スポンサーリンク 南アフリカの田舎と何気ない素顔 2017/5/29 2017/05/06~ 南アフリカ, ■彼女と世界二周目■ 2017年5月13日(土曜日)【南アフリカ】 クロコラン ~ エルメロ部屋を出るとデカい犬が走ってきて飛びかかってきた。デカ!!デカすぎるやろ!!俺より顔が大きい…………お前が外で守ってくれてたかと思うと安心して眠れたよ。夜行バスからのレンタカーで1日中走りまくり、雪山で遭難しかけて、田舎の黒人居住区に迷い込み、体力的にも精神的にも疲れ切っていた昨日。まさか最後にこんな展開が待っていたなんてな。「ハーイ、よく眠れたかい?」ゆうべは真っ暗でほとんど見えていなかったけど、明るい朝の光の中で見るフィリップさんは温厚な表情の中に厳しさも含んだ顔をしていた。シワが刻まれ、白髪で、メガネをかけている。何度も何度もお礼を言い、握手をした。この広大な農場でエッセンシャルオイルを作っているフィリップさんの手はものすごくゴツゴツしていて、働いて働いて働いてきた男の手だった。「いくらか宿泊代を払わせてください。」「ああ………まぁいくらでも構わないよ、君の気がすむようにすればいい。」200ランド、1700円をフィリップさんに渡した。きっとフィリップさんはゆうべ何も言わなかった時点でお金をもらうつもりはなかったはず。でもお金を受け取ってくれたこともフィリップさんの優しさなんだと思う。こんなどこの馬の骨とも知らない謎の怪しすぎるアジア人を、あんな夜中に、治安のよくない南アフリカで、すぐに家に泊めてくれるなんて神がかり的な優しさだ。フィリップさんがいなかったらあのまま車の中でビクビクしながら寝てたはず。何もなかったかもしれないし、何かあったかもしれない。現地の人に車中泊はやめたほうがいいってキッパリ言われたんだ。どんな田舎でも、僻地でも、この国ではちゃんとしないとな。何度も何度もお礼を言い、車に乗り込んだ。そしてエンジンをかけ、農場のゲートをくぐった。フィリップさん、リアナさん、このご恩、一生忘れません。アスファルトの道に戻り、ひたすら東に向かって走った。荒野の中を走り、たまに現れる町を通り過ぎ、また荒野の中をかけぬけていく。風景はいたってヨーロッパ風だ。のどかな草原に牧草ロールが散らばり、放牧された牛がゆっくりと歩いている。田舎町では小さな古びた建物がささやかに並び、錆びついた看板が壁にひっかかっている。黒人さんが道端で親指を立ててヒッチハイクをしており、白人さんが運転する車が通り過ぎていく。誰からも忘れられたような静かな風景が窓の外を流れていく。ここは南アフリカ。そんな南アフリカを運転していて思うのは、みんなすごく運転マナーがしっかりしていること。信号のない交差点では、誰も我先に突っ込んで行かず、必ず100パーセント、順番に交互に道を譲り合う。そしてよく手を挙げて感謝を伝え合う。遅い車を追い越そうとすると、わざわざめっちゃギリギリまで道の端に寄って後ろの車に抜かしやすくしてくれる。バカみたいにクラクションも鳴らさないし、すごく紳士的だ。でも、それが行き過ぎて過剰なところもある。ちょっとでも蛇行してしまうと注意してくるし、微妙なタイミングのときに俺が先に交差点に入ると、おいおいーといった表情をされてしまう。みんな規則正しく、規律に従い、品行方正に相手を尊重する、というのはもちろん素晴らしいことだけど、ちょっとそれが固苦しくもある。ヨーロッパみたいに程よい具合の適当さがないように感じる。人と挨拶するときにも、南アフリカでは90パーセントくらいの確率で、ハローの後にハウアーユーがついてくる。ハローの後にすぐ会話に入りたいのに、そこで、ファインサンキュー、アンドユー?を挟まないといけない。それにあんまり慣れていない俺は話の出鼻をくじかれてしまうし、アンドユー?が上手に出てこない。自分だけファインサンキューって言って相手には聞かないというパターンになってしまうんだけど、そうすると南アフリカの人たちは何も聞いてないのにアイムグーッドって言ってくる。す、すんません………ってなる。中には、ハウアーユー、を必ず挟まないと気が済まない人もいて、俺がつい省いて会話を始めようとすると、ゆっくりとハウ・アー・ユー?と言って俺の言葉を遮ってくる。ああ、すみません、元気です、あなたはどうですか?元気だよ。で?何の用だい?って流れだ。なんだろう。この、調子はどう?と聞くことがひとつのルールというか、習慣というか、義務というか誇りというか、それくらいの感じだ。南アフリカでは本当に様々な人種が共存している。そのそれぞれが対立の歴史を持っているし、アパルトヘイトという人種隔離政策もあった。人々の心の中には優劣意識がどこかしらに存在しているだろうし、だからこそ品行方正であろうとする思いが彼らを律しているのかもな。荒野の中をしばらく走っていると、いきなりアスファルトの道から未舗装のオフロードに変わった。ガタガタの洗濯板道になり、水たまりも多く、スピードが出せない。こんなに整備が行き届いた南アフリカでも、田舎のほうではまだこうした未舗装道路が残ってるんだな。クソゥ、スピードが出せん……………ていうかもうこういう未舗装道路を運転するの疲れたわー!!アフリカー!!ていうかなんでそんなとこでヒッチハイクしてるの!!!いやぁ、ナミビアとか南アフリカでヒッチハイカー拾いまくりながら回ったらガソリン代くらい余裕で浮きそうだな。しばらくしてなんとかアスファルト道路まで出てきたことは出てきたんだけど、この未舗装区間で予想外に時間をくってしまった。今日は本当は一気にスワジランドまで行ってしまいたかったのに、これじゃ向こうに着くのが夜になってしまう。ここは無理せず途中の町で1泊することにしようかな。うん、色んな地方の町に行くことも楽しまないと。そう決めたらニューキャッスルという小さな町に立ち寄って、ショッピングモールのお惣菜コーナーでご飯を買って食べた。カプチーノとスパゲティが美味しい。ちなみに南アフリカのガソリンはリッター13.7ランド、116円でナミビアより高い。未舗装道路を走り、雨の中を走り、霧が立ち込める峠を走り、暗くなったころにエルメロという少し大きめの町に入った。俺たちもバカじゃないので、昨日の失敗を活かして今日はちゃんと宿を調べている。このエルメロには安いバッグパッカー宿があるので問題なしだ。完璧!!そして宿に到着!!!よし!!!営業してない!!!!きゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!また宿無しいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!うおおおいいコノヤロウ!!なめてんのかバカやろう!!!今日土曜日だぞ!!?1番お客さん来るときに開いてねぇってどういうことだこのウンコ!!!「どうしましょうか………神田さん…………」「どうしましょうねええ…………」2人して閉ざされたゲートの前で呆然。マジで南アフリカで宿についてねぇ…………しかたなく他のゲストハウスも見て回ったんだけど、どうやら南アフリカではゲストハウスというのは安宿という意味ではなくて、どちらかというとモーテルみたいな感じだ。車で入って個室に泊まる宿で、ドミトリーなんかはまずない。値段はどこも500ランド、4250円くらいが相場。南アフリカではバッグパッカー宿はあまりなく、これくらいの中級ホテルにみんな泊まるみたい。日本のビジネスホテルとか民宿みたいな感じだ。もうマジで4000円とか5000円が普通とか痛すぎるよ……………南アフリカ、マジで宿代高い…………エルメロの町をグルグルグルグル回ってなんとか安いところはないかと探したんだけど、最安で450ランド、3800円のところが1軒あっただけであとは全部500ランド超え。きつすぎる…………そりゃバッグパッカーたち南アフリカ回らんわ。一瞬、頭に車中泊の文字が浮かぶけど、昨日の今日でまた車中泊したらフィリップさんとリアナさんに申し訳なさすぎる。ちゃんと宿に泊まらないと。結局かなり走り回ったけどどうにもならず、諦めてスタッフさんの感じが良かった綺麗なゲストハウスに泊まることにした。値段は500ランド、4250円。た、高ええええ……………でも部屋きれええええええ……………なにこれ、神の部屋なの?ベッドに花置いてるとこなんて初めてだわ。全部ピッカピカに光ってて清潔で、ワイファイはもちろん、冷蔵庫もあるし、コーヒー紅茶飲み放題。はい、そりゃ4000円します。すんません。ていうかこのクオリティの部屋に4000円で泊まれるのがすごいです。南アフリカの宿はどこもそれなりの値段がするけど、クオリティの割には安いってことか。「よし!!神田さん!!4000円取り戻しますよ!!」「はい!!コーヒー全部飲み尽くしましょう!!」「無駄に冷蔵庫でいろいろ冷やしましょう!!見ないのにテレビつけっぱなしにしましょう!!シャワー8回くらい浴びるぞおおおおお!!!」シャワーを浴び、コーヒーを飲み、ワイファイで動画流しながら充電。今日は移動だけの1日だったけど、それが良かった。南アフリカのなんでもない普通の町に暮らす、普通の人々の生活を垣間見た気がする。やっぱり車はいい。その国がすごく身近になる。タバコを吸いに外に出ると、震えるほど寒い。今日も1日雨が降っていたし、風があって手足がかじかむほど。それもそのはず、今日の気温は最高9°Cの最低4°C。もう宮崎の真冬だ。アフリカなんかどこに行っても暑くてサバンナだらけってイメージだったから冬用の服を持ってないんだよな。まさかこんなに寒いとは。でもそんなアフリカとももうあと数日でお別れなんだな。タバコを消し、ぶるっと震えて部屋に戻った。