8月21日 火曜日
夜露で濡れた寝袋は、朝の日差しですっかり乾いた。
きれいな青空の下、湖では朝から人々が泳いでいる。
タバコを購入。
思い切って30本入りを買ってみた。
ノルウェーには10本入り、20本入り、30本入りが売っていて、多くなるほど割安になる。
日本ではタバコの値段はどこも一律だが、こっちでは店によってかなり変動するので「REMI 1000」とかの安いスーパーマーケットで買うことをオススメする。コンビニでは絶対に買っちゃだめ。
タバコやめたら?ってみんな思うだろうけど、それだけはできん。素晴らしい景色の中、孤独の夜、タバコは俺にとってとても大切なもの。
しかしパッケージにこれだけグロい写真が印刷されてると、さすがに気が引ける。
北欧ではツバコというニコチンが染み出る小袋を上唇と歯の間にはさむ禁煙グッズが広く利用されている。
おかげで地面にはタバコの吸い殻じゃなくて、ツバコの吐き殻だらけ。
さて今日も路上。
たくさんの人たちが行き交うメインストリート。
しばらく歌っていると、昨日のフィリピン人の男の子、リジーが笑顔でやってきた。学校が終わって飛んできたみたい。
「Do you have Subway in japan?」
俺のためにサブウェイのサンドを買ってきてくれたリジー。
俺にそれを渡すとリジーは友達と喋りに行った。
穏やかな日差しと気持ちの良い風が吹く路上でサンドを頬張っていると、見計らったようにジープスが寄ってきた。
金をやる気は毛頭ないが、暇つぶしに話を聞いてやった。
ジープス
「Please, Please.」
文武
「What about this?」
手に持ってるカードになんて書いてあるか聞いてみた。
ジープス
「I have children. home. please, please.」
文武
「Oh,me to. I have children.」
たじろぐジープス。
子供がいるんですぅ……っていう決まり文句に効果的な返しを見つけた。
俺も日本に子供がいるんだよ。
ジープス
「Please. God help you.」
文武
「I’m buddhist.」
冷たくあしらっていると、どんどん仲間が集まってきた。
3人のジープスに取り囲まれ、差し出された紙コップがチャラチャラ揺れる。
俺はサンドを頬張りながら、鼻で笑う。
ジープス
「No job. food.」
文武
「This is your job. Let’s more work.」
ジープス
「なめてんじゃねえぞ、このチンカスが!!」(推測)
最後はキレるのがお決まりのパターン。チンカスはてめーだ。
牧師さん、神の名をかりて怠惰を貪る者に何を説く。
リジーが戻ってきたので彼にギターを渡して俺はしばし休憩。
ギターは下手なリジー。曲も1曲しか知らないから延々リピート。
しかも携帯で歌詞を見ながらなので途中途中で途切れたりしている。
しかし、
歌が上手いのでガンガン金が入る。
うおー………
足元の金を見るジープスの気持ちがわかる(´Д` )
わずか小1時間で500~600クラウン稼ぎやがった。
いくらフミに渡せばいい?と律儀なことを言ってくる爽やかリジー。
もちろん彼の稼いだ金はすべて彼のものだ。
荷物を片づけ、寝床に移動するよと言うと、ついていくよとリジー。
ギターを弾き、歌いながらついてくる。
バス停の前、住宅地、そしてスーパーマーケットの中でさえリジーにとっては歌える場所なんだ。
湖のベンチに着くと、リジーは弾いていたギターをおろした。
いつかまたどこかで会えるといいねととびきりの笑顔。
言葉や行動の端々に彼の賢さが見えていたんだけど、彼は将来医者になりたいんだという。
きっと音楽も続けるだろう。
彼の輝かしい未来が手に取るように見える。
リジー、いつかまたどこかで一緒に歌おうな。
彼が帰ってから、服を脱ぐ。
今日は俺も泳いでやると決めていたのだ。
周りにはたくさんの水着の人々。
恐る恐る湖の中へ……
冷たいぞーーー!!!
意を決して飛び込んだ。
気持ちいい!!
楽しくて湖の真ん中あたりまで行ってみようと試みるが、あまりの体力のなさにすぐに引き返し、岸に戻る頃には半分ドザエモンになってた。
かつて津軽海峡を泳いで渡ろうと考えていた20代前半はいずこに………
おかげで体が冷えきって、震えながらこの日記を書いてます。
あー、故郷の川が懐かしい。
明日は移動だ。
ノルウェー最後の街、オスロが待っている。
そして北部のトロムソで知り合い、ロフォーテン諸島に向かうヒッチハイクで奇跡の再会をしたあのソフィアも待っている。
久しぶりにシャワー浴びてベッドで眠れるぞ!!
1ヶ月近くかかったノルウェー。
もうすぐお別れだ。
こんなライブのチラシとかあるよね。