3月26日 火曜日
【モロッコ】 シャウエン ~ タンジェ
~ 【スペイン】 タリファ
ベッドの中で朝ごはん何にしようかなーと考え、せっかく宿に泊まってるんだから何か作ろうかなと思い、食材を買いに出かけた。
メディナを抜けて新市街の方へ。
車が行き交う路面に露店が立ち、どこででも何でも手に入れることができる。
見慣れない野菜も売っているので、ジェスチャーを駆使してどうやって食べるのか売っているおばちゃんにたずねる。
は?何言ってるんだい?買うのかい?買わないのかい?
そんな感じで困惑するおばちゃんと必死のコミュニケーション。
こういうストレスのたまるやり取りにもだいぶ慣れてきた。
さらに楽しめるようになれたら完璧なんだけどね。
ナスとインゲンが2ディルハムだったかな?
卵がひとつ1ディルハム。
パンが1.5ディルハム。
ファンタの1リットルが7.5ディルハム。
さも当たり前のような顔で倍の値段を言ってきて、そうですかさようなら、と言うと半額になる。
これも楽しめたら………いや楽しくねぇ。
「あ、フミさん、おはようございます。」
買い物を終えて宿に戻っていると、ゆうべのベドウィン、コータ君とばったり。
一緒に食べようかと誘い、彼の分の卵も買って宿に戻り、お喋りしながら料理。
と言っても炒めるだけだけどね。
目玉焼きと付け合わせの炒め野菜。
それにパン。
2人でいただきますして頬張る。
食事を終え、屋上に上がるとテラスがあった。
椅子に座ってのんびりとタバコをふかす。
さんさんと照りつける太陽が緩やかな高地を輝かせる。
洗濯物が風に揺れて遠い日々を思い起こさせる。
ああ、なんて美しいところなんだ、シャウエン。
まるで童話の中に入り込んだようだ。
心が解き放たれる。
「ラクダひきのおじさんが僕に言ってた言葉なんですけど、ライフイズチョイスって言葉。人生は選択なんだよって。どんな道を選択したっていいんだよって。そのおじさん、生まれてからずっとラクダをひいてて、砂漠の村から出たこともないんですよ。そんな、僕らからしたら選択してこなかったおじさんがライフイズチョイスって言ったんです。なんかそれが深くて考えさせられましたよ。」
地元の人々と密なコミュニケーションを取りながら旅をしているコータ君。
その土地の人々の生活を深く深く感じられるだろう。
俺たち選択肢を持ちすぎた日本人からしたら、なんにも選択してこなかったであろうラクダひきの人生。
しかし彼には彼の大きな岐路がいくつもあったはず。
哲学的だな。
俺たちもいつだって選択の連続だ。
2択なんかじゃない。もっともっとたくさんに枝分かれした選択。
それぞれの枝の先にそれぞれに違う道がのびている。
俺たちは選ぶことができる。
失敗しても、よほど大きい間違いでなければ死ぬことはない。
やり直すこともできる。
選択には勇気がいる。
今までそうしてきたように、流されるのではなく、勇気を持って自分の道を決めていきたい。
コータ君、いい言葉をありがとう。
荷物をまとめて宿を出た。
コータ君が見送りについてきてくれる。
今日、これからバスに乗りジブラルタル海峡の町に向かい、そこから船に乗りたい。
船代は25ユーロという話。
ほんとはその港町で稼いでやりたいところだけど、もう海峡の向こうはヨーロッパ。
渡ってしまってガンガン稼げばいい。
換金屋さんでノルウェークローネを5000円分換金した。
バス停に到着。
バスの値段は35ディルハム。しかし荷物代といって10ディルハムとられる。
フェズでは5ディルハムしか払わなかったよ、と抗議するが知らんぷり。
全員から10ディルハム集めてたらいい仕事になるな。
隣のファンキーなおじさんが、お前は家族3人だから30ディルハム払えと言われてる。
しかしおじさん、キレながら10ディルハムだけ突き出してバスに乗り込んだ。
やるなー、これ日本人にはできねーよ。
コータ君とハグしてバスに乗った。
走り出したバスはクネクネとした高地の中を走っていく。
雄大な岩山の中腹にへばりついた青い町。
ああ、おとぎの町シャウエン。
また必ず来よう。必ず。
さっきキレていたファンキーなおじちゃん。
なんと彼ら家族はスペインから来ているところで、偶然にもこれから俺と同じルートでスペインに帰るところだった。
フェリーターミナルまでのバスを探したりチケットを買ったり、いろいろ面倒そうだと思ってたんだけど、俺たちに着いてくれば大丈夫だよ!!と言ってくれた。
バスは夕方に港町のタンジェに到着。
バスを降りると、走って群がってくるタクシーの客引き。
荷物をとろうにもムスリムのおばちゃんたちの強引すぎるタックルで荷物に近づけない。
嵐のようなクラクション、おばちゃんたちの譲り合いの心ゼロのタックル、客引きたちの叫び声、腕を引っ張る荷物運びの兄ちゃん。
あああああああああああ!!!!!!!
うっとおしいいいいいあああああああ!!!!!
「何やってんだ!!ホラ!!こっち来い!!」
ファンキーおじちゃんに助けてもらい、走っていくと、すでに彼は軽バンのタクシーをつかまえており、そこに俺の荷物も放り込む。
「いやっほおおおおおおおい!!!!!どけどけオラ!!どけええええええ!!!!!うひょひょーーーーー!!!!!」
異様に興奮してる運ちゃん。
急ブレーキと急発進で人形のように揉みくちゃになる車内。
軽バンは人を押しのけながら車道に飛び出し、いつぶっ飛んでもいいような運転でクラクションを鳴らしまくりながらアクセル全開と急ブレーキを繰り返す。
もうママも娘も俺も大笑い。
なんだこれ!!
その俺たちの笑いが運ちゃんのハンドルさばきをさらに荒くさせる。
「うっひょおおおおおおおお!!!!!!タジンタジンーーー!!!!!!」
フェリーターミナルまでのわずか10分くらいのドライブで、日本人が一生のうちに鳴らすクラクションの回数を軽くクリアーする運ちゃん。
まぁそれでもエジプト人よりははるかに少ないけどね。
エジプト人はこれの5倍は鳴らす。
アホ過ぎ。
クラッシュしてタジン鍋の具になるのをまぬがれ、なんとかフェリーターミナルに到着。
「アミーゴ!!チケットはここ!!向こうでパスポートにスタンプを捺してもらって、向こうでうんたらかんたら!!!!」
「アミーーーゴ!!!荷物をほら!!ここに乗せて!!ほら!!早く!!フェリーが出てしまうから!!!」
「アミーーーゴオオオアオ!!!!」
うっとおしい道案内のオッサンと台車をひいた荷物運びが突進してくる。
ファンキーおじちゃんが教えてくれたチケット売り場に歩いてるときも、ほら!!こっち!!こっちだよアミーゴ!!段差に気をつけて!!とずっと肩を触りながら横をついてくる。
チケットを買ってる時も、売り場の人が綺麗な英語で説明してくれてる真横で、あそこがアレで時間はアレで!!と下手くそな英語をまくしたてている。
あああああああああああうぜえええええ!!!!!!
チケット買ってからも、ひたすら喋りながら着いてくる。
こうして親切に案内して後からチップを要求してくるとか、もう慣れちまえばバカのひとつ覚えで笑えてくるわ。
ひたすら無視してると、ようやく諦めて離脱。
モロッコは最後の最後までモロッコだ。
船はこのタンジェからスペイン側のタリファに向かう。
航海時間は1時間。
チケットの値段は300ディルハム。
タリファから近くの大きな町、アルヘシラスまでのバスの値段も含めてこの値段だ。
モロッコディルハムがちょっと余ってしまったからターミナルの中にあるデューティーフリーショップでタバコを買った。
1カートン、170ディルハム。
1箱、1.5ユーロ
スペイン本土では4ユーロするそう。
モロッコ側のイミグレーションへ。
質問もされることなくサッと通過。
あー、これでアフリカともバイバイか。
まぁアフリカっつってもエジプトとモロッコしか行ってないけどね。
サファリとか少数部族とか、アフリカらしいアフリカを体験することはなかったが、それでも途上地域の貧しさや危なさ、たくましさ、豊かな自然と遺跡を見て、地球の奥深さを垣間見ることは出来た。
ていうか途上地域、なんていうくくりなんて所詮先進国が押し付けている価値観でしかないな。俺らに比べたらお前らは貧しい、っていう。
彼らには彼らの懸命な生き方があり、文明に左右されない自由さがある。
貧しさを見て貧しいなと思ってなにがある。
ワクチンをあげよう?
鉛筆やノートを送ろう?
学校を作ってあげよう?
俺は詳しくはわからないけど、そんな支援が彼らに必要なのかなと思った。
グローバルな視点から見れば、地球の人類すべてで助け合わないといけないという意識はわかるが、彼らは彼らで勝手に強く生きている。
貧困や死を、仕方ないことやん、とはもちろん言わないが、可哀想!!って彼らの生活を変えることが国際協力なのかな。
まぁ資本主義の名のもとに彼らを振り回してグチャグチャにしているのも先進国なんだろうけど。
日本も津波の時に世界中から助けてもらったしね。
もっとこういった意識を広げて、真実を見つめられるような目を養っていきたいな。
そんなことを教えてくれたアフリカだった。
最初は意味不明さに戸惑ったイスラムのトイレだけど、今はもうめちゃ綺麗に使えるからね!!
ピラミッドはやっぱりすごかったし!!!
ほあああああああああ!!!!!
ピラミッドの写真んんんんんんんんああああああいいい!!!!!
バイバイ、モロッコ。
バイバイ、アフリカ。
バイバイ、アラビア。
バイバイ、イスラム。
ショコラン。
最後に一言だけ。
嘘つくなコノヤロウ!!!
なにがアッラーだ!!!
なにがパラダイスだ!!!
あー、すっきりした。
夜のジブラルタル海峡を進む船。
ついにヨーロッパに戻る。
平気な顔してるけど、
心の中は荒波で大変なことになっている。
心臓バクバクで破裂しそうだ。
1人バッグの中を探って、ある書類を取り出す。
スロバキア語で書かれたこの書類。
そう、ピンときた方もいらっしゃるでしょう。
ずっと前からこのブログを読んでくださってる方はご存知でしょうが、僕は前回の東欧巡りでオーバーステイをやっています。
ヨーロッパにはヨーロッパ連合EUの他にシェンゲン協定ってやつがあります。
加盟国間をパスポートなしで行き来することができるという、ナイスな協定です。
しかし難点なのが、その滞在期間。
このシェンゲン協定加盟国内は6ヶ月のうちに3ヶ月しか滞在できません。90日やったかな?
ヨーロッパのほぼすべての国がシェンゲンに加盟しているので、これらの面白すぎる国々をたったの90日で回らないといけない。
無理です。
そしてそのシステムをまったく知らなかった僕は110日目くらいにスロバキアでとっ捕まって処罰を与えられたわけです。
このお巡りさんがいい人だったのと、僕が日本人だったおかげで、罰金、強制退去、3ヶ月間のシェンゲン入国禁止というゆるいペナルティで済みました。
スロバキアには3年入れませんが(´Д` )
そんで今!!!
晴れて3ヶ月の退去期間が過ぎ、堂々とヨーロッパに戻れることになった!!!!!
のだが…………
気になるのがブルガリアの国境で言われた言葉。
「何を勘違いしてるか知らんが、お前は3年シェンゲンに入ることはできない。スロバキアの警察は何も知らないんだ。」
書類はちゃんとある。
日本語の通訳も来てくれ、何度も何度も3ヶ月後になれば入れるということを確認した。罰金も払った。問題ないはず。
しかしあの言葉がずっと引っかかっている。
入国許可も拒否も、係官の一存で決められる。
運悪く頭の固い人に当たってしまったら、弾き出されるかもしれない。
もし入れなかったら…………
スペイン、フランス、イタリア、ギリシャ、スイス、ベルギー、オランダ、という超有名な国々に行けない世界一周になってしまう。
それだけは避けないといけない。
この日のために大事にしまっておいた書類と罰金の証明書をポケットに突っ込む。
フェリーが着岸。
心臓が高鳴る。
勝負だ。
フェリーを降りて人の流れに乗ってカスタムの中へ。
イミグレーションの前に並ぶ人々。
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ(´Д` )
緊張が尋常じゃない(´Д` )
「あれぇ?君以前オーバーステイやらかしてるね?なめてるの?早漏なの?こっち来て。」
別室に連れていかれてスペイン語でなめてるのかを問い詰められ、書類を見せるがスロバキア語なのでわけわかんねーと破り捨てられバルログのバルセロナアタックを食らわされるイメージが頭の中をグルグルグルグルグルグルグルグル…………(´Д` )
怖え(´Д` )!!
バルログ怖え!!
ガシャン!!
前の人のパスポートにスタンプが捺された。
ついに俺の番。
足を進め、必死のフレンドリー笑顔でパスポートを差し出す。
この時のために今朝キチンとヒゲを剃ってきている。
カタカタとパスポートナンバーをパソコンに打ち込む係官!!
心臓が張り裂ける!!!
ガシャン!!
スタンプが捺される。
はい、2秒。
2秒でスペイン入国。
質問もなし。
荷物チェックもなし。
おべべべべべべべべばばばばばばばばばばばばばばばは(´Д` )(´Д` )(´Д` )(´Д` )(´Д` )
ヨーロッパアアアアアアハハハアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!
ターミナルを出る。
静かな駐車場。
だ、だ、誰もダッシュして来ない!!!
タクシィィィィイ!!!
ホテルウウウウウリリリイイイ!!!
ジャポンジャポン!!!
って群がってこない!!!
なにこの落ち着いた雰囲気?
なにこの綺麗な道路?
なにこのスペインみたいな感じいいいいいいいいいい!!!!!!!
お世話になったファンキーおじちゃん家族とハグをして別れ、1人バスを探す。
手の中にはここから近くにある大きな港町、アルヘシラス行きのバスチケット。
このバスチケットもフェリー代に含まれていた。
しかし、小雨の舞う駐車場を探し回るが、どこにもバスの姿はない。
人に聞いても誰も知らない。
ひと気のない夜中の港。
ポツンと1人ぼっち。
んー…………
まぁいいや!!
どうにでもなるさ!!
なんたってここはヨーロッパ!!
ポケットの中には小銭が5ユーロくらい。
十分だ。
ああああああ!!!!!!
ヨーロッパーーー!!!!!
いくぞコノヤローーー!!!!