2005年 6月13日 【北海道一周】
目を覚ましたら昼の11時だった。
ここはシンジのアパート。
朝まで飲んでたもんな…………
のそのそと準備をして2人でアパートを出た。
これも何かの縁だろってことで、今日仕事が休みというシンジと札幌観光をすることに。
というわけで観光と見せかけてソッコーでススキノへ。
ススキノウヒョオオオオオオオオオオ!!!!
男の楽園んんんんんんんんんんんん!!!!!
いや、ススキノはもう観光地みたいなもんやろ!!
北海道来たならそりゃイかなきゃ!!!
ウッキウキでススキノのやってきてみると、もうすごい。
すごすぎる。
ただの風俗街なんだけど、おそらくその規模は日本一。
ズゴンズゴン立ち並ぶドでかいマンション並みのビルの部屋ほぼ全てが風俗店という狂気のパラダイス。
俺もシンジも性欲たまりまくってるのでヨユーで突撃することに。
やってきたのは『マッ○スビル』。
なんと30分3000円!!!
安すぎる!!!!
居酒屋やん!!!!
30分後…………
マジ札幌住みたい。
めっちゃ可愛かったし、
めっちゃ上手だったし、
もうなんかもう、めっちゃ好き。
ビルを出て、シンジと2人、肩を組んでススキノをあとにした。
お昼ご飯は、今や立派な北海道グルメのひとつになったスープカレーを食べてみた。
友達にオススメされていたお店『イエロー』。
うまし。
札幌といえば時計台。
札幌は明治2年に開拓が始まり、時計台が建てられたのは明治11年。
最初は鐘楼だったのが14年に時計に変わり、火災などの災害を免れて今も当時の姿を残している。
周りはスーツの人たちがぞろぞろ歩き、車がひっきりなしに往来するオフィスビル街だが、この建物を見ていると、まだ土一面の荒野だった明治期の札幌が浮かぶ。
いい場所だ。
千歳鶴の酒ミュージアムで試飲をしまくり、酔い覚ましに大通公園を歩く。
街の真ん中にこれほど広く、緑豊かで噴水なんかが整備された広場がある街って珍しいな。
たくさんの人たちが寝っ転がったり家族で遊んだりストリートパフォーマンスを楽しんだりしている。
シンボルのテレビ塔は登るのに700円かかるのでサヨウナラ。
同じく展望台のあるJRタワーも900円なのでサヨウナラ。
夜までぶらついてからシンジの友達が経営しているテレクラにやってきた。
路地裏の汚い雑居ビルに入り、いかにも妖しげな店の中に入っていく。
こ、こんなとこ俺初めてだなとドキドキしていると、シンジは慣れた様子で受付の横のプライベートドアを開けた。
中にはドレッドやらタトゥーやら、ワルそうなやつらが数人いた。
「おー、お疲れ。はいよ。」
渡されたタバコを吸い込む。
シンジもこの札幌の悪い奴らの仲間なんだな。
「はーい、奥の部屋どうぞー。」
一応ちゃんと営業もしていて、窓口から客の手が見える。
その手に鍵かなんかを渡すだけの簡単な仕事。
客から事務所の中は何も見えないのでみんなやりたい放題だ。
このプライベートルームにも受話器があり、シンジがどっかの暇な女と喋っている。
「テレビ塔のとこいるのー?割り切りでいいー?」
受話器を置いた。
「バカばっかだな。」
悪い奴らに囲まれてあんまり居心地よくなかったけど、俺もテキトーに受話器を取って女の子としゃべったりして、シンジの部屋に帰ってきたのは2時ごろだった。
いつのまにか寝ていた。
朝、仕事に出かけるシンジを見送ってから俺もノソノソと部屋を出た。
さぁ北上開始だ。
と思ったら、今日から北海道神宮ってとこの例祭があるという情報が入ったので少し見に行ってみることにした。
札幌市のはずれにあるこの北海道神宮。
さすがに神宮なだけあって広い境内に立派な建物が建っている。
創建は明治3年。
北海道開拓の守護神として明治天皇の勅命で建てられたんだそうだ。
さぁ、どんなお祭りなのかなぁーと楽しみにしていたら、なんと本祭は明日。
神輿の渡御はあさってとしあさって。
今日は夕方から前夜祭みたいのがあるだけなんだそう。
んー、そんなに時間はかけられない。
先を急ぐか。
車を走らせて石狩市にやってきた。
石狩川の砂嘴を走り、本町に到着。
石狩鍋というだけあって、鮭漁で一時代を築いた往時の面影を残す古い町並みが広がっている。
町から先は砂丘地帯になっており、遊歩道を歩くと小鳥のさえずりが心地いい。
石狩川はその昔、日本一の長さを誇る信濃川とほとんど同じ長さだったのだが、水害がひどい為に川の直線化工事が施され、結果長さとしては日本3位に転落した。
厚別、浜増と海岸線を北上。
崖と奇岩が続くこの道路は走っていて飽きない景勝地だ。
雄冬の展望台に登ってから、さらに北上すると増毛の町に入る。
去年、『國稀』の蔵見学に来て以来だなー。
パパッと町並みを見て回り、次の町、留萌へ急ぐ。
なぜ急いでいるのかというと、この留萌には日本一夕日がきれいといわれる黄金岬っていう場所があるから。
そんな場所があるならなんとしても夕日を拝みたい。
北海道の広い道路をかっ飛ばし、なんとかギリギリ黄金岬に到着し、水平線を眺めた。
雲があったことで、太陽が海に沈んでいく姿こそ見られなかったが、絞ったばかりの夕日の赤が心を洗ってくれた。
あー、綺麗だなぁ。
すごいところにいるんだなぁ。
夕焼けを背にして山に入り、真っ暗闇になったころに旭川の町に着いた。
チェーン店のかつやでカツ丼を食べ、近くのセブンイレブンに車を止め、今日はここまで。
あー、毎日よく走ってるわ。
翌日。
旭川から北に向かって走り、塩狩峠で三浦綾子宅を見学した。
もともと旭川市内にあった三浦商店。
三浦綾子はこの小さな商店のごく平凡なおばちゃんだったんだそうだ。
それが仕事の合間に書いた小説が見こまれ、やがて日本を代表する作家になっていったというからすごい。
俺も今ではすっかり三浦綾子ファン。
そんな三浦商店だが、取り壊すのは惜しいということで彼女の代表作のタイトルでもあるこの『塩狩峠』に移築し、記念館として無料開放されている。
『氷点』を執筆した部屋、実際に使っていた机や座布団などが、おしげもなく展示されている。
本人の写真なんかもたくさん見ることができ、これで無料は大満足。
旭川市内にある三浦綾子文学記念館よりもこっちのほうがオススメだな。
士別、名寄までぶっとばし、ナイオロップの滝では熊に襲われないかビビリながら森を歩く。
うん、なかなかいい滝だ。
名寄から母子里と、ガンガン車を走らせる。
アスファルトは整備されていても、もはやここまで来ると人間のテリトリーというよりも獣のテリトリー。
しかもここは日本最低気温の-41.2℃を記録した場所。
こんなクソ山奥のクソ寒いとこにも人間は不思議と暮らしている。
朱鞠内湖は周囲をダムに囲まれたために出来上がった日本最大の人工湖。
原生林におおわれた静かな湖面には小島がポツンポツンと浮かび、幻想的な雰囲気を作り出している。
まるで写真で見たことのある北欧の森のようだ。
ルアー釣りの名所でもあり、貸しボートに乗り、自然の音しか聞こえない幽玄とした湖に糸を垂らし、幻の魚、イトウを狙うという。
湖岸に車を停め、しばらくぼーっと静かな湖を眺めていると、いきなり草むらから何かが飛び出してきて水際で魚を追いだした。
キタキツネだ!!
すげえええ!!!
可愛いーーー!!!
が、喜んでシャッターを切っているのは俺だけ。
数人釣り人がいるが誰もキツネに見向きもしない。
なるほど、いちいち驚いてないで自然と一体にならないとな。
俺もまだまだだ。
それにしてもキツネがめっちゃいる。
山の中を走っているといたるところでキツネが見られる。
他に走っている車なんてまったくないド山奥なので道の真中に停車すると、車に近寄ってきてちょこんと座った。
車から降りると草むらに逃げ込んだが、草の間から頭を出してこっちを見ている。
ブーツと一緒に写真を撮ろうと思って脱いで地面に置いたら、警戒しながら走ってきてブーツをくわえて逃げようとしやがったので追っかけっこ。
可愛い。
車に乗りこみ発進させると、後ろをタッタッタとついてくる。
バックミラーにずっと写ってて、なんだかスピードが出せない。
そうして300メートルほどついてきたが、ようやく諦めて森の中に帰っていった。
可愛いなぁ。
人間が餌あげるから慣れてしまってるんだろうな。
苫前の海岸線、崖の上に並んだ巨大な風力発電の風車群を見ながら走っていく。
軽く30基はあるこの風車で、どれだけの人々が明りを得るんだろう。
そんなことを考えながら風車群の足元をかいくぐり、サンセット王国といわれる羽幌町に着いたころには、町が誇る黄金の夕焼けが海を燃やしていた。
海岸沿いのボロ小屋が夕焼けに染まる。
海に向け石を投げている子供たち。
地元のおばさんが波打ち際に座ってケータイをかざし写真を撮っていた。
話しかけると、夏の夕焼けが1番きれいだよと教えてくれた。
羽幌町のささやかな飲み屋街にある『かっぱ食堂』のジンギスカン丼を食べ、道の駅の日帰り入浴へ。
550円で22時までやってるからありがたい。
さっぱりして港の端にあるサンセットビーチの駐車場に車を止めた。
明日はここから沖にある焼尻島、天売島に渡る。
フェリー代が高いんだよなぁ…………
港の有料駐車場も高くて1泊800円もする。
なので車はここにこっそり停めといて1番安い渡航ルートを考えないとな。
便数も少ないのでおそらく島で野宿1泊は覚悟しないといけない。
明日は長い1日になりそうだ。
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