11月26日 月曜日
【スロベニア】 ツェリエ ~ リュブリャナ
警察に起こされた。
ここで寝てはいけないよ。
お巡りさん、モーニングコールありがとう。
ナメクジを払いながらテントをたたみ、町へ向かう。
駅前に広がるショッピングストリートにはまぁまぁの人通り。
細い路地が入り組み、頭上に電飾を取り付ける作業をしてる人の姿。
いろんなお店の店先にサンタクロースの飾り物。
もうすぐクリスマスなんだな。
カトリックの国で迎える初めてのクリスマス。
クリスマスは俺の誕生日でもある。
そんな大事な日をどこで迎えることになるのかな。
このペースだと、どっかわけわかんない辺鄙なとこで迎えるだろうな。
それもまた面白いが。
よっしゃ!!スロベニア1発目の路上だ!!!
目標100ユーローーーー!!!!
昨日、目をつけていたメインストリートの真ん中の辻へ。
ここなら人通りバッチリだし、声も響くので稼げるはず!!
と張り切って来てみると、
おっさんが歌ってた(´Д` )
ガックリ………
あああ、マジかー………
どう見ても、毎日ここでやってます的な雰囲気を醸し出してるおっさん。
さすが地元の方、いいポジションをよくわかってらっしゃる。
諦められずに、何時までやりますか?と交渉してみた。
「ここで毎日17時までやってるのさ。」
げんなり。
仕方なく他の場所を探して歩き、中心から少し外れたところでギターを抱えた。
うー、喉の調子が悪い。
長いこと歌ってるけど、調子のいい時と悪い時の差が激しすぎるんだよなぁ。
どうやったらいい状態にもっていけるのか、そのプロセスは未だに謎だ。
毎日毎日路上に立って、歌って、金稼いでるこの心の中に何がある。
もやがかかって見つけられない。
言葉に音階をつけて口から発しているだけで、お金がもらえるなんて、なんて楽なことなんだろう。
それだけで愛を感じてもらえるなんて、なんて便利なツールなんだろう。
音楽は偉大、と人は言うけれど、やってる本人はそのすごさがイマイチよくわからないもの。
え?いいの?これでいいの?とたまに不思議になる。
音楽を利用して、情や、ノスタルジーや、傷心や、幸福感につけ込んで金を手にいれてる。
それが歌の正しい在り方なのか。
感情に触ってお金引き出すなんて結構ズルいよな。
ジェイムステイラーが、俺は自分の人生を切り売りしている、って言ってた。
歌い手なんてみんなそんなもんだよな。
そしてそんな不信感に囚われている時はたいていろくな稼ぎにならない。
聴衆は正直だ。
2時間歌って、23ユーロ。
うーん、ダメすぎる。
ヘボすぎる。
ちょっと早めに路上を切り上げたのは、久しぶりにヒッチハイクするつもりだったから。
ここから首都のリュブリャナまで70~80kmってとこか。
町から結構離れたところにある高速道路の乗り口まで歩き、そこで親指を立てた。
ハンガリーではしなかったもんな。
おいー!!おしゃべりしながらドライブしましょーーー!!!
1時間経過…………
トマラネェ………
いやいや、1時間くらいで諦めてたらダメなんだけどさ、ノルウェーでは2時間待ちとかしてたし。
しかし最近では、この待ち時間が無駄にしか思えない。
どんどん空が暗くなっていき、16時半になると、完璧に真っ暗になってしまった。
かろうじて1台止まってくれ、感じのいい兄さんが何処までいくのー?って聞いてくれたんだけど、彼はリュブリャナではなく、反対のマリボル行きだった。
ゴメンねー、と走り去った兄さん。
その後も続けたけど、ダメ。
場所が悪すぎ。止まるスペース狭すぎだもん。
やっぱり町でのヒッチは厳しいなぁ。
諦めてまたすごすごと町に戻った。40分歩いて。時間の無駄(´Д` )
バスターミナルでリュブリャナ行きをたずねた。英語のわからないおじさん。紙に書いて教えてくれる。
えー、15分後、値段が7ユーロ。
安っ!
はじめからバス乗れよ(´Д` )
バスに揺られること1時間半。
スロベニアの首都、リュブリャナに到着した。
えー、ここは?
ここがセントラルステーション?
ちっせ!!!
首都の中央駅なのにちっせ!!!!
日向の駅の方がでけえ(´Д` )
日向なめんなよ?
地方都市って感じだな、こりゃ。
まぁ22万人の街だからな。
こんなもんか。
中心部に向けて歩く。
あんまり大きな建物もなく、ノンビリした雰囲気。好きな空気。
細いショッピングストリートに出た。
うわー、なんだこの街灯。赤いアーティスティックな街灯が通りにポツポツと浮かんでいる。
電線に吊るされたスニーカーの列もまたセンスがいい。
通りにはたくさんのお洒落なカフェやバーが並び、さらに細い路地裏をのぞけば、そこにもバーのテーブルと椅子が置いてある。
うわー、めちゃいいじゃん。
路地裏を抜けると川に出た。
手の届きそうな目の前の小高い山の上には大きなお城!!!
すげぇ!!!!
お城の足元にもうひとつショッピングストリートがあった。
石畳の綺麗な通りがのびている。こちら側は美しく整備された美観地区となっているようだ。
石畳の通りに大きな教会がある美観地区側、
ワクワクする路地裏が入り組む原宿みたいなショッピングストリート、
この2本のショッピングストリートの間を流れる小さな川。
たくさんの綺麗な橋が架かっている。
ライトアップされた川沿いを歩くカップルや酔っ払い。
秋田市ですか?
なんだなんだー!!!
たまらないぞこの町ああああ!!!
さっきの街灯にしても、電線に吊るされたスニーカーにしても、いくつもの美しい橋も、ボロい家も、
リュブリャナのセンスの良さ、たまんない。
そんなに大きな街ではないけど、個性に溢れている。
センスのいい街、ランキング1位でもいいよ。
しかもおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
なんとおおおおおおおおおおおお!!!!!
聞いて驚け!!!!!!!
街全体に無料のWi-Fiを飛ばしているという大盤振る舞い!!!
リュブリャナ最高ーーー!!!!
ウッキウキでケバブを食べ、それから適当にバーへ。
リュブリャナの地ビール、ユニオン。
2ユーロ。あんまり美味しくないけど飲めんことはない!!
あー、またいい街見つけたなぁ。
この町は俺を受け入れてくれるかなぁ。
気分は宝物を見つけたよう。
世界中に散らばる宝物をどれだけたくさん見つけられるかな。
ほろ酔いでバーを出る。
石畳でガタガタと音を立てるキャスターバッグ。
寝静まった古い町にガタガタと響く。
見上げたお城が綺麗だったから、坂道を登った。
汗をかきながら真夜中のお城にたどり着き、そこにテントを張った。
木々の間から見えるささやかな夜景を眺めながらタバコをふかす。
夜風が気持ちいい。
心から自分を信じて、心から音楽を信じて、歌えたらどんなに気持ちいいんだろう。
いい夜だ。