなんですか?」
「えー、なんか床のほうが落ち着くんだよね。」
「うん、このベッド邪魔だよね。」
せっかくクィーンサイズの立派なベッドが2つもあるのに、みんなその隙間に座り込んでいるという貧民っぷり。
ていうか一瞬にして散らかしすぎ。
今日のあがりのコインを分けあうカッピーとユージン君。
ま、貧しい(´Д` )
ビールを飲んで、大笑いして、みんなベッドの隙間で寝袋にくるまって、クーラーが効きすぎて寒い寒い言いながら眠ったという、イカれた男旅の始まりだ。