11月22日 木曜日
【ハンガリー】エゲル ~ ナジカニジャ
目を覚ましてテントをたたむ。
静かな公園。
ほんといい寝床だったな。
誰も来ないし、静かだし、そんでもって町から近いし。
いつもこうだといいんだけどなぁ。
また今夜から寝床探しの毎日だ。
お世話になりました。
マクドナルドでマニと待ち合わせ。
エゲル最終日の今日は、マニと一緒に俺の彼女へのプレゼント探しだ。
そう!!
この日曜日は日本で待ってくれている彼女の誕生日なのだ!!
何かプレゼントをしなくては!!
あぁ!!世界一周なんて自由の代名詞みたいなことやってるのに、こういうとこは縛られてる!!
ていうか昨日までハンガリー美女に鼻の下を伸ばしていたのは秘密!!
さて、海外から日本にいる彼女にプレゼントをする、という男が試される今回のミッション。
一体、送料はどれほど凄まじいものなのか?
ていうか何をプレゼントしようか?
ミッション開始!!
まずはマニと一緒に土産物屋さん巡り。
お城の下にある観光ストリートで数軒まわってみる。
甲冑姿のナイト人形、模擬のサーベル、斧、なんかが置いてある。「Eger」って描かれた盾とか、そんなん。The観光ってしょうもないのばっかり。
彼女のキレた顔しか思い浮かばないので土産物屋は却下。
次にアンティーク屋さんへ。
北欧のオシャレな大都市だったら、センスの良いアンティーク屋さんがいっぱいあったんだけど、なんせエゲルは田舎だ(´Д` )
かろうじて見つけた路地裏のボロボロのアンティーク屋さん。
廃屋みたいな部屋の中に乱雑に置かれたお皿や古本。
うおっ!!なんだこの戦時中丸出しな軍コートは!!
うおっ!!なんだこのナチスが履いてたような長いブーツは!!
他にも、共産主義時代のマジの品々が揃いも揃ってる!!!
ほんとに映画の中の衣装みたい!!
すっげええええ!!!
え?どれも1500フォリントとか?
ちょー欲しいいいいいいいい!!!
けど、彼女にとってはただのゴミなのでアンティーク屋さんも却下。
文武
「なぁ、ゲイ、俺決められないよ。」
マニ
「ユーアー、バッドゲイ。マイディックイズ、モンスター。ヒャッヒャッヒャッ!!!」
どうしても決められないので、靴屋さんで自分の靴を買った。
えええええ?!!?
自分のおおおおおお!!!???
だって、この前おじさんにもらったハンガリーのミリタリーブーツ。
めちゃくちゃかっこ良いよ!?おじさんの人生をともに歩んだ、まさにアンティークの軍靴なんだよ?!
でも、アレがさ………
靴ずれが、もう耐えられなくてさ………
あ、ちなみにカカトのひび割れは結構前に治ってます。絆創膏すごいね。
靴ずれってどうにもなんないね………痛すぎだよ。
だいぶ頑張ったよ。
痛いのかばってヒョコヒョコ歩いてたよ。
やっぱり古い物好きとしてはたまらないブーツだもん。ビニールの靴なんてカッコ悪いよ。
でも変な歩き方してたら膝まで痛くなってきて………
なので、おじさんには本当に申し訳ないのですが、ビニールで出来た内側がフカフカのブーツを買いました。
うおおおおおおお!!?、?
軽すぎるうううううう!!!!!
柔らかすぎるううううう!!!
温かすぎるううううう!!!!
四国お遍路の時にゾウリで限界が来てスニーカーを買ったときの感動がよみがえる。
歩きの旅で靴はとてつもなく大事。
お値段、1100円。
チャイナクオリティ。
ここで金丸文武ヨーロッパの旅、冬装備が完成。
さてと、足も痛くなくなり駅へ向かう。
あれ?何か大事なことを忘れているような………
プレゼントですよね。
俺の彼女はオシャレな現代っ子なので、仕方なくショッピングモールへ。ハンガリーの意味ねぇ気がする(´Д` )
あぁ、モダンだなぁ。
このネックレスどうかなぁ。
あ、この香水どうだろ?
お、このお化粧キットは………
ハンガリーの意味ねぇ気がする(´Д` )
文武
「なぁ、ハードゲイ、俺には無理だ!!何が良いのかわからない!!」
マニ
「ユアディックイズ、マウントフジ。ヒットミー!!ヒットミー!!ストロング!!」
なんかもうわけわかんなくなってきて、絵はがき送ろうかな……って妥協しそうになった時、あることが浮かんだ。
あ、俺、ワイン持ってるし。
そう、トカイに行って、あまりの美味しさに買ってしまったトカイワインがバッグの中に入ってるのを忘れてた。
どっかでチビチビやろうと思ってたんだけど、この美味しさを彼女にも味わわせてあげたい。
ワイン好きのオシャレ好き、さらにプレミア好きっていう、朝の目覚ましテレビで占いに一喜一憂するそんな彼女にうってつけだ。
プレゼントこれに決まり!!!
というわけで郵便局へ。
ワインなんて割れ物、日本まで送れるのか?
送れたとしてこんな大きな物、送料ハンパじゃねえんじゃないのか?
ドキドキしながら手続き。
えーっと誕生日は日曜日だから、3日で着きますか?
「3週間ですね。」
3週間(´Д` )
ウケる。
さ、さ、さ、3週間ー?!?!
まぁそうだよね。
こんだけ離れてるんだもんね………
ていうか3週間経ったらクリスマス前だね。
ウケる(´Д` )
値段はいくらかな。
「全部で5400フォリントよ。」
ええええー!!!
段ボールとか緩衝材とか買って、日本までの送料全部あわせて1800円んんんん!!!?
安すぎじゃないの?!なんかの間違いじゃないの?
宮崎から北海道までもの送るのでもそれくらいするぞ?
マニ
「ヘイ、フミ、ファストセンド、ファストセンド。アイムゲイ。ノーホープ。ヒャッヒャッヒャッ!!」
どうやら速達ってのもできるみたいだ。
速達の値段は、15700フォリント。
高っ!!いきなり高っ!!
で、速達だったらいつ着くの?
「4日後よ。」
ウケる(´Д` )
3週間が4日て。
すっげぇなぁ、ハンガリーからたったの1800円で日本までワイン送れちゃうんだなぁ。
しかも金出せば4日後には渡せるなんて、マジで地球は小さい!!というか人間の力すごい!!
日本にいる彼女のご満悦の顔を想像しながら住所を書いた。
ミッション完了!!!
さて、やることは全部終わった。
愛するレトロバーガーにも別れを告げ、マニと駅へ向かって歩く。
ちょっと裏に入ると廃墟だらけのエゲル。落書きだらけの壁。
マニにとってはこれが生まれた町。
子供の時から見ていたしみったれた町。
曇り空と割れたアスファルトは、いつかの故郷の帰り道。
立ちションしてるマニに話しかける。
「ハンガリアンゲイ、お前のオシッコはすごいの?」
「イエス、アイメイク、アマゾン、ナイアガラ。」
「あっはっはっはーー!!!」
「ウヒャ!ウヒョウヒョ!!」
駅に着いた。
スロベニアとの国境近くにあるナジカニジャという町までのチケットを買う。
5600フォリント。
1900円。
「フミ、悲しいよ。行かないでくれよ。せっかく友達になれたのに。」
そう言って目に涙をためているマニ。馬鹿で、ちょっと臭かったけど、憎めない奴だった。
こんな遠い遠い国の田舎町で、こんなに仲良くなれる奴と出会えるもんなんだよな。
「俺、いつか必ず日本に行くから。必ず会いに行くから!!その時はフミの家に泊まっていい?2週間くらい?」
長えよと思いつつも、もちろんさと答えた。
そして手を振るマニを寂れた町に残して、電車はエゲルを抜け出した。
じゃあなマニ!!そしてエゲル!!色々あってすごい楽しかったよ!!
フュゼシャボイって駅で乗り換え、ブダペストに到着。
地下鉄に乗って西駅へ移動。
地下鉄だなんて久しぶりの都会だなぁ。
慌ただしい駅前でまずいホットドッグをかじり、電車に乗りブダペストを出発。
途中、また電車が止まり、バスに乗り換えたりしながらも、親切な人たちがこっちだよ、こっちだよと教えてくれるので何の問題もなし。
気づいたら今夜の目的地であるナジカニジャに到着していた。
まぁまぁ人口もいる地方都市なんだけど、駅舎を出ると静まり返った田舎町だった。
どうやら駅から市街地まで結構離れているようだ。
いつものように、どこが市街地なのかも一切わからないまま勘で歩く。
時間は23時。
外灯が街路樹の影を落とす。
だーれもいない車道。
道の真ん中をトボトボ歩く影ひとつ。
別に怖くはない。
20分ほど歩いたら市街地に入ってきた。
中央に綺麗な広場があり、銅像が立ち尽くしている。
周りにはお店が並び、これならなんとか歌えそうだ。
歩きまくったおかげで喉が乾いて仕方ないので、どこかビールを飲めるバーを探して歩くが、もう0時間を過ぎており完璧に全部閉まっている。
バーもレストランも明かりを消して、町は静寂の中。
広い車道の真ん中を歩く。
24時になり、教会の鐘が鳴り響いた。びっくりして立ち止まってしまう。
こんな夜中に結構な音で鳴るもんだ。
鐘が静まると、余計に静寂が際立った。
その時、遠くの方で人の声が聞こえた。
話し声か、叫んでる声か。
なんとなく引き寄せられて声のする方に向かってみた。
ドンドン近くなる声。
そして角を曲がると、そこには小さなバーがあった。数人の地元の人たちがビール片手にタバコを吸っている。
やったやったと、人々に笑顔で挨拶をしてバーに入った。
そしてビールを注文!!
シュプロニ美味い!!!
うまいこといくもんだ、と地元の人たちとお喋りしていたんだけど、ここで面倒くさい酔っ払いたちにからまれた。
「俺はそこの角でジプシーを5人ボコボコにしたことがあるんだぜ!!」
「オーウ!!サック!サックマイディック!!ビッチ!!ファッキンビッチ!!ライクディス!!」
頭の悪そうなチンピラたち。
俺はこんな悪いことしてきたんだぜ!というしょうもない喧嘩自慢、猿みたいに股間を触ってる下品なイカれ野郎。
かなり鬱陶しいが、結構危なそうな奴らなので刺激しないように、接していたんだけど、おかげで気に入られて捕まってしまい、お店が閉まってからも解放してくれず、町の中を連れまわされた。
ひと気のない広場を歩く。
隙を見て逃げようと思うんたけど、なかなかタイミングがない。
「そこが警察署さ。俺は前に3人の警察を殴り倒したことがあって、この中に入ってたんだ。俺は飢えた狼なのさ。こうやって顔を殴るんだ。ブン!!ブン!!」
「ウフォオオオ!!ファッキンビッチ!!サックマイディック!!サックマイディック!!」
拳を振り回しているバカ。
その後ろでベンチに向かって腰をカクカク振りまくっているバカ。
へー、すごいですね、と感心する俺。
真夜中の広場で。
なにやってんだ?
結局逃げることができず朝方まで連れまわされ、そのまま下品なイカれ野郎の家に泊まった。
怖くはないけど、面倒くさかった。