10月8日 月曜日
町の中の公園にテントを張ったんだけど、やっぱり人通りが多くて夜中まで話し声が聞こえていた。
テントの囲いは良し悪し。
見られていない安心感はあるけれど、自分から周りが見えない分、余計な妄想が膨らむ。
すぐ外に人がいるんじゃないか……とか。
それでもやっぱり寝袋オンリーよりはマシだ。
シャカ、シャカ、という乾いた音で目を覚ました。
ホウキで枯葉を集めている音だ。
テントから出ると、ゆうべの雨と風で散った落ち葉を、たくさんの清掃員たちが集めていた。
そして昨日の雨が嘘のようないい天気。
出発にふさわしいな。
最近メシが楽しみでしょうがない
ピザにどハマりしてます!!
だって安いんだもん!!
これで5.5ユーロ。ディアボロ。
オーストリアを出る前に、ウィーンの町を探検だ!!
かつてヨーロッパのかなりの地域を支配したオーストリア・ハンガリー帝国、
ドイツをも支配下に置いたハプスブルク家の神聖ローマ帝国、
その王都として栄華を極めたウィーンは、まさに街全体が宮殿のような美しい威厳に満ちている。
もーう、とにかく、建物が全部すっごい!!
巨大な教会、王宮、国会議事堂、その辺に普通に建ってるビルも、みーんな古めかしく豪壮。
こりゃー、確かにオーストリアの人が世界一美しい街って自慢げに言うだけのことはある。
俺もそう思う。
そして観光客もめちゃんこ多い。
この町は中国人よりも日本人が目立ったな。日本人はウィーン好きだ。
ウィーンにはなぜか道端に体重計が置いてある。
20セント入れないといけないけどね。
街の真ん中を分断するような大きなショッピングストリートは、すごい人で溢れている。
さすがはヨーロッパ指折りの都市…………
が、しかし………
今まで旅をしてきた俺の感覚が異様さを感じている。
この町には不思議なことが起きている。
ストリートパフォーマーがたったの1人もいないのだ。
弾き語りはもちろん、観光地お決まりの銅像パフォーマンス、アコーディオン、さらにバイオリンもサックスも、誰1人いない。
それがとても異様に見える。
これは2日前のこと。
歌劇場の前で1人の女の子に話しかけられた。
彼女はギターを担いでいたんだけど、これはどこですか?と1枚の紙を見せてきた。
そこにはいくつかの場所の名前が書かれていて、それぞれに時間帯が示してあった。
何それ?と聞くと、これは路上パフォーマンスのライセンスだと言う。
あなたもギターを持っているから知ってると思った、6ユーロ払ってゲットしたと言っていた。
場所と時間帯を指定され、それ以外の場所ではプレイしてはいけない。
大都市ではよくある規制だ。
しかしそんなもん、あってないようなもの。
どこの町でもみんなたいがい無視してパフォーマンスしているのが実情なのだが……………
この完璧に誰もいないという光景は、よほど厳しい取り締まりがあることを物語っている。
物乞いジープスもいない。
夜中はいたんだよ。ジープス。
変な酔っ払いみたいな弾き語りの兄ちゃんもいた。
昼間は完全に排除されてるんだろうな。
まぁ、別にもうオーストリアは完璧満足してるし、とっとと先に進んでしまおう。
駅でWi-Fiにつなぐ。
オーストリアはWi-Fiが充実してるなぁ。
町歩きしてても、ケータイを開けば色んなところでWi-Fiを拾えるくらい。
次の国はチェコ。
チェコスロバキアじゃないよ。
もう分離してチェコとスロバキアでそれぞれ独立してるからね。
チェコといえばなんと言ってもプラハ。
美しく詩情に溢れた町というイメージ。
ていうかプラハしか知らない(´Д` )
ほかには一体何があるのか?
きっと国中に美しい町や自然があるはず。
しかし全てを回るつもりはない。
プラハともう1つくらい別の町に行けばいいだろう。
その町をどこにするか調べる。
しかし………
iPhoneをアップグレードしたことによってMAPがだいぶ様変わりしたんだよな。
はっきり言ってクソ。
クソすぎてまったく役に立たない。
今までは道の入り組み方や駅の大きさなどで、その町の規模やメインストリートの場所なんかが感覚で把握できていたんだけど、今回のアップグレードで、その感覚がまったく使えなくなってしまった。
駅の場所が表示されない、道はわかりづらい、かなり拡大しないと線路が出てこない。
おかげで町を俯瞰的に把握することが出来ない。
あー、マップルさん、あなたのとこの地図が1番見やすいです。
アプリで世界地図出して下さい。
無料で(´Д` )
もうどこでもいいやと、南部の町、チェスキーブジェヨヴィツェに行き先を決めた。
言いにくすぎ(´Д` )(´Д` )(´Д` )
41ユーロで切符を買い、満員の地下鉄を乗り換えまくって出発駅へ。
飯を食べたかったけど時間がなく、やってきた電車にかろうじて飛び乗ることができた。
オーストリア、いい国だったなぁ。
こんなに美しい歴史をとどめた国が他にもあるんだろうか。
古城がたたずむ町、城壁に囲まれた田舎町、ドナウ川沿いのワイナリー、ウィーンの石の街並み、オペラ、白ワイン、
飛ばすはずだった国なのに、今のところのベスト1に躍り出てしまった。
また必ず戻ってきたい国だな。
電車は国境を越えたところで止まった。
寂しげな駅。もうチェコだ!!
そしてここでもいつものようにパスポートチェックはなし。もうこんだけチェックがないと本当にこれって必要なのか?と思えてしまう。
イマジンゼアーズノーカントリーだ。
ここでお世話になったオーストリアの鉄道、QBBともお別れ。
チェコの電車に乗り込む。
………ボロいな。
そして音がすごい。
運転が荒い。
ロシアの地下鉄を思い出す。
オーストリアの人がみんな口を揃えて言っていた言葉。
「チェコは貧しい国だから気をつけないといけないよ。」
気を引き締めないと。
列車は22時30分にチェスキーブジェヨヴィツェの駅に到着した。
ここはチェコだぜー。
………重大なことを忘れていた。
チェコってユーロじゃなかったんだ(´Д` )
ガーン(´Д` )
夜風が虚しく吹きぬける。
ちょこっと電車にゆられただけで文無しに変身してしまった。
今夜飯ヌキですよ、お母さん(´Д` )(´Д` )
ドイツからオーストリアは言葉も物価も同じような文化圏だった。
すっかりそれに慣れていたんだということを、このチェコの駅のまったくわからない文字を見て思う。
ガラリと変わった。
何もかも。
文化の違う国に来ると、町の景色が様変わりする。
旅人としての喜びはあるが、この寂しさは冷たくなった夜風のせいだけではない。
これが世界一周だ。
まだまだこんなもんじゃないだろうが、だいぶ本格的になってきたなと、ひと気のない夜中の町を靴音を響かせて歩いた。