【ハンガリー】トカイ ~ エゲル
テントを開けた。
そこはまるで夢の続きのような光景だった。
すべてが濃い霧に包まれ、美しく静まっている。
波紋ひとつない川面。
枯れた木の枝が、苦しそうに手をのばす。
大きな橋が霧の向こうに消えている。
ここは枯葉に覆われた河畔。
不思議なおとぎ話に迷い込んだような霧の中、テントをたたんだ。
散歩してたおっちゃんに話しかけられて、鬱陶しいなぁと思いつつ軽く世間話してから、町へ向かう。
町の中も濃い霧に包まれていた。
ただでさえ死んだ町なのに、もはやゴーストタウン(´Д` )
そんな寂しすぎる町をトボトボと歩き、ワインセラーを2ヶ所回った。
霧の町を眺めながら、グラスを傾ける。
芳醇な甘みが口に広がる。
寝起きでワイン。
サモロニが50円。
なんとなく駅へ歩く。
街路樹が並んだ道。
静寂。
霧の中から足音が聞こえる
放浪者の足音が
迷ってるかのようでもあり
行くあてのないようでもある
ふと立ち止まったかと思えば
もうそこにいないようでもある
コツンコツン
ため息が落ちる
コツンコツン
霧が深まる
寂しいな。
今日はどこに行こうかな。
明日はどこに行こうかな。
何食べようかな。
歌って稼がなきゃな。
たまにやってくる孤独は旅のモチベーションを保つのを難しくさせる。
いや、旅ではなく生きることのか。
誰にでもあること。
俺は強いから大丈夫。
食べ、排泄し、枯葉に埋れて眠り、たまに誰かと話し、
色んなものがぼやける。
どうしようもなくなる。
そんな1日もある。
旅ではなく。
そういう時。