スポンサーリンク 再会は喜ばしいものであって欲しい 2016/8/21 2016/08/01~ フィンランド, ■彼女と世界二周目■ 2016年8月10日(水曜日)【フィンランド】 ヘルシンキ昨日の疲れもあって朝起きるとすでに9時になっていた。暖かい大きなベッドは本当に寝心地がよかった。部屋の端には家族の誰かがとったであろうトロフィーが並んでいる。窓の外から木々の木漏れ日が差し込んでベッドを照らしていた。ここはフィンランドの森の中の古い家。リビングに出ると、テーブルの上にカードがあるのを見つけた。マーリットからのものだった。「2人が来てくれて本当に幸せだったわ!また今度は日本で会いましょうね。」それは書き慣れた走り書きの英語で、改めてフィンランド人の英語の堪能さに驚かされる。すでに学校に出かけていたマーリットとはゆうべのうちにハグで別れを告げていた。ママもパパも出かけており、この読み込まれた古本のような屋敷の中に俺とカンちゃんしかいない。長い年月の中で床は少し波打っており、それにとても愛着がわく。俺たちもメッセージを書き、その上に俺のCDを乗せておいた。マーリット、最高のフィンランドの時間をありがとう。これこそフィンランド、という夢に描く体験を実現してくれたよ。今度マーリットに日本で会えた時、どんなことをしてこれぞ日本という体験をしてもらおうかこれから考えるのが楽しみだ。荷物をまとめて家を出て車に乗り込んだ。ヘルシンキにはわずか2時間ほどで着いた。北の小さな町から下ってきたので、このバルト海沿いの首都がものすごい都会に感じる。あちこちを路面電車が走り、信号機も一方向の指示に6個くらい区別があってものすごく複雑でかなり難しい。俺たちが1番先頭の時に、なにやら「S」という文字が信号機に出て、え?なにこれ?!Sってなに!?少し!?少し行っていいってこと?!違うか!?って混乱していたら、後ろからクラクションを鳴らされてしまって慌てて発進した。ふぅ…………都会は疲れるわ…………Sってどういう意味だったんだよ……………とにかく車を止められる場所を探して中心部から少し離れたあたりをヤマカンでウロウロしていたら、公園の脇に1時間1ユーロ、115円のところを発見してそこに縦列駐車した。パーキングチケットを機械で購入し、ダッシュボードにきっちり置く。周りの車を見るとなかなかの確率で違反切符を切られてる車がおり、ビビってしまう。交通看板なんてもちろん英語でなんて書かれていないので、もし勘違いして間違った駐車をしてしまったら大金が飛ぶ。とにかく車を置けたら、手ぶらで街を歩いた。久しぶりのこの街。あれは4年前、シベリア鉄道でロシアを横断しこのフィンランドに入り、最初にたどり着いたのがこのヘルシンキだった。あの時、初めてのヨーロッパの美しい街並みにため息をつく余裕もなかった。いや、ため息はついてたか。今夜の飯どうしよう?っていう。金もない、友達もいない、宿もない、あるのはギターと寝袋のみ。とにかくビビりながらも駅前の脇道で歌い、20~30ユーロを稼ぎ、右も左もわからないまま寝床を探して街をさまよった。「もうどこだったかも覚えてないけどこのあたりを歩いてね、見つけた教会の影で体育座りで夜をやりすごそうとしてたんだよ。でもすごく寒くて、それで、あっと思って。バッグの中の寝袋を出して膝にかけたんやわ。」「なんで膝なの?寝袋だから横になって入ればよかったんじゃない?」「なんか緊張してて、こんな外国の野外で横になるのが怖くて体育座りやったんよなぁ。」「へー、フミ君にもそんな時があったんやねぇ。」カンちゃんはもともと俺のブログの読者ではない。たまたま俺と会う直前にブログを見つけて少し読んだことがあったので俺の見た目は知っていたみたいだけど、それ以前の旅のことはまったく知らない。なのでいつもここではこうでね、ここではこんなことがあったんだよと話すと、そんなことしてたんだねー!って驚かれる。なんかそれがいつも新鮮だ。大都会のビルの間を歩いていると、なにやら人がたくさんいる建物があった。ゴツゴツした岩で出来たその建物は一見遺跡みたいだけど、都会らしい人工的な雰囲気もある。昨日マーリットのママに、ヘルシンキには岩に囲まれた教会があるって聞いていたけど、これがそうなのかな?観光客に混じって中に入ってみると、そこには綺麗なホールがあり、とてもモダンな空間になっていた。たくさんの椅子が並んでおり、岩がむき出しになっている壁にはパイプオルガンらしきものも見えるので、やはりこれは教会らしい。名前はテンペリアウキオ教会というみたいだった。ホールでは何かの楽隊の演奏が行われていた。様々な楽器の生音でフィンランドの伝統音楽らしきものを奏でており、教会内に柔らかく反響する倍音がとても気持ちよく、神聖な雰囲気だった。無料のようだったので、1、2枚写真を撮ったら俺たちも椅子に座ってその演奏を楽しんだ。天井には規則的な木の支柱が放射状に広がっており、天窓から光が差し込んでいる。誰もが静かにその演奏に聴き入っている。が、そこでその静寂をぶち壊しているのが中国人観光客だった。これまで小さな町ばかりだったので見てなかったけど、やっぱりヘルシンキともなるとものすごい数の中国人観光客がいる。ムーミンの流行もあるので日本人もめっちゃ多いんだけど、その区別はすぐにつく。中国人はいつもこうした観光地では最前列に陣取り、赤とか黄色とかピンクの原色の服をすごい組み合わせで着ており、バードウォッチングに行くレベルのゴツいカメラを首からさげている。そして遠慮なしに立ち上がって写真撮りまくりだ。前のほうでは演奏中だというのに、その楽隊の近くまで行って振り向き、ポーズをとって他の人に記念写真を撮ってもらっている。いやまぁ、他の日本人も欧米人観光客も写真は撮っている。でも最低限のマナーってもんをみんな心得ている。観光地の中国人ってすげぇよなぁ…………肝が太いっていうか無神経っていうか…………あまりに立ち上がって写真ばっかり撮っているので、中国人の後ろに座っていた欧米人のおばちゃんがものすごい怒りながら、シッダウン!リッスン!!と注意していた。しばらく演奏を聴いたら、表にあったお土産物屋さんを回り、それから中心部へ歩いた。このヘルシンキもまた他のフィンランドの都市と同じようにホコ天のショッピングストリートがほとんどなく、かろうじて百貨店のストックマンの前に短いホコ天があるのみ。でもそこではすでに他のギター弾き語りの人がアンプでガンガンにパフォーマンスしていた。ルーパーを駆使して音を重ねていくパフォーマンスはもはや世界中でやられているな。ここ。ここが前回俺が歌っていた通り。自転車置き場みたいになってて、人も通らないし、ずいぶん雰囲気が変わっていた。あぁ、ここで歌うぞ!って思いながらもビビってギターが取り出せずにオドオドしていたのが懐かしいなぁ…………「ここで歌っていたら初日にいきなりオッさんが声をかけてくれて、ウチに泊まるか?って言ってくれたんだよなー。」「そうなの?すごいね!」「そんでそのおじさんについて歩いて行ったら、いつまでも駅の中とか周りをウロウロするだけでどこにも行こうとしないんやわ。なにしてんだ?と思って、え?どこに向かってるんですか?って聞いたら、オッさん、アイドントノーって言ったんやわ。もちその夜は野宿。ウケるわー。」「なにそれウケるー。」ヘルシンキでやるべきことのひとつにお世話になってる人たちへのお土産物ゲットがある。これからデンマークやオーストリアに戻っていく道中で、メグミ姉さんやジョンさんコニーたちに無事北欧を回れたお礼を言いに行きたい。では何を買おうか?そしてやってきたのはここ。フォーラムというデパート。その2階にあるのが………………ムーミンショップ!!日本人の数が尋常じゃない!!!!マジで店内のお客さん、3割くらい日本人!!日本のムーミンショップに行ったことないので品揃えが素晴らしいのかはわからないけど、たくさんのグッズが置いてあり、こりゃムーミン好きじゃなくてもオシャレな雑貨を買いたくなる。俺はよくいろんな人から季節ごとに旅して音楽をやってスナフキンみたいだねと言われるので、そんなスナフキンのグッズを思わず手にとってしまうけど、まぁここは我慢。どうせ買っても旅中でなくしてしまう。値段はだいたい日本のお土産物屋さんと同じようなもんかな。というわけで大量にムーミンお土産物ゲット。お世話になった人たちが喜んでくれたらいいな。それからもヘルシンキの街中を歩き回った。あの日、真っ青なフィンランドの空にそびえる白亜の教会に度肝を抜かれたヘルシンキ大聖堂。果物や野菜、魚介の軽食なんかのたくさんの屋台が並ぶ様子に、魔女の宅急便みたいだ!と思ったハーバー。そのどれもが、初めてのヨーロッパに歓喜したあの日を思い出させた。不安で不安で不安でたまらなかったよなぁ。それが今こうして、もはやちょっとした遠出くらいの感覚でこの街を歩いている。大好きなカンちゃんと一緒に。潮風と、屋台から流れる魚介のスープの匂いが鼻をくすぐり、その頭上をカモメが飛んでいった。「ホラ、カンちゃん、ここの教会綺麗やろー。」「そうだねー、なんて教会なのー?」「知らない。」「そうなのー。」「そしてここ!!うわぁ!!ここ!!ここで寝たの!!」ハーバーの先にある古城のような古めかしい教会。その横にある小さな公園の遊具をはっきり覚えていた。「ここで寝たの?」「そう!!さっき話した続きなんだけど、寝袋を膝にかけてウトウトしていたら警備員さんに叩き起こされて、ここで寝たらいけないって言われて、真夜中の街をとぼとぼ歩いたんやわ。白夜で空が青くてね。それでこの教会にたどり着いて、1人ぼっちでこの丘の上から見たハーバーの夜景っていうか白夜に染まる海がものすごく幻想的で綺麗だったんやわ。静かで、風が吹いてて。あぁ、ここから俺の壮大な世界一周が始まるんだ、ってそんなふうに胸が震えたの覚えてるわー。」「そんなんやねー。」「そんでこの遊具の下で寝たの。人生初めての海外での野宿がここ!!うわぁ!!俺キモい!!」ていうかこのピザ、5ユーロ!!!560円!!!安すぎる!!!吉野家食べたい!!ポケモンゴーは世界中で大流行り!!!街歩きを堪能したら車に戻り、あるところに向かった。中心部から少し離れた住宅地にやってきて、アパートが並ぶとある通りに車を止めた。すると横のアパートの入り口から1人の男が出てきた。久しぶりだね、ピーター。「うおおおおお!!!!ピーター!!久しぶりいいいい!!っていうか、ふ、太ってねぇ!!?」「フミ、久しぶりだな。元気にしてたかい?」俺が変なおじさんにウチに泊まるか?と言われて謎の駅前徘徊を楽しんだその次の日、また路上で歌っているところにウチに泊まるか?と言ってきた男がいた。それがこのピーター。オシャレで甘いマスクで、すぐに仲良くなって彼の家に行き、一緒にサウナに入り、プールで泳ぎ、夜遅くまで語り合った外国での初めてのお泊まりを経験させてくれた友達だった。外国のことがなにもかも新鮮だったあのとき、俺はピーターに宗教は何?と質問した。そしてピーターはラブと答えた。外国人なのに宗教を持ってないこと、さらにラブなんて言ってしまうところに本当に感激して、あの夜のことはそれからもたくさんの人の家に泊めてもらうことになってもずっと色褪せることはなかった。「ピーター、俺少しは英語上手くなっただろ?」「そうだね、あの時は発音が悪くて何を言ってるのか考えないといけなかったから大変だったよ。」ピーターは今アパートに1人暮らしをしており、あの時一緒に住んでいた太っちょのティモは現在はヘルシンキで親と暮らしているみたいだった。ピーターのアパートのキッチンでいれてくれた紅茶を飲みながら色んな話をした。ていうかピーターの外見の変わりようにビビりまくってしまった。あのスマートで甘くて、どっかのアイドルみたいなオシャレボーイだったピーターが、今はお腹が出て髪の毛もボサボサで、歳を取っていた。ピーターも29歳。そりゃ4年前とは変わるよなぁ。俺もきっと老けたはずだ。「ピーター覚えてる?あの時、ピーターは宗教のことをラブって言ったよね。」「ああ、そうだね。覚えてるよ。」色んな話をしてはいるんだけど、なんだか会話が弾まなかった。あれ?と思った。ピーターってこんな感じだったっけか?なんだか呼吸が合わなくて、会話の間に沈黙が生まれてしまう。ピーターはニコニコしてはいるけど、どこか違和感があった。もしかして迷惑がられてないか?そんなふうに勘ぐってしまうほど。別にまた家に泊めてもらおうと思って来てるわけじゃない。飯をおごってもらいたいわけでもない。今はどっちも困ってない。俺はただ旧交を温めたかっただけだ。でも、もしピーターにそんなふうに思われて、それをどう断ろうか考えてでもいたのだったら、はっきり言ってすごく申し訳ない。ていうかほとんど気まずかった。こんなはずじゃなかったんだけどな…………ピーターはそれからも自分の書いた絵を見せてくれたり、自慢だというスコッチをグラスに注いでくれたりしたけど、なんだか盛り上がらない。今夜は予定がないというピーター。でも晩飯行こうぜっていう言葉を口にできなかった。きっと言ったら断られていたはず。そしてそうなったらこのピーターとの縁が終わってしまいそうに思えた。「ピーター、そろそろ行くよ。」「ああ、フミ、元気でやるんだぜ。」玄関から出て、ハグをしてドアを閉めた。そしてアパートを出て歩いた。俺は勝手に、昔お世話になった人たちに感謝の気持ちを伝えたくてまたこうして会いに来ている。みんな、世界一周を達成して戻ってきてくれたことを喜んでくれる。でもそうじゃない人も、もしかしたらいるかもしれない。遠い遠い地で出来た友達との久しぶりの再会、というドラマチックなものを想像しているのは実は俺だけなのか?いやそうじゃないはずだ。そこを疑ってしまったら俺がダメになってしまう。俺は俺の気持ちに正直に、これからも懐かしい友を訪ねよう。ピーターは会ってくれたんだもん。あいつはやっぱりナイスガイだ。ピーター、会えて本当に嬉しかったよ!!いい彼女見つけなよ!!~~~~~~~~~~~~~~~~~~ポーランドのホテルをアゴダでとってくださったかたがいました!!もうすぐポーランドも秋で、落ち葉が公園のベンチを覆いますね。寂しげなあの空気がポーランドのイメージです。それがたまらなく旅情を誘います。どうもありがとうございます!!