12月21日 金曜日
【マケドニア】 スコピエ
~ 【コソボ】 プリティシュナ
風がある日はテントを立てられない。
あおられて竿がへし折れるから。
か、風を防ぐためのテントじゃないの!?という声が聞こえてきます。
その通りです。
テント最大の利点のはずなのに、最大の弱点となっています。
役たたねぇ!?(´Д` )
早く予備の竿を買いたい………
というわけで今朝も川風の吹く中、寝袋からモソモソと体を出す。
うー、寒い。
今日はお城の横に広がる怪しげな地域に行ってみることに。
地図を見ると、このあたりも建物が密集していて何かありそうな雰囲気が漂っているんだよな……………
ボロい建物の間を抜けて、路地を入っていく。
昨日行った、綺麗な中央広場から石橋がのびておりこちら側につながっている。
あの巨大な銅像が橋の向こうに見える。
向こうがビルが立ち並ぶニューシティ。
ではこっち側はお城のある旧市街ってわけかな?
こ、こ、こ、
これは!!
昭和!!
マジで昭和!!
ボリぃ!!!
うわー!!なんだこのノスタルジックな光景は!!
懐かしい!!
いたるところにモスクがあり、ミナレットがズドンズドンそそり立っている。
そして通りを歩いている人がみんなイスラム教徒だ。
女の人は頭にスカーフを巻いており、男性はあれなんて言うんだろ?ちっちゃいニットキャップみたいなやつ、アレをかぶっている。
すげー、すげー、と歩いていると、通りを抜ける。
そこには凄まじい光景が広がっていた。
戦後!?
ボロっボロのバラック市場だ!!!
なんだこれわああああ!?!!!
野菜、果物、衣類、ものすごい数の小さなお店がひしめき、人々がうごめいている。
築地だよ築地。
あの喧騒と混雑。
荷物がでかすぎて歩けない!!
うす暗いバラックの屋根の下、奥に進むとさらに色んなお店が。
魚、香辛料、ローカルなDVD、日用品、ネジ、工具、荒物、配管、なぜかめちゃ多い花火屋。
もーう、なんでもアリ!!!
カオス!!
これがムスリムの町名物、バザールってやつだ!!
興奮しながら中を歩いていると、信じられないくらい声をかけられる。
チャイナチャイナ?!と聞かれるのでジャパンと答える。
「ジャ、ジャ、ジャ、」
「ジャパンだとおおおお
お!!??!」
「なんだと?!ジャパン!!」
「なんだってええええ!???ヤポンスキだとおおおお!!!」
「ジャ!!ジャパン!!?」
「ヤポンスキはどこだ!!?」
なぜか日本人だとわかると大変な騒ぎになり、ムスリムたちに取り囲まれる。
「ヤポンスキ!!これ食え!!」
「うちのリンゴは美味いぞ!!食え!!」
「こ、こ、こ、これも!!」
「う、う、う、うちのもおおおお!!!!」
ムスリム、人懐こすぎ!!
歩いてるだけで大量の果物を差し出される。
大混雑の中、今度はタバコの葉っぱを量り売りしているお店を発見。
おっちゃんが一本巻いてくれた。
「5ディナールだよ。」
8円。
ディナールは1ユーロが61ディナール。
これ、1kgで300ディナール。
500円で2ヶ月吸える(´Д` )(´Д` )
結構強くてゴボゴボとむせるとみんな笑っていた。
微笑ましい!!
そしてみんな俺のトロールを見ると、とても面白い反応をしてくれる。
まず、トロールを発見します。
その後、こいつ頭イカれてんのかという顔で見てきます。
面白い。
市場の真ん中に地元の人用みたいなレストランがあったのでそこでご飯。
ほんとは昨日の中華料理店にもう一度行こうと思ってたんだけど、ここまで来て地元ご飯を食べないわけにはいかないぞ。
選んだのは、具たっぷりのスープ。というか煮込み。
こんなカオスなバラック市場のメシ屋なんて衛生管理とか大丈夫なの?
ていうか美味しいの?食の国日本から来た俺を満足させられるの?俺ってこれでも結構グルメなんだよね。パンツ50日くらい洗ってないけど。
口に運ぶ…………
うおー、うめぇぜ。
ごめん、普通にうめーぜ。
これで80ディナール。
130円。
昨日の中華料理店、高っ!!
マケドニアの庶民は1食150円まで!!
うす暗い迷路の中を歩いていると、今度はカフェを見つけた。
このバラック市場の人々のためのカフェといった雰囲気。
入りたそうにしていると、お客さんがドアを開けてくれる。
「日本人だと!!!???」
「なんだって!!?ヤポンスキ!???」
「こ、こ、こ、こ、こ、ここに座れ!!」
「いや、こっちに座れ!?」
「こっちに来いいいい!!??」
あー、俺なんてこの世に必要のない人間なんだ、存在していても意味のない人間なんだ、と思ってる荒んだ心をお持ちの日本人の皆さん。
マケドニアに行きましょう。
お店のおじさんたちは皆チャイを飲んでいる。
小さなグラスに入ったセイロンティーだ。
おじさんたちの群れにチャイの飲み方を教わる。
こ、紅茶の飲み方をぐらいわかるよ?!
「このレモンを入れてだな、そして砂糖を入れるんだ!!」
ザバアアアアアと、完全にグラスのサイズがわかってない量の砂糖を投入するおじさん。
しかし、これが美味い。
紅茶自体がかなり強いのでこのくらい甘くしたほうが合うのかも。
1杯10ディナール。
16円。安っし!!!
「モスクには行ったことあるかい?」
いいえないです、と言うと、これからお昼のお祈りだから連れて行ってあげるという。
やった!!
ムスリムの人と一緒ならめちゃ心強いぞ!!
おじちゃんと一緒にモスクへ向かう。
細い道を歩いていると、周りからぞろぞろと同じ方向に向かう人々の姿。みんなモスクに行くんだ。
そんな人々の上空にアレが流れた。
アア~~ァァァ~~エオイウウウウウ~~~
モスクから流れる、お祈りの時間ですよーの歌。
不思議な旋律のこの歌はおっさんの声で、まるで呪文のよう。
これが町の中にいくつもあるモスクのスピーカーから同時に鳴り渡るもんだから、町全体が異様な呪文に包まれる。
たどり着いた丘の上のモスク。
みな靴を脱いできれいに並べて中に入って行く。
おじちゃんに着いて俺も中に入った。
うわぁ、この前のサラエボの小さなモスクとは比べものにならない大きさ。
そしてそんな小学校の体育館くらいの大きさの寺院内には、すでにたくさんのイスラム教徒の方達が整然と並んでお祈りをしていた。
俺もおじちゃんの横に並んで見よう見まねで祈る。
イスラムの祈り。手順です。
まず最初に直立し両手を頭の両側にかかげる。
それから両手を膝につき中腰の体勢でこうべを垂れる。
そして膝まずき、土下座のポーズで頭を床につける。
この土下座を3回繰り返す。
ここまでがひとつの流れです。
これを3セットした。
そしてここで、偉い人登場。
イスラム教の神父さんのことなんていうんだろ。
階段の上から人々に語りかける偉い人。
正座の体勢で聞いていた信者さんたちも膝を崩し、あぐらでリラックス。
次第に熱を帯びる偉い人のお話。
「フミ、写真撮りたければ撮っていいんだよ。」
隣りでおじちゃんがウィンクしている。
俺は今、イスラム教のモスクの中でたくさんの人々に混じってお祈りをしている。
日本から遠く遠く離れたマケドニアという国で。
教科書で読んだイスラム教という宗教はとても異質で、日本の片隅で生きていた俺には黒魔術みたいな怖いものとしかイメージしていなかった。
遠い遠い国の、自分にはまるで関係のないこと。
そんな宗教の中にいることがふと信じられなくなる。
しかし今、間違いなく俺は絨毯に額をこすりつけて祈りの真似事をしている。
気がつけば広いモスクの中は隙間もないほど信者でごった返しており、みんな整然と並んで同じ所作で祈りを捧げていた。
人間はどこにだって行けるぞ。
お祈りが終わると、みんな一斉にモスクから出て行く。
500人以上いたんじゃないかな。
そんな大人数が一気になだれでて行くんだけど、モスクの外には信者狙いの物乞いたちが溢れている。
みんな哀れに懸命に、あの手この手で人々にお金を要求している。
彼らにとって稼ぎどきってわけだ。
優しくしてくれたおじちゃんとここで別れ、俺は旧市街の中へ。
お昼の通りはたくさんの人が歩いていた。
みんなイスラム教徒で、穏健な彼らはあまりお金を持っているようには見えない。
おそらくニューシティーのほうが路上で稼ぐには向いているだろう。
でもなんとくこっちで歌いたかった。
ボロボロの昭和の町並みの中、モスクの前でギターを構えて歌った。
たくさんの人が立ち止まってくれる。
立ち止まらなくてもお金を入れてくれる人もいる。
やっぱりイスラムの人たちはみんな慈愛を持っている。
そこに何やらテレビカメラを抱えた一団がやってきた。
この珍しいアジア人にカメラが向けられる。
そんなわけでインタビューを受けたよ!!
金丸文武!!海外初テレビ出演!!
トルコテレビ
放送日時、謎。
みんな見てね!!
誰が見るんだ(´Д` )(´Д` )
1時間ほど歌って、足元にはものすごい量の札束がたまった。
うおー、こ、これはすげー。
と、一見ものすごく稼いだように見えるけど、これでたったの5ユーロ。350ディナール。
少な!!
マケドニアディナールって10ディナール札からあるんだよね。
60ディナールが1ユーロなのに。
まぁ5ユーロあったらマケドニアでは2日は余裕で生きられるけどね。物価なりの稼ぎってとこか。
「日本人ですか?」
うお!!と顔をあげると、そこには日本人の女の子がいた。
マケドニアで日本人の女の子と会うか?!
すげー。
しかしこれまで日本人の旅人って女の子にしか会ってない気がする。
男はどこにいるんだろ。
ちょうどいいので路上を終えて彼女とお茶へ。
彼女はイギリスに留学している大学院生で、バルカン半島の紛争難民支援のNGOの活動でここに来ているところだった。
そんな彼女の専攻は、平和学、だって。
そんな学があるんだな。
「広島出身っていう土地柄もあるんですけど、いずれは国際的な仕事につきたいって思ってるんです。国連とか。」
話がでけえ(´Д` )
俺なんかが想像もつかない道を歩んでいる日本人の女の子が、世界をまたにかけて信念をかけた行動をしていることがとても嬉しかった。
彼女とご飯を食べ、一緒にバザールを探検し、それから彼女の泊まってるユースホステルへ。
ユースホステルってドイツ発祥の若者のための安宿ってことらしいね!!
そこで次の目的地、コソボへの行き方をたずねた。
するとあと1時間後にバスが出るとのこと。
ここで彼女とお別れ。
ゆみこちゃん、賢い君はきっと世界視野の仕事をするカッコいい女性になるだろうね。
平和を学び、そしてそれに伴う人間の汚さをたくさん見るんだろうね。
お互い自分を強く持ち、信念にそって生きていこう。
元気で!!
バスターミナルで5.5ユーロの切符を買い、バスに乗り込む。
さー、コソボ入りだ。
旧ユーゴスラビアの中で、自治州として独自のエリアを持つこの国。
俺らから上の世代の人ならコソボと聞けばきな臭いイメージしかないはず。
そんなコソボの首都、プリシュティナに到着。
おぉぉぉ、こりゃ寒いぞ。
ちょっと北にのぼっただけでこんなに違うか。
とにかく中心部に向かい、適当にピザ屋さんに飛びこんだ。エクストリームピザというわかりやすい名前。
町の中には英語が多い。
このプレートで2.5ユーロ。
腹ごしらえして、近くのバーへ。のんびり飲んでいると、常連さんのカップルが話しかけてきた。
「この国は危険なんてまったくないよ。みんな親切だし、そこの道端で寝たってなんにも起きないよ。コソボへようこそ!!」
とても紳士な彼。しかし次にセルビアに行くんだと言うと、急に顔色が曇った。
「そうか、セルビアに行くのかい。どうして行くんだ?彼らはいい人ではないよ。行ってもいいけど、コソボのことを話してはいけない。君の安全のためにも。」
でたー。
そういうことね。
コソボは自分たちを独立した国だと思っている。しかしセルビアはそれを認めていない。
あくまでセルビアの一地域だと考えている。
早速対立か………
気になるバーのビールの値段。
まぁユーロの国は若干物価が高いけど、アルバニア人の国だからな。
高くても1杯1.5ユーロくらいだろ。
2杯飲んだから3ユーロかな。
歌ってくれよ!!って強引に歌わされたから少しまけてくれるかな。
「5ユーロです。」
お!!なかなかボリますね!!コソボ!!
店を出て、今夜の寝場所を探して住宅地の中を歩き回る。
寒い。かなり寒い。
こりゃ眠れるか?
丘に広がる住宅地。
ここをのぼったら広い公園があるはず。そこにテントを張れるはずだ。
真夜中の住宅地をカタカタいわせながら歩く。
しばらく歩いていたらなにやら不思議な建物を見つけた。
バリケードの向こうに、真っ白な塀で囲われた門がある。
なんだこれ?
カメラ撮影禁止のマークが壁に描かれている。
無数の監視カメラがあたりに設置されている。
周りはいたって普通の住宅地。
個人の一戸建てが並ぶ閑静な住宅地だ
そこにいきなり現れた写真禁止のマーク。
写真禁止っていったってただの住宅地の中の建物。なにがいけないんだろう?と、とりあえず写真を撮った。
その瞬間、中から警備員が飛び出してきた!!
「ヘイヘイヘイ!!写真ダメって描いてるだろ!!今すぐ消去して!!」
え、ええ!!
なにこの厳しさ?
マジでなんの建物?
わけもわからず写真を消去させられた。
すっげー気になるすっげー気になるすっげー気になるすっげー気になるすっげー気になるすっげー気になるすっげー気になる(´Д` )(´Д` )(´Д` )
謎の建物の横、塀にそって階段を登ると、上の道路に出た。
うわ………なにここ………
そこらじゅうに厳重な監視カメラ。
道の反対側には有刺鉄線が張り巡らされた巨大な工場のような建物。
あ、アメリカの国旗が見える。
一般人が立ち入ってはいけない雰囲気プンプン。
独立したばかりのコソボという国の不安定さを見てるようだ。
そんな不思議なエリアに立ち尽くす真夜中のアジア人1人。
ふ、不審すぎる(´Д` )
奥に向かっていくと、さらにバリケードがあり、そこに警備員さんの小屋があった。
「あのー、この先の公園で寝たいんですけど。」
夜中の2時にいきなり謎のアジア人が現れたものだから面食らっているおじさん。
「い、いいけど、暗闇だよ?」
驚くおじさんにサンキューと言ってゲートをくぐった。
奥には枯れ木の林が広がっていた。
野良犬が吠えてくるから、手を振り上げて追いかけるふりをしたら逃げて行った。
テントを張って、寝袋にもぐりこむ。
寒い。寒すぎる。
寝袋の外から冷気が浸透してきて、全然温まらない。
たまらず、あと4つしかないホッカイロ解禁。
膝に貼り、その膝を抱えて丸まる。
ダメだ、まったく眠れない。
今までで1番寒い野宿の夜だった。
不思議なエリアの中で。