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旅人バス、佐藤さんに想いをぶつけた







リアルタイムの双子との日常はこちらから






2004年 10月26日




「何じゃこりゃあああああああああああああああああああああああ!!!!」



ユウキの絶叫で目を覚まし外に飛び出した。



「うわあああああああああ!!!!」







ファントムも道も畑も森も電線も屋根も、おまけに歩いてるお婆ちゃんも全部真っ白!!


すげええええ!!!

雪すげええええええええ!!!!



ファントムに乗ろうとすると、ドアノブが引けない。



思いっきり力を入れると、ガリガリ、バキッ!!と氷が割れて開いた。


乗り込んだはいいが、フロントガラスに隙間なく雪が積もっていて何も見えんし車の中が暗い!!!





手でモサモサ払って、ワイパーをガラスから引き剥がし、ハンドルの下についてる暖気ボタンを押す。



北海道やべえええええええええええ!!!!



















もう何もかも真っ白。


ところどころに建つ家はクリームケーキの上の飾りだ。




山田親方の加工場に着くと、今日最初の仕事は雪かき。


でっかいプラスチックのスコップでサクサクっと切り取っていく。













今はまだ水気があってくっつくけど、これが真冬の−20℃とかになるとサラサラの粉になり、全然溶けないからゴミ扱いになり、排雪場というとこにダンプで運ばれるらしい。


ほっときゃなくなるっていうもんじゃないんだ。






南国育ちからしたら有り得ないような吹雪の中、作業。


フワフワだから呼吸してると鼻の中に入ってきて冷たい。


山田親方の頭の上にも積もってる。


屋根から雪の塊がドシャっと落ちてきて直撃。


あー、全てが楽しい。


でもすぐに嫌になるんだろうなぁ。









帰り道、吹雪が吹きつける夜道をトラックを飛ばす。


正面から雪が吹きつけると、まるで前に進んでいないかのような不思議な感覚になる。




頭の中にあるのは小屋建設の件。


仕事のことや旅のこと、音楽、曲作り、美香のこと、新しいバイトやら車の借金やら、考えることは山ほどある。



もし、もし小屋建設をやらなかったら、金も時間も体力も、どれだけ浮くかわからない。


その分他のことにエネルギーを費やすことが出来る。




そんなことを考えていると、頭の隅で、



(やらなくてもイインダヨォォォ すっごい楽ダヨォォォ)



とサボり太郎が囁き始める。




……………確かにそう。


そうなんだよなぁ…………



なんでやるのか。

やらなきゃ楽なのに。




かろうじて踏みとどまっているのは男としてのプライド。

辛いからやめる、だけは絶対にしたくない。



でも……………相当きついよなぁ……………














数日後。



急に明日仕事が休みになったので、ファントムに布団を積んで出かけることにした。









外に出ると初雪はすっかり消えてなくなっていた。


こうして10月の初雪はいったん消えて、11月から本格的な溶けない雪のシーズンが始まるんだそうだ。






芦別から滝川に抜け、留萌を通って増毛町に着くころにはすでに夜中の1時になっていた。


久しぶりに見る海から凍てつく寒風が吹き、車をビューンと揺らしている。



こんな日本海側の田舎まで来たのは日本酒の酒蔵に行くため。


美瑛にある酒屋さんで、北海道なら増毛のお酒がいいですよ、と聞いてここまでやってきたわけだ。



明日、久しぶりの蔵見学にワクワクしながら毛布にくるまった。













そして翌朝。


やってきたのは日本酒『國稀』の酒蔵。





明治時代の蔵の面影を残しつつきれいに整備された蔵だ。


煙突から湯気が上がっており、車から降りると米をふかす匂いがたちこめている。


あー、日本酒ももう造りのシーズンに入ったんだな。






9時になって出勤してきたおばちゃんと一緒に蔵に入った。


意外と静かな蔵内。


あれ?さっきの湯気は?



残念ながらここでもサラッと見学コースを回っただけで大したことは聞けなかった。


せっかく気合い入れて長靴履いてバンダナ巻いて綺麗な格好してきたのに…………



一見古い蔵だったけど、ドアを開けると中では白衣の人たちが機械にまみれてスイッチを押していた。


試飲もしたが、よく言えば後切れが良くて、悪く言えばよそよそしい感じだった。


蔵人さんと仲良くなれるような雰囲気はなく、仕方なく中田さんにお土産で特別純米を買って蔵を後にした。









酒を抜くため、町の中を散歩した。



日本海に面した町、ここ増毛といえば鮭の溯上が有名。


9~11月がシーズンなので、もういないかなと思いつつもちょっと期待して川をのぞく。




うん…………やっぱいないか。



河口には無数のウミネコとカラスが、俺と同様、シーズンの終わりを残念がって鳴いている。






アイヌの言い伝えで、鮭の獲りすぎを戒める話がある。


あるアイヌの部落の長老の枕元に、夜な夜な神様が現れて、

「明日鮭が溯上するけど獲らんといてねー。卵産んだら獲っていいからー。」

と告げた。



明くる日、その言葉通り、川には埋め尽くすほどの鮭の大群。


鮭ってのは卵を産む前の方が断然うまい。


やっちまえー!!と捕まえまくったところ、村の妊婦に陣痛。


こりゃめでたい続きじゃ!!と喜んだんだが、生まれてきた赤ちゃんの背中を見ると、そこには鮭の鱗が生えていたという…………


そんな怖いお話。




この世のものはすべて神様のお恵み。

あらゆる命に感謝して自然と共生していこうという教えなんだな。



「あっ!!」



川の中、1匹出遅れたやつが、のらりくらりと登ってる。

すごいなぁ、なんで登るんだろうなぁ。


冷たい水の中を震えながら登っていけーだな。











富良野に帰るかと山道の92号線で滝川まで戻ってくると、「金滴」という酒蔵の看板が目に入った。


お、ついでにここも行っとくか。





「見学?ああ、できるよ…………こっち、はい…………ここ米蒸すとこ…………ここ、麹作るところ………」



ちょーーーーーぶっきらぼうなおじさんに案内してもらう。



「ここ、加水したり色抜いたりするところ。」



「色を抜く?ああ、炭素濾過ですね。」



「ん?よく知ってるな。業界の人?」



「いや、ただの酒が好きな旅してる者です。」



「ふーーーん。」



飲まずに軽く試飲させてもらったんだけど、淡麗な中に味が感じられて結構美味しい。



「また実際の作業とか見に来たいです。」



「兄ちゃん名前は?今度来る時は俺の名前出したらいいよ。その日の作業によるけど体験できるかもしれんから。」



ぶっきらぼうだけどすごくいい人だった。

わざわざ増毛まで行かなくても滝川でこんないい蔵を見つけられてめっちゃラッキー。


冬場になったらまた見学に来させてもらおう。



















それから富良野に戻り、いざ佐藤さんのとこへ向かった。


なんとしても俺のイメージをちゃんと伝え、それを受け入れてもらいたい。


もしダメだったら諦める!!


気合十分!!


今日は絶対にゆずらんぞ!!!




「こんにちはー!!」



「おー、どうもどうも。で、あそこ借りる気になったかい?」



「いや、あそこは維持・管理の問題で無理だと判断しました。それでやっぱりどうしてもバスでやりたいです。」



俺の気持ちを熱く語った。


旅人が雨風をしのげて、静かに自分自身を見つめられる場所。

金は取らずに自由に出入りでき、己のみに縛られるシチュエーション。


寄付金ボックスを置いて、利用した人がお気持ちを入れてくれるシステムにして、たまに佐藤さんに様子を見に行ってもらって管理費にしてもらう。


基本佐藤さんは何もしない。


あくまで利用者が自分の責任で使う。




これまで考えに考えた内容を正直にぶつけた。


まだまだ詰めるところはいっぱいあるけど、今の精一杯を語った。








そしてついに佐藤さんがうなずいてくれた。



バス案決定。



場所も決まり、全面的に協力してくれるという佐藤さん。

管理もしてやってもいいと言ってくれた。


もちろん何年後かにやめなければいけなくなった時のバスの解体費用は俺持ち。

それは当然覚悟の上だ。



あとは年間の土地の使用料。



「んー…………いらないよ。」



えっ!!



「もともと遊んでた土地だしぃ、寄付金で少しは入るべ。でも、もしなんかあったときは兄ちゃん頼むからな。」



作業1日目は来週の日曜にしますと伝えファントムに乗りこむ。


佐藤さんの姿が見えなくなった瞬間、思わず叫んだ。




「やったぞこのやろおおおおお!!!どうだ俺えええええ!!!!」




俺すげえええええ!!!見たかコノヤロウーーー!!!!って車の中で叫びまくる。


こんなうれしいの久しぶりだ。

とうとうGOサインが出た!!

認めてもらえたんだ!!





あまりにもうれしくて中田さんに電話をかけた。


いつもはそんなに声を荒げない俺が興奮して話してるとおばちゃんも半泣きになってる



「よかったしょやー。うぅ…………私もうれしいわー。」






 夜、中田さんちに呼ばれて行くと、鳥料理で有名な『とりせい』のフライドチキン、魚やらお吸い物やら、とにかくご馳走がテーブルに並んでた。



「今日はめでたいからな!!よかったしょや文武!!」



何度も親身になって相談に乗ってくれ、いろいろ調べ物もしてくれていたおじさんもすごくうれしそう。


まずは第1段階クリアーだ。



必ず成功させてみせる!!


やるといったらやるぞ!!


忙しくなるぞーーーーーー!!!!








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