8月25日 土曜日
静かな墓地公園。
教会の軒下で目を覚ました。
9時。だいぶ寝たおかげで体力も回復している。
トイレで顔を洗い、歯を磨き、天気がいいので靴下を洗濯。
いい加減、靴下の替えが欲しい。
不便すぎる。
都会でのヒッチハイクは難しい。
都市をつなぐ道が高速道路しかないからだ。
こっちの高速は無料みたいだな。
たまーに短い有料区間があるけど、ほとんど無料。
つまり日本での国道が高速道路みたいな感じだ。
幹線道路が高速なのでヒッチハイクする場所がそこしかないってわけ。
てなわけで次の町、ニュネスナムンに行く道も高速しかない。
しかも日本みたいにパーキングエリアってのがないんだよなー。
なんとか強引に高速の乗り口でヒッチ開始。
もちろん高速道路なので途中で降りることはできない。この前みたいにパトカーに乗せられることになる。
70km先のニュネスナムンまで一発で行けるかどうか。
10分後、車が止まった。
しかし、お姉さんはここから10km先までしかないと言う。
んー………まぁいっか!
記念すべきスウェーデン最初のヒッチだ。
パトカーが来るまでに捕まえてやる!!
スウェーデンはタバコが安い、スーパーマーケットではもっと安いんですか?と聞くと、スウェーデンのタバコは日本のようにどこで買っても同じ値段らしい。
あっという間に姉さんの目的地まで着き、高速の上で車を降りた。
よし!早くつかまえないと!!
すぐに親指を立てる。
しかし高速道路だ。
みんなガンガン飛ばしてるので止まれない!!
あー、止まらないー。
あ、反対車線をパトカーがかっ飛んでいった。
見つかっちまった。
やばい!!
あー、引き返してくるぞ、あのパトカー。
早く!早くーーー!!!!!
ウ~~~~ン!!
2度目のパトカーヒッチ成功。
しかも親切なことにこの先の駅まで乗せて行ってくれた。
タクシーですか?(^-^)/
「お母さん、あのアジア人なに?」
「しっ!見ちゃダメ!」
郊外の住宅地の駅。
ちょうどよく駅前が屋根のかかった通路になっていたのでそこで路上。
この先フェリーに乗らなければいけない。
おそらく今の手持ちでは足りない。なんとしても稼がないと。
やっぱりまだ体はきつい。
睡眠をしっかりとった分、少しは声は出るが、1曲歌うたびに疲れ果てて座り込む。
キツい。
関節が痛い。
そんな状態で2時間がんばった。
けっこうたくさんの人たちがお金を入れてくれた。
しかしそのほとんどが1クラウンで、数えてみると130クラウンしかなかった。
こんな感じなのかなー、スウェーデン。
いや、本調子に戻ればもう少しは稼げるはず。
いや、稼げないとまずいんだ。
ノルウェーで稼いだ金は、いずれやってくる大西洋横断の時のためにとっておかないといけない。
54クラウンの切符を買って、電車に乗りこんだ。
たどり着いたのはストックホルムから南に位置するニュネスハムンの港町。
ターミナルはなく、電車を降りるとそのまま港の岸壁で、たくさんの露店で賑わっている。
おいおい、なんでこんなに人が多いんだ?
たしかに世界遺産であるゴットランド島に渡るフェリーが出る港ではあるが、それにしても多いなと思っていると、どうやらヨットの大会が開催されているみたいだった。
ちょうど沖からたくさんのヨットが帆を広げて港に戻ってきている。海に浮かぶ白い帆が風を受けて膨らんでいる。のどかな光景だ。
それにしてもおばさんの腕時計がいつはじけ飛ぶか心配(´Д` )
スウェーデンはショートカットして早めに抜けるつもりだったんだが、その考えを変えてくれたのが、ここからフェリーに乗って渡る世界遺産の島、ゴットランド島だ。
これまでたくさんの魔女の宅急便の舞台みたいな町を見てきたけど、どうやらこのゴットランド島が本家本元、魔女の宅急便のモデルらしい。
どんな美しい港町なんだろう。
行かないわけにはいかない。
フェリーターミナルで船の料金を調べる。
1番安いやつで297クラウン。
うーん、高い。
ノルウェーのロフォーテンで乗ったフェリーが168クラウンだったから、それくらいかなと思っていたんだけどな。
島からの帰りはまた別の~って町に戻るつもりだけど、それも同じ値段らしい。
あわせて600クラウンか。
しかし、このゴットランド島はスウェーデンのメインイベントだからな。
ていうかまず現在の手持ちが250クラウン。
足りない(^-^)/
なんとかこのニュネスハムンで稼がないと。
今日は下調べだけにして、寝床を探して歩く。
田舎はいいな。どこででも眠れそうだ。
大きなスーパーマーケットのcoopを見つけ、食材を買いこむ。
やっぱりスウェーデンは物価が安いんだわ!!
ビールが………10クラウン(´Д` )
ノルウェーでは安くても25クラウンはしたもんな。
ウキウキでいろいろ見て回ってると、いいものを見つけた。
フォークとスプーンとナイフがセットになったもの。
ナイフには栓抜きもついてる。
ピンがついててコンパクトにまとめることができる。
これが……
いくらだと思う?
49クラウン(´Д` )
600円くらいか。
安すぎ。
アウトドアコーナーにテントも売ってたんだけど、500クラウンだった。
今までロシアから国境を越えるたびに物価が高くなっていたから、安くなることがたまらなくお得な気分だ。
あ、あと北欧はどこにでもあったんだけど、このものすごい数の箱。これ全部チョコとか飴とかグミとかのお菓子が入っている。
スコップですくって紙袋に入る計り売りのお菓子だ。
日本の子どもに見せたら飛び上がって喜ぶだろうな。
coopの近くに港を見渡せる岩の丘を見つけ、その上で荷物をおろした。
今日はここで寝るか。
雨さえ降らなければ最高の野宿なんだけどな。
ていうかテントくらい持っとけよな。
ドイツは物価が安いみたいだから、入ったら探してみよう。
そしていい加減、バッグを引っ張るキャリーも手に入れないと肩がおかしくなる。
風邪は少し良くなったみたいだ。
鳥肉がっついたし、ゆっくり眠ればきっと明日には元気になってるさ。
今、夜の9時。
片方の空の端っこがわずかに明るい。
まだ寝袋がないと眠れないけど、それでもだいぶ暖かくなった。
ずいぶん南に下ったんだなぁ。
アフリカはどんなとこなんだろなぁ。
おやすみ、遠い国の人たち。