5月11日 土曜日
【オランダ】 エイントホーフェン ~ ロッテルダム ~ デルフト
バフッ!!!
テントに衝撃がはねた。
ビックリして寝袋から飛び上がる。
なんだなんだ!!
しかしその衝撃だけで、またテントは静まった。
石投げられたな。
大きい石じゃなかったのでテントが崩れることはなかった。
人が寝ているであろうテントに遠くから石を投げる神経ってどんなんだろう。
眠かったけど、時間も8時。
いい目覚ましになった。
テントを出ると、そこは広い芝生の空き地。
石を投げたであろう人影はどこにもなかった。
テントをたたんで歩き出した。
その足で駅に向かい、次の町、オランダ第2の都市、ロッテルダム行きの電車に乗り込んだ。
17ユーロ。
電車の中で朝・昼飯。
わずか1時間で電車は止まった。
ロッテルダムの駅を出ると、大きなビルディングが立ち並ぶ大都会だった。
新しい街並み。
干拓地であることがうかがえる街並みには、無数の水路が張り巡らされており、建物のすぐ裏手には船が浮かぶ運河が流れていたりする。
なんか変なサンタがいた。
大きくて近代的な橋がのびる人口的な川には、巨大な橋がかかっており、対岸にはデザイン性豊かな高層ビルがそそり立っている。
綺麗に整備されたハーバーを歩いていると、歩道に遮断機が降りていた。
歩道に遮断機?
なんだ?と思っていたら、突然それまでなんの変哲もなかった車道が上に跳ね上がりはじめた。
どんどん角度を上げ、ついに車道は地面と90°にまで上がった。
そしてその下に流れていた細い運河を船が通り過ぎた。
船が通り過ぎると、道路はまたゆっくりと角度を下げ、道路と一体化すると遮断機が上がり、人々や車が往来をはじめる。
さすがは干拓の国、オランダ。
車と船の交差点ってわけだ。
綺麗に整備された遊歩道を歩き、船着き場までやってきた。
ここから出る船が向かうのは………
そう、オランダといえば!!
誰もが思い浮かべるのが、風車。
古めかしい木造の風車が並ぶキンデルダイクの風車群といえば、オランダ随一の観光地だ。
ロッテルダムからキンデルダイクへは車でも行けるそうなのだが、ここ市街地のハーバーから水上バスでも行くことができる。
観光船なんて、この旅始まって以来の贅沢な交通手段だな。
切符売り場で、お金持ってそうなセレブ白人と、英語ペラペラの教養のありそうな中国人たちに混じってチケットを買い、船に乗りこんだ。
14ユーロ。
晴れやかな天気の下、ロッテルダムの街の中を流れる川を進む観光船。
甲板のテラスではみなコーヒーやビールを飲みながら優雅な時間をたのしんでいる。
どでかいキャリーバッグとギターとリュックを持ってるようなバッグパッカーなんてまずいない。
風車群まではなかなか遠く、1時間ちょい経ってようやく町外れの桟橋に着岸。
どれどれー、かの有名なオランダ、キンデルダイクの風車群ってのはどんなもんですかなー…………
ほう、
なかなかいいですね。
水草が生い茂る湿地帯、どんよりとした天気の下。
いくつもの風車がポツポツと散らばっていた。
どこか夢の中の景色のような、現実味のない景観。
風が強く、ブワンブンン!!と風車が勢いよく回っている。
小さな子供を連れたカモの親子が歩道をテクテク歩いては、水に飛び込む。
幻想的なおとぎ話の景観。
干拓地であるオランダの国土は4分の1が海面よりも低い位置にある。
はるか中世から、治水、排水がオランダの重要課題。
その排水のための施設として、1700年代に作られたのがこのキンデルダイクの風車群というわけだ。
自然に人間の力で対抗しようとしたシンボルなんだな。
しかし、そんな歴史と景観に浸ろうとしてる気分を根こそぎ持っていかれるほどの観光客の多さです。
いいとこですよ。
でも冬がオススメかな。
冬は風車を止めるらしいので、観光客少ないはずです。
このキンデルダイクは人のいない寂しげな光景こそが素晴らしいと思います。
ちなみに内部の見学もできるみたいだったけど、6ユーロなのでパス。
風車の中とか日本で腐る程見てる。
雨が降ってきて、急いで船に戻った。
帰りも優雅なクルージング。
船じゃなくて路線バスでも行けるみたいです。
往復7ユーロくらいで。
ま、たまにはこんな船旅もよしとするか。
18時すぎにロッテルダムの街に戻ってきた。
さて一発歌ってみようかなと街を歩くが、
おいおい、お店が全部閉まってるじゃねえか。
人も全然歩いてない。
ロッテルダムはかなりの都会。
ショッピングエリアの開発具合といったら、まぁ今ここが地上なのか、地下なのか、よくわからなくなるくらいに通路が立体的に入り組んでいて、お店がオシャレに並んでいる。
でも人全然いない。
なんだろ?今日って祝日かなんかなのかな?
もったいないけど、まぁロッテルダムは風車だけで充分満足。
さっさと次に進もう。
ロッテルダムからはこのまま首都のアムステルダムに行ってしまってもいいんだけど、その前にちょいと寄らなければいけないとこがある。
ここから少し西に向かったところにある海沿いの街、デンハーグだ。
実はここで、第2段の折り紙受け取りの約束をしている。
このブログによくコメントをくださるモフモフさん。
デンハーグ在住の女性、女性?だよな、確か。
コメントに、近くに来たら持って行きますからー、と言って下さっていたんだけど、もうお住まいの街まで行ってしまおう。
デンハーグまでのチケットは5ユーロ。
どんな女性かなーと思いつつ電車に揺られること10分くらいか。
途中で停車した駅の名前が目に入った。
デルフト、って駅だ。
あ、あれ?
デンハーグじゃなくてデルフトだったっけか?
あれ?デンハーグだったか?!
や、やべ、わかんね。
なんかデルフトって見覚えのある名前だよな。
あ、ど、どうしよ!!
もういいや!!
賭けでデルフトに降りてみた。
まぁ間違ってても5ユーロくらいならなんとかなる。
小さな町だな。デルフト。
別に観光するつもりはない。
折り紙をいただいたら、すぐにアムステルダムに向かう。
とにかくネットに繋いで確認しようと、町の中心部にあるカフェでコーヒー飲みながらWi-Fiゲット。
ブログのコメントを探して行くと…………
ほーらね、やっぱりデルフトだった。
よかったー、スルーしなくて(´Д` )
明日、お時間あればお会いしましょうとメッセージを送り、寝床を探しにカフェを出た。
折り紙のためにふらりとやってきただけのデルフト。
しかし、こいつはただ事じゃないぞ。
なんだこの町、めちゃくちゃ風情ある古い町やんか。
町の中をアミダのように用水路が張り巡らされており、無数の小さな橋があちこちに架かっている。
水面から直接立ち上がっている建物、カフェのテラスも水路に面しており、まさに水の町。
ここもまた干拓地の上なんだろうな。
そして、そんな迷路のような水路沿いに歩いて行くと、町の真ん中にある大きな広場に出た。
きたー、これ、なんだー。
半端じゃねぇ。
ここもまた半端じゃねぇ。
一面石畳の広場にそびえ立つ巨大な教会の塔。
反対側には美術館のような荘厳な建物。
中世からそのまんまみたいな、色あせたこの広場。
あーもう、ふらっとやって来た小さな町でこれだもん。
今まで飛ばしてきた道の途中にも、どれだけの素晴らしい街並みがあったことか。
やっぱヨーロッパはすげえぜ。
降り出した雨。
濡れながら急いで寝床を探し、この夜は、町から少し歩いたところにある森の中の池のほとりにテントを張った。
干拓の国、オランダ。
森の地面は湿り気が多く、歩く足がズブリと沈む。
テントが張りづらい。
寝袋に体を突っ込んでギターを弾く。
ポチョリと、池で魚が跳ねる音がする。
いい町にたどり着けると、まるで宝物を見つけたような気分だ。
明日はこの町を探検するぞ。
ギターを閉まって、寝袋にもぐった。