スポンサーリンク まるで日本を出発したかのような旅感 2017/2/26 2017/02/10~ アイルランド, 2017/02/15~ クロアチア, ■彼女と世界二周目■ 2017年2月15日(水曜日)【アイルランド】 ダブリン~ 【クロアチア】 ザグレブ朝、ドミトリーの中で物音を立てないように荷物をまとめて運び出した。まだほとんどの人たちが眠っており宿は静かだ。ついに出発の日が来た。ついにこのイギリス&アイルランドからおさらばだ。目的地はずっと楽しみにしていたクロアチア。まだ俺たちはシェンゲンに入れないので、シェンゲン外で物価が安く、温暖で綺麗で食べ物が美味しいところと考えた時にすぐにクロアチアが浮かんだ。あの大好きな大好きなアドリア海沿いの美しい町をカンちゃん見せてあげたい。太陽がきらめいて、風があたたかくて、町全体が中世の遺跡になっていて、海の前のカフェでエスプレッソを飲む。ああああ!!!!ダメ!!!想像しただけでオシッコ漏れそうになる!!!カラッとした青空の下、ウミネコが優雅に飛ぶハーバーのレストランで美味しい海の幸を食べ、昼間からビールを飲み、人懐こい現地の人たちとお喋りして………………そしてホテルのドアを開けると、安定の小雨&寒さ。マジで2ヶ月半、ほぼずーーーーーーーーっとこれだったなぁ。そりゃ気持ちも暗くなるよ。でもいいよもう、これが最後だ。雨の中、宿の目の前にやってきたエアポートエクスプレスのバスに乗り込み、ダブリンの街を走り抜けた。エアポートエクスプレスバスの値段は1人6ユーロ。720円。15分おきくらいで頻繁に走っており、市街地から空港までは30分くらいだったかな。たくさんの人を乗せてバスはダブリン空港に到着。ターミナル2に入るとチェックインカウンターが並んでいるが、そんなに混雑はしていなかった。うーん、その国終わりで空港にやってくると、一気にダンジョンから脱出するようなお手軽感がある。陸路移動だと流れるように旅が続いていくけど、飛行機だとバッツリ切断されてしまうような感覚だ。人種や文化の混ざり合いを感じることなく土地が変わってしまう。でもめっちゃ便利だけど。飛行機に乗れば世界中のどこにでも行きたいところに行けるんだもんな。今夜には俺たちも遠く離れたバルカン半島だ。ちなみにルートとしては、まずダブリン~ロンドン。エアリンガスで荷物代を追加で支払って値段は2人で14300円。3時間のトランジット時間をおいて、次にロンドン~ザグレブ。クロアチア航空で、もともと荷物込みで2人で18294円。これスカイスキャナーで買ってるんだけど、ダブリン~ザグレブの通しで一気に買うのと、ダブリン~ロンドン、ロンドン~ザグレブで刻んで買うのとでは5000円くらい刻むほうが安い。でも不思議なのは、通しで買ったとしてもロンドンで乗り換える飛行機は同じ。結局どちらにしてもロンドン経由で同じ飛行機に乗るのに値段が違うという航空券あるあるを見事理解して、華麗に安くチケットを買うカンちゃんさすが現代旅人!!いやぁ、わざわざ現地のトラベルエージェンシーに行って、毎回現金で航空券を買っていた前回の一周中が懐かしい……………なんて時間の無駄だったんだろう……………あと手数料も…………クレジットカードさえあれば、宿のベッドでちょちょいで買えるんだもんなぁ。本当現代の旅って簡単なもの。飛行機はとどこおりなくダブリンを出発して、とどこおりなく霧に包まれたロンドンに到着。ここでビビったことが3つあった。まずアイルランドという違う国から飛んできたのに、アイルランド出国イミグレーションもなければ、イングランド入国イミグレーションもなし。つまりアイルランドに行ったという痕跡がパスポートにないままイングランドに戻ったことになる。もうもはやアイルランドもUKの1ヶ国みたいな扱いだよなぁ。不思議だなぁ。次に2つ目のビビったこと。イギリスのコインが8ポンドくらい余っていたので、せっかくだから何か食べ物を買って使い切ろうと売店に行ってみたんだけど、イギリス物価安い!!アイルランドってマジでバカ高かったんだよなぁ。笑えるくらいめっちゃショボいサンドイッチがアイルランドでは600円もするけど、イギリスではちゃんとした具のたくさん入った豪華なサンドイッチが420円くらいだ。いやぁ、アイルランド、物価のストレス多かったなぁ。そしてビビったこと最後のひとつは、なんとイギリスからの出国イミグレーションさえなかったこと。出国のスタンプなしでどうぞさようならだ。ここはヒースロー空港という、入国審査がめっちゃ厳しいイギリスにおいて特に1番厳しいと言われている空港。それなのに出るときはノーチェックというゆるさ。いつ出たのかわからなかったらまずくないのかなぁ。イギリスって厳しいんだか緩いんだかよくわかんないわ。いいのかなぁ?と戸惑いながらも時間通りに飛行機に乗り込み、座席に座った。機内アナウンスで知らない言葉が流れて、あぁ、これから英語圏を出るんだと実感が湧いた。バイバイ、イギリス。久しぶりの機内食的なサービスにカンちゃんと喜びながらの快適なフライトはわずかに2時間。あっという間に飛行機はクロアチアの首都、ザグレブに到着した。うわぁ…………来てしまった…………ついにクロアチアに着いてしまった…………さっきまでイギリスにいたのに、もう今バルカン半島だ。思い出がめっちゃくちゃたくさん詰まっているこのバルカン半島。クロアチアも本当に色んなことがあったよなぁ……………でもめっちゃ色んな思い出があるのに実際は6泊しかしてない。旅の期限があったので常に前に進み続けていたあの頃、すごい濃密な毎日を過ごしていたんだよなぁ。「クロアチアに来た目的は?」「どこに行く?」「何日滞在する?」「1人か?誰かと一緒か?」イミグレーションでの質問はこの4つで、スムーズにクロアチアに入国。俺たちは今回クロアチアからのアウトチケットは用意してなかったけど、余裕の片道チケット入国だ。荷物も問題なくゲットしてターミナルに出ると、なんだか建物の中が薄暗く感じる。そしてどこか建物自体も古びていて、ボロい雰囲気。イギリスみたいなピカピカの近代的な先進国から、裕福ではないひなびた小国に来た実感に嬉しくなってきた。おお、早速旅感増してきたぞ。バス乗り場を目指して空港から15分ほど歩いた。外灯はあまりなく、真っ暗なアスファルトをスーツケースを転がす音が響く。夜空にはオリオンが光っていて、その下に俺とカンちゃん2人きりだった。すーっと息を吸い込むと、あの匂いがする。ヨーロッパの夜の匂い。暖炉を燃やす匂いとか、土の匂いとか、湿った空気の匂い。ヨーロッパでずっと野宿しながら旅していたころ、いつもこの匂いの中にいた。この匂いは寒い夜にだけ立ち込める。寝床を探してさまよい、荷物の重さに汗をかき、やっと見つけた暗がりに潜り込んで、オリオンを見上げながら眠る。雨が降ってきたら夜中だろうが逃げまどい、誰かの足音におびえ、野犬に吠えられて、寒さにこごえていた。この匂いを嗅ぐと、あの日々が蘇る。孤独な夜、暗闇の中で見上げるオリオン。今も、真っ暗な一本道で星空を見上げている。寒さが鼻を冷やすけど、気持ちのいい寒さだ。開放感が心を満たしている。星空に抱かれているような気分でアスファルトを歩いた。やってきたバスの運転手さんに、トレインステーション?と聞くと、運転手さんは困った顔をした。そして車内にいるお客さんに、クロアチアの言葉で何か言っている。おお、久しぶりだなこの感じ。ここはもう当たり前にお爺ちゃんから子供まで英語が通じていた国とは違うんだ。なんとか分かりやすい単語で駅を伝えようとするが理解してもらえない。すると乗客の1人に英語がしゃべれるおばちゃんがいて、これは中央駅まで行くわよと教えてくれた。空港近くのバス乗り場からザグレブのメインステーションまで1人14クーナ、230円。30分ほどで駅に着いたらもうめっちゃ記憶がフラッシュバックした。覚えてる!!!!この風景覚えてる!!!この駅裏のマクドナルド、その横のタバコの灰皿、ここでワイファイを拾って寝床を探したあの夜。グーグルマップをにらみつけて大きな川にかかる橋の下に目星をつけ、ひたすら歩いてたどり着いた橋の下は落書きだらけの汚いところだった。だだっ広い河川敷で橋脚の横にテントを張って寝たよなぁ……………そしてこの駅下を通る地下通路も覚えてる。あの日、スロベニアからやってきてすぐに現地の金を手に入れるためにこの地下通路で歌っていくらかの小銭を手に入れてご飯を食べた。ひたすらがむしゃらだったよなぁ……………毎日綱渡りで……………ザグレブの駅周りには本当に色んな思い出が詰まっていた。駅前にはトラムの乗り場があるんだけど、4年前、このトラム乗り場の待合ベンチスペースで俺は歌っていた。最初はいつものようにザグレブの市街地で歌っていたんだけど、その時1人のホームレスの兄ちゃんが話しかけてきて、お前が世界一のギタリストでもここでは稼げないよ、いい場所を知ってるから俺を信じてついてきなと言われた。こんなガラの悪そうなホームレスの言葉なんてまず信じたりしないんだけど、その日はなぜか兄ちゃんについて行った。兄ちゃんは手に赤ワインのボトルを持っていて、それにコーラを混ぜて飲んでいた。その兄ちゃんに連れてきてもらったのが、この駅前のトラム乗り場だった。確かにたくさんの人がトラムを待っていたんだけど、兄ちゃんはこのトラム乗り場のベンチ横で演奏するといいと言った。いやいや、こんな混雑してるベンチ横で歌うなんて迷惑だよ!と思ったんだけど、どうやらこのポジションでパフォーマンスするのはザグレブでは日常的な光景らしく、俺も遠慮気味に音量を落として演奏した。すると確かに稼げた。人々はトラムに乗り込む前にコインを放り込んでくれた。意気投合した俺たちはその夜、兄ちゃんの家に泊めてもらった。兄ちゃんが連れて行ってくれたのはなんと郊外にある廃倉庫群。暗闇に覆われた敷地にはフェンスが張られており、破れたフェンスの穴をくぐって中に入った。もう使われていない廃倉庫が並ぶその場所は、兄ちゃんが言うにはホームレスたちのアパートになっており、ヒッピーやパンクスや絵かきなんかのアーティストたちがそれぞれの倉庫に住み着いていた。倉庫の2階にある兄ちゃんのスペースは、意外と普通の部屋みたいに物が揃えられており、その中で2人でロウソクを灯して酒を飲み、煙をふかした。あれは確かにイカれた夜だった。たった2泊しただけのザグレブだったけど、めちゃくちゃ濃密だったなぁ。「フミ君、そんなことしてたんだねぇ。私たちが出会うずいぶん前なんだねー。」「そうだねぇ、旅の前半は本当に毎日刺激的な出来事の連続だったなぁ。」今もあの兄ちゃんはあの廃倉庫群に住んでいるのかな。赤ワインにコーラを混ぜて飲んでいるのかな。もし会えたら、俺あれから世界一周を達成して今は奥さんと旅してるんだよって自慢したいな。元気にしてればいいんだけど。一刻も早くアドリア海に出たいので、このままザグレブから海沿いのスプリトまで移動しようと、駅の窓口に向かった。薄暗い駅の中は古びており、わかりにくい電光掲示板にいくつもの行き先が光っている。駅の中で古本を売る屋台が出ており、おじさんが普通にタバコを吸っている。駅の中でタバコなんてイギリスでは考えられないことだけど、さすがにバルカン。国が貧しくなり、色んなものが古びて、色んなところがルーズだ。そこらへんでビールを飲んでるダメそうなオヤジもたくさんいる。ザグレブからスプリトまでは、事前にネットで調べていた情報では180クーナ、2900円くらいだったんだけど、窓口で1番安いチケットくださいと言ったら75クーナだった。1200円。うん、こうした先進国とまでいかない国では窓口買いが確実だ。チケットを買ったら腹ごしらえにさっきの地下通路に行ってみた。なんかあるかなーと歩いて行くと、めっちゃ見覚えのある場所を発見。ぐおおお!!!ここ覚えてる!!!!!あのホームレスの兄ちゃんと一緒にピザ食った場所だ!!!ファストフードスタンドになっており、ケースの中には巨大なピザが並んでいる。このピザスライスが1枚12クーナ、190円!!ソッコーで買って食べた。もうマジで嬉しい。こんな大きくて美味しいピザ、イギリスやアイルランドで食べたら確実に800円以上する。それが200円!!!!あああああ!!!!物価のストレスがないいいいいいいい!!!!ていうかこうして外食すること自体ものすごく久しぶり!!!あああああ……………本当、この2ヶ月半、ずっと耐えてきたなぁ………外食なんてあまりに高くて、食べてもフィッシュ&チップスくらいのもんだった。しかも美味しくない。それがクロアチアではなんでも食べられる。もう遠慮せずに色んなものが食べられる!!しかも美味しい!!天国!!!!そしてスーパーマーケットに行き、ビールもゲット!!!カルロバツの500mlが6.8クーナ、110円!!準備万端で駅に戻ってすでに待機していた電車に乗り込むと、立派な個室が並ぶ系のやつ!!しかも乗客がめっちゃ少ないのでこのシートに思いっきり横になって眠ることができるという天国系のやつ!!前回もこうやって夜行電車で爆睡してスプリトに向かい、朝目が覚めたら窓に海が広がっていたというあの感動が今でも忘れられない系のやつ!!!アイルランドの宿がアルコール禁止だったので4日ぶりのビールで乾杯系の吐くほどアドリア海が楽しみ系のやつうううううううううえええええ!!!!あああああああああああ!!!!!もうどうしよ!!!!!古い電車、夜行、ビール、目的地はアドリア海、それなりに重い荷物、新しい国、わからない言語、動き出した電車!!暖房でぽかぽか!!花山薫の握力すごい!!イギリスさようなら。今やっと旅を感じている。