スポンサーリンク 町の寿命 2017/7/31 2017/07/08~ ドイツ③, ■彼女と世界二周目■ 2017年7月13日(木曜日)【ドイツ】 ハイデルベルク「コンコンコン……………コンコンコン……………」車の中に音が響いた。誰かが窓をノックする音。はいはい、職務質問ですね。ご苦労様です。もう僕ほどの職務質問のプロになるとそんな慌てて飛び起きたりなんかしないで、ヨユーでゆっくり寝袋から出ましょうね。マジで今まで何回職務質問に合ってきたかわかりません。どう考えても今俺怪しくないよね?っていう状況でも僕のところ来ます。どんなに洗濯したての服を着ててもお巡りさん僕のところ直行してきます。昔日本を車で旅してるころ、なんでこんなに車たくさんいる中で俺なの?っていう奇跡的な確率で俺のところに職務質問しにきて、はいー、車内調べますねー、あああ!!貴様これはなんだ!!!ってダッシュボードの中に入れていたカッターナイフを鬼の首とったかのように振りかざされたことがあります。「なんだこれは!!えええ!!?」「いや、車で旅してるんだからカッターナイフくらいありますよ……………そんなん業者さんとかだったらもっと大きいの持ってるじゃないですか……………」「これを何に使うんだ!!?人を傷つけるためジャナイノカ!?」「ダンボールとか、なんか紙とか切ったりとか、」「えー、こちら〇〇。不審車両を発見しました。車のナンバーは〇〇……………」その後応援車両が来て警察5人くらいに囲まれて極悪人扱いされたことがありますけど、うわー!!ワクワクする!!って楽しんでました。やましいことがないとそんなもんです。なので今日のこのドイツの山の中での職務質問もヨユーのヨシコさんです。もはやカンちゃんも、はいはいどうもどうもーって言われる前からパスポート用意してます。職務質問とか初めて!!って興奮してた去年の神田はもうここにはいません。人はこうしてスレていくようです。「そうかー、世界を旅してるのかー。…………おや?これはビールの瓶だね?お酒を飲んでたのかい?」「あー、はい。ゆうべ寝る前に。」「ちょっとお酒が残ってないかチェックさせてもらうね。じゃあこれに息を吹いてもらっていいかい?」外国で初めて飲酒の呼気検査しました。なんか小さなトランシーバーくらいの大きさの機械にプラスチックの吹き込み口があって、そこをくわえて息を吹き込みます。すると自動でトランシーバーの画面にデジタルで数値が出てくるという優れもの。昔日本で検問にでくわした時とかは風船膨らましたりしてたよなぁ。こんな寝起きで呼気検査とかなかなか新鮮な気分やわ。どうせ寝起きでされるなら素敵なエロ40代の美熟女に、こっちはもう起きてるわねぇ、なんて言われながらコキ検査をしてもらいたいところですね。「それじゃあ旅を楽しんで。」「はいー、どうもー。」500mlのビールを2本、8時間前に飲んだだけなのでお酒が残ってるはずもなく、問題なく警察たちは帰っていった。さて、俺たちも目が覚めた。今日も頑張っていこう。荷物をまとめたら車のエンジンをかけ、深い山の奥から抜け出した。昨日見つけた路駐ポイントに車を突っ込んだら、歩いて町へ向かう。お城が見えてき始めたら町へと繋がる橋を渡って門をくぐる。今日は天気がいいこともあってたくさんの観光客が橋の上で記念撮影をしていた。いやー、ハイデルベルク綺麗だなぁ。ここだけ映画の中に迷い込んだような錯覚になるよ。橋を渡ったらマスコットキャラクターのお猿さんが持ってるコインを引くくらい触りまくって金持ち祈願!!!ゴシゴシ!!!!今日の路上稼げますように!!!!旧市街のホコ天に出ると、まぁわんさか人が歩きまくってるぞー!!!地元の人も観光客もうなるほど通りに溢れてる!!!!それじゃあ昨日の下見の時に見つけておいたベストスポットで早速路上開始!!!!よし!!反応はまぁまぁ!!この調子でどんどんいい声を出していけばなかなかのことになるぞ!!!よっしゃハイデルベルクもらったー!!!!というところで警察。朝の警察じゃなくてちょっと残念。おおー!君朝のー!!とかいう面白い展開になったら楽しそうだったのに。「はいはいー、この町には時間帯によってやっていい場所があるんだよ。えーっと、今の時間は、ビスマルク広場だね。」そう言ってバスキングルールの書いたパンフレットをくれたお巡りさん。この町の中に5ヶ所、演奏が許可された場所があるみたいで、それぞれにやっていい時間帯が設定されていた。今のお昼時間にやっていいのはホコ天の外にあるビスマルク広場のみ。あとはアンプ禁止とかいつものルールがあるだけで、とりあえず有料でライセンスを買わないとダメとかハナから路上は全面ダメとかそんなんじゃないだけ救われた。というわけでビスマルク広場とやらに行ってみると、そこは車道とバス乗り場に囲まれた中洲みたいなエリアだった。おおマジか…………もともと騒々しいから、ここなら朝から晩までいくらでもやっていいですよってことか…………周りに建物がないので音は一切響かない、目の前を車が走りまくっているので相当うるさい、ここで生音はイジメだわ……………でももう今の時間帯はここしかやっていい場所はないので、根性で声を振り絞って歌った。ギターも強めに弾いて、なるべく遠くまで声を届かせるように頑張る。赤信号になって車が止まってる間は人々も足を止めて演奏を聴いてくれるけど、車が走り出すとやかましくなって演奏がかき消されてしまい、そうなると人も去っていってしまう。ぐうう…………しんどい……………あまりにうるさくて、もうやってられっかーー!!と荷物をまとめ、ホコ天の中に向かった。ちょっと時間は早いけど、16時から18時の間に演奏できる場所があるのでそこの場所取りに行っておこう。おそらくいい場所は取り合いになるはずなので早く行って確保しておかないと。ホコ天の中ではすでにチラホラと演奏しているパフォーマーたちの姿がある。この夕方の時間帯は激戦だな。そうして16時からオーケーの場所に30分前にやってきてギターを置いた。周りには他のパフォーマーはいない。よし、場所取り成功。すると16時10分前くらいになってギターを抱えた1人の女の子が声をかけてきた。「ハーイ、ここで演奏するの?」「そうだよー。」「1時間ずつで交代しない?」「あ、いいよ、もちろん。じゃあ俺が先に1時間するね。」「オッケー、私そこで待ってるわ。」やっぱり限られた場所しかないのでみんな順番待ちしながら譲り合いでやってんだな。彼女は地元パフォーマーって感じだし、みんな毎日こうやってなんとか場所交渉をしては演奏してるみたい。ハイデルベルク厳しいなぁ。さてー、5分前になって準備も完了。そろそろ演奏始めるかー!!というところで、いきなりすぐ横のほうからバイオリンの音が聞こえた。え!!なんで!!見ると、10メートルくらい向こうで思いっきりオッさんがバイオリンを弾き始めてる!!!おおおおい!!!コノヤロウ!!!ちょっと待て!!!さっきまでどこにもおらんかったのに割り込みやん!!!するとベンチに座って待ってたギターの女の子がすかさずオッさんのところに近づいていった。なにやら話しているオッさんと女の子。そしてちょっとして女の子がこっちにやってきた。「あの人、今からあそこでやるそうよ。」「おいおい、でも俺たちここで30分前から待ってるんだよ?」「彼はあそこで14時から待ってたらしいわ。本当かわからないけどね。」「2時間も!?嘘やろ。」「彼はちょっと変な人みたい。あんまり話にならなかったわ。とにかく1時間で終わるみたいだし、その後あなたがやってその後私がやるわ。」「あー、いいよ、俺もうちょっと向こうでやるからここは君に譲るよ。」「え?いいの?待ってたらいいのに。」そんな限られた時間を指くわえて待っとくなんてもったいない。そもそも今やろうとしていた場所も、厳密に言ったらパンフレットに載ってる場所から少しズレてるところだ。路上には他のコーヒー屋台とか、似顔絵描きさんとかもいるので、お互いが邪魔し合わないように臨機応変に場所を選ぶとどうしてもズレてしまう。時間帯さえ守れば、正確にパンフレットの場所じゃなくても少しくらいは離れてもいいみたい。多少強引だけど路上なんてそんなもんだ。というわけでドイツのどこにでもあるファストフードチェーン店のノードシーでフィッシュ&チップスのビッグ、5ユーロ、630円を食い散らかしたらソッコーで路上開始!!!よっしゃ反応は上々!!!みんな目の前にあるベンチに座ってのんびり聞いて行ってくれる!!夕方前の人通りはマックスで、ホコ天の賑わいも最高潮!!!1人のお父さんが、うちの娘にも歌わせてあげてくれない?って言ってきて、ギター弾いて知ってる曲の伴奏をしてあげると、そのほのぼのした光景にまた人が集まってくる。また違う娘来た。フォーク喫茶!!時間制限があるので休憩なんかせずに2時間ぶっ通しで歌って、今日のあがりは計3時間で180ユーロ、23300円!!!!よっしゃ、路上ルールと激戦区で一時は諦めかけたけどなんとか稼げたぞ。人通りはまだまだ続いているけど、18時以降にやっていい場所は全部微妙なので今日はここでお終い。のんびり観光にでも行くことにした。まずはハイデルベルクのメインであるお城へ。ちょこっとした坂を登って行くと、古めかしい城門が出てきたんだけど、なにやらチケットオフィスが閉まっており人が自由に行き来していた。お、この時間は無料で入れるみたいだ。ラッキー。中庭くらいまでしか入れなかったんだけど、ここからの眺めだけでも来る価値がある。広々した展望台からは旧市街を一望でき、川沿いにぎゅっと密集した古ぼけた町を見晴らすことができた。綺麗だなぁ。綺麗だけど世界遺産で、ドイツを代表する古城に落書きするのやめようよタカシ君。あとこんなところに好きとか書かれても相手は嬉しくないよ。お城を降りたら今度は橋を渡って、対岸の住宅地の中にある細い細い路地を登っていく。石垣に挟まれた暗い路地はちょっとした迷路みたいだ。この町の人々は昔からこの道を通って町に向かっていたんだろうな。路上終わりで荷物を持って何度も坂を登るのはしんどいけど、せっかくここまで来たなら行っとこうと頑張って坂を上り終え、気持ちのいい遊歩道に出てきた。山の中腹にある森の中の歩道で、チラホラと観光客が歩いている。人々の目当てはこの展望だ。旧市街、そしてお城を一望できるこの遊歩道の名前は哲学の道。京都にもそんな名前の小径があったよな。木々の隙間からハイデルベルクの中世の町並みを眺めることができ、歩道沿いに立っている看板にもはるか昔のこの町の様子が描かれてあった。すごいよなぁ………1620年、江戸初期のころから風景がほぼ変わってないなんて奇跡だよ。変わってるといえば、川沿いが整備され車道ができていること、そしてオールドブリッジが今の石造りではなく、木造で屋根もかかっていたということくらい。日本でも、江戸時代の地図とほぼ変わってない町といえば山口の萩なんかが思い浮かぶけど、当たり前に、町に住んでる人たちはみんな総入れ替わりしてる。子供ができ、孫ができ、子孫代々が同じ建物に暮らし、同じ店でパンを買い、人々だけが入れ替わりながらこの町はずっとこの姿のままだ。町という容れ物の寿命ってどのくらいなんだろうな。あー、木陰の風が気持ちいい。ハイデルベルクいい町だったな。坂を下り、車に戻ってエンジンをかけた。さぁ、次はどんな素敵な町に巡り合えるかな。