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ビビりながらも一応ダッカの観光

2016年4月1日(金曜日)
【バングラデシュ】 ダッカ






今回の旅ではほとんど観光をしてないんだけど、バングラデシュは初めての国。


それに安全を考えて路上も控えるので、やることといえば観光しかない。



ダッカの観光地ってなにがあるんだろ?







まったく分からないんだけど、ひとつだけバングラデシュの入国情報を調べている時に見つけていたのがショナルガオっていう町にあるパナムナガールっていう場所。


なにやらイギリス植民地時代よりもはるか以前に栄えたかつての都市が放置され、廃墟になっているんだそう。


廃墟フェチにはたまらないのでそこだけは行ってみようと思っていた。





昨日ハヤトさん、マミさんご夫婦にお会いして聞いた話では、今泊まっている宿のすぐ近くからバスが出ているとのこと。



そしてダッカ市内だったらオールドダッカと呼ばれる古いエリアが1番の目玉観光地なんだともおっしゃってた。


今日はバングラデシュの歴史巡りだな。
















昨日早く寝たこともあって7時に目を覚まし、荷物をまとめる。


そして宿のレセプションでチェックアウトをしてから夕方まで荷物を置かせといてもらえないか聞いてみると、めっちゃ笑顔でノープロブレム!と言ってくれた。




ガニーズインターナショナル、マジで良い宿。
ダッカの宿はここで決まりだ。

ありがとうね!この兄さん英語も達者だし、最高だったよ!!



























宿から歩いて5分。


その5分の間に命の危険に10回くらいさらされながらクレイジー道路を渡り、グリスタンというバス乗り場へやってきた。




竜巻旋風脚を2000回くらいくらったようなオンボロバスがひっきりなしに行き交い、バスの添乗員が死ねボケエエエエエエエエエエ!!!!死ね!!死ね!!!!と叫び散らかしてる戦場があったらそこがバス乗り場だ。















バングラデシュのバスの添乗員の特徴は、行き先を声を枯らして絶叫しながらバスの車体を手のひらでバゴンバゴン叩くところ。


マリリンマンソンみたいな声で叫び、バスの車体をひたすらブッ叩いているので、き、キレてるの!?ってなる。



叫ぶ合間でイイ感じでブッ叩くのがイケてるみたいな感じだ。


気合い入ってる人は木の棍棒みたいなのでバスをウラアア!!ってフルスイングでブン殴ってる。




そ、そこまでしなくても……………


リアルハガー市長やん……………





「キィィエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!ドガン!!ドガン!!ショナルガオ!!ショナルガオ!?!?乗れ!!オォ?!?はよ乗れ!!」



使い慣れた手垢のついた棍棒を振りかざしながら叫ぶ兄ちゃんに詰め込まれると、クラクション全プッシュで勢いよく走り出すバス。


いやー、面白いわ。


もう一瞬で泥だらけ。


























バスはズタボロの町をいくつか走り抜け、40分ほどでショナルガオの町に着いた。

料金は40タカ。57円。







昨日の雨で冠水し、道路には水たまりっていうか池ができており、その中をトゥクトゥクとリキシャーが果敢に渡っていく。








昨日一晩の雨でこれだから、これからアジアの雨季に突入したら一体どんなことになるんだよ……………


もう泳ぐしかねぇんじゃねぇか?





おかげで歩いてるだけでサンダルが泥をはねてズボンもバッグも泥まみれ。

乾いてるところがなくて、超絶嫌だけど仕方なく池にジャバジャバ入って歩いていく。





















ショナルガオのバス乗り場から目的地のパナムナガールまではのんびり歩いて30分くらいかな。

民家や商店がポツポツと並び、子供たちが駆け回っている田舎ののどかな一本道を歩いていると、子供のころを思い出す。


宮崎もそれなりに南国植物があって、よく山の中で遊んでいた。




でもあんなところを外国人が歩いていたら子供の俺はきっと驚いただろうな。


この村の子供たちも、みんな俺のことを見つけると動きを止めて凝視してくる。

そりゃそうだよな。





ハーイと笑顔で手を挙げると、恥ずかしそうにはにかんで走って行った。






























しばらく歩いていくと、商店がたくさん並んでいる場所に出てきた。

このショナルガオにはアートの博物館があるみたいで、その入り口だった。


結構たくさんの観光客がいるけど全員バングラデシュ人だ。
インド人もいるかもしれんけど見分けはつかない。


欧米人やアジア人は見事にゼロ。











ちょっと気になったけど、そこまで惹かれないので通り過ぎ、そこから5分くらいでまたトゥクトゥクがたくさん止まってる場所があった。


横道を覗くと向こうに廃墟の建物が見える。

ここだ。








廃墟のほうに進んでいくと、警備のおじさんに止めらる。

指差されたほうを見るとチケット売り場らしき場所があった。



おお、ちゃんと観光地として管理されてるんだな。








チケットの値段はバングラデシュ人が15タカ。21円。

SAARCっていう南アジア協力連合の加盟国の外国人は50タカ。72円。

その他の外国人が100タカ。145円。























ゲートをくぐると一気にタイムスリップした。





















1本の道の両側に建物が並んでいるんだけど、それらの全てが廃墟になっている。


赤レンガがむき出しになって朽ちた昔の建物。

ところどころ綺麗な彫刻が施されていて、かつての栄華をほんの少しだけ匂わせている。


建物の裏は草むらになっており、簡素な村の民家があった。



ここだけが、見事に手つかずのまま取り残されていた。























ここに来るまでに現在の町を見てきたけど、どれも質素なものだった。


それに比べて、100年以上前に建てられたこの廃墟のほうがはるかに豪華で、気品を感じさせる。





1100年代にベンガル地方の中心都市として栄えていたというこの町。

今ここに残されている豪邸の廃墟は、1900年の前後にヒンドゥー教徒たちによって建てられたものらしい。


しかし、インドから独立した東パキスタンはムスリムの国になり、それによってこの豪邸を建てたヒンドゥー教徒の人たちは町を捨てて逃げたんだそう。






人々がいなくなり、取り残されたこの美しい町。




村の子供たちが建物の間を走り回り、頭に木の枝をたくさん乗せたおじさんが上半身裸で歩いている。

寂寞が風とともに吹いて、崩れたレンガの入り口を通り抜ける。





ああ、こりゃいいな。

ちょっと足を伸ばした甲斐があった。























帰りは乗り合いでトゥクトゥクに乗ったんだけど、30分もあの泥池をジャバジャバ歩かずに済んでわずかに10タカ。14円。

ドライバーのおじちゃんの笑顔がとても気持ちいい。







それからまたダッカに戻るバス乗り場に行ったんだけど、ここでもやはり怒号が飛び交いバスをバンバン叩きまくる戦場だ。




しかし面白のは、俺から声をかけなければ誰も俺のことを構わないというところ。

みんな俺のことなんか眼中なしでバングラデシュ人相手に叫びまくってる。



インドだったら2秒で俺の争奪戦になるのに。




「ウヒョオオオアオオオウ!!ジャパニーズ!!カモン!!チープチープ!!カモン!!マリワナ!!グッドクオリティー!!」



「俺の客だボケ!!このジェントルマンにお前みたいなクソが話しかけるな!!さ、どうぞジョージクルーニー様。」



「テメー殺すぞ!!引っ込んでろボケ!!」



「テメーが消えろや!!俺がこのカモネギにマリワナ超ボリまくって売るんだウエエエエイイ!!!」




って感じで取り囲んできて腕を掴んできてもうひどいことになるのに、このバングラデシュではまだそういう状況になっていない。



そして俺から、ダッカはどのバスですか?と聞くと、ダッカかい!これだよ!こっち!!さぁ、ここに座ればいいよ!!と一気に周りの人がみんなで寄ってたかって世話を焼いてくれる。








なんだろうこれ。


これっておそらく観光客ズレをしていないからなんだと思う。

観光客ズレしてないから騙してお金せしめようって知恵がまだない上に、ベンガル人はもともとみんな優しいのかすぐ世話を焼いてくれる。




インドでも、ヨルダンでも、エジプトでも、モロッコでも、観光客相手をしてる地元の人間はひどいもんだ。


いかに金をまきあげるかしか考えてない。



50円で行くよ!って言っといて、あとから、え?60円って言ったよ?バカなの?ねぇバカなの?早く払って!!ほらもう時間がないから早く!!ってせかしてくる。


このアホなやりとりに疲れてどれほど観光意欲が削がれてその国のイメージが下がることか。





それがバングラデシュにはない。

みんなビビるほどピュアだ。


当たり前の値段で買えていることに、逆にこっちが悪い気がしてくる。


え、ちょ、ちょっとくらいボッタくってこなくていいんですか………?って気を使ってる自分に驚いてしまう。





これがもし10年後に来た時に、よっしゃ今から超絶嘘つきまああああああああす!!!みたいな顔して、トゥクトゥク10タカのところをとりあえず200タカからハンマープライス!!みたいな感じになったら確かに寂しいだろうなぁ。


てかインドってこれ考えたらすごいよなぁ。


200ルピーだぜ!!って叫んできて、2秒で100ルピーでいいよ!ってなって、ええい!50ルピーでどうだ!!20ルピイイイイイ!!!ってどこまで下がるんだよ?ってくらいボッタくってくる。



マジで正気の沙汰とは思えない。

観光客を馬鹿にしてるにもほどがある。





観光客ズレってだけじゃなく、この優しさがベンガル人のもともとの気質だと信じたいなぁ。






















ダッカに戻ったらその足でオールドダッカに向かった。

オールドダッカもまた歩いて10分くらい。

ただオールドダッカと一言で言ってもなかなか広いエリアのことみたいで、端から端まで歩けばかなり時間がかかる。













細い路地が入り組む下町の雰囲気で、建物がギュウギュウに密集した迷路だ。


もっと土産物屋さんとかが並んだ観光地化された地域なのかなと思っていたけど、いたって普通の、ありのままの生活地域だ。


地面がこれ以上ないくらいボコボコで、工事中なのか戦時中なのかわからないような状況になのに、平然と子供が走り回って遊んでいる。

















オールドダッカはこの町が始まった時からある最初の地域なんだそう。

確かに建物はすべてが古く、いたるところにモスクが散らばっており、アザーンが流れ出ている。

チャイを飲みながら歩けば、そこらへんで人々が整然と並んでお祈りをしている。
























お祈りの時はこんなに秩序があるのに、どうして普段はあんなにルールを守らない無秩序なんだろうな。


アッラーホエックペル、というあの懐かしい言葉がモスクから滲み出ると、人々は跪いて頭を地面にこすりつけた。

足がなくて台車に乗って頭を垂れるおじさんの額には祈りアザができていた。
























ちょっと怖かったけど、そんな光景を写真に収めていると、なんだなんだ?と人々が集まってくる。



どうして写真を撮ってるんだい?と。


かなり冷や汗が出た。






イスラム教を馬鹿にしてるのか?と思われてしまったら身の危険がある。






でも純粋な笑顔を作りながら、日本人にはイスラム教徒はほとんどいないので珍しいんです!と答えると、ニコニコしながらそうかい!と肩を叩いてくる。



せっかくなので、トロールにもお出まししてもらった。


すると、いつものことだけど、トロールというただの人形を世にも珍しい珍品でも拝むかのように人が集まってきて、30人ほどの人だかりができあがった。




なんだ!?なんだそれは!?

日本の神様か!?

材質は何で出来てるんだ!?




材質とかどうでもいいやろと思いながらも、あまりに人だかりが膨れ上がってしまい、さすがにこれはまずいと何食わぬ顔でにこやかに手を振ってその場を後にした。


いかんいかん、あんまり目立つ行動したらカンちゃんに怒られてしまう。





















オールドダッカはそんなもんで、これでダッカで行きたかった場所はとりあえず全部行ったぞ。


とりあえず無事だ。

でも遠足は帰るまでが遠足。



ちゃんとバングラデシュの国境を越えるまでは気を引き締めておこう。


宿に戻って荷物をとったら少し早めなバス乗り場に向かった。









ていうか電線すごすぎ。







金谷さん、これどうにかできますか?


配電盤、こんなですけど。






よくこれで電気通ってるわ。



















バス乗り場について、タバコを5箱購入。

バングラデシュのタバコは65円とかだ。これがインドだと200円くらいする。


日本から持ってきたお気に入りの銘柄の巻きタバコが底をついてしまったので、しばらくこの現地のマズいタバコで我慢しよう。






そして横にあった結構綺麗目のファストフードレストランで晩ご飯。

ハンバーガーとポテトとコーラのセットで160タカ。230円。

バングラデシュってあんまりご飯は安くない。





ていうかハンバーガーの中のフライドチキンに骨つき肉を使うのやめてもらっていいですか………?

普通に思いっきりかじりついて歯がかけそうになったわ………………


骨つき肉のハンバーガーとか人生で初めてやわ。






















そして21時半。


ようやくバスの時間になり、現地の人に混じってゾロゾロと乗り込んでいく。


しかしここで問題が。











えーっと、俺の席は2列目の窓側ね、2列目とか結構前だし、窓側はもたれかかれるから楽で嬉しい!!やったね!!



さーて、シートに座ろうかな!!

うん、知らないオッさん座ってるね!!ヒゲすごいね!!迫力満点♫











おい、コラ、オッさん。なめてんのかコノヤロウ?そこは俺の席だ。




いやー、明日の朝ご飯カレーかなぁーみたいな顔して平然と座ってる。
おいどうせカレーだ、どけ。






オッさんにチケットの裏面に書いてある指定席の図を見せ、ここは俺の席ですよとジェスチャーする。


キョトリンチョ?みたいな顔でこっちを見上げるオッさん。






「いや、だからここは僕の席だか、」



「うううおおおうう!!バングラバングラクリケット!!クリケットビーチ!!」






いきなり発狂しだすおじさん。


仕方ないので通路側でもいいかとオッさんの隣に座ると、ダメだ!!座るな!!とベンガル語で言ってくる。



オッさんは15人くらいのファミリーかなんかで乗り込んできており、そのみんなで前方の席を占領したいようだ。

どこか田舎っぽい感じの家族で、みんなガヤガヤと行儀が悪い。



まぁ確かにそんなファミリーの中に俺がポツンと入るのは気がひける。

他にも席は空いてはいる。






でもだ、これで俺が空いてる席に座ったところで、次の町で他の乗客が乗り込んできた時に、ここ俺の席なんだけど?っていう状況に必ずなる。


それでまた動いて、また次の町で人が乗り込んできて、ここ俺の席なんだけど?ってなる。


そんな混乱が起きないためにちゃんとシートが指定してあるんだ。




しかしファミリーのオッさんたちは一切聞く耳をもたず、そこに座ればいいだろう!!と空いてるシートを指差す。







………………よーし、こうなったらどうなるか見ててやろうじゃねぇか。















バスが走り出して10分後。ダッカの町の他のバス乗り場に到着。


新しい乗客が入ってきた。



そして案の定、俺の座ってるシートの前に立ち止まり、チケットの指定表を見ながら、あれ?と確認している大学生っぽい若者。




そして、ここって俺の席だよ?とベンガル語で言ってきた。


俺も自分のチケットを見せて、前のオッさんを指差してクイッと手を挙げた。

これだもん、ってな感じで。





若者大学生、オッさんのところに行き抗議を始める。

あぁぁん!?知らん!!どっか行け!!と手を振るオッさん。


マジでルール守れや…………












若者と口論しているとオッさんのファミリーたちも混ざってきて、みんな立ち上がってワーワーわめきだした。


その騒ぎを聞きつけて、話の分かりそうなバスの添乗員さんがやってきた。




「ジャパニーズ、君の席はここじゃないよね。」



「知ってますよ。このオジさんがどかないんです。」



「オジさん、ルールを守ってください。」



「ああああ!!知るかボケ!!帰って屁こいて寝てろ!!」



「あなたのチケットを見せなさい!!シートはすべて指定席になってるんです!!」



「シートが指定席!?何を意味のわからんことを言ってるんだこの若僧は!!ハゲか!!」



「だからチケットを出しなさい!!あなたたちが守らないから他の乗客が困ってるんです!!」



「しいいいいらああああねええええ!!!!!!」




バスの中に怒鳴り声が響き渡る。









不毛だ。

サハラ砂漠より不毛なやりとりだ。






なぜバスのシートの指定を守らないんだろう。

ファミリーで乗ってるからみんなで固まりたい気持ちも分かるけど、だからって無視していいはずない。

インドもバングラデシュも、周りの迷惑とかマジで全然考えねぇ。




そのアホすぎるやりとりを後ろの方から無表情で眺める俺。











「早くチケットを見せなさい!!ホラ!!このチケットはCの1と2!!これがEの4です!!移動してください!!」




その時、



いきなり席を立ち上がった兄ちゃんがスタスタ!!と歩いて行き、その歩くスピードのまま添乗員さんにゲロをブチまけた。





「オロロンオロロン!!びちゃびちゃ!!ベチョ!!」




添乗員さんのズボンがゲロまみれになり、時が止まる車内……………



すると横に座っていたお爺ちゃんがマイペースにベンガルの歌をろうろうと歌い始めた。





臭くてたまらなくてみんなが窓を開け、ドライバーがもらいゲロしそうになってる。


赤ちゃんが泣き出し、大学生は正義感満点で立ち向かってるし、ヒゲのオッさんは譲らないし、爺さん歌ってるし、添乗員さん涙目だし。






いやー、バングラデシュ面白すぎるわ……………

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