9月25日 火曜日
ATMコーナーの通路では眠れない。
人が頭の横を歩くから。
しかし朝まで誰にも追い出されないなんておおらかな国だ。
人々が通勤し始めたころに、裸足の詩人に別れを告げ、俺はバーガーキングでインターネット。
ひととおりメールなんかのチェックをしてから店を出た。
中央駅から30分ほど歩いた静かな駅前に、ケーキ屋さん「タンポポ」はあった。
中に入ると、先日植松さんたちとの出会いの時にガイドをしていたカナコさんが、忙しそうに動き回っていた。
「あらー、帰ってきたの!おかえり!もうオクトーバーフェスには行った?」
お店では数人の日本人女性が働いていた。
テーブルではケーキとエスプレッソコーヒーを楽しむドイツ人たち。
日本人がこうして外国で受け入れられている姿はやっぱり嬉しいものだ。
スープや激ウマなプラムのタルト、エスプレッソをいただいた。
あー、落ち着く。
ゆうべのATMでのあられもない俺を見てる人が、このオープンカフェでくつろいでる姿を見たらどう思うだろ?
なんかそれがおかしかった。
聞いてみると、オクトーバーフェスの会場はここからすぐ近くの場所だそう。
よーし、クレイジービール祭り!!
行ってみるか!!
荷物を置かせていただいて、ビール1杯分の10ユーロと、写真用のトロールを持ってレッツゴー。
少し歩くと、チラホラと伝統服姿の人々が目立ちはじめ、彼らに着いていくと、どんどん人波が膨れ上がっていく。
路上にはたくさんのストリートパフォーマーの姿。
弾き語り、バンド、フォルクローレ、アコーディオン、銅像、バケツや空き缶によるドラム演奏、
めちゃ激戦地!!
そしてついに会場である公園に到着。
なんじゃこりゃーーーーー!!!
広大な公園に一大テーマパークが出現した!!!
ジェットコースターなんかの絶叫アトラクション、お化け屋敷とかの箱物、射的、くじ引き、もうなんでもあり!!
もちろんレストランや土産物屋さんも無数にある!!
凄まじい人ごみ!!
まともに歩けない。
こりゃバッグパックでは来られないわ。
世界最大規模のお祭りとは聞いていたが、これはなっとくだ!!!
もう子供にとっても大人にとっても天国みたいな場所!!
誰もが笑顔でお祭りに酔いしれている。
このディズニーランドみたいなすさまじいアトラクションが3週間のお祭り期間の後には全部撤収されるってのもすごいよな。
祭りにかける気合いが違うね。
人だかりの出来てるとこがあったので近づいてみると、ハンマーでぶっ叩いて重りを跳ね上げ、鐘を鳴らすというヨーロッパのお祭りに必ずあるよね!ってあのアトラクションがあった。
力自慢たちが次から次へとハンマーを振り、観客たちは大盛り上がり。
恋人の前で良いところを見せようと頑張る若い兄さん。
年季の入った手さばきでハンマーを振り下ろし、勢いよく鐘を鳴らすおじさん。
若者ではなくじいさんが壇上に上がると、ひときわ大きな歓声!!
というわけで俺も挑戦!
アイムジャパニーズと言うと、すごい歓声が上がった。
ハンマーを持ち上げようと……
これは重い。
なんとかハンマーを抱える様子にみんなの笑い声。
見てろよコノヤロウ!
こうみえても鳶で培った大ハンマー振りの実力は伊達じゃ………
3回叩いて一度も鐘まで届かず(´Д` )(´Д` )
悔しすぎる(´Д` )(´Д` )
いやー!ダメだったー(^-^)/テヘッ!!
と友達と笑いたいところだけど誰もいないからすごすごと歩く。
さて、ここはビール祭り。
ここまで来てビール飲まなきゃ死んだほうがマシ。
てなわけで適当にビアハウスの中へ。
会場内にはたくさんのビアハウスがあるが、これはすべてミュンヘン市内のブリュワリーのものだ。
それぞれ趣向を凝らした建物。
この日に威信をかけているんだろうな。
なにこれ?(´Д` )(´Д` )(´Д` )
体育館みたいな巨大なビアハウスの中はもう信じらんねー光景。
生バンドの演奏にみな椅子の上に立ち上がり歓声を上げながらビールジョッキをかかげる。
うわー!!ドイツだーー!!!
俺も飲む!!
兄さん!!ビール1杯!!
「どっか座って。プイ。」
そ、そ、そ、そ、そっけないですね(´Д` )(´Д` )(´Д` )
どうやら席に座らないと注文できないシステムらしい。
えーっと……どこに座ろうか………
って比較的すいてる場所は全部リザーブ席。
自由席はというと、
完全に出来上がってる人たちが揉みくちゃで飲みまくってて座るスペースなんかない。
文武
「あ、あ、あの、どこか座るとこないですか?」
店員さん
「相席いいか?って聞きな。プイ。」
つ、つ、つ、冷たいですねあなた(´Д` )(´Д` )(´Д` )
阪神優勝の時のひっかけ橋みたいなことになってる中に入っていく勇気が俺にはない。
全開で己のすべてをさらけ出している人々の絶叫の中、ウロウロと情けなく歩き回る。
他のビアハウスにも行ってみたが、システムはどこも同じだ。
店員さんは死ぬほど忙しそうなのであまり頼りにならない。
えー、こんなん1人じゃ絶対座れないよぉ………
しかし飲まなきゃ死んだほうがマシなんだよな。
ここで決めてやる!!とルーベンブロイのビアハウスへ。
するとちょうどテラスの席に座ってる団体が帰るところだった。
すかさず座るゥゥゥゥウウウウウウゥリィィィィィイイイイ!!!
やった!!やったぞ!!
俺は座った!!
このオクトーバーフェスで座る場所をゲットした!!
オラぁ!!ビール持ってきやがれコノヤロウ!!!!!!!
あ、10ユーロですね。
高いですね。
ビールでか!!
1リットルジョッキは持ちあげるだけでもひと苦労。
目の前に座ったウクライナ人と乾杯!!
うっめ!!
うっめ!!これ!!
オクトーバーフェスのビールは特別なビールで、アルコール度数が6パーセントあり、味も濃い!!
もうビール入っちまえばこっちのもん。
ジョッキ片手にビアハウスの中を歩き回り、酔っ払いたちと絡みまくり、バーカウンターでシュナップスというかなり強いスピリットをショットであおりまくる。
みんなと抱きつき、大声で叫び、女の人に色目をつかう。
文武
「オクトーバーフェスさいこーーー!!!」
酔っ払いドイツ人
「イエーーー!!!!」
酔っ払いドイツ人
「ウッヒョョョオオオーーーーー!!!!」
酔っ払いドイツ人
「オエェェェェェ!!!」
オクトーバーフェス名物、「ビアライヒェン」
ビール死体という意味。
そしてトロールはすべての世代に大人気。
女の子口説きたいならトロールを持っていけばいい。
オクトーバーフェスは11時に閉園する。
それからみんな街に繰り出し、クラブなんかで朝まで騒ぎ倒すらしい。
仲良くなった兄ちゃん姉ちゃんグループと完全にその流れの中にいたんだけど、荷物をカナコさんのお店に置きっぱなしにしている。
さすがに放ったらかしにして飲みに行くのはマズイ。
バッカヤロウ!!どこにも行かさねーぞ!!
っていう兄ちゃんたちに、また戻ってくるからと告げ、ビアハウスを飛び出した。
あー、きつい、飲みすぎた。
人ごみを避けて歩くのが難しい。
さっきまで見ていた色とりどりのアトラクションと賑やかな雰囲気が、酔っ払うとさらに楽しく感じられる。
みんなに抱きつきたくなる!
でも早く戻らなきゃお店が閉まってしまう。
フラフラしながらなんとか会場を抜け出し、静かな通りを歩き、やっとの思いでタンポポまで戻ってきた。
息を切らしてお店に入ると、日本人店員の女の人が1人で掃除をしていた。
「あ、もうカナコさん帰っちゃいました。」
あー、カナコさんごめんなさい……
酔っ払ってもう帰ってこないと思ったんだろうな………
明日また挨拶に来よう。
酔った体に荷物を担ぎ上げ、歩く。
ふらりふらり
よろりよろり
これからー………
会場に戻ってー………
女の子をー………
エプロンドレスをー………
エプロンドレスをー………
エプロンドレスをー………………
ベンチで気絶(´Д` )