6月18日 水曜日
【タイ】 プーケット ~ バス移動
ここタイ南部のプーケットから半島をぐいーんと上がったバンコクまでは20時間のバス移動だそう。
トゥエルブじゃなくてトゥエンティなの!?と何度確認してもやはり20時間だという。
長え………
まぁメキシコの40時間移動に比べたら楽なもんだけど、久しぶりの長時間移動だな。
それでもバスの値段は530バーツ。1700円という驚きの安さ。
ちなみにこれは最安の値段で、バスのクラスによってどんどん高くなって、1番ハイクラスのやつは1000バーツを超える。
20時間の移動なので、もしギッチギチのシートのボロバスだったらなかなかきついことになるけどまぁ大丈夫だろう。
バスの出発はターミナルから20時だ。
というわけで1日時間があるので、歌いに行こうかなというところなんだけど、今日はイクゾー君がいつものショッピングモールでやる。
なら俺は町の中のショッピングセンターでやろうかなと思うんだけど、ここプーケットは昼間は人が出歩かないんだよなぁ。
人が増え始めるのは17時頃から。
バスターミナルに行くためには18時半には宿に戻ってこないといけない。
こりゃ今日は宿でゆっくりするかな。
それともやっぱり少しでも歌いに行くかなぁ。
悩みながらギターを持って1階のレセプションに降りるとカウンターで宿の連中が盛り上がってた。
テレビに映ってたのはワールドカップ、ブラジル戦。
はい、宿決定。
サッカーの有名選手なんてメッシとクリスチアーノロナウドと本田くらいしか知らないけど、最近ネイマールにハマってます。
ネイマールの顔見ると南米思い出すんだよなぁ。
まぁでもこの試合は同点引き分けだった。
どこの国が優勝するかなぁ。ブラジルかオランダかドイツかなー。日本は予選も厳しそうだ。
日記書いてネットの整備でもしようと共有スペースに行ったら大量のDVDを発見。
久しぶりに映画観ようかなと選んだのはゴールってやつとココシャネル。
ゴールはわかりやすい感動もの。
ココシャネルが良かった。
あんな風にして1人の孤児の女の人が世界の女性ファッションを変えたのかと思うと、けばけばしくてただ高価なブランドっていうイメージしかなかったシャネルの見方が変わるな。
シャネルってあんな小さな帽子屋さんから始まったんだなー。戦争の時代をくぐり抜けながら。
いい映画だった。
そうこうしてると夕方になってイクゾー君が路上から帰ってきた。
しっかり2000バーツ稼いできたようだ。
この数日、現地の人とご飯食べに行ったり町の中を案内してもらったりとタイの路上を満喫しているイクゾー君。
またイクゾー君のブログ読みたいんだけどなぁ。
でも一緒にいるとそんな縛られるようなキャラでもないからな。
カンちゃんとイクゾー君、3人でご飯を食べに行き、荷物を持って宿を出る。
市バスで片道30バーツ、100円でターミナルまで行けるので余裕こいていたんだけど、ここがプーケットだというのを忘れてた。
バスすでに終わってる。
荷物を持った俺たちにここぞとばかりに群がってくるタクシーとトゥクトゥクのオッさんたち。
「ウッヒョオオオオウウウ!!!タクシータクシー!!トゥクトゥク!!」
「ウェラーユーゴー!!ジャパン!!アジノモト!!」
「ヒョオオオオオオオオ!!!!バスないバスない!!タクシーしかないもんねえええええ!!!!」
取り囲まれてわめきたてられ、やかましくて叫びたくなるけど本当にバスは終わっているよう。
乗らなければ仕方ない。
「バスターミナルまでいくらですか?」
「500バーツになりまする。」
「へーそうですか。お前を首なが族にしてやろうか?」
「だってバスもうないよ!!乗らないと行けないぜ!!バンコク行くんだろ?!早くしないと間に合わないぜー!!」
ぬぬぬ…………
ムカつくが仕方ない。
なんとか値段交渉するが300バーツが限界みたいだ。
3人なので1人300円程度だから別に気にすることでもないんだけどタイの物価では相当高い。
まぁいっか。早くしないと本当に間に合わない。
「アヘエエエエエエエ!!!日本人たちが乗るってよ!!!」
「ウッワアアアア!!バカだ!!!バスターミナルまで300バーツで乗るってよおおお!!!」
「祭りだあああああああ!!!!!」
タクシーに乗ろうとすると、周りにいた暇そうなタクシーのオッさんたちから、その家族やら小さな子供たちまでワラワラ集まってきて車と俺たちを取り囲んで大騒ぎ。
まぁそんな世話焼きで前に出たがるタイ人の性格も微笑ましいっちゃ微笑ましいけど。
俺たちを荷台に、自分の子供を助手席に乗せた車は勢いよくエンジンをかけてごちゃごちゃとした汚い町を抜け出した。
バスターミナルから無事バンコク行きの2階建てバスに乗り込み、プーケットを出発。
目指すはあのバッグパッカーの聖地、旅人ならば誰しもが必ず訪れるであろう世界一有名なストリート、カオサンロード。
世界一周前に抱いていたその東南アジアの怪しく猥雑で放浪の匂いが漂うイメージ。
現在はお土産物屋さんがひしめき、欧米人たちのクラブが朝方まで爆音を轟かせているというただの観光地と化してるらしいのだが、それでもやはり旅人には憧れの地だ。
「いやー、カオサン楽しみだね。イクゾー君。」
「そうですね。とても楽しみです。金丸さん、忘れてないですよね?約束。」
「………やっぱやらないとダメ……?」
「あ、全然いいですよ。やらなくても。やらない方がいいですよ。うん。いやー、金丸さんのキャラじゃないですもんねー。もう金丸さんですか?って声かけられなくなりますもんね。よし!やめましょう!」
「あー、やるよ。やるやる。あーもう、なんであんなこと言ったんだー。」
さて、ゆうべの話。
みんなでご飯を食べてビールでほろ酔いになって宿に戻り、クアラルンプールのDさんにいただいた宮崎の焼酎をみんなで大喜びしながら飲んでいるとイクゾー君が言った。
「ビリヤードしませんか?」
ホテルのリビングにはビリヤード台が置かれており、よく欧米人たちが玉突きをしている。
イクゾー君がビリヤードなんて似合わんな。
「うん、いいよ。俺あんまり上手じゃないけど。」
「どうせやるなら何か賭けます?」
「うーん、そうやねー。じゃあ最初は焼酎イッキとかにする?」
「分かりました。じゃあやりましょう。」
颯爽とキューを取り、手にパウダーを振りかけ、手慣れた様子でチョークをキュキュっとこすりつけるイクゾー君。
「じゃあ僕からいきますね。」
「な、なんかイクゾー君、様になってるね。」
「あ、そうですか?ちなみに僕小学生のころからビリヤードやってて富士のポールニューマンって言われてました………から!!」
スカーン!!!
カンカンカンカン!!!
ガコンガコン!!
「さ、どんどん行きましょうか。ハスラー小林とは僕のことですよ。ハハハ!!」
この野郎………めちゃくちゃうめえ!!
荷物が多いからといって減らすためにパンツを全部捨てて5ヶ月間ノーパンのくせしてめちゃくちゃうめえ!!
「ハハハー、また勝っちゃいましたね。さ、飲んで下さい。」
「お、おのれええええ………この屈辱はらさでおくべきか………よし!!違う罰ゲームにしよう!!」
「僕はなんでもいいですよ。あー、歌いてー。この大空に~、翼を広げ~飛んで行きたいよぉぉうぉぉおお~。」
「パンツ1枚!!カオサン通りをパンツ1枚で端から端まで歩く!!」
「金丸さん、男に二言はありません………よ!!」
カンカンカンカン!!!
ガコンガコン!!
この野郎!!!
絶対負けん!!!
「金丸さん、パンツはあの赤いやつを履いてくださいね。ブーツもお願いします。」
「…………はぁ……」
「パンツ1枚でブーツて!!パンツ1枚でブーツ履いてカオサンロードて!!くくく!!」
憂鬱なバスは夜の道をかっ飛ばしていった。