スポンサーリンク 今の人生を高校生の時に想像できたか 2016/9/6 2016/08/16~デンマーク②, 2016/08/19~ドイツ②, ■彼女と世界二周目■ 2016年8月27日(土曜日)【ドイツ】 フレンスブルグ~ 【デンマーク】 オーデンセフレンスブルグの町は活気にあふれていた。歌い慣れたショッピングストリートは土曜日ということでマーケットがたっており、デンマーク人や世界中から訪れた観光客が肩が触れるような密度で歩いている。美しいハーバー、坂の多い古い町並み、長崎みたいにぎゅっと凝縮された旅情と郷愁の町だ。そしてそんな国境の町はパフォーマーたちの激戦地。今日もたくさんのパフォーマーたちがシノギを削っている。ロボットダンスの黒人さん、無表情のバトンジャグラーというレギュラーチームから、5人組のウクレレ隊、バグパイプを使った賑やかな伝統音楽隊、木琴とオルガンの大がかりなコンビなどなど、気合いの入ったバスカーたちがバリバリに演奏して人だかりを作っていた。さぁ、俺も負けてられんぞ、って今ここで思う人生を例えば高校生のときに想像できたかな。ヨーロッパのど真ん中、ドイツの美しい中世の港町。世界中から集まった路上パフォーマーの中で、その一員として、腕を披露してお金を稼ぐ。宮崎の、日向という小さな町の子供からしたら途方もなく想像外の人生でしかない。どこでどう転ぶかわからん。一体どうやってここにたどり着いたのか。それは紛れもなく、あの日、あの時、あの場所で自分が下してきた決断が降り積もった山の頂だ。いや、もちろんここは頂ではなくまだ中腹で、ここから先も無数の決断を下して、まだ見ぬ頂を目指していく。日向の町で学校帰りに天領うどんを食べていたやつが街角でギターを鳴らすと、ヨーロッパの人たちが立ち止まり、拍手してくれる。どんなもんでも人に拍手してもらえるようなことができていれば、それは充分誇れることだ。もっといい歌を歌いたい。河島英五みたいに魂を込めて、吉田拓郎みたいに言葉巧みに、遠藤賢司みたいにテクニカルに、ニールヤングみたいに詩的に、ジェイムステイラーみたいに丁寧に、トムウェイツみたいにどこまでも優しく、いい歌を歌いたいな。今日のあがりは3時間で231ユーロ、26100円。路上を終えたらすぐに車に戻って一路、北を目指した。ついこの前走ったばかりのハイウェイの両側には風力発電の風車が散らばっており、グオングオンと回転している。その足元を滑るように走り抜け、半島からフュン島に渡り、夕焼けが色を失った頃にオーデンセの町に入ってきた。そうして21時にようやくメグミ姉さんの家に到着。遠い道のりだったけど、高速をかっ飛ばせばそこまででもなかったな。「おおーい、着いたねー。遠かったでしょう?でもまぁ忘れ物をしたってのもまた運命だよ。アンデルセンフェスティバルに来られたもんね。」家にお邪魔すると、いつもはラフな格好のメグミ姉さんが今日はドレスアップしてフェスティバルの準備をしているところだった。オーデンセはあの童話の作者、アンデルセンの出身地としてミュージアムもあるところなので普段からアンデルセン推しの町ではあるんだけど、年に1回のアンデルセンフェスティバルでは世界中から観光客がやってくる。この1週間、町はアンデルセンの童話の世界になるらしく、そして今夜が最大のクライマックスである土曜日の夜。町は大いに盛り上がり、フェスティバルの1番の見所であるプロジェクションマッピングのライトショーが行われるとのこと。片道400キロの戻り道ではあったけど、その甲斐もあったってもんだ。まぁプロジェクションマッピングなんてイマドキ世界中で行われているので特段、珍しいものでもないんだけど。無事、車のブラインドを受け取り、少しお話をしたらすぐに車に乗り込んで町に向かった。駅裏の駐車場に車を止めると、ものすごい大音量の音楽が町に響き渡っていた。な、なんだぁ!?これデカすぎるぞ!!!?歩いて行くと、オーデンセ駅前に公園があるんだけど、そこを柵で囲って中で野外ライブが繰り広げられていた。超爆音で。マジで野音のフェスが町のど真ん中で行われている状態なので、やかましいことこの上ない。これがイカしたバンドのロックならまだわかるけど、さすがにヨーロッパ。ただのクラブミュージックのライブなので、四つ打ちがブンブンうなり、腹の底に来る重低音。こりゃ近隣の人はとても眠れないな…………そんなフェス会場の横を抜けて街中に向かうと、いたるところに牧草の飾りつけが施されていた。レストランやバーが並ぶエリアにいくつもの牧草ロールの四角いやつが置かれており、地面は草まみれ。カカシがそこら辺に配置され、農機具が置かれ、都会の中が田舎の村のようにデコレーションされている。これもアンデルセンの童話のひとつを再現したものなのかな。音楽のする広場に行ってみると何やらショーが行われており、何百個もの風船が夜空に放たれ、その下でドレスを着た何人かの女の人がゆっくりとブリキのオモチャのように回っていた。背中にはゼンマイの取っ手がついており、そんな女の人たちがライトアップされながらくるくる回っている様子は本当に童話の中に迷い込んだような不思議な空間だった。土曜日の夜でお祭りということで街は賑わいに賑わっており、酔っ払いたちが大騒ぎしている中を歩き、途中でオーデンセ在住の日本人の方々と合流。そしてみなさんでお目当のプロジェクションマッピングに向かった。会場の市庁舎前はものすごい混雑になっており、何百人もの人たちが広場を埋め尽くしていた。立派な市庁舎の建物の横には巨大な教会が並んでおり、これぞヨーロッパという古い景観だ。まぁまぁ、プロジェクションマッピングなんて別にそこまで大したことないやろーと舐めていたんだけど…………こいつがめっちゃすごかった。市庁舎の建物の窓という窓から突然水が溢れ出し、水没し、海底の中で物語が始まる。もちろん、効果音とBGMもついている。どうやら人魚姫の童話をプロジェクションマッピングで再現しているようなんだけど、そのクオリティがめっちゃ高い。観客を飽きさせないよう、アクションが大きかったり細かいところの転換もすごく緻密。しかも光のショーだけではない。建物の周りでは生身の人間のダンサーたちが映像に合わせて劇のように踊り、アクロバットを繰り広げ、さらには場面に合わせて建物の上から花火まで炸裂するというコンビネーション。プロジェクションマッピングを組み込んだ大規模なエンターテイメントが、この中世の広場で繰り広げられていた。観客からはシーンごとに拍手が巻き起こり、最後の人魚姫が足を手に入れて王子様と結ばれる場面で大歓声が鳴り響いたかと思ったら、極めつけの花火が夜空に光った。ドーン!ドーン!といくつもの打ち上げ花火が広場の頭上にあがり、小さな子供たちがワーオ!!と目を輝かせている。教会の塔のシルエットが花火に浮かび上がり、あんまり綺麗でずっと夜空を見上げていた。こりゃすげぇや。これを見るためだけにでも戻って来る価値があったよ。戻ってきてよかった!!アンデルセンフェスティバル、堪能!!「じゃあ、もう忘れ物ないね!運転気をつけるんだよ!!」メグミ姉さんたちに別れを告げ、まだまだ盛り上がり続ける町の中をカンちゃんと2人で車に向かった。酔っ払いたちの数が増えて、そこらへんでゲロ吐いてる人もいる。駅前のフェス会場ではすでに23時を過ぎてるというのに大爆音が轟き、とんでもない大騒ぎだ。さっきのプロジェクションマッピングも、まだ23時半の回があるというからすごい。日本だったら22時には解散って感じだよなぁ。それにしても良かった。メグミ姉さんに言われた通り、運命だったのかな。忘れ物をしたおかげでこんなにすごいフェスティバルに来ることができたんだもん。これでもう完全に北欧に思い残すことはない。車に乗り込んだら、夜中のお祭り騒ぎの町を抜け出した。さぁ、またドイツに戻るぞ。