2月3日 日曜日
【ヨルダン】 アンマーン ~ ジェラシュ
世界一周ブログ、というランキングに参加しているんですが、他のランカーさんのブログの中でも好きなのが、もうずっと眠いさんとナースサーファーさんと渡り鳥たまに飛ぶさんとインマイライフさんです。
僕がこのランキングに参加したころから常に上位をキープしているもうずっと眠いさんのブログは毎回楽しみにしているんだけど、数日前に僕のこと書いてくれてました。
彼、もうすぐ帰るみたいですね。
いつもランキング1位になりたいって書いているのにいつも3位くらいなんですよね。
かわいい。
あと数日しかないみたいだけど、楽しませてもらいます。
さて、3泊したこの宿からも今日でおさらば。
9時にレセプションに降りると、談話室には誰もいなかった。
他の日本人たちはみんな朝早くからタクシーをチャーターしてみんなで死海に出かけいる。
3泊分の料金12ジュディー、12.5ユーロを払い、さぁ今日は違う町に移動だ。
宿の兄ちゃんに聞いた話では、今日の目的地であるジェラシュまでの行き方は、
ダウンタウンから北ステーションまでが0.4ジュディー。50円。
北ステーションからジェラシュまでが0.8ジュディー。100円くらい。
安い!!!
さて、教えてもらったバス停へ。
バス停といっても、標識が立ってるような場所ではなく、ただの道端。
こんなゴミだめの街のグチャグチャした通りでここがバス停だなんて地元の人しか絶対わからねえ。
そんな場所でバスを待つ。
タクシーの運ちゃんがクラション鳴らしまくってくる。
どこに行くんだ!!エアポート!?ペトラ!?キングフセインブリッジ!?デッドシー!?ジェラシュ!?
みんなこれのどこかに行くんだろうね。
マジで鬱陶しい。
無視しながら待ち続け、やってくるバスに手あたり次第、尋ねまくる。
北ステーションに行きますか!?
しかし、どのバスも行かないという。
そして北ステーション行きのバスはないよ、と言う。
タクシーの運ちゃんたちはひたすら群がってくる。
北ステーションなら3ジュディーだよ!!
諦めて歩き始めた。
ひたすら歩く。
道もわからないがとにかく北へ。
暑い日差しに上着を脱ぎ、汗をかきながら歩く。
タクシーがクラションを鳴らしまくりながら突進してくる。
あまりにもムカつくのでクラションを鳴らしてきたら、わざと、あー!!止まってー!!という顔をして、前につけたタクシーの横を、何止まってるの?バカじゃないの?みたいな顔して素通りしてやる。
すると怒りながら走り去って行く。
しつこい奴は横をトロトロ進みながら話しかけてくるので、思いっきり日本語で返してやる。
「ヘイ!!!どこ行くんだ!!エアポート!?ペトラ!?キングフセインブリッジ!?デッドシー!?」
「僕英語わからないんです。お金もないんです。どうすればいいですか?」
「あ?!何言ってんだ?!英語喋れないのか?!チャイナ!?」
「何言ってんだ?ウゼーんだよ。ねぇ、どうすればいいですか?お金がないんです。」
「なんだこいつ!!くそ!!」
「ねぇ!!僕どうすればいいですか!!ねぇ!!待ってよ!!ねぇ!!」
そんな風におちょくりながら歩き続ける。
歩いていると、俺を見た瞬間ガンガンおちょくってくるバカたちがいるので、そいつらにも日本語で返す。
「ヘーイ!チャイナ!!ニーハオ!!アチョ~!」
「何言ってんだお前。バカじゃねぇのか?」
真顔でそう言うと、意味はわからなくても後ずさっている。
そんなやりとりを30回くらいしながらひたすら歩いた。
が、北ステーションってのは歩いて行くにはかなり遠いようだ。
2時間以上かかるみたい。
タクシーなら3ジュディー。
サービスっていう乗り合いタクシーで0.5ジュディーらしい。
しかし、あまりにもどいつもこいつも胡散臭すぎて信用ならないので、歩くからいいよ、と断り続ける。
そんなやりとりをしながら1時間以上歩いたところで、さすがに疲れてきた。
時間ももったいない。
こりゃ大人しくサービスって、乗り合いタクシーに乗った方がよかったか………
「ハイ、何か困ってるのかい?」
そこに話しかけてきた2人組の男性。
頭に白いカバーをし、ストンとした服を着たいかにも正統派ムスリムですといった身なりの2人。
「ジェラシュに行くのかい?俺たちもジェラシュに帰るところなんだ。よかったら一緒に行くかい?」
彼らのおデコに黒いアザが見てとれた。
全員ではないが、敬虔なイスラム教徒のおデコには、毎日何回も額を絨毯に擦り付けることによって出来る祈りアザがある。
彼らは信用できそうだ。
しかも名前がアリーとムハンマド。
イスラム教の絶対的な偉人2人に助けられるという贅沢な出会い。
これまた地元の人しか絶対にわからないゴチャゴチャした道端でミニバスに乗り込み、アンマーンの町の外にある地区へ。
さらにそこで乗り込んだのはバスではなく個人の乗用車。
これは違法。
個人が勝手に客を拾って金を受けとっているようだ。
バスよりは若干高いんだろうが、アリーとムハンマドがおごってくれたので料金はわからない。
オンボロ車は暖かい日差しの中、快調に走る。
周りには木のない丘が広がり、アラブ諸国らしい石の家がパラパラと散らばっている荒涼とした風景。
開けた窓からの風が気持ちいい。
「もし、よかったらうちでご飯一緒しないかい?」
「え!?お願いします!!行きたいです!!」
「そうかい、嬉しいよインシャアッラー。遺跡にはもちろん行くんだよね。ご飯の後に連れてってあげるよ。あ、おっと、ゴメンお祈りの時間だ。」
その時、車のラジオからアザーンが流れた。
すげえ!!車の中でもお祈りなんだ。
トルコとは気合いの入り方がまるで違う。
アザーンとともに、みんな目をつぶってブツブツと祈りの言葉を呟いている。
窓の外に広がる景色。
アザーンが流れるオンボロ車の中、祈りを捧げるイスラム教徒とアジア人放浪者。
すげーとこに来たんだなと、この空間にいることがたまらなく嬉しかった。
ジェラシュに到着。
田舎だけど、町の真ん中に大きな遺跡があるので、それを中心に観光客向けのカフェやレストランが並んでいる。
こんな見ず知らずの町で、地元の敬虔なムスリムと一緒にいることがら心強く、誇らしい。
田舎なので、アリーが手をあげたらすぐに車が止まって、彼の家まで乗せてくれた。
アリーの家はジェラシュの町からさらに離れたところにある、小さな集落だった。
「ここだよ。どうぞ入って。」
ここ?ここってモスクじゃん?
モスクの横の入り口から中に入ると、そこが彼の家になっていた。
なんとアリーはただの一般信者ではなく、イマムと呼ばれる聖職者の立場の人だった。
キリスト教でいう神父さんのことをイスラムではイマムと言う。
モスクでお祈りをする時、1番前でみんなに号令を出し、祈りのお手本を示し、信者さんたちに説法をするのがイマムの役割。
まさかそんな人と知り合えるとは。
「さぁさぁ、食べて食べて。」
そう言いながらたくさんの料理を運んで来てくれるアリー。
奥さんが台所で料理してくれてるんだろうけど、こちらに出て来てくれない。
まだ挨拶をしていないんですが、と言うと、気にしないでいいよと笑うアリー。
あ、そうか。家の中では女の人は肌や髪を隠していないから、台所から出てきてくれないのか。
わかりやすかったのが、俺たちがご飯を食べてる居間の外で、コンコンと壁を叩く音がしたんだけど、すぐにアリーが立ち上がって出て行き、紅茶を持って戻ってきた。
ものすごくシャイですね!!ってわけじゃなく、奥さんは家族以外にカバーをしていない姿を見せることは出来ないのだ。
ご飯を食べ終わり、3人で町の真ん中にある遺跡へ。
こんなただの放浪者の観光に付き合ってくれるなんて、恐縮で仕方ない。
そして彼らが同行してくれたおかげで、遺跡の入場料が無料になった。
何から何まで………
ジェラシュの町に入ると、いきなり目に飛び込んで来るのが、巨大な石の門なんだけど、これはかつてのローマ帝国時代に作られたもの。
この門から始まって、かなり広大な敷地にとても保存状態のよい遺跡群が見られる。
暖かい風が吹く遺跡の中を歩く。
劇場跡、神殿、教会群、
羊がノンビリと草を食んでいる。
「あ、フミ、少しの間、待っててくれないかい。お祈りの時間だ。」
そう言って、アリーとムハンマドは草原の中でおもむろに祈りを始めた。
厳かに目を閉じ、メッカの方へ向かって膝まづいた。
あわわわわわ、すごすぎる。
こんな場所でも構わずにやってしまうんだ。
風化した古代遺跡の中、祈りを捧げるイスラム教徒の姿。
夢でも見てるのか。
悠久の時を越えて変わっていないのであろうその崇高な姿に、現代の文明の全てが幻であるかのような錯覚を覚えた。
アリーの家に戻り、たくさん色んな話を聞かせてもらった。
彼はイマム。いつもモスクで説法をしてるだけあって話が上手だ。
「フミ、私たちは誰によって創られたものだと思う?」
きた!!わかってますよ。
アッラーでしょ?アッラーなんでしょ?
「そう、私たちはアッラーによって創られた存在なんだよ。太陽も木も川も海も動物も、全てアッラーが創ったんだ。アッラーが唯一の創造主なんだよ。」
もう確信とかそういうレベルじゃない。
それが当然のことと思ってる。
ちょいと意地悪な質問をしてみた。
「人間は魚から進化して、陸に上がって猿になって、さらに進化して人間になったんじゃないんですか?」
「あっはっはっはー!!面白いことを言うなフミは!!私たちの先祖が猿?ぶー!!ウケる!!」
「じゃ、じゃあ僕らの祖先は誰ですか?」
「最初にアッラーはアダムとハウワという男女を創ったんだ。そこから子孫が増えていったんだよ。だから世界中が兄弟なんだ。ダーウィンは間違ったことを教えてるんだよ。ウケるー。」
これ、マジで言ってるからね。
この科学の発達した現代で、おとぎ話を完璧に信じてる。
「フミ、なんで私たちはこの世に生まれたのか、その理由がわかるかい?」
「うーん………それはとても難しく、哲学的な質問ですね。なんだろ?楽しむため?学ぶため?君を守るためそのために生まれてきたんだ?わかりません。」
「フミ、私たちは知ってるよ。アッラーを崇拝するために生まれてきたのだよ!!」
もうすごい。この信じ方。
疑いのカケラもない。
1+1が2っていうくらい、当たり前のこと。
俺らにとっては、人間は猿から進化して誕生したというのが通説。誰でも知ってること。疑う余地はない。
しかし、それと同じように彼らも疑いの余地なくアッラーが創造したものだと思っている。
その時、アリーの携帯電話からアザーンが流れた。
マジすげえ(´Д` )
携帯電話からアザーンて(´Д` )
ちなみにアリーの携帯電話にはメッカの方角を示す方位磁石のアプリもついてる。
「よし、お祈りだけど、フミも行くかい?」
もちろん!!
勇んでモスクへ。
まずは水場。ここで体を清めないといけない。体が汚れた状態で行った祈りは無効と見なされるそうだ。
洗いの手順。
★まず両方の手。
★それから口をゆすぐ。3回。
★鼻の穴を洗う。3回。
★顔全体を洗う。3回。
★耳も。
★頭もなでる。
★腕をヒジまで。
★靴下を脱いで足首。
これが一通りの流れ。
日本の神道みたいに手と口を軽くゆすぐだけ、なんてもんじゃない。
かなり入念に洗わないといけない。
身を清め、ようやく祈る準備が整うわけだ。
モスクの中はこぢんまりしていて、とても生活感の溢れた雰囲気。
アリーの号令にあわせて、みんなで祈った。
俺も後ろのほうで見よう見まね。
もうずいぶん覚えた。
「みなさん、今日は新しい友達が日本から来てくれました。フミといいます。」
祈りを終えてアリーがみんなに俺のことを話している。
すると、全員が俺に近づいて来て、俺を抱きしめてくれた。
「アルハンドレラ。」
「セラムアレイキュム。」
「インシャアッラー。」
全員だからね。全員。
俺たちは兄弟。この出会いをアッラーに感謝します。
ヨルダンの片田舎。モスクの中でイスラム教徒たちと抱き合う人生を高校生の時に1mmでも想像できたか?
人生とはなんて不思議なものなんだ。
まぁ彼らに言わせたら、アッラーの思し召し、なんだけど。
祈りを終えて家に帰ってからも、みんなのお話は止まらない。
イスラムの素晴らしさを熱弁してくる。
「あの時間、あの場所で、仕事でアンマーンにきていた私たちと日本からきていた君が出会った。まさにアッラーの望みなのだよ!!」
彼らはひたすらにアッラーを信じている。神はこの世にただひとつだけ。
その信心が強すぎて、他の宗教を批判する傾向があるとかなり強く思った。
「いいかいフミ。ひとつの国に王様が2人いたらどうなる?ひとつの国に2つの政府があったらどうなる?」
「うーん、争いが起きます。」
「そうだね。じゃあひとつの世界に2つの神がいたらどうなる?わかるよね。私たちは争いをなくしたいんだよ。インシャアッラー。」
危険な考え方だなと思った。
そんな彼らは酒もタバコもちろんやらない。
体はバッチリ綺麗なまんま。
禁欲の宗教、イスラムだからね。
さすが。
と思ってたんだけど、どうやら違う。
この人たち禁欲じゃないわ。
イスラムでは死んだ後に処女とヤリまくりの酒飲みまくりの肉食いまくりのパラダイスに行けるって話だったんだけど、マジでそれめちゃくちゃ信じてる。
「パラダイスは永遠に続くんだよ!?永遠に楽しめるんだ!!今このたった80年の人生を我慢すれば永遠のパラダイスが待ってるんだ!?イヤッホウ!!」
マジで言ってるから(^-^)/
パラダイスのために必死だなぁ………
「イスラムの国では結婚する時、女性は必ず処女なんだ。当たり前だよ。婚前交渉はタブーだからね。アメリカやヨーロッパや日本で処女の嫁を見つけられるかい!!処女の嫁だぜ!?人生で俺しか知らないんだぜ!?イヤッホウ!!」
禁欲どころじゃねえ。
ただの貪欲。
さっきの、世界に神はただひとつという排他的な思想もそう。
イスラムは実は貪欲な宗教なんだな。
「フミは知らないことだらけだな。人生にはたくさんの苦しみや疑問がある。これらの答えを知らないでいいのかい?知らない人生では恐ろしくて生きてはいけない。私たちは知っている。だから笑っていられるんだよ。アルハンドレラ。」
晩ご飯をいただいて、今夜はここにお泊まり。
この出会いも、優しさも、すべてはアッラーの思し召し。インシャアッラー。
そしてアッラーへの感謝。アルハンドレラ。