2006年5月2日 【奈良県】
あさって、日本のフォーク全盛期の70年代から活動を続けているフォークの大御所たちが一堂に介するスーパービッグイベント『春一番コンサート』が大阪で開かれる。
フォーク好きなら絶対に行くべきだと聞いていたあの春一番。
5月4日~5月7日の4日間にわったって開催されるらしく、しかも!!4日にはあの遠藤ミチロウさんが、ノータリンズというマニアには垂涎もののトリオでやってくるという。
うわああああああああああああああああ!!!!
4日は名古屋で独唱パンクなんだよーーーー!!!!!
5日は甲賀で俺がライブ。
行けるとしたら6日。
でもこの日のラインナップもすごい。
憂歌団の木村さん、いとうたかおさん、加川良さん、などなど。
10組以上の日本を代表するミュージシャンたちのステージをわずか3500円で見られる!!!
一度は観たいと思っていた人たちばかり。
ミチロウさんは残念だけど、こいつは行くしかないな。
悶々と楽しみにしながらこの日はほとんど動かずずっと日記を書いていた。
明日はしっかり奈良を回るぞ!!
翌日。
だああああああああああああああああ!!!!!
もういやああああああああ!!!!!
飛鳥時代、都のあった明日香町は今ではただののどかな田園地帯。
この前走った時は快適な田舎ドライブだったのに……………………
なんじゃこりゃーーーー!!!!!!
大渋滞に人・人・人!!!!
ただの田んぼが広がる田舎道なのに車まみれ!!!
遺跡をパンパンって回るつもりだったのに混みすぎて一向に目的地につきゃせん!!!!!
時間がもったいねええええええええええ!!!!!
ゴーデンウィーク嫌すぎるうううううううううううううううううう!!!!!!
やっとこさ今日の1つ目の飛鳥資料館に到着。
くっ!!
パーキング500円だと!!
ゴールデンウィークやからって足元見やがっておのれ…………………
館内に入るといきなり出迎えてくれたのは飛鳥時代にあった噴水石人像。
他にも仏教伝来の地でもあるので、一般的な寺に祭られているのとは異なった趣の大陸的な仏像の数々。
広い展示室内には石包丁や農耕器具、鏡に玉など古代の人々の生活をうかがえる品々がズラリ。
中世も面白いが古代もすごく興味深い。
次にやってきたのは日本で1番最初にできた寺、飛鳥寺。
500年代に仏教が日本に入ってきた際に、当時力を持っていた2つの豪族が仏教否定派・肯定派で対立。
否定派が物部氏、肯定派が曽我氏。
もともと仲が悪かったのでこれをきっかけに衝突。
そして否定派の物部氏をぶっ倒した曽我馬子が建立したのがこの飛鳥寺だ。
仏教国家日本はここから始まったんだな。
日本一古い仏像、飛鳥大仏に感動。
裏庭に回ってみた。
寺の周りはのどかな原っぱ。
雑草が春の日差しを受け元気いっぱいに背伸びしている。
あー、まさにこの地に、1400年も昔に日本の首都があり人々が暮らしていたんだ。
風化した歴史の上に咲く花が眩しいほどに鮮やかだ。
よーし、この調子で次に石舞台古墳に行くぞーー!!
って、うわああああああああああああああああ!!!!
もういやだああああああああ!!!!!
ウジャウジャとまぁ、よくもこんなに大渋滞起こしやがって………………
俺もその1人なんだけど……………
あ、もういいや。
もう我慢の限界。
石舞台古墳が明日香のメインではあるんだけど、もうどうでもよくなって素通り。
165号線で2大寺院、長谷寺、室生寺方面に向かうが面白いくらいまったく動かない。
遠回りしてでも行ってやろうと脇道使って頑張ったが、寺に着いたころには閉門5分前。
はっはー!!!
ゴールデンウィークなんて嫌いだ……………
165号線でそのまま三重県に突入した。
銭湯でテレビを見てると、九州方面の高速道路で78キロなんていうとんでもない渋滞があったらしい。
電車も新幹線もバスも飛行機もパンパン。
景気が悪いだの小泉がどうだの福祉医療の予算がこれっぽっちだの消費税これ以上あげるなだの、不満ばっかり口にしてる割にはレジャーに何十万円も使っている。
ディズニーランド行くお金があるんだから日本は裕福だわ。
テレビでは地球温暖化で北極の氷が溶け、シロクマが絶滅危惧種に指定されたという報道も流れている。
動物の種が1つ絶滅するのに今までは何千年もかかっていたらしいのだが、人間が地球に誕生して文明を身につけた時代からあっという間に何百種もの動物が絶滅したらしい。
文明は手放せないけど動物保護、環境保護を唱える現代人。
人間はすぐに滅びる。
恐竜時代の方が長いんだし、氷河期の方が人間が生きた期間より遥かに長いんだ。
人間は滅び、いつしかまた環境に合った生命体が生まれ、やがて人間について学ぶだろう。
人生80年。
どんなに積み上げても、どんなに失敗しても、すべてはほんの一瞬の出来事。
というわけでほんの少しでも積み上げようと今日は松阪にやってきた。
気合いを入れて歌っているとたくさんの人が聞いてくれ、中には泣いてくれたおばさんまで。
うれしい。
俺の歌も地球の中ではあまりにも小さい。
こんな歌、いやこんな歌だからこそ輝いている。
さぁもっと歌うぞー!!
翌日。
ゆうべ松坂での路上を終え、13000円のあがりを持ってそのままライブハウス『マクサ』に顔を出した。
俺のこと覚えていてくれたマネージャーの中村さん。
ここの常連の剛兵太さんが俺のことを話してくれていたようだ。
「ブッキングしてやってみる?」
「は、はい!!」
『マクサ』は全国的に有名なミュージシャンが数多く出演するかなりレベルの高い店。
そう簡単にホイホイ立てるステージではない。
なのに俺みたいな何処の馬の骨とも知れんやつをツアーミュージシャン扱いでチケットノルマなしでブッキング組んでくれるということになった。
やばいぞ……………
こりゃ生半可な気合じゃ務まらん。
日程は8月5日に決定。
四国お遍路が終わってからだな。
必ずレベルアップして戻ってくるぞ!!
そして一夜明けて5月4日。
名古屋市内に向けてアクセルを踏む。
今日はあの噂でしか聞いたことのない恐怖の弾き語り集団、独唱パンクの一大イベント。
独唱パンクを代表する最強のメンバーが日本中から集結するらしい。
すごい夜になりそうだ。
着いたのは市内の東山公園前にあるライブハウス『BL』。
「おー、久しぶり。へへへ、今日はすごいよ。」
迎えてくれたのは、あの岐阜の変態パンク野郎、キヨマロさん。
キヨマロさんお久しぶりです!!!
薄暗い小さな店内に入ると、オールスタンディングで50人くらいのハコに只者じゃなさそうな面構えの若者たちがウロウロしている。
あ、あれ………………?
あれは……………どこか見覚えのある人がいる。
「ん…………?えーと……………あー!!覚えてるよ!!日本一周の!!大阪の江坂だったよねー!!」
3年前に大阪の江坂で行われたテディーさんが出演したイベントに出ていたあの夜士郎さんだ!!!
あの時は弾き語りの深さをまったく知らなかったもんだから、なんか変な歌うたってるなーくらいにしか思ってなかったが、今思えばあれが独唱パンクとの初対峙だったんだ。
緊張が店内にとぐろを巻く中、照明が落とされた。
「今日は最後まで楽しんでいってください。」
今回のイベントの主催者、大島圭太さんの挨拶。
この方は名古屋を中心に活動する弾き語りの人で、この前の万博のイメージソングを歌い一躍有名になったツワモノだという。
ゴールデンウィーク中に名古屋市内で30イベントをこなすという恐ろしいスケジュールを敢行中なんだそう。
ズガーーーーーィィィィィンン!!!!!!!!
「夜士郎参上おおおおおおおおおおおお!!!!!!うああああああああああああああああ!!!!!」
さぁ始まった!!!
1番手は夜士郎さん!!!!
窓を割るかのようなアコギの大爆音と、マイクをくわえ込んでの絶叫が鼓膜をつんざく!!
ステージ上を所狭しと暴れまわる夜士郎さん。
客席に降りてきて客の耳元で叫び散らし、床を転げまわりながら気が狂ったようにギターをかき鳴らす!!
エイリアンが腹から出てきそうなんですか?ってくらいのたうちまわって半死でステージ終了。
……………す、すげすぎる……独唱パンク………………
1番手から並のライブのトリなんか足元にも及ばないようなド級の迫力。
もうこれだけでお腹いっぱいなくらいスリリング。
2番手がキヨマロさん!!!!
夜士郎さんのあれだけステージが繰り広げられた後なので、何やってもショボくなりそうなもんなのに、1曲目の『ちくわ』で瞬時にキヨマロワールドに塗り替えた。
ぷるぷる震えながら恥ずかしそうに歌ってるのが演出なのかなんなのかわからんけど、めちゃくちゃ引き込まれて完全に空気を持っていく。
さすがキヨマロさん!!!
かっこいい!!!
3番手が小島けい子さん。
独唱パンクの紅一点。
女だてらにエレキをかき鳴らし熱唱。
そして次の人が半端じゃなかった!!
4番手、井上卓。
アコースティックギターの弾き語りなんだけど、ピックを使わずチョッパーでものすごい音を出してくる。
震えがくるリズム感の中に、だみ声でメロディーなしの言葉の洪水。
ホラー映画の中にいるかのような錯覚に陥る。
完全に常人の域を逸脱している。
目の前で繰り広げられるあまりの出来事にただただ口を開けるのみ………………
もう写真撮る余裕なんて皆無。
最凶とはこのこと。
アコギの弾き語りの概念が粉々に砕け散った。
マ・ジ・で・最凶!!!!!
5番手は鈴木ケンスケさん。
正統派弾き語りで、歌もギターもうまい。
MCの1つ1つにも溢れ出るものを吐き出す魂があり、男前だし曲もポップだ。
この人の名前これからよく聞くだろうな。
6番手がラ・ケンターズ。
博多からやって来たごつい人。
「男には!!負けるとわかっていてもやらなきゃいけない時があるううううううううああああああああああああ!!!!!!」
間奏なし1曲10分ひたすら己の主張!!!
ぶっ飛びすぎ!!!!!
7番手!!!チバ大三!!!
ついに現れた!!!!
独唱パンクのボス、チバ大三!!!
この変態たちをまとめあげる日本アングラ界の担い手だ。
短パンにタイツ、おでこにヘッドライトという変態の王みたいな格好で目をひんむいてお兄ちゃんんんんんんん!!!って叫んでる。
完全に禁断症状でてる。
俺の中で弾き語りが崩壊しっぱなし。
そしてトリが大島圭太さん。
やはり場慣れしまくってる!!
ノセ上手で客席をひっぱる!!
万博のイメージソングらしいラブアンドピースソングは、偏屈ぞろいのこの客層にはあまり受けなかったが、さすがに熱いステージだった。
ライブが終わると、見ていただけなのにすごく体力を消耗してしまった。
1人1人が大きなライブのトリを張れるような実力者。
それを8組も立て続けに見られるなんてすごく贅沢な時間だった。
ていうかみんなイカレてるんだけど、やっぱりうまいんだよなぁ。
リズムも音程も、曲の構成も。
うまさの中の乱れなんだよな。
無闇な乱れはただのヘタクソなんだと思い知らされた。
「金ちゃんも来るだろ?」
打ち上げに誘ってもらえて、中心メンバーたちで店を出て、買出しをしてからみんなが寝泊まりしている宿舎にやってきた。
元保育園の建物をイベント中の宿泊施設にしているみたい。
テーブルに座りきらない人数で乾杯。
んー、完全に部外者の俺。
居心地悪さマックス。
「オーイエー!!ウィーアーファッキンジャパニーズ!!OK!?」
外国人さんにわけのわからないこと言ってる赤頭。
今度は反戦イベントやろう!!と語ってる人。
水戸黄門がイラつくと熱弁してるやつ。
みんな一癖も二癖もっていうか癖しかない人ばかりで、収集がつかないカオスな飲み会が続く。
俺みたいな凡人にはついていけなくて、ただひたすら愛想笑いしていた。
さんざん騒いで2時くらいになると1人づつ昏睡し始めた。
あれだけの演奏した後だもんな。
あー、みんな変わりもんばっかだからうまく話せなかった。
つまんない奴だなって思われたくなくてなんとか頑張ろうとしたけど、そんな自分に気づいてまた斜に構える。
俺ってコミュニケーションとるのヘタだなぁ。
俺って変わりもんになりたいのか。
変わりもんになったらコミュニケーション取れなくてもそれで言い訳できる?
ただ個性が足りないだけ?
ただ心を開けてないだけ?
布団にくるまって雑魚寝したけど、心がざわついてなかなか寝付けなかった。