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心配していたみんなゴメン!

今、無事イルクーツクに着いたよ。
心配していたみんなゴメン。
とりあえず日記を更新するから足跡を見てみて下さい!



7月3日 火曜日

ゆうべふと考えた。
金はない。
ということは帰ることができないということ。
地球の反対あたりまで行って帰れないということ。
知り合いもいない。
ドンドン進んで行って、北欧に入って、金がなくなり途方に暮れたとき、俺は本当の一人ぼっちを知るだろう。
とてつもない恐怖が襲いかかってきた。
初めてこの旅の恐ろしさを感じてしまい、震えた。
合言葉の「なんとかなる」は通用するんだろうか。



目を覚ますと知らない部屋。
どこだここ?
ロシアだ。

ウラジオストクの空は雨模様。
暗い空の下、街には霧がかかっている。

ロビーに行ってWi-Fiをつないだ。
キーのついてないWi-Fiは無料なのかな。ちょっとビビりながらも接続してブログを更新した。

よっしゃーー!待ちに待った朝飯!
めちゃんこハングリー!
バイキングの朝食だー!
ゆで卵、美味しい!
ソーセージ、美味しい!
あとはなんか知らん料理!
コーヒー美味しい!
オレンジジュース最高!
パンが異常に美味い!
コーンミール美味しくない!

photo:01



でも腹が減りすぎてて逆にあんまり入らないんだよな。
とにかく食えるだけ食って、レストランを出るときこっそりパンを3つくすねた。


さて、シベリア鉄道の中はシャワーがないというのは有名な話。
3泊4日も乗りっぱなしなのにシャワーがない。
なめてんのか?
いや、旅ですからね。
我慢しますよ。
しっかり体を洗いまくってホテルを出た。


ウラジオストクはインフラ整備が行き届いていない。
というか日本がきれいすぎなのか?
未舗装の道路に雨が溜まり、サンダル履きの足は一瞬でドロドロになった。
ギターケースもドロドロに。
いいね。旅っぽくなってきたよ。


駅前に戻ってきた。たくさんの人々が歩いている。
今まで日本を回ってる時、
今日は雨だし、いっかな~、
とか、
今日はちょっと疲れてるからいいか~、
なんて歌うのをさぼることがよくあった。己に克つのはとても難しいこと。いっつも負けていたな。
そして今、ウラジオストクの駅前で俺はビビっている。
初めての海外。しかもよくわからないロシア。
果たして俺はこの駅前で歌っていいのか?
歌う?
何を?
もち日本の歌ですけど?
そんなんロシアで歌うの?
あぁ歌いますとも。
迷惑がられるよ?
かもしれませんよね………

心の中で己との格闘。怖い。
意を決して駅前の歩道に座ったものの、なかなか決心がつかず、ギターを取り出せないまま時間だけが過ぎていく。
すると、なんか汚いおばさんが横に座った。
どうやらこの歩道。コジキたちの定位置らしく、汚いおっさんとおばさんが手を差し出した状態でポツポツと立っている。
メッセージを書いた紙を手に持ってずっと座ってるおばさんもいる。あれなんだろ?

通り過ぎる人々が、コジキたちを見るのと同じ目で俺を見ていく。
おいおい、これでいいのか俺?
これでやっていくんだろ?
ビビっててどうすんだよ。
「今日はいいや」は即、死に直結だぞ?

どうにでもなれ!!!!






3間後。











ギターケースの中には数えきれない紙幣と貨幣。



音楽は……


信じられないほど偉大。


もちろん話しかけてきてくれる人々の言葉は一切わからない。

そんな困っているところに、天使が舞い降りる。

おっさん
「ピロシキピロシキマトリョーシカ。」

文武
「あー……わかんねー……」

天使
「ピロシキピロシキボルシチ。」

そこにやってきたのは英語の出来るロシア人。
しかもめちゃんこ可愛い!
音楽をやってるようで、話が盛り上がり、すっかり仲良くなった。

彼女はスヴィアタ。
モスクワから親戚に会いにウラジオストクに来てるところだという。

スヴィアタ
「フミ、 write Russia song?If you want」

マジでー!
各国でそれぞれの国の曲を覚えたいと思ってたんだけど、いきなりかよ!

スヴィアタが書いてくれた曲は、彼女の祖母がよく歌ってくれたというロシアのとてもとても古い歌。
スヴィアタが歌ってくれた。


なんて美しい曲なんだ。
日本にはないメロディ。叙情。

歌詞を書いてくれたんだが、キリル文字なんで読み方もわからない。
でもなんとしてでも、辞書で調べてでもこの曲は歌えるようになりたい。

photo:02




スヴィアタ
「ヨーロッパ回ってからまたモスクワに戻ってきて。会いたいよ。」

俺も会いたい。
旅の孤独が恋を求めているのか。
いや、先に進まなければ。

Facebookの名前を交換し、彼女は去って行った。
スヴィアタ、またどっかで。



兄ちゃん
「よし!俺んち行ってウォッカ飲もうぜ!!」

さっきからずっと聴いててくれてた兄さんがそんな感じのことを言った。
この兄さん、名前をキルユ。
英語は小学生レベル。でもロシアじゃ喋れるほう。


いやー、電車の時刻まであと2時間しかないし、
乗り遅れたらシャレにならんし。
ちょっと早めに電車に乗っておきたいんだよなー。
やっぱ初めての海外だしさー。




………………




photo:03



うっひょー!
やっぱロシアならウォッカだよねー!
さすがに家に行くと電車に間に合わんなるので2人で駅前のスーパーに入ってウォッカ購入!
路上で飲むのかと思ったらキョロキョロしていて、なかなかビン開けないキルユ。
なんとロシアでは路上でウォッカを飲んだらいけないらしい。
ビールはいいけどウォッカはダメなんだと。

キルユ
「OK、フミ、come on.」

途中、ノリで加わった兄ちゃんも一緒に、3人で駅の倉庫群へ。
そしてお巡りさんに見つからないように隠れてこっそりウォッカを開ける。

いえーい!
カンパーイ!
ウッヒョー!
ぎゃぁぁぁー!!

大騒ぎしていたらいきなり倉庫のドアが開いて中から荒くれ者っぽいおじさんが出てきたのでヤバイ怒られると思ったら俺にも飲ませろ!いえーいカンパーイ!

さらにそこに運送のトラックが入ってきたかと思うと、荷下ろしの人たちが出てきて、お?日本人かこいつ?みたいな雰囲気でもうわけわからん大盛り上がり。

トラック運ちゃんのアントニオ
「フミ!Do you like ニルバーナ!?」

文武
「レイプミー!!」

いえぇぇーーー!!!
うっひょぉおぉぉー!!!
ポニョポニョー!!

ウォッカをイッキ!
喉が焼ける!
キルユに渡されたオレンジにかぶりつく!
これがロシアンスタイル!
美味い!

photo:04





そんな意味不明な大騒ぎも、いつまでもしてるわけにはいかない。
みんなそれぞれの仕事へ。
キルユだけ俺を送りに鉄道駅へ。

けっこう複雑な駅構内。
しかしキルユが全部ロシア語で駅員さんに聞いてくれるので迷うことなくプラットホームに着いた。
ホームにはすでに電車が止まっていて、見送りの人々がそれぞれの窓に手を降っている。
ロシアは北極に近いせいかとても日が長く、22時半になってようやく夜の闇が訪れようとしていた。


文武
「キルユ! I miss you. スパシーバ!スパシーバ!」

キルユ
「フミ!ユージャポニーズフレンド!」


電車は走り出す。

シベリア鉄道の始まりだ。

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