6月21日 金曜日
【カナダ】 ハミルトン
「フミ、どうだい?今夜もいないかい?僕の息子はスーパーマリオが大好きで、マリオの国からきたフミと話しできたら嬉しいと思うんだ。」
うーん、どうしよう…………
離れ離れのトーマスたちの貴重な親子水入らずの時間だもんなぁ。
でもだからこそ面白いゲストがいた方がいいのかなぁ。
「誕生日のケーキも買ってやれなくてすごく悲しいんだ。来週になったらお金が手にはいるんだけどな………」
おお、ト、トーマス、そんなこと言ったら俺まで悲しくなってくるじゃねぇか(´Д` )
力にはなれんかもしれんけど、ギター弾いてハッピーバースデーを歌うことくらいはできるか。
今夜も泊めてもらうことにして、今日もギターを持って街に向かった。
今日も快晴。
照りつける太陽に、なにもしてなくても汗が吹き出してくる。
熱い………
こんな直射日光の中で歌ってたら熱中症になりそうだ。
ジャクソンスクエアの前で準備をしていると、昨日の熊本の女の人がやってきた。
「これ作ってきたけん、よかったら食べりー。」
オニギリイイイイイ!!!!
そして九州弁が好きいいいい!!!!!
ここまでしてくださったのにお名前を忘れてしまった………
ごめんなさい!!
次会ったらラーメンおごります!!
ほんとにほんとにありがとうございました。
金曜日の街角はたくさんの人々で大にぎわい。
今日は忘れずに看板も持ってきた。
あまりの暑さにぶっ倒れそうになりながら歌い続けて、たくさんの人とお話しして、今日は76カナダドルのあがりになった。
よっしゃあ!!
片付けをしてるところにトーマスが子供たちを連れてやってきた。
なんだよ、めちゃくちゃ可愛いじゃねえかよ。
「ホラ、キリン、クルーズ、彼が日本人の友達のフミだよ。挨拶して。怖がらないでいいから。」
10歳と4歳の可愛いすぎる金髪の息子たち。
モジモジしてなかなかこっちを見てくれない。
そんな息子に優しく話しかけるトーマス。
家ではただの子供みたいなトーマスも、やっぱり父ちゃんなんだなぁ。
「じゃあ、先に家に帰ってるから。」
トーマスたちと別れて、俺は1人で歩いた。
ちょっと行かないといけない場所がある。
やってきたのはスーパーマーケット。
ケーキコーナーへ。
俺も金はない。
いやあるけど、アメリカ入国のために10セントでも節約しなければいけない状況。
日にちは差し迫っている。
でも、ここでトーマスにカッコつけさせてやらんかったら男じゃねえ。
トーマスは俺を助けてくれた。
そんなトーマスが悲しい思いをしているなら俺にできることをやらなければいけない。
このタイミングで出会ったんだ。
俺にできることがあったからだよな。
好みがあるだろうから、どれがいいか迷ったけど、フルーツ系なら大丈夫かなとマンゴークリームのケーキを買った。
「名前は書きますか?」
な、名前………
キリンって名前だけど、正しいスペルがわからねぇ………
これはトーマスからのケーキなんだから親父が息子の名前間違うなんてありえない。
ハッピーバースデーだけ書いてもらった。
ロウソクも買って全部で24カナダドル。
痛い………
けどトーマスと子供たちのためだ。
家に戻り、ドアを開けるとトーマスが子供たちとゲームをして遊んでいた。
晩ご飯はもう終わってるみたい。
キリンもクルーズも、最初はモジモジしていたけど、家の中でははしゃいで話しかけてくれる。
「ダディ、暑いよー。」
「ごめんな、窓をもう少し開けるから我慢してくれ。」
エアコンのないこの部屋はなかなか暑い。
いるだけで汗が出てくる。
昨日は母親側からプレゼントでiPadをもらったというキリン。
iPadすごいんだよ!!と嬉しそうにお父さんに話すキリンに悪気や皮肉なんてない。
でもトーマスはそれをとても悲しそうに聞いていた。
プレゼントを買ってやれないトーマス。
きついよな、トーマス。
「トーマス、ドアの外にケーキを置いてる。驚かしてやりな。」
「は?う、嘘だろ?買ってきたのかい?」
「俺が買ったって言うんじゃないよ。トーマスが用意したものだからね。」
トーマスは自然を装いながらドアの外に。
俺もドキドキしながらキリンたちに怪しまれないようにゲームの話をする。
「ねぇ、ダディはどこに行ったの?」
「ダディわぁ~?」
「あれ?トーマスどこに行ったんだろうね。」
そう言いながら、部屋の電気を消した。
そしてトーマスがケーキにロウソクを立てて入ってきた。
ロウソクの火が部屋を照らす。
「ウワァァオオオウウウ!!!!」
めちゃくちゃ驚いてるキリン。
アングリしてる4歳のクルーズ。
嬉しそうにトーマスは歌った。
ハッピーバースデー トゥーユー
ハッピーバースデー トゥーユー
誰もが最高に愛されないといけない1日。
誕生日おめでとう、キリン。