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ブロツワフでマスへ

10月20日 土曜日



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マチェックの家で目を覚ます。

テントで寝るよと言う俺を、なぜそんなことを言うんだ?マチェックが出ていけと言ったのかい?とルーカスがとがめ、結局マチェックの家に戻ってきた。


ここのところ1人の夜が少ないので日記を書くのがだいぶ遅れている。
リアルタイムで書かないと忠実に感情が表せないんだよなぁ。



マチェックに今度こそのお別れを言い、部屋を出た。

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今日も路上。
たくさんの人が足を止めてくれ、順調に稼ぐ。
しかし、街の中でやっていると、やっぱりバッドボーイズたちに見つかってしまった。


俺がたくさんの人を集めているのを見て、お決まりのセリフ。

「帽子で金を集めてやるよ。フィフティーフィフティー。」

それが逆効果だってことがわかってねーんだからホント頭が悪いよな。

やんわりと断り、じゃあ一緒に演奏しようぜ!というともやんわりと断る。

さすがに諦めてどっか行ってくれた。



おかげで金をとられることもなく、今日のあがりは120ズウォティ。





もうすっかり秋。冷たい風が冬の気配をつれてくる。

夕闇に包まれた中央広場はオレンジ色の街灯で淡く浮かび上がっている。まるでセピア色の古い写真の中にいるような錯覚。
広場の真ん中で誰かがピアノを弾いていた。

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ルーカスと落ち合い、広場の端にある建物へ入った。
今夜は彼のマスに参加する。マスとはミサのこと。

マスということだったので、てっきり教会に行くのだと思っていたけど、やってきたのはどう見ても教会という雰囲気ではなく、ただの古いビル。
ところどころ通路の壁にキリストの絵が飾ってあるだけ。

集まってくる人たちに笑顔で挨拶するルーカス。みな俺にも笑顔を向けてくれる。とてもフレンドリーな人たち。


細い階段を登っていくと、3階に小さな部屋があった。
中央に白い布がかけられたテーブルと簡単な燭台が置いてあり、それを囲んでパイプ椅子が並べられている。

「このテーブルは祈りのシンボルで、教会には必ず石のテーブルがあるんだよ。」

といろいろ教えてくれるルーカス。

30人ほどで椅子が埋まり、いよいよマスの始まり。
ガットギターを弾いて、1人のおじさんが歌いはじめた。
マイナーコードの厳かな曲調が部屋に響く。ところどころで皆も声をあわせて歌い、手拍子を打ち、その慣れた様子に日常的な空気を感じる。

そんな歌が響き渡る中、部屋にモンクが入ってきた。本気でファイナルファンタジーの白魔法使いみたいな格好。
すごい!!



クリスチャンの祈りってのは歌なんだな。
少しモンクが話をして、ガットギターで歌い、また聖書を読んで歌う。
Am~G~F~Eっていう物悲しく美しい曲だ。


それから人々がランダムに話をし始めた。
1人の話が終わると、静まり返り、また誰かが意を決したように喋り出す。
内容はわからないが、その雰囲気から、自分の悩みや問題を打ち明けているかのように感じた。

アルコール依存症セミナーみたいな感じ。
悩みを打ち明け、共有することで心を軽くするんだろうな。



その告白の時間が終わると、ガットギターが響き、合唱に包まれる。
すると、万を辞したようにモンクが立ち上がり仰々しく中央のテーブルに向かった。

そして何かを掲げた。
それは、ただのパンだ。こうべを垂れる人々。

モンクはそのパンをちぎり、細かくした。

そして銀の皿にのせて人々に配って回る。

「フミ、君は座ってるんだ。」

ルーカスが教えてくれる。洗礼を受けてないともらえないらしい。
皆、両手を出してありがたく受け取り、俺以外の全員に行き渡ると、歌を歌い、それを食べた。

同じように今度はワインの入った銀の杯をモンクが持って回り、皆ひと口ずつ飲む。



パンはキリストの肉でワインはキリストの血ってやつだよな。
現実味のない光景。
日本人からしたらただのカビ臭いおとぎ話。しかしそれを生活の中で習慣として続けている人たちがここにいる。




1時間半続いたマス。
ガットギターと歌が響く中、子供たちがわらわらとモンクのもとに集まり、頭を触ってもらっている。

するとギターが初めてメジャーコードに変わった。

立ち上がる人々、椅子が壁際に寄せられた。
皆が隣同士、手当たり次第にハグをし始めた!!俺も恥ずかしいけど知らない人とハグ!!
両頬をくっつけてチュッと口で音を立てる。


恥ずかしい(´Д` )!!



そして中央のテーブルを囲んで輪になり、腕を組んで踊り始めた!!
ハレルヤ~!!と大合唱!!


すっげぇ!!!

盆踊りみたいだ!!

ハレルヤ~~!!!



うーん、こういう小規模なマスがいたるところで行われているんだろうな。心穏やかな人生を送るため、お互いが愛し合っている。
これをいつもやってれば悪いことなんてしないよ。


隣人を愛しなさい
あなたの敵を愛しなさい
頬を打たれたら反対の頬を差し出しなさい
あなたから金を奪う奴を愛しなさい


誰かのために、神のために。


キリスト教やイスラム、クリシュナも、みんな神のために行動する。

しかし仏教はすべて自分のためだ。人に無償で良いことをするのも、死後に極楽に行くための己の徳を積む行為だ。
ということはそもそも仏教徒は欲の塊なんだな。

反対にクリスチャンや他の宗教は自分を犠牲にして誰かを救う教えだ。
ルーカスは言う。

「私たちがキリストを殺したんだよ。」

キリストは私たちのために犠牲になった。同じ過ちを繰り返さないよう、憎しみに憎しみを持って立ち向かってはいけないんだ。


これだけ成熟した教えがあるのに犯罪はなくならない。
利益のための戦争があり、人種の差別がある。
銃を持っていいなんて、もはやまったく宗教の意味がない。完全にキリストを磔にした連中と同じだ。

キリスト教に触れれば触れるほどその無力さを知るばかりだな。




ルーカス
「このバスに乗って終点まで行くんだ。途中で降りてはいけないよ。」


夜のバス停。ルーカスとの別れの時がきた。
この数日、とことんもてなしてくれたルーカス。
ホントにありがとう。


固くハグし、いつかの再会を誓った。
きっと俺たちならまた奇跡的な再会をするだろうと思う。
日本にきて欲しいな。俺も思いっきりもてなしたいよ。
そして日本に来たらルーカス信じられないくらいモテるだろうな。


バイバイ、ルーカス。





古ぼけたバスは住宅地の中に入っていき、落ち葉がつもるアスファルトを進んでいく。

ホントにここでいいのか?

と思いつつ揺られていると、バスが止まり、乗客たちがみんな降りた。
ここが終点か。
俺もバスを降りる。


「Fumiーーー!!!!!」


走ってきて飛びかかってきたのは、ノルウェーの北極圏で出会ったあのマリシアだ!!!
抱き合ってクルクル回る。



こうやって会えちまうんだからなぁ。


必然、とか、理由がある、とか前は思ってたけど、今は考えたくない。
この奇跡にそんなものはただの不純物だ。
素直に感動の驚きに身を任せていたかった。



落ち葉の道をマリシアの家に向かって歩いた。

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