10月9日 火曜日
いやー、最近余裕だなぁ。いつもメシ食ってお酒飲んでるもんな。
こんな感じでずっと行けるんじゃねーかなー。
ふん、まだ豊かな国しか言ってないよね。
と言いたくてしょうがない批判好きなあなた!!
お待ちかね!貧しい国の始まりですよ!!
ドイツやオーストリアの人がみんな言っていたんだよな。
チェコやポーランド、スロバキア、ハンガリー、この辺りは貧しい国で、盗みを働く人が多いって。
ルーマニアは行かないかな。
へー、そういうとこ避けるんだ。安全な旅だね。
って言いたくてしょうがない批判好きなあなた!!
昔は、なにくそ、そんな言うんだったら行ってやろうじゃねぇか!って、見返してやろうとしていたけど、そんな蛮勇を振るうほど俺ももう若くは………
いーや、今でも批判には立ち向かいたい。
ギャフンと言わせたい。
でもやっぱり危ないとこは行かないよ。
そこまでバカじゃない。
そんな奴らは好きじゃない
俺はそんなにバカじゃない、並みにバカじゃないから。
チェコ1発目の町、チェスキーブジェヨヴィツェ。
ゆうべ歩いた感じではなかなか栄えてるようだ。10万人てとこかな。
駅の前から、マクドナルドやスーパーマーケットのあるショッピングストリートが伸びていて、その先に川に囲まれた古い市街地がある。
市街地の中央には噴水のある大きな広場。
一歩細い道に入れば、石畳の路地裏にパブが並ぶとても雰囲気のある町だ。
ゆうべはその川を越えたところに広がっている公園にテントを張ったってわけだ。
さて、何しようかって、
とにかく腹減った………
昨日の昼から何も食べてない。
なんとか金を手にいれてメシ食わないと。
公園の端にある公衆トイレで身だしなみを整え、古い市街地へ向かった。
ボロい建物の路地を抜けると、大きな広場に出た。
石造りの古い建物が並び、中央に噴水がある。
こいつはきれいだ。
でももうこういう町並みは見慣れている。
今はとにかく飯だ。
ショッピングストリートの方に行ってみると、ゆうべとは打って変わり、清潔で活気のある通りになっていた。
すぐさま路上開始。
お腹が空いて声が全然出ないけど、出さないことには飯は食えない。
気合で歌っていると、ちょろちょろとお金が入る。
これがチェコのお金か。
なんか古臭い感じだな。
てか価値がまったくわからない(´Д` )
レートもわからない。
チェコって1食がいくらなのかな。それがこの国の金銭感覚の指標になるのだが。
とにかく1時間がんばって歌い、400なんとかくらいになった。
単位がわからない(´Д` )
すでに24時間以上何も食べてない。
金を握りしめて、お決まりのケバブ屋さんへ。
ヨーロッパではケバブが1番安くて腹一杯になるから。
えー、だいたいケバブは3.5ユーロってのが相場なんだけど………
60なんとかか。
どうなんだろ、高いのかな。
わかんないけど相場を調べるためにスーパーマーケットに入ってみた。
こ、こ、こ、こ、これは!!
ビールが1本、10なんとか。
すでに40本飲める(^-^)/
オーストリアの感覚でいくと1本1ユーロだったので10なんとかが1ユーロくらいの金銭感覚なのかな。
だとしたらケバブの60なんとかは少し高いな。
ビールが安すぎなのか?
安いパンを25なんとかで買った。
スーパーの外に出ると、屋台のファストフード屋さんがあった。
ポテトや揚げ物系のお店だ。
ここに決めてトンカツとポテトとサラダのプレートを注文。
59なんとか。
だいたい1食60なんとかってのが相場みたいだな。
腹一杯パンをむさぼって、元気百倍!!
路上再開!!
チェコってなんか閉ざされた国ってイメージだけど、歩いている人や話しかけてくれる人を見てるとそんなこともないように思える。
いや、もちろんドイツやオーストリアみたいなモダンな明るい雰囲気ではない。
どこか陰鬱として人々も気難しげだけど、イメージしてたほどではないな。
みんなオシャレないい服を着ているし、そこまで貧しいって印象は受けない。
たくさんの人が聴いてくれ、そして少しだけど会話もした。
チェコの言葉はオリジナルのチェコ語で、ありがとうを「ジェクゥェ」と言うらしい。
難しいなぁ。
ほとんどの人が英語喋れない。
日本人よりも低いレベルだ。
お金の単位はクラウン。
レートは、1ユーロ、24クラウン。
てことはだ、500mlのビールが10クラウンだったから40円くらいで買えるってことか。
安いにもほどがあるぞ(´Д` )
ケバブが60クラウンだったから2.5ユーロ。なるほどなるほど。
まぁ俺の場合は外貨を持ち込んで旅するわけではないのでレートは無視するとして、この国の国民の金銭感覚は1食60クラウンなので、60クラウンは600円くらいの値打ちだな。
地元の路上ミュージシャンのおっさんに、俺はいつもここでやってるんだこらどっか他のとこ行きやがれとチェコ語で言われ、俺が先にここでやってたんだからテメーが場所探しやがれと心の中で叫びつつ、場所を変えて歌い続け、夕方にはなかなかの稼ぎになった。
数えてみると、900クラウン。
てことは、この国の価値でいくと9千円くらいはゲットしたようだ。
まぁレート換算してみれば、わずか37ユーロなんだけどね。
荷物を片付けていると、宗教的な白装束をまとった兄さんが話しかけてきた。
さっきから路上で通行人に話しかけては何かを渡していた彼。
インド人が着てる、布を体に巻いただけのような衣装、鼻から眉間にかけて金色のインドっぽいペイントをしている。
かなり変わった風貌だけど、世界にはたくさんの宗教があるからな。
托鉢の坊さんだって同じ日本人から見ても異様だし。
そんな感じでおそらく何かの宗教の寄付を募る活動なんだろうなと思いながら見ていたんだけど、そんな彼が持っていたカゴからお菓子を取り出して差し出してきた。
お金はいらない、プレゼントです、と言う。
とても人懐こいフレンドリーな笑顔。
しばらく話していたら仲良くなり、彼の家に行くことに。
彼、ダニエルが信仰している宗教はヒンドゥー教の一派でクリシュナという神を崇めるもの。
彼のような信者をモンクと言うらしい。
彼はいつもあそこに立ち、通行人にお菓子を渡し、いくらかの寄付金をいただいて活動し、そして寺院に納めているらしい。
やってきた彼のアパート。
部屋の中には可愛らしい奥さんがいた。
驚くことに実はお互いまだ十代という若さだった。
信じランねえ!
ウクライナから来ているこのカップル。彼女はまだ大学生で今時の女の子なんだけど、同じクリシュナの信者だ。
大学の課題でプレゼンテーションの資料を作っているところで、可愛い絵を描いていたので何かたずねると、彼はウクライナを外国の侵攻から守った救国の英雄なのよ、と10代らしい無邪気な笑顔を見せてくれた。
救国の英雄、可愛いすぎ(^-^)/
みんなでお喋りしながらダニエルが作ってくれたのは、ジャガイモをカレーで炒めたようなやつと、同じく野菜をカレーであえたようなやつ、そしてナッツ類を混ぜたライス。
「ごめん、まだ食べられないんだ。先に神様に食べてもらうから。」
そう言って彼は銀色の小さなカップに料理を入れ、神様の写真が飾ってある棚にお供えした。
そして彼はマントラを唱えた。
神秘的なベルをチリンチリンと鳴らしながら祈りを捧げている。
まるで歌のような、いや、これは歌なのかな。
頭を床にべったりとくっつけてお尻を上げ、すがるような土下座で神に敬意を表している。
祈りが終わり、俺が興奮しながら神棚を見ていると、今ここを見てはいけないと言う。
神様が食事をしているところだから視線を向けてはダメなのだ。
うおー、なんて細かいルールのある宗教だ。
それから待つこと20分くらいかな。
もう一度マントラを唱え、お供えしたご飯を下げる。神様の前についたてを立て、俺たちがご飯を食べるところを見られないようにした。
さて、ご飯にありつける!と思ったらまだまだここから。
いただきますの祈り。
さらに、床に完全にうつぶせで寝そべっての祈り。これが本物の五体投地か!初めて見た!!
その姿はショッキングなまでに異様。完全に心の底から神に服従しているんだ。
俺もそこまではいけないが、というか日本人が当たり前にする、合掌といただきますを2人の前でやってみせた。
彼らの重厚で濃厚な祈りに対して、日本人の作法なんて簡単なもんだ。しかし誇りはもちろん持っている。
うまい!様々なスパイスをふんだんに使ったご飯!!
ダニエル料理上手!!
彼らはベジタリアンなので肉は入っていない。魚もだ。
チョコレートもコーラも、俗世なものは全部駄目。
ビールもタバコももちろん駄目。
体によいものだけを摂取し、祈り、日々を過ごしている。
なんてキレイな体してるんだ。
さらに頭の中もキレイだと思わせられる話。
彼らは朝イチに長い祈りを捧げる。それは朝が1番頭の中が空っぽの状態だかららしい。夕方にはすでに町の喧騒や俗世のことが頭に入ってしまっているので純粋な祈りにならないのだという。
これぞ信仰だな。
もうひとつ、初めてのものを目にした。
ダニエルはご飯を手で食べるのだ。
すげえ!!右手でこのカレーのねちゃねちゃした料理をつかんで口に入れ、指をなめている。
食べ終わると、器についた汁まで指で拭き取り、しっかり舐める。
衝撃すぎる。
日本人にとっては最悪中の最悪のマナー。見ていてちょっと気分悪くなるくらいの下品さ。
ポテトチップスを箸で食べるほど手が汚れるのが嫌いな俺には、もう宇宙人にしか見えない。
しかし、そう思うのは俺がヒンドゥー教徒じゃないから。この世界では1億人以上の人たちが当たり前に手でご飯を食べるんだ。
「このご飯は自分のために作ってるのではなく、神のために作ってるんだよ。食べ物も水も神からの授かり物なんだ。」
食事が終わってからも彼らの祈りは続く。食器を洗いながら、絵を描きながら、常に呪文のようにマントラを口ずさんでいる。
彼らは毎日2時間、このマントラを唱えなければいけないのだそうだ。
神秘的で霊感的な夜。
彼らの朝はとても早く4時には起きるというので、そろそろ寝ることに。
Fumiにとっていい場所があるからと言うダニエルについてアパートの階段を登っていくと、屋根裏にやってきた。
真っ暗な空間。
ケータイで中を照らすと、剥き出しになった大きな梁が浮かび上がった。そこらじゅう蜘蛛の巣がはっている。
まぁ贅沢は言えない。
朝の7時に祈りをするからよかったら来なよと言い、彼はドアを閉めた。
よし!!!
キレイな人たちは部屋に戻った!!
汚い俺はこいつを飲む!!
チェコビールゥゥゥゥゥゥゥゥリリリィィィィィィィィ!!!!
1人あたりのビール消費量、世界一のチェコ!!
日本人の3倍くらい飲むらしい。
サムライとして飲まないわけにはいかない!!
銘柄は!!!
ブドワイザー!!!!
バドワイザーじゃないよ。
アメリカのバドワイザーは、チェコのブドワイザーを飲んだ人がその美味しさにあやかりたくて真似してつけた名前。
もちろんイザコザあったみたい。
こっちが本家本元!!
うまいー!!!!
埃まみれの屋根裏から
旅人の詩がきこえてる
すすけたドアの隙間から
割れた階段の上のほうから
明りとりの窓に痩せた月
10月のボヘミアは黒い渦巻き
旅人の詩がきこえてる
埃まみれの屋根裏から