スポンサーリンク ロバートがいなければ終わってた 2017/5/8 2017/04/14~ ザンビア, 2017/04/22~ ボツワナ, ■彼女と世界二周目■ 2017年4月22日(土曜日)【ザンビア】 リビングストン ~ カズングラ~ 【ボツワナ】 カサネ ~ マウン今日はしんどかった…………マジでしんどかった……………久しぶりにこんなに色々上手くいかないことが重なって、本当に大変だった……………グチャグチャなボツワナ初日。スタートはザンビアのリビングストンから始まった。「さてー、元気に移動いってみようかー!!」「あー、快適なホテルだったなー。出たくないなー。」「まぁでもボツワナでもいいホテル見つけられるよ!!バオバブいえーい!!」今日はいつの間にか5泊もしてしまった宿、ファルティータワーキャンピングをついに出発する日。2泊のつもりが延泊延泊でこんなに滞在してしまったなぁ。いやー、ここはマジで快適だった。でも結局15時のオヤツのパンケーキ、1回も食べなかったな。荷物をまとめてテラスに降りると、いつもの定位置にすでにあの日本人カップルさんが座ってネットをしていた。おお、まだ7時なのに早いなぁと思ったら、どうやらお2人も今から出発みたいで荷物を横に置いていた。お2人はどこに向かうのかな。でも結局それも聞けずじまいだ。どちらにせよどうかご安全に。俺たちも定位置につき、昨日のうちに買っておいたお惣菜を温めて朝ごはんを食べた。今日の目的地はボツワナのナタという町の近くにあるプラネットバオバブというキャンプサイト。町から相当離れた荒野のど真ん中にあるキャンプサイトで、地図を見る限り本当に周りには何もない。ボツワナはこれまで訪れたアフリカの国々の中でも特に自然豊かなところらしく、国土の相当な範囲が野生動物たちの保護区になっている。なので観光客もその大自然を堪能しに来る人たちがほとんどで、荒野の中のキャンプサイトってのが数多く存在するようだ。日本人に有名なところだと、エレファントサンドロッジってところかな。ここもまた荒野のど真ん中にあるキャンプサイトなんだけど、ここの売りは野生の象たちが飲み水を求めて敷地のすぐ目の前までやってくるっていうところ。朝のコーヒーを飲みながら目の前に集まる象を眺められるなんて確かに半端じゃないし、これぞアフリカって感じだ。プラネットバオバブもそのひとつで、面白いことに敷地に巨大なバオバブの木が何本も生えており、それこそバオバブの星という名前がぴったりくるロケーションなんだそう。エレファントサンドロッジもプラネットバオバブも、ナミビアに向かう道中にあるので立ち寄るのは簡単。ただエレファントサンドロッジに象がやってくるのは水が少ない乾季の時期なんだそう。今は雨季の後で水がそこらじゅうにあるので象がやってくる確率も少ない。何泊もしたのに1頭も見られなかったって人も少なくない。というわけで俺たちはプラネットバオバブを目指そう。大好きなバオバブを間近で眺め、見上げながらコーヒーでも飲んでノンビリしよう。そんな今日の移動ルートは、まずリビングストンからボツワナとの国境であるカズングラボーダー、ボツワナに入ったら最寄りの町であるカサネに行き、そこからナタという町を目指す。エレファントサンドロッジはこのナタの少し手前にあり、プラネットバオバブはナタの少し先だ。上手く乗り継げばおそらく17時にはプラネットバオバブに到着できるはず。長い移動になりそうだ。プチ沈没でなまった体と頭を切り替えていかないとな。アフリカの大地を駆け抜けるぞ。朝ご飯をしっかり食べてお腹いっぱいになったら、気合いを入れて宿を出発した。宿を出てタウンに行き、ハングリーライオンの角を曲がったら南部アフリカによくあるスーパーマーケットのショップライトが見える。その目の前にタクシーが何台も止まっている乗り場があり、荷物を抱えて近づけばすぐに運ちゃんたちがカズングラボーダー!?と声をかけてくるので簡単だ。ただ毎日グータラしてたわけではなきて、ちゃんと昨日のうちにここに来て下調べは完了している!!俺たち旅人!!ウヒョウ楽勝!!とか言ってたこの時の自分を殴りたい……………カズングラボーダーとはボツワナとの国境で、このリビングストンのシェアタクシー乗り場から45分くらいだ。値段は1人45クワチャ、500円。シェアタクシーなので人が4人集まり次第出発なんだけど、あんまり人気ルートではないみたいで俺たち以外に2人集まるのに30分くらいかかったかな。宿で同じ方向の人たちと仲良くなって一緒に行っていればもっとスムーズだけど、人見知りの俺たちはまぁこんなもんだ。しばらくして現地の女の人が2人やってきてようやく出発。お世話になったリビングストンの町を後にした。ビクトリアフォール楽しかったよ!!森の中を安全運転で走ること45分ほど。曲がり角を左に折れるとすぐに長蛇のトラックの列が見えた。みんな国境越え待ちのトラックみたいだ。そんなトラックの横を通り過ぎタクシーはカズングラボーダーの目の前に到着。たくさんの路上両替屋が群がってくるのをかいくぐっていると、そこに見覚えのあるバッグパッカーたちの姿があった。あ、昨日宿で一緒だった韓国人旅人たちだ。俺たちを見つけると、あー!!と笑顔で近寄ってきた。女の子1人と男2人で大きなバッグパックを背負い、まさにバッグパッカーだな。「みんなもボツワナに行くんだね。」「そうなの。でもちょっと問題があって、このボーダーって船で渡らないといけないって本当?怪しい人たちが船は2クワチャかかるって言ってくるんだけど信用できなくて…………それに私たちもうクワチャを全部両替しちゃってお金がないのよ。」国境の男たちに声をかけられまくって怪しいと思う気持ちはみんな一緒やね。しかし残念ながら船で国境越えというのは本当の話。この辺りのザンビアとボツワナの国境はザンベジ川が境になっており、船でボツワナ側に渡らないといけない。値段は1人2クワチャ、23円。彼らは下調べ不足だったみたい。「船の話は本当だよ。これあげる。」俺たちはまだ換金前でクワチャもあるので3人分のクワチャをあげた。「わー!!カムサハムニダ!!いいの!?あとでちゃんと返すわ!!」「大丈夫大丈夫!!昨日のサムギョプサル代だよ!!安くてごめんね!」あー、韓国行ってサムギョプサル食べながら美味しいビール飲みたいなぁ。今回の旅もおそらく韓国が最後の国になるはず。日本に帰る前のボーナスステージだ。俺もカンちゃんも韓国人の友達結構いるから、みんなに会いに行きながら韓国の素顔にもっと出会えたらいいなぁ。韓国人のみんなと別れて俺たちはカスタムの横にあるオフィスに入った。俺たちもここで余ったザンビアクワチャを両替しとこう。ホワイトボードに雑に書きなぐったレート表によると、1ザンビアクワチャで0.9ナミビアプラになるらしい。現在手持ちは290クワチャ。3300円。なので260プラくらいゲットできればいいかな、と思って換金してもらったらなぜか300プラくれた。え?いいの?多くない?謎だけどめっちゃもらえた。ラッキー!!換金を終わらせて歩いて奥に進んでいくと、すぐに川沿いに出てきた。すぐ向こうに対岸が見え、小さなボロい前時代的な渡し船が何層も行き来している。鉄板にエンジンを取り付けただけみたいな不安この上ない渡し船には大きなトラックが載っているんだけど、あんまり小さな船なので大型トラックは載っても1台。こりゃ時間かかるわ。カスタムの前にトラックの長蛇の列が出来ていたのもうなづける。ちなみにこのザンビア~ボツワナの国境って150メートルしかなくて、世界で1番短い国境線らしい。10分くらいして鉄板船がやってきて水辺に到着。しかしちゃんと陸地まで接近することができなくて、みんな1回水の中をジャバジャバ歩かないといけないみたいだ。TIAだなぁ。ディスイズアフリカ。俺たちもズボンをまくりあげ、濁った汚染極まりない水の中に足を踏み入れて鉄板船に乗り込む。トラック1台、乗用車1台、それに20人ほどの人間を載せ、ボロいエンジンがブウウウアン!!と解体しそうに震えると船はゆっくりと進みだす。震えるたびに大量のオイルを垂れ流しているので川の水面は油まみれだ。みんなこの川でとれた魚を食べて生きてるんだよなぁ。すぐ真横では今まさに橋の建設工事が行われており、もう少しで両岸が繋がりそうになっていた。船の上からその様子を眺める。ところどころで溶接の火花が散っている。こんなメインボーダーなのに今頃橋の建設をやってるってのもすごいけど、この橋が開通すればもっとスムーズに行き来できるようになり、あのトラックの長蛇の列も少しは解消されるようになるだろうな。船は5分ほどでザンビア側に到着したんだけど、こっち側で鉄板がちゃんと陸地に下されて水の中をジャバジャバ歩くこともなかった。ここから先、ザンビア、ナミビア、南アフリカはこれまでと比べ物にならないくらい物価が上がって先進国になると聞いているけど、なんかこうした小さなところにもその兆しが出てるのかなと思った。ボツワナのイミグレーションチェックはあっという間に終わった。どの入国でも毎回高額のビザ代を払わないといけなかったこれまでのアフリカ諸国だったけど、ここから先は全部無料だ。マジでありがたい。イミグレーションオフィスも掘っ建て小屋みたいだったものから、何台ものパソコンが並ぶ綺麗なものになった。オフィスの人たちもみんなすごくフレンドリーだ。ボツワナ好印象だな。口蹄疫防止の消毒。宮崎県民としては苦い経験があるので入念にふみふみ。ボツワナといえば真っ先に浮かぶのが野生動物。チョベ国立公園やオタバンゴ湿地などの保護区がたくさん存在しており、そこらへんにアフリカ象がウロウロしているイメージ。しかしそんなワイルドな先入観とは違って、実はすごく先進的で物価もかなり高いってのが意外な常識だ。野生動物の王国と経済発展したモダンな人間社会が共存してるってなんか不思議な魅力がある。これがきっとアフリカの進むべき姿なのかもしれない。人口は結構少なくて220万人。マラウィは2000万人近くいたのにな。1966年にイギリスから独立した当初はアフリカでも最貧国のひとつだったけど、その後、世界最大規模のダイヤモンド鉱山が発見されたことで一気に国が潤い、飛躍的な経済成長を果たしたんだそうだ。ちなみにボツワナは欧米人が読むガイド本、ロンリープラネットで、世界の訪れたい旅行先ランキングの3位に君臨する大人気の国。そんなイメージ全然なかったなぁ。アジア人にとって遠い遠いアフリカは、実は欧米社会にとってとても近い場所にあるんだな。ボーダーからまずは最寄りの町であるカサネまで乗り合いバンで移動。料金はよくわからないけど1人8.5プラ、90円。15分のドライブであっという間にカサネに到着したんだけど、今日はあいにくの天気でなかなかの強さで雨が降っている。アフリカに入ってから、雨季というのにずーーーーっと降らなかったのが、雨季が終わった瞬間に降り出すという謎の天気だ。よりによって今日雨というのはかなり面倒くさい。なんせ今夜は大自然の中のキャンプ場でテントを張るつもりなのに、この雨では難しい。俺たちのテントは安物なので、小雨ならまだしも本降りには対応していない。うーん、泊まるところどうしようかなぁ。でも今夜のプラネットバオバブはカンちゃんが楽しみにしていた場所。できることな泊まりたいけど、雨だと大変だなぁ。とにかく先に進んでしまおう!!カサネから次はナタという南の町に移動するんだけど、バス乗り場がわからなくて屋根の下で雨宿りしているオジちゃんにナタ行きのバスはどこで乗れますか?と尋ねると、そうかいそうかい、こっちだよ、ついてきなと雨の中を歩き出した。あまりにも親切そうな雰囲気なので、これはもしかしたら案内した代わりにお金を請求されるか斡旋料を得るためにバス代を水増しされるんじゃないか?とちょっと不安になってきた。オジちゃんは雨の中を歩いていく。俺たちもそれについていく。メインの車道からひと気のないほうに進んでいくので、これは大丈夫か?ボツワナって治安悪くなかったっけか?と心配になってきた。あのオジちゃんは悪そうな人には見えなかったんだけどなぁ…………すると5分くらいしてバスターミナルらしき建物が見えてきた。あ、あれ?これってちゃんとしたバスターミナルみたいだ。そしてオジちゃんはそこに止まっていたいくつかのバスに声をかけてくれ、これがナタ行きだよと教えてくれた。さらにバス乗り場のスタッフたちと現地の言葉で話していたオジちゃん。「いいかい、彼らの話によるとなにやら雨がたくさん降ったことでナタの先で道が冠水して通れなくなってるようだよ。なのでもしかしたらナタからマウン方面のバスが出ていないかもしれない。だから気をつけないといけないよ。」親切なことにそんな情報まで細かく教えてくれ、親身になって俺たちのことを考えてくれてるオジちゃん。こ、これは…………なんか要求される………かなぁ………………もしなんか言われたら少しくらいお礼のチップを渡そうかな…………雨の中案内してくれたし…………と考えていたら、オジちゃん、笑顔でまた雨の中、元来た道を帰っていった。キエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!正中線四連突きしてえええええええええええええええ!!!!!!ちょっとでも疑った俺の足を蹴り足挟み殺ししてええええええええええええ!!!!!!はぁはぁ………オジちゃんゴメン!!!ボツワナの人、めっちゃ優しい!!みんな普通に英語喋れるし着てる服も綺麗だし知的さを感じるし、なんかみんな洗練されてて安心できるわ。オラァ行くぞゴミ!!お前どうせソーローだろうがチンカス!!って乱暴に急かしてくるウザい途上国のバスドライバーとは大違いで、丁寧に行くよーと促してくれる運転手のお兄さん。値段は調べていた通りカサネからナタまで70プラ。ボッタクリもしてこない。750円。さらに乗り込んだバンがめっちゃ綺麗。シートが破れて鉄がむき出しになっていないし、ガラスが東京の路線図くらいバキバキに割れてないし、肘置きにゴキブリが巣食ってないし、押しがけじゃなくてセルでエンジンかかるし、エンジン音がめっちゃ静かだし、死ぬほど客を詰め込んでどれだけ人間詰め込めるか大会を開催してこないし、俺ソーローじゃないし!!いいなぁ、ボツワナめっちゃいいやん。すっごい快適なバンは荒野の中の一本道をひたすら走っていく。周りに広がるのは背の低い木々が散らばる寂しげな原野だ。町も集落も少なく、どこまでも自然の寂寞が漂っている。そんな木々の中にたまに不思議な形をした塔みたいなものが見える。白っぽい色で、高さは1メートルから1.5メートルくらいか。気持ち悪いけどあれは巨大な蟻塚だ。大きいもので2メートルはあるんじゃないかっていう巨大な塔があちこちに立っており、あの中にアフリカのデカい蟻が蠢いているのかと思うと鳥肌がたってくる。さすがアフリカだなぁと思っていると、そんな道路際に猿の姿が見えた。お!!デカい猿だったね!!と話している俺たちの前の席で、黒人さん3人が猿だったね!!と興奮しながら英語で話している。さらにキョロキョロしていると、今度はビビることにすぐそこにキリンが見えた。バンのスピードが速くて一瞬で後ろに消えてしまうけど確かに3頭のキリンが道路際に立っていた。カンちゃん!!キリンいたね!!すごいね!!と盛り上がってると、俺たちの前の席の黒人さん3人がやべーー!ジラフだったぜ!!フォウ!!と大喜びしてる。なんかいいなぁと嬉しくなる。多分アフリカのどっかの国の人たちが友達3人でボツワナに動物見に行こうぜって旅行に来てるのかな。3人とも綺麗な服を着ていて、都会暮らしの人たちなのかな。アフリカ人でもやっぱり動物は珍しくて面白いものなんだよなぁ。前のシートにしがみついて目を輝かせて窓の外を見ている3人の男友達。いいなぁ、可愛いな。「オウ!!あそこを見ろ!!」するとその3人の中の1人が外を指差すと、なんとそこには象がいるではないか!!うおおおおお!!!!アフリカ象出たあああああああああ!!!!ついにアフリカで象見ちまった!!!!デケエ!!!タイで乗ったアジア象よりもかなりデケェ!!!しかも鼻の両側に白くて長い牙がグイーーンと伸びており、その姿は可愛らしいというよりは勇壮だ。カッケエエエエエ!!!!「あ!!ふみ君!!!」今度はカンちゃんが象を発見して窓の外を指差すと前の3人も、え?!どこ!?ってそっちを向く。そうしていつの間にか5人体制で窓の外を眺めてみんなで協力して野生動物探しという不思議な連帯感が生まれる。「あ!!あそこ!!」「オウ!!ゼアー!!カミン!!」マジで連発!!!ナタに行くには大きな保護区の中を突っ切る道になるんだけど、その間で群れも合わせて20頭以上のアフリカ象を見た。めっちゃすげえ!!あんな巨大な生き物が人間との垣根なく普通にそこらへんで生きてるなんてすげすぎる!!!!象なんて動物園で見られる?違う、動物園の檻の中にいる象と野生の象の見えかたはマジで全く違う。この荒野の大自然の中で悠々と生きる姿はマジでちょっと神々しくすらあるよ。いやぁ、ボツワナすげぇよ!!あ、ちなみに日本人がよく行くエレファントサンドロッジはこの象がたくさんいるあたりにありました。さすが象がたくさん出没するエリア。タビジュンさんもこのバンに乗ってこの道を走ってたんだなぁ。タビジュンさんは象1頭も見られんかったらしいけど。タビジュンさん元気にしてますかー!!帰ったらご飯行きましょう!!またチェックポイントで口蹄疫ふみふみ。チェックポイントいっぱいあります。3時間半のドライブの後、バンは小さな町の中にあるガソリンスタンドに止まった。ここがナタの町みたいだ。町っていうかマジで何にもないめっちゃ小さな村。バンを降りるとすぐ横に別のバンがあって、マウンに行くのかいー?と聞いてきた。俺たちが行くプラネットバオバブは、マウンに行く道中のグウェータという村にある。このバンで行くことができるようだ。乗り換えめっちゃスムーズ。でも俺たちはまだボツワナに入ったばっかりで朝ご飯から何も食べてないし、お金も国境で換金した分しかない。このままではボツワナプラがほぼゼロの状態で宿に到着してしまうことになる。なので乗り換えのバンに待っててもらって、急いで道路向かいにあるATMに向かった。しかし…………理由はわからないけどカードが受け付けられない。俺のカードも使ってみるけどやっぱりダメ。そして何か食べ物も探してみるけど周りには小さな商店くらいしかなく、フライドポテトの余りとかそんなもんしかない。うーん…………ボツワナに入ったばっかりでまだ色々と準備が整っていないのに、それでも先に進もうとしているのが若干不安ではある。しかしバンは俺たちのことを待っている。こんなど田舎でこのバンを逃したら次の車がいつ来るかもわからんし、この村に宿があるかもわからん。とにかく……………今日の目的地であるプラネットバオバブまでは行ってしまうか…………観光客向けのキャンプ場なのでおそらくアメリカドル支払いもできるはずだし、なんならドルからプラへの換金もしてもらえるかもしれない。ご飯もキャンプ場まで行ってしまえばなんか食べられるだろう。うん、大丈夫大丈夫、なんとかなるか。そうして俺たちは飯も食べずボツワナプラも持たずにバンに乗り込んだ。バンはまた荒野の中の一本道を走っていく。かなりのスピードでぶっ飛ばしているんだけど、たまに道路のアスファルトがはげている部分があり、それを避けるためにハンドルを切るので車体がかなり傾く。怖いなぁと思ってしまうけど、こんだけ飛ばしてくれるなら早く宿まで着きそうだ。ナタから宿のあるグウェータまで料金は17.5プラ。180円。しかし心配なのは雨。今日は朝から降ったり止んだりの雨で、かなり強く降ったりもしている。周りもだいぶ水びたしだ。うーん…………こんな天気でテント泊か……………俺たちの安いテントだとおそらく雨が沁みてきてしまい、ひどいことになってしまうはず。だとしたら屋内の個室に泊まることになるんだけど、ボツワナは宿代が高いことで有名だ。キャンプで800円くらいらしいので多分コテージだと4000~5000円はしてしまうんじゃないかな。目指しているプラネットバオバブは相当な僻地にあるので、周りにはスーパーマーケットどころかレストランもないよとバンのスタッフは言っている。ということは外国人観光客向けの高い晩ご飯を食べないといけない。この1泊だけで8000円くらい吹っ飛んでしまいそうだ。俺たちはまだボツワナプラを持ってない、この雨でテントも張れない、相当な出費になる、色々考えていたらプラネットバオバブに行かないでこのままマウンの町まで行ったほうがいいんじゃないかと思えてきた。そこそこ大きな観光の町であるマウンに行けばバッグパッカー向けの宿もあるし、ATMでお金もおろせる。ご飯もどっかで美味しいファストフードが食べられるだろう。そのほうが安全だよな。でもカンちゃんが楽しみにしていた宿だしなぁ………………俺も大きなバオバブ見たいしなぁ……………でも町に行ったほうがいい気もするなぁ…………「カンちゃん、どうする…………?」「うーん…………マウンに行こうか…………?そっちのほうが色々いいよね。うん!そうしよう!」バオバブを見られないのは残念だけどこの雨は仕方ない。もうすでに外も暗くなってきている。あー、せっかく雨季が終わったってのにこのタイミングで雨なんてついてないなぁ。まぁでもここまでほとんど雨に降られずにアフリカを回ってこられただけでもラッキーなんだろうな。ここは諦めてマウンに行ってしまおうか。すでにもう日も沈んだ。あたりは真っ暗になってしまったけど、観光地ならすぐに宿も探し出せるだろう。よーし!!そうと決まれば向こうでビール飲みながらハンバーガーでも食べるかー!!と、その時それまで快調に走っていた車がいきなりものすごい急ブレーキをかけた。うわ!!!なに!!あああああ!!!!何かにぶつかる!!!!!ヤバい!!!!ものすごい急ブレーキで車体を車線からはみ出させ、アスファルトから飛び出るギリギリで車が止まった。それと同時に、窓の外を巨大な影がヌゥっと動いた。バンの大きさをはるかに超える黒いその物体は俺の真横を通り、道路を出て森の中に入っていった。それはキリンだった。あっぶねえええええ………………あんな巨大な動物と正面衝突したら車も大破だし、横転して大事故になっていたはず。キリンもタダじゃ済まんだろう。さすがアフリカやなぁ……………いやぁ、ボツワナに入ってすでにめっちゃボツワナらしい体験できてるわ。グウェータからの追加料金、45プラ、470円を払いマウンの町に到着したころにはすでに21時を過ぎていた。バスターミナルの周りは閑散としており、雨で水たまりができて地面が光っている。パラパラと結構雨足も強い。これでは歩いて宿探しは難しそうだ。「ハーイ、ホテルに行くのかい?タクシーで行こうか。町まで30プラでいいよ。」するとそこに1人のタクシーの運転手が声をかけてきた。いつもは山のように群がってくるタクシーの客引きたちだけど、雨の夜21時ということでバスターミナルの周りにはタクシーはこの兄さんの1台しかいなかった。いつもはタクシーには乗らないけど、今日ばかりはラッキーだった。「どこか安いホテル知ってる?」「うーん、そうだなぁ。オールドブリッジはどうかな。あそこならバッグパッカーの値段だと思うけど。」「でもここって観光地だから外国人向けのホテルのほうが高いんじゃない?ローカル向けの安いホテルだとどれくらいなの?」「そうだね、だいたい350プラかなぁ。」「350!?そんなするの!?」「ボツワナは宿が高いんだよ。どのホテルも少なくとも300プラはするかな。特にマウンは観光地だからね。これがフランシスタウンとかの都会なら150とかで見つけられるんだけどね。」300プラっていったら3150円だ。これまでの国でダントツにもほどがあるほど高い。ボツワナすげぇ……………聞いた話ではボツワナは中流階級の人たちが多いようで、おそらくこれくらいの値段はローカルでも普通なんだろうな。「そっかー………じゃあやっぱりオールドブリッジバッグパッカーに行ったほうがいいかー。」「そうかもしれないね。オールドブリッジはちょっと遠いから50プラだけど、それでもいいかい?」520円はちょっと高いかなと思ったんだけど、宿代を聞いたらそれくらいするもんかもしれない。第一、今の俺たちにタクシーに乗らない選択肢はない。いい人そうな運転手、ロバートにお願いすることにしてタクシーに乗り込んだ。「ロバート、まずATMに行きたいんだけど、いい?」「もちろんさ、任せときな!!」英語が堪能で会話も楽しいロバート。ヒゲを生やしてちょいワルな感じではあるけど、穏やかな顔だし、いい人オーラ全開だ。こんな夜にタクシーに乗るのは少し抵抗があるけど彼は信用できる。このままATMでお金をおろし、ささっとバッグパッカー宿に行ってビール飲んで美味しいもの食べるか!!が、しかし、ここからが長かった……………まずATMが動かない。正確に言うと町にあるどのATMも作動していない。ATMに連れてきてもらい、動いておらずに車に戻り、また別のATMに行くがやっぱり動かない。その度にロバートは嫌な顔ひとつせずに次のATMに行ってくれるんだけど、なぜかどこも動いていなくて途方に暮れてしまった。何度も何度も別のATMに行ってくれるロバートに申し訳なくなってきた。「うーん、どうやらこれは雨のせいみたいだ。雨でエレクトリックパワーがダウンしていて、それでちゃんと作動していないみたいだよ。大雨が降ると停電しやすいんだよね。」「そうなんだ…………でも今って雨季は終わったんだよね。」「本当だよ!!みんな驚いてんだよ!!この時期にこんな雨が降るなんておかしなことなんだ。普通じゃないんだよ。うーん、さてどうしようかな…………」雨が降りしきる駐車場で3人でどうするか考える。まずお金がおろせなかったらすでにこんなに走り回ってくれているロバートにタクシー代を払うことすらできない。しかしATMは使い物にならない。こうなったら宿に行き、そこで換金をしてもらうしか方法はないか。宿代はおそらくドル払いできるはずだし。というわけで不安を抱えたままオールドブリッジバッグパッカーを目指したんだけど、ロバートはどんどん町外れのほうへと走っていく。ついには市街地を出て真っ暗な田舎道になり、ヘッドライトの光だけがアスファルトを照らしている。え?こんなに遠いところにあるのか?町の中にあるんじゃないのか?オールドブリッジバッグパッカーの話はリビングストンにいるときにウルグアイ人のロミーに聞いていた。マウンに行くならオススメのいい宿があるわよ!って言っていたので、最悪そこに泊まればいいかと考えていたけど、まさかこんなに町から離れたところにあるとは考えてなかった。これだったら明日またタクシーで町に向かわないといけない。それからもタクシーは、おいおいマジか?っていうくらいひたすら走り続けた。すでに建物はどこにもなく、暗闇の中に森が広がるのみ。そうして20分は走ったんじゃないかな。ようやく森の中にポツンと小さな看板が見えた。ここがそうだよとロバートはハンドルを切って森の中に突入していく。道はひたすら悪く、ボコボコに陥没して池みたいになっており、さらに奥に進むと完全にオフロードの地面になった。周りには森が広がり、とてもこの先にバッグパッカーが行くような宿があるとは思えないとんでもないあぜ道を、ぐわんぐわん揺れながら進んでいく。「す、すごいところにあるんだね。」「そうなんだよ!!たくさんの旅行者が来るってのに未だにこんな道なんだから勘弁してほしいよ!!でも心配しなくてもたくさんの外国人旅行者がいるからね。」頼りになるロバートの言葉にホッとしていると、ようやくあぜ道と森の中に建物が見えてきた。隠れ家のように木々に溶け込む宿で、アフリカらしい草の屋根の作りが味がある。本当に外国人がいるのか?と車を降りて中に入って行くと、そこには驚くほどたくさんの欧米人がいた。半屋外の屋根の下は砂の地面になっており、そこにテーブルと椅子が置かれ、テレビまである。さらに奥にはビリヤード台があって欧米人の若者たちが大声で盛り上がって騒いでいた。こ、こりゃすごいな…………自然のど真ん中にある隠れ家的な雰囲気かと思ったらただの騒がしい欧米人宿じゃんか……………若干引いてしまったけど、まぁ俺たちに選択の余地なし。もうここでさっさと泊まってしまうか。するとレセプションのおばさんと現地の言葉で話していたロバートが顔をしかめた。「フミ、ナオ、残念だがフルらしい。満室みたいだよ。」ま、ま、ま、まま、マジ!!!嘘だろこんな町から遠く離れたオフロードの果ての僻地まで来たってのにフル!!!!お、終わった………………なんとかしてやれないか?と聞いてくれてるロバート。するとレセプションのおばさんがタウンページみたいな本を出してきて、他の宿に電話をかけてくれた。しかしどこも値段は500プラとか600プラとか。1泊5000円以上て……………無理すぎるよ……………しかしこれはボツワナではそんなに法外な値段ではないみたい。最後にかけてくれたところなんて2000プラって言われたみたいだった。22000円て………………これもまたボツワナらしいところなんだろうな…………困り果てている俺たちの横にいるロバート。こんなところまで送ってきて、はっきり言ってロバートからしたら知ったことではない。値段が高いからといって渋っている俺たちに愛想を尽かして、じゃあ俺が出来るのはここまでだから、と帰っていってもおかしくないと思う。しかしロバートは、それは高いな………わかった、他のところを試してみようと言ってくれた。ロバートオオオオオオオ…………なんていいやつなんだ……………ロバートのタクシーに戻り、またあぜ道をぐわんぐわん揺れながら元の車道に出てきた。朝から国境を越え、ご飯も全然食べずにひたすら動き続け、すでに15時間も移動している。さすがに疲労困憊して頭がボンヤリしてきた。ロバートもこんな時間まで付き合わされて疲れているのが見て取れる。それでもなんとか宿を見つけようと、3人で何軒もホテルを回った。しかしどこも500プラ、600プラ、700プラと5000円を軽く超えてくる値段ばかり。時間はどんどん過ぎていき、すでにホテルも門を固く閉ざして寝静まっている。それでもロバートは門までいってなんとか宿のスタッフと交渉してくれている。雨はひたすら強く降り続いており、フロントガラスから前が見えない。マジでロバートに申し訳なさすぎる。こんな時間に面倒な客を乗せちまったなぁって思っているはず。もう本当にいい加減値段のこと気にしてないでさっさと決めろよとサジを投げられてもおかしくないってのに。それでもロバートは根気強く俺たちのために安い宿を探そうとしてくれる。「ここも高いな。もう1軒向こうにあるから行ってみよう。」「本当ごめんロバート。ありがとう。俺たち朝からご飯食べてないんだけど、今の時間ってどこのホテルもご飯なんかないよね。」「うーん、そうだね、この時間はホテルのレストランも閉まってるだろうな。町に行けばどこか開いてるかもしれないけど。」カンちゃんも俺も空腹と疲労で口数が少ない。タクシーの中でうなだれて、頭の中によぎるのは今夜はもしかしたら宿に入れないかもしれない、という思い。宿をちゃんと調べなかったこと、お金をおろせなかったこと、無理に先に進み続けて夜に到着したこと、ミスだらけだ。なにが楽勝だよー…………朝の自分を殴りたいー…………絶望的になっているとロバートはハンドルを握りながら言った。「心配しなくていい。必ず宿を見つけてあげるからね。」ロバートの優しさだけが救いだった。何軒ホテルを回ったかな。値段が高すぎるのと、もうホテル自体寝静まってて誰も出てこなかったりであちこち探し回り、6軒目くらいにひとつのホテルにたどり着いた。時間はすでに23時をまわっている。雨の中レセプションに入ると感じのいいスタッフの兄さんが出てきてくれ、400プラだよと言った。「どうする?ここが今までで1番安いな。でもスタッフの彼がここから少し行った場所にもう少し安いところがあるって言ってるよ。」驚くことにホテルのスタッフの兄さんが別の安いホテルを教えてくれるという親切さ。でも裏を返せば400プラが値切りできない正規料金だということがわかる。他のところを勧めるような人はボッタクリも値下げもしないだろう。ホテルは今まさに停電中で、敷地は真っ暗、兄さんは手にLEDライトを持っている。ふぅ、もうさすがに限界だ。1泊4200円はかなり痛いけどこれ以上ロバートを連れ回すのは申し訳なさすぎる。ここに泊まることにした。心配していた支払いもドルを受け付けてくれ、100ドル札で払うとプラでお釣りをくれた。そしてロバートに150プラ、1600円を払うとロバートは一瞬驚いた顔をして笑顔でそれを受け取った。おそらくロバートは最初に言っていた値段の50プラでも嫌な顔をしなかったと思う。オールドブリッジバッグパッカーがフルで他のホテルを探してくれたのは、きっと彼の優しさだったはず。でもロバートがいなかったらマジで途方に暮れていた。本当にありがとうロバート。「じゃあ、ご飯をゲットしに行こうか。お腹空いてるんだろ?」おいロバート…………ここまでしてくれてまだ俺たちのことを心配してくれてるのかよ。ミスターパーフェクトやな。「大丈夫!!お腹は空いてるけど今日は我慢して明日食べるよ。ありがとうね。」「そうか。これ俺のケータイ番号だから。またタクシーが必要になったら電話してくれな。良かった良かった。じゃあね!!」ロバートは雨の中、エンジンをかけて去っていった。ロバート、マジで助かったよ!!!やっぱり確信したわ。ボツワナ人本当に優しいわ。LEDライトで照らしながら部屋に入ると、とんでもなく豪華な部屋だった。ふかふかの王様ベッド、ピカピカの床とピカピカのバスルーム、壁にはテレビ。さらに冷蔵庫もキッチンも湯沸かしポットもお皿も紅茶セットもあるという至れり尽くせりの内容。こりゃ4200円の価値あるわ……………しかし残念なのは停電中だということ。電気がないのでお湯が沸かせないから紅茶も飲めないし、せっかくワイファイが飛んでいるのに繋げない。ウォーターポンプも電動なのでシャワーも浴びることができない。こんな超豪華な部屋なのに20パーセントもオプションを利用できないな……………まぁ仕方ないか…………もう夜中だしさっさと寝るか…………荷物を置いてタバコを吸い、うなだれた。疲れた…………マジで疲れた……………あんなにリビングストンでネットをいじってたのに全然ルート出しとかホテルの下調べとかダメダメやん…………雨が降っててテントが張れなかったとか停電でATMが死んでたとか色々あっにしても、もっと完璧にトラブルなしで旅できるようにならないとなぁ。でもおかげでロバートに会えてボツワナ人の優しさに触れられたんだよな。象もたくさん見られたし、キリンと正面衝突しそうになったし、本当はど田舎のほうとか攻めて3日くらいボツワナに滞在しようと思ってたけど結構満足だな。明日もうマウンを出てナミビア方面に向かうか。ああ、腹減ったな…………するとその時、いきなり部屋の電気がついた。「あ!!!カンちゃん電気ついたああああ!!!お湯!!お湯沸かして紅茶!!!」「うん!!あ!!!思い出した!!!」「え!?なに!?」「バッグの中に最後の辛ラーメン入ってる!!ひとつだけ!!」「あああああああああああああ!!!!!」アフリカに向けて買った10個の辛ラーメンの最後のひとつがまだバッグの中に埋まっていたんだった!!!電気がつけばキッチンが使える!!!お湯が沸かせれば辛ラーメン作れる!!!ぐあああああああああ!!!!!辛ラーメンに命救われたあああああああ!!!!お湯を沸かして紅茶を作り、砂糖をたっぷり入れてエネルギー補給。そして辛ラーメンを作ってカンちゃんとひとつの鍋から麺をすすった。ああ……………染み渡る……………空っぽだった体が満たされていく……………そしてシャワーを出すと熱いくらいのホットシャワーが出た。さすがは4200円。熱いシャワーなんて当たり前だ。お腹いっぱいになり、シャワーで温まり、ベッドに倒れると死ぬほど気持ち良かった。無駄に枕が4つもあるし、シーツは清潔そのものだし、いいベッドだとこんなにも違うもんかと贅沢な気持ちで目を閉じた。ああああ……………ボツワナ初日……………バッタバタだったけど最終的にはめっちゃ満たされたぁ……………