5月29日 水曜日
【スイス】 チューリッヒ
~ 【カナダ】 トロント
ビビりすぎてチンチン小さくなりすぎイイイイイイイイイウウウウウウウリリリリリリリリィィィィィィィィィ!!!!!!!!
久しぶりの国境越え(´Д` )
しかも結構入国審査の厳しいという噂のカナダ(´Д` )
アババババババ手汗が止まらない(´Д` )
怖えええ(´Д` )
だってさ、クレジットカードないからさ、宿の予約が出来ないんだよ。
滞在先はどこ?って100パーセント聞かれるやろ。
とりあえずホステルドットコムで安いところ3件くらい調べてるから、その中のどれかを入国カードに記入する!!
出国のチケットは持ってる?って2億パーセント聞かれるやろ。
これです、ってスイスへの往復のチケット見せたとして、ああ?てめーシェンゲン追い出されてる身でまたヨーロッパに帰れるわけねぇだろーがこの嘘つきチンカスがって言われるだろうから、大人しくアメリカに行きますと言う!!
グレイハウンドっていうバス会社が80ドルくらいでニューヨーク行きのバスを出してるみたいだから、その会社のホームページの画像もiPhoneに入れている。
滞在はどのくらい?
1週間です。
所持金はいくら持ってるの?
ユーロとフランとその他のお金をあわせてキャッシュで1500ドルです。
なんでカナダに来たの?
ナイアガラで滝行を。
早漏なの?
違います。
おおお、完璧。
昨日ヒゲを剃って髪を洗って清潔にしたので、なんとなく空港の人たちの対応が優しい気もする!!
スリッパからブーツに履き替えて、音楽大好きです、ジョニ・ミッチェル愛してますアピールもぬかりなし。
もはや俺に行けない国はない。
シェンゲン以外。
喫煙ルームがめちゃラグジュアリー。
余裕しゃくしゃくでチェックイン。
まずは同じシェンゲンのパリなので、ここでのパスポートチェックはなし。
10時40分。
ついに忌まわしきスイスから飛行機が飛びたった。
低い雨雲を突き抜け、さらに上空の厚い雲を抜けると、当たり前だけど青空が広がった。
そしてあっという間にまた雲に突入し、着陸。
50分のフライトでパリのシャルルドゴール空港にやってきた。
ここから乗り換えまでの時間が短い。
1時間しかない。
急がないといけないのに、ここシャルルドゴール空港はシャトルバスで10分近く走らないと次のターミナルに着かないという広大さ。
急いでシャトルバスに乗り、小走りで搭乗ゲートにやってくると、立ちはだかる人垣。
来た。
出国カスタム。
ついにシェンゲンから脱出する。
若干のドキドキはある。
でも出るぶんには問題ないだろう。
予想通り、カスタムの兄ちゃんは挨拶もしないで、やってくるパスポートに機械的にスタンプを捺すだけだった。
オラぁ!!シェンゲン!!
もうしばらく来ねえからな!!
チンカスが!!
飛行機に乗り込む。
今まで乗った飛行機って、どうしても乗らないといけないから乗ってただけの、小さな移動用のものだったので、1列4シートしかないやつばっかりだったんだけど、今回のビッグフライトの飛行機はさすがに違う。
1列が10シート。
人ひしめきすぎ。
そして、ビビることに!!
婆さんから小さな子供まで、みんな英語喋ってる!!!
信じられねえ!!!
飛行機の中、英語まみれ!!
今まで、地元の人が会話してるのって一切理解できなかったんたけど、何話してるかわかる!!
オラぁ!!
今までこっちがわからんと思ってヒソヒソ俺のこと見ながら笑やがって!!
ストューピッドとかわかるんだからな!!!
そして、飛行機のサービス内容がすごすぎる。
いきなりカードを渡されて、なんだろう?と見てみると、それはメニュー表。
機内での食事を選べるのだ!!!
すげえ!!!
さらにコーラなどのソフトドリンク飲み放題はもちろん、コーヒーもビールもワインも飲み放題。
なので気合いでビール飲みまくる。
でも、カスタムで怒られそうだからほどほどにしておく。
映画は見放題だわ、デザートとかまで来るわで、もう俺ただの放浪者なんですけど。
そんな世界を股にかけるビジネスマンとかじゃないんですけど。
そんな贅沢すぎるフライトの時間は2時間。
え?たったの2時間?
だってチケットに、14時パリ出発の16時カナダ着と書いてある。
あ、時差ですよね。
時計をカナダに合わせた。
そしたら時間が朝になった。
えええ?!!
今日、朝から動いてスイスからパリに飛んで、昼過ぎから飛行機に乗ったのに、また朝から今日をやり直すの!?
つまりフライト時間は8時間。
俺にとって5月29日は30時間という、人生で多分1番長い1日。
地球の自転を追いかけてるってことだよな。
これで日本との時差はマイナス13時間になった。
8時間でも映画見まくってればあっという間に時間は経つ。
アメリカの西海岸を舞台にしたギャング映画や、大学生たちの青春ムービーを観ていると、あー、俺今からこの場所に行くんだよな、と不思議な感覚になる。
そうだよ、アメリカ大陸に行くんだ。
子供の頃から慣れしたんでいるアメリカ文化。
本物のアメリカ。
あまりにもたくさんのイメージが先行して、ドキドキと不安で胸が苦しくなる。
まずは、その前に越えなければいけない大きすぎる壁がある。
飛行機が地面に着地した。
海を越えたぞ。
いざ、入国カスタムへ。
空港内の通路を歩きながらドキドキが止まらない。
もし入国拒否をくらったらヨーロッパに送り返される。
しかしそこはすでに俺が滞在できる場所ではない。
なんとしてもクリアーしなければ。
カスタムが見えた。
列に並ぶ。
胸が張り裂けそうだ。
飛行機の中で配られた入国シートは完璧に記入した。
ホテルの住所も携帯に入っている。
ぬかりはない。多分。
しっかり、ハキハキと、明確に答えなけばいけないぞ。
「次の人ー。」
「はいー、ハロー。」
「パスポートプリーズ。どうしてカナダに来たの?」
「か、か、か、か、か、か、か、か、か、、か、皮かむり、じゃなくてカンコウ、じゃなくてサイトシーイングです。ニコリ。」
「どこに観光に行くの?」
「えーっと、那智の、いや、華厳の、あいや、袋田の、いや、尾鈴の、いや、ナイアガラの滝です。」
「何日滞在するの?」
「1週間です!!」
「このチケットはいつ買ったの?」
「なっ!!そ、そこ?!…………ひっ…………3日前です。」
「どうしてもっと前に予約しなかったの?」
「ひょ………ほへ…………シェンゲンを強制退去になりまして………」
「ふーん。」
この間、俺の31年間の全てをつぎ込んだ、観光楽しみ!!スマイルと、若干の不安とを絶妙にミックスさせた無垢な仔犬の表情を作りながら受け答えします。
そして、とてもスムーズな流れで別室送りです。
いやあああああああ!!!(´Д` )
やめてえええええええあええ!!!!!
別室にて、また同じような質問を受けます。
「えーっと、今までの旅の流れを教えて。」
「日本からロシアに渡って、ヨーロッパに抜けて、中東からアフリカに行き、ヨーロッパに戻って、今カナダです。」
「職業はなに?」
「シンガーです。」
「へー、そうなんだ。カナダでも歌うの?」
「ききき、機会があればやりたいと思います。」
「お金はいくら持ってる?」
「1500ドルです。」
「そうか。………よし、じゃあ旅を楽しんで。」
スタンプ、バスン。
え?いいの?
全裸とかならなくていいの?
うっひょおおおおおおお!!!!!!!!
カナダ入りいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!
空港の外に出て、勝利の一服。
やったぞ、俺。
ていうか宿泊先とか帰りどうするのか?とかまったく聞かれなかった。
へっ!!!
俺にかかれば楽勝だぜ!!
あああ、怖えかったああ…………
さぁ、カナダ。
ついに3つ目の大陸、北アメリカ大陸。
気合い入れ直そう。
バッグからタオルを取り出す。
久恵ちゃんが送ってくれた、缶詰をくるんでいたタオル。
そしてこのスタイル。
気合い入るぜ。
まずはトロントの街に向かおう。
空港内でとりあえず50ユーロだけ換金。
55カナダドルをゲット。
レートがいくらかわからん。
この国の物価もわからん。
でもまぁ、空港から街までなら5ドルくらいで行けるだろうと、街行きのバスを探すと、
27カナダドル。
嘘だろ?
そんなするの?
いや、無理だよそんなの。
歩くよ。
そして無謀にも空港から街へ歩く。
フランスでは息が白くなるくらいに寒かったのに、カナダに着いた瞬間、全裸になりたいくらいの暑さ。
照りつける太陽に汗が吹き出し、湿度も高くて身体中がベトベトする。
そんな中、どっちが街かもわからないまま、勘で歩いた。
広大な敷地の空港。
どこまで歩いても空港の中から抜け出せない。
そして歩くやつなんていないので、歩道がなく、車がビュンビュン真横を走り去って行く。
フェンスを越え、ブロックを越え、分離帯の芝生を突っ切る。
こんなとこ歩いたらダメだよな…………
しばらくすると、歩いてた道が高速道路っぽくなった。
ていうか高速道路。
やべえ、こんなとこ歩いたらいけない。
なんとか一般車線に出たいのだが、空港の周りの郊外には高速道路ばかりしか通っておらず、しかも大きなフェンスで外に出られない。
車がビュンビュン駆け抜ける中、隅っこを歩いて行く。
するとこんな看板が。
うっひょおおおおお!!カナダ来たんだよなぁああああ!!!!
一気に旅が進み、嬉しくて嬉しくて、歩きながら大声を上げる。
すると次にこんな看板が。
「トロント 28km」
…………無理。
歩けねえ。
えええ、そんな遠いのかよ(´Д` )
どうしよう。
それでも新しい土地に来たことが嬉しくて、歩き続けた。
「ヘーイ!!何してるんだこんなとこで!!」
声に呼び止められて振り返ると、1台の車が路肩に寄せている。
中から巨大な体の黒人が降りて来た。
うお、いきなり襲われるアレですか。
「どこに行くんだ?こんなとこ歩いたらダメだよ。行くとこの住所はわかってるのか?」
「別にどこに行ってもいいんです。」
「うーん、でもここは歩いてたら危ないからなぁ………トロントの街まで乗せてってやるから車に乗りな。」
やったー!!!
と、そこにもう1台の車がやってきた。
パトカーだ。
やべえ。新しい国に着いて2時間で警察沙汰とかヤバすぎる。
すると黒人の兄さんが警察に事情を説明してくれ、あなたが乗せてってくれるなら見逃すよ、とパトカーは走って行った。
「よし、行こうか。」
彼の名前はクリントン。
家族みんなでケニアから来ており、もう20年以上カナダに住んでいる。
色んな話をして盛り上がり、すぐにトロントの街に着いた。
うおおおおおお…………
ゲロ都会………
都会すぎるぜトロント。
竹原ピストル風に言うと、まさに下手くそがやったテトリスみたいに高層ビルがグジャー!!っと乱立している。
歴史あるヨーロッパでは見なかったこの近代っぷり。
これが北アメリカだ。
街中も、もうぐっちゃぐっちゃのごっちゃごちゃ。
新しい街らしく、道が全て碁盤目になっており、ガラス張りのオシャレな建物ばかり。
ヨーロッパ的な古い建物なんてひとつもない。
「ここがチャイナタウンで、そこが大学。あのタワーがトロントのシンボルだよ。」
走りながら街の説明をしてくれるクリントン。
本当にいい奴。
新しい大陸だし、初日くらいは宿にしけこみたい。
調べてた情報だと、20カナダドルくらいで泊まれるホステルがある。
クリントンに地図を見せ、そこに向かってもらった。
たどり着いた韓国人系のホステル、ナイトインってとこで値段を聞いてみた。
「あの、予約してないんですけど………」
「あああん!!?」
「ちょ………えーっと、1番安い部屋の値段はいくらですか?」
「マスターカード持ってんのか?」
「持ってないです。」
「じゃあダメ。」
究極に態度の悪い韓国人の姉ちゃん。
そう言い放つとさっさと奥に消えた。
クサレアバズレが。
誰が泊まるかこんなとこ。
「へー、カードがないとダメっておかしなとこだね。」
嫌な顔ひとつせず次のホステルに走ってくれるクリントン。
しかしどのホステルも50カナダドルと、高くてとても泊まれる値段じゃない。
そんな間、クリントンはケータイで友達や他のホステルに電話して、俺の泊まれる場所を探してくれている。
「なかなか安くは見つからないね。」
「時間大丈夫?ごめん、こんなに付き合わせて。」
「気にしなくていいよ。ちゃんと宿見つけようぜ。」
優しすぎるクリントンと一緒にその後も探し回ったが、32カナダドルの宿が1番安い場所だった。
それでも高い………
「クリントン、俺今夜は野宿するよ。大丈夫、いつもやってるから。」
「そうか………でも待ちなよ。32カナダドルだよ?悪い金額じゃない。ここでゆっくりして、Wi-Fiにつないで、これからの予定を立てたらどうだい?カナダ初日だろ?」
一生懸命探してくれたクリントンには申し訳ない。
でも着いて初日でまだ物価もよくわかってないのに32カナダドルは高い。
だいたい3000円くらいだろう。
「ごめん、本当に節約したいんだ。ありがとう。」
「そうか。別に俺は構わないさ。でもここはヨーロッパじゃないから警察も厳しいよ。野宿はきっと怒られる。」
「俺もそう思うけど、トライしてみるよ。」
「………うん。他に行きたいとこあるかい?それからどこかの公園に連れてってあげるよ。」
わがままを行って酒屋さんに向かってもらった。
今夜はカナダ初日。
祝杯のビールを買った。2カナダドル。
車に戻り、地図を見せてここの公園に行きたいとクリントンに言う。
何も言わずにハンドルを切ってくれるクリントン。
初日から、本当にいい奴に会えたな。
すると車が止まったのは、さっきの安いホステルの前だった。
「フミ、今夜はここに泊まるんだ。行こう。」
強引に受け付けへ。
そしてクリントンが32カナダドルを払った。
「ちょ!!ちょっと待ってクリントン!!ダメだよ!!」
「フミ、今日がカナダ初日だろ?ウェルカムトゥカナダ。」
そう言って、友達と約束があるからそろそろ行くよと彼は車に乗り込んで帰って行った。
ドミトリーの中に入った。
体ベトベトのままベッドに倒れた。
ビールを一気にあおる。
汗をかきまくった体に染み渡っていく。
えーっと、今日は………
スイスからフランスに飛んで、フランスから大西洋を越えてカナダに到着して、高速道路を歩いていたらクリントンに拾ってもらって、安宿探し回って結局おごってもらって……………
ゆうべも空港でほとんど寝ず、さらに今日を30時間すごした身体は極限に疲れており、ビールを半分くらい残したまま眠りに落ちた。
ウェルカムトゥカナダ。
北アメリカ編、開始。