足守の侍屋敷と近水園を見て、高梁市へ向かった。
高梁市はお爺ちゃんの家がある川上町の近くで、何度か来たことがあるのでスイスイ走れる。
古い高梁の町の中を散策すると、昔は分からなかった新しい発見なんかがあってすごく面白い。
こんな味のあるいい町だったんだな。
あとめっちゃ山奥の町なのに、意外と女子高生のスカートは短い。
これも新しい発見。
お爺ちゃんお婆ちゃんに次会うのはいつだろうって思ってたけど、こんな近くまで来たんだから美香を会わせに行くことにした。
お婆ちゃん驚くだろうな。
ワクワクしながら山道を走ってると、道の脇に滝があったので、車を止め、脇にある掲示板を見る。
『この滝は、三段からなっており、滝全体を見るためには、ここから登らなければ見えません。』
よし登るぞ!!
森に突入し、けもの道をテクテク登っていくと次第に険しくなり、しばらくすると道がなくなった。
「どうする?」
「ここまで来たんだし、行っとく?」
そこまで危険そうな山でもなかったので、草やツルをかきわけ、急斜面を木につかまりながら上へ上へと登っていく。
しかしどれだけ登っても滝を見下ろせるような場所に出てこない。
本当にこのルートで合ってるのか?
「ねぇねぇ、そろそろ戻ろうよ…………絶対おかしいって。日が沈んじゃうよ。」
後ろからそう言う美香に、もうちょっともうちょっとと言いながら登り続けていたけど、さすがに時間がヤバくなってきた。
もう戻ろうか。
滝が見れなくて悔しいな…………
残念だけど戻ろうと振り返ったその瞬間だった。
バキッ!!
美香が片手でつかまってた木の枝が腐っててへし折れ、勢いよく斜面を転がり落ちた。
「美香!!」
草をなぎ倒しながらゴロゴロとすごいスピードで転がり、10mほど下の太い木にぶつかり、なんとかそこに止まった。
う、嘘だろ!!!!!!
「大丈夫かー!!!」
「………………」
枯葉に埋もれ、俺の位置からではよく美香が見えないが、そこに止まったことはわかった。
「絶対動くなよー!!すぐに行くからなー!!」
「うー…………」
つかまる所もなく、何度も足を滑らせながらやっと美香のもとにたどり着いた。
「痛いところはある?どっか折れてそう?」
「うー鼻が痛い…………」
鼻から下が血でベトベトになり、恐怖で小刻みに震えている。
「大丈夫か?立てそうか?えーと、と、とりあえず血をふこう。」
「ポケットにハンカチが…………」
「よし、鼻の他に痛いとこあるか?」
「んーん大丈夫………早く降りよう…………この山……」
「よ、よし、じゃあ俺につかまれ。立つぞ。」
枯葉の中から美香を抱き起こし、体を支えながらゆっくり山を降りる。
すでに日がだいぶ沈み、薄暗くなってきている。
鼻血が止まらず口からもしきりに血を吐いてる美香は、
「あたし、最強やね。こんな経験もうできんよ。やったー。」
とヤケになってる。
マジでごめん…………
俺がしつこく登ろう登ろうって言ったばっかりに…………
山を降り、やっと車にたどり着くと、ガクッと膝をついて美香の呼吸が急に荒くなった。
「おいっ!!大丈夫か?」
「う…………うん、降りれて気が緩んだだけ。早くお爺ちゃん家行こ?」
「それより病院行くぞ!!頭打ったやろ。」
「大丈夫、大丈夫。ほんとに何ともないから。鼻血が出ただけやからね!!ほら、お爺ちゃん家行こー!!」
車を走らせお爺ちゃんの家に着き、お婆ちゃんの暖かい手料理を食べた。
お婆ちゃんのきんぴらごぼうはもう最高にうまい。
美香も、うまいうまい、と2人でパクパク食べ、どんぶりいっぱいのきんぴらが一瞬でなくなってしまった。
お爺ちゃん家のフカフカ布団で目をつぶると、美香の握ってた木が折れて、体が傾くところ、斜面を転がるところ…………全てがスローモーションで何度もグルグルまぶたに映る。
ぞっとして、隣で寝息を立ててる美香を強く抱きしめた。
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