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ここはどこ?でも今夜もお泊まり

11月23日 金曜日
【ハンガリー】
ナジカニジャ ~ ザラエゲルセグ



綺麗なベッドの上で目を覚ました。あぁ、よく寝た。

横を見ると、床の上で寝ているチンピラ野郎。

イカれたチンピラ野郎は実はとてもいい奴で、あなたは客人なんだからと自分のベッドを貸してくれたのだ。



ゆうべ広場で、ファッキンビッチ!サックマイディック!!ウホッ!!ウヒョ!!と腰を振りまくっていたあの下品な男とは思えないクールさで、朝ごはんを作ってくれた。

photo:01




バスタブにお湯をはってくれ、サンドイッチを作ってくれ、さらに駅まで車で送ってくれた。


「やっぱりさ、人は助け合わないといけないよね。」


昨日のあんたは何だったの?
あまりの豹変ぶりがおかしかった。



「フミ、スロベニアに行くには、まずここから50kmほど北に行ったザラエゲルセグという町まで行かないといけないみたいだ。そこからなら直行の電車が出てるから、まずはそこまで行くことだ。」



スロベニアの首都、リュブリャナまでの切符代は17000フォリント。
手持ちはわずか6000フォリント。
全然足りない。

そのザラエゲルセグって町で歌わないといけないな。


1300フォリントの切符を買い、電車に乗り込んだ。

イカれ野郎こと………




えーっと………








うん、名前も知らない兄さん。
ありがとう。あれはあれで刺激的な夜でした。

そして電車はナジカニジャを後にした。








photo:02



いくつかの村を通り過ぎ、電車を乗り換え、ザラエゲルセグの町に到着。



あー、なんもわかんない。こんな名もなき町。
でもとりあえず歌えそうな雰囲気ではあるな。

中心部に歩いた。




辿り着いては人を探し
人にしがみついては次の町へ
靴底をすり減らしてまた辿り着いて
いつの間にか次の町へ
いい町だったらいいな




夕暮れのスーパーマーケットの前で歌った。

たくさんの人だかりができ、足元にフォリントが溜まった。9000フォリント。
これでスロベニアに行けるぞ。




歌い終わって片付けていると、1組のカップルが話しかけてきた。

とてもフレンドリーでにこやかな若いカップル。


「よかったらウチに泊まりに来ない?」



おいおい、ハンガリーのお泊まり率高すぎだな。

賢いマークと、イマドキな19歳の女の子であるダイアナ。

ダイアナの家に着いた。

こんなどこの馬の骨とも知れないアジア人を快く抱きしめてくれる可愛らしいママの笑顔で一気に和んでしまった。

photo:03






するとマークが俺に言った。


「フミは素晴らしい人だよ。歌を聴けばわかる。でも一応、気を悪くしないでね。一応、パスポートをチェックさせてくれないか?」


もちろんさ!とパスポートを渡すと、ホントにゴメンな、でも俺の彼女と彼女のママの2人暮らしのアパートだからさ、俺は彼女たちを守らなきゃいけないんだ、と言いながら名前と誕生日をメモしたマーク。

なんて気持ちのいい奴だ。
これにより逆にお互いの距離が縮まった気さえするよ。



「フミはカウチサーフィンはしてないの?」


若い健康的な美しさに溢れたダイアナが興味しんしんで聞いてくる。

カウチサーフィン………

うーん、別に嫌いではないんだけどなぁ。

ていうかやったことないからわかんないんだけどさ。

あ、カウチサーフィンってのは旅人が現地の人の家にタダで泊めてもらうインターネットを利用したシステムのことね。

カウチサーフィンのサイトにID登録して、いついつにロンドンに行って3日滞在するんだけど泊めてくれる人いませんか?って書くと、どうぞウチに来て下さい、Wi-Fi有り、洗濯機有り、ペット不可です、みたいな感じでやり取りして無料のベッドをゲットするってわけだ。

泊める側は世界中の人と交流が出来るし、中には子供に外国語を教えて欲しいってなリクエストもある。

泊める側、泊まった側、お互いにお互いの評価をサイトに書きこむことが出来、みんなそれを参考して決めるわけだ。



とても便利なシステムだよ。
世界中に登録者がいるので、カウチサーフィンだけで世界一周できるかもしれない。



でもなぁ、俺はひねくれもんだから、みんながやらないの?って聞いてくるから逆にしたくなくなる。
カウチサーフィンをやってるのは賢い旅人、みたいなイメージも嫌い。
俺には俺のやってきたやり方がある。
そして今も、俺はこんなに素晴らしいファミリーの家に泊まらせてもらっている。

だから俺には必要ないよ、と言うと、純粋なダイアナはとてもカッコいい!と言ってくれた。





ママの最高に美味しいハンガリーの家庭料理をご馳走になり、お礼に日本語の歌を歌った。

とても喜んでくれるママ。彼女は敬虔なクリスチャン。

あなたの歌には愛があるわ、どうしてそんなに優しい気持ちを持てるの?と聞いてきた。



僕はこれまで長い間旅をしてきて本当にたくさんの人に優しくされ、助けてもらってきた。だから僕も出来る限り優しくしたい。でも僕は弱いから全ての人には優しく出来ない。だから目の前の好きな人だけを愛します。

素直に正直に答えた。彼女は涙をふいていた。






夜遅くまでたくさんの話をした。
マークはハーフのユダヤ人。お父さんがユダヤ人で、なんとお爺さんはアウシュビッツで殺されたんだそう。

あの歴史上の惨劇の被害者に実際に会えたことが信じがたかった。

イスラエルの話、日本と中国、北朝鮮の話、そんな難しい政治の話が白熱している横で、ダイアナは黙って聞いている。


「あ、ゴメンね、ダイアナ。」


「いいの!いいの!私はガーリートークしかできないから!」


可愛いなぁ、ダイアナ。
日本と同じ、どこにでもいる女の子。


難しい話はそこまでにして、YouTubeでダイアナオススメの面白いビデオを見せてもらった。


「これ最高なのよ!」


そう言って見せてくれたのは、ミカンやリンゴやイチゴなんかの食材が台所で話をしているビデオ。リアルな顔が合成されている。



なぁ、リンゴ、今日いい天気だね、ははははは!

あぁ、そうだね。

なぁ、リンゴ、

何?

ナイフだよ。

ぎゃああああああ!!!


その瞬間、リンゴが包丁で真っ二つにされて血が飛び散るという、下らなくてしょうがないビデオ。
それに大笑いしている可愛いダイアナ。
賢いマークもくだらねぇなぁと言いつつ笑ってる。
俺も爆笑。


日本には面白いのない?

と聞かれたので、アンパンマンを見せてあげた。
お腹が空いた人に自分の頭を食べさせてあげるというところで、頭食べさせてるー!!!と笑い転げているダイアナ。そんなおかしいか?


アンパンマン、が覚えられなくてブレッドマンと言っているが、それだったらキャラクターのほとんどがブレッドマンになってしまうので、アンパンマンだよと教えてあげるけど、どうしても覚えられないのでアンパンチを教えてあげた。

アンパンチー!!?

マークを殴っているダイアナ。



可愛いなぁ、ダイアナ(´Д` )





「フリーザが3回変身するってわかったとき、ハンガリーの子供たちは全員絶望したんだ!!」


興奮して話すマーク。

なんと、ドラゴンボールはハンガリーでも放送されていたらしく、学校が終わってダッシュで家に帰ってテレビにかじりついていたらしい。


「ドラゴンボールはすぐに戦いが始まらないんだ!!お前を殺してやる。やれるもんならやってみろ。お互いの顔のズームアップ!!!戦いが始まるーーー!!!ってところで、トゥービーコンティニュー。そして次回、パンチを繰り出す、とてもスローにパンチが顔に近づいて行く!!ああああああああああああ!!!トゥービーコンティニュー。ドラゴンボールは子供のドラッグだよ。」


ドラゴンボールについて熱弁するハンガリー人のマーク。日本の子供と一緒だ(^-^)/




ここはハンガリーの名もなき町。

でもこんなに同じことで笑える人がいるんだ。


楽しい話は尽きることなく続き、夜中まで盛り上がっていた。

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