7月14日 土曜日
マクドナルドは偉大だ。
安いし、コーヒーおかわり出来るし、トイレ無料だし、Wi-Fi飛んでるし、コンセントあるから充電もできる。
街のことを知らない人間にとっては駆け込み寺みたいなものだ。
あ、ちなみにロシアからずっとトイレ有料。
フィンランドは1ユーロ。
これからどこに進んでいこうか。
とりあえずバルト海沿いに北上して、スウェーデンに入るつもり。
ヘルシンキから100kmくらい北にタンペレという町があるので次はそこにしようかなら。
しばらくマックでのんびりしてから駅に向かい、タンペレ行の列車の料金を調べた。
30ユーロか。なかなか高いじゃねぇか。
持ち金は50ユーロ。虎の子の3000円はまだ使わずに持っている。
今日は昼から夜まで歌いまくって50ユーロは稼ぐぞ。
そして明日にでも移動しよう。
昨日と同じ通りへ行き、昨日差し入れしてくれた屋台でいちごを買った。
俺のこと覚えててくれて、今日も歌うのかい?と笑ってくれ、2ユーロのところを1.5ユーロにまけてくれた。
暖かい日差しの中でイチゴをほおばると甘美な喜びが口いっぱいに広がる。フィンランドのイチゴはとても美味しい。太陽の恵みに感謝。
気分良く歌い始めると、今日はなかなか反応がいい。
やっぱりビビりながらやってちゃ、それが伝わるんだよな。
日本語ペラペラの可愛い女の子が話しかけてきてくれた。
日本が好きでいつか留学に行きたいと言う。
ショートヘアでヘプバーンみたいに可愛らしい。
「私、タカラヅカ好きです。だからこの髪型。」
やっぱりムーミン大好きなんだって!
しばらく歌い続け、16時くらいになりオシッコに行きたくなる。日本だったらギター置きっぱなしで物陰で済ますところだが、トイレに金を払わなければいけないほどの綺麗な街で立ちションは気が引ける。
35ユーロにはなったし、どっか移動してノンビリするかなー、というところで、ある男が話しかけてきた。
まるでアイドルみたいに爽やかでハンサムな男。彼は25歳のフィンランドの青年、ピーター。
とても気さくでフレンドリー。
「Comeon my place. If you want.」
きたぁぁぁぁぁ!!!
ピーターは昨日のホームレスみたいな怪しいやつではない!!
ありがとうーーー!!
一緒にバスに乗って郊外へ。
建物が並ぶ中心地を離れると、緑豊かな一本道がどこまでも続く。
そんな静かなバス停で降りる。
え?ここ?
周りは森しかないんですけど。
こっちだよ、というピーターに着いて歩いて行くと、なにやら森の中に入って行く。白樺とクリスマスツリーからの木漏れ日が気持ちいい。
え?こっち?なになに?この先に家なんかあるの?
と不思議に思いつつ土を踏みながら歩いて行くと、森の中に静かにアパートがたっていた。
うおー!すげー!さすが北欧!
彼の綺麗な部屋の中には、ルームメイトのテーモがいて、ウェルカムとにっこり。
太っちょでにこにこしてるテーモ。
ピーターがサウナに行こうと言うので、あー、海外ってお風呂のことサウナって言うのかな、近くにスーパー銭湯的なものがあるのかな、と思っていたら、
ここがフィンランドだということを忘れていた。
フィンランドって言ったらサウナ発祥の国じゃねーか!!
なんと、アパートの中にサウナがあるのだ!!
そう!!暑い部屋の中に入る、あのサウナ!!
アパートの2階にある部屋に入り、裸になり、シャワーを浴びていざ、サウナイン!!
男3人、並んで座る。
テーモの足元には水の入ったバケツとひしゃく。
それ何?と聞くと、彼はおもむろにひしゃくで水をすくって焼けた石にかけた。
むせるような蒸気が立ちのぼり、身体を包む。
そして持ってきたペットボトルで水を飲む。
彼らは毎日サウナに入ると言う。
フィンランド人にとってサウナは伝統的な文化で、何も特別なことはない。たいがいのアパートにはあるし個人の家にもあるとこにはあるらしい。
真冬には、暑くなったら雪の中、外に出るんだそうだ。
こうした日本にもあるもので、なにげなく体験していたもののルーツを見つけることがこんなに楽しいとは。
サウナの中はいい。
裸で狭い空間の中にいると、何か腹の底まで話がしたくなる。
フィンランドの話をたくさん聞いた。
日本の人や言葉をジャパニーズと言うように、フィンランドはフィニッシュ、スウェーデンはスウェディッシュという。
北欧の歴史なんて全然知らないが領土に関わる歴史があったようで、スウェーデン語はフィンランドのセカンドラングエッジなのだそう。
フィンランド人はスウェーデン語を喋れる。
しかしスウェーデン人はフィンランド語を喋れない。
でもピーターのような若いフィンランド人はもうほとんどスウェーデン語を喋れないそう。
中国と日本みたいだ。
きっと深い歴史があるんだろうな。
日本はアジアの先進国。
アメリカは世界一の大国。
イギリスは由緒ある国。
有名な国には、それぞれ世界に対しての必要性を感じる。
ではフィンランドは?
フィンランドがフィンランドとして存在する必要性とは?
国境が陸続きにあるという感覚が日本みたいな島国の人間にはわからない。
ヨーロッパには無数の国が陸続きに形成されていて、ほとんど同じ民族が住んでいる。
何か世界に冠たるものがない国にだって人は住んでいて、世界に国家として認められているんだよな。
愛国心ってあるのかと思ってしまう。きっとみな自分の国を誇りに思っているんだろうな。
あ、みんなムーミン大好きらしい。
ムーミンってフィンランドのどこかにあるムーミン谷に住んでる妖精なんだって。
あとサンタは北部にあるサンタクロース村に住んでる。
トナカイは美味いらしい。
冬はほとんど極夜状態となり、日中でも暗いんだって。
夏はこんなに日が長いのにねー。
オーロラはアオロラと言い、冬季の北部地方で見ることが出来る。
ぁぁぁぁぁあああちいぃぃぃぃ!!
我慢の限界が来て、外に出ると2人は奥の扉を開けた。するとそこにはなんと!!プールがあるじゃないか!!
ザブンと飛び込むピーターとテーモ。
俺も!!
いやぁぁぁっほーーーいぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁ!!!!!!!
冷水じゃねえかコノヤロウ!!
死ぬかと思った………
でもこれが気持ち良くて久しぶりに泳ぎまくった。
そしてまたサウナ。
そしてまたプール。
そしてまたサウナ。
こりゃ健康になるわ。
風邪なんてひかないな。
ばてばてになるまではしゃぎまくった後で、ピーターとスーパーに食材を買いにでかける。
外国で友達が出来たら必ずやりたいと思っていたこと!!
そう!
焼きそばを食べさせてあげること!!
簡単に作れて間違いなく美味いから。
海外で焼きそばを流行らせてやる!!
食材売り場に到着。
えーっと、玉ねぎと、キャベツと、豚肉と、麺と、
オタフクソースぅぅぅぅぅぅぅぅuuuuuurrryyyyyyyyyyy!!!!
人生初の塩焼きそばに挑戦。
惨憺たる結果となり、ピーターとテーモに日本人は普段こんな物を食べてるのかというイメージを植えつける。
優しい2人は残さずに食べてくれた。
ごめん。
そしてフィンランドのビールを飲んで眠くなるまで語り合った。
宗教は何?という俺の質問に、ピーターはLove、と答えた。
ロマンチストだ。