2月3日 月曜日
【エクアドル】 バニョス ~ アンバト
家主のホアンはエクアドルのカウチサーフィン界の重要人物らしく、これまでにものすごい数のバッグパッカーたちを泊めてきたんだそう。
カウチサーフィンはこれまで世界中でさんざん勧められてきたけど一度も利用したことはない。
インターネット上の情報だけで、その人の家にお泊りするのってなんだか気がすすまないんだよな。
ネットを駆使して器用に旅するのってもあんまり好きじゃないし。
まぁiPhone持ってるけど。
そんな家主のホアンがカウチサーフィンのサイトにアップするから何曲かビデオを撮らせてくれと言ってきた。
もちろん!!
そんなことお安い御用です。
てなわけで家のリビングで3曲歌った。
うちにはこんな旅人たちが泊まりに来てるんだぜーってアピールするためだろう。
サイトを充実させればやってくるバッグパッカーも増えるはず。
全員がホアンみたいな人ではないだろうけど、きっとカウチサーフィンに登録してる人は人との出会いや交流を心から楽しみにしてる方たちなんだろうな。
マジで懐の深い人たちだと思う。
そんなホアンの家を出たのが11時ころ。
全ての荷物を抱えたヘロニモとマリアンナはどっからどう見ても立派なバッグパッカーだ。
いまだ噴煙を立ち昇らせる雄大なトゥンムラワに別れを告げ、3人でバスターミナルにやってきた。
80セントという激安の値段で隣町のアンバトに到着。
坂の多い山の斜面にびっしりと建物が密集しており、確かになかなかの都会だ。
アンバトのバスターミナルの前で早速ヘロニモたちが仕事を開始するという。
交通量の多い車道の中央分離帯の部分で荷物をおろすヘロニモとマリアンナ。
そしてバッグの中からいくつかのボールを取り出すヘロニモ。
マリアンナも重りがつけられた旗のような布を指に装着している。
そう、交差点でのジャグリングパフォーマンスだ。
「フミ、信号が赤になったら俺たちがパフォーマンスをはじめるから、いいタイミングで車を回ってお金の回収をしてくれないか。」
「フミ、このマラワレスのパフォーマンスは笑顔が1番大事なの。陽気に楽しく演じるのよ。ディズニーランドのミッキーみたいな感じよ。笑顔ね。」
「え?ちょ、俺そういうの結構苦手で…………」
「よし、赤になった。行こう。オラーーーーー!!!!イヤッホオオオオオウウウウ!!!」
「ウヒャアアアアアアアア!!!」
信号待ちで止まった車の前にいきなりテンションMAXで飛び出したヘロニモとマリアンナ。
マジでディズニーランドのミッキーみたいな大袈裟なまでの動きと笑顔。
完全にピエロになりきっている。
すげぇその切り替え、プロだ。
すると30秒くらいしてヘロニモが俺に目配せをした。
お金回収の合図だ。
「お、お、オラー!!………ブエナスタルデース……!!ぽ、ぽぽ、ポルファボール?」
帽子を持って車の列の中を歩いて行くんだけど、どんな顔していいかわからなくてオドオドしていたら信号が青になって車が勢いよく走り出した。
車の間を縫って中央分離帯に逃げ込む。
「フミ、ハァハァ………もっと陽気に………ドライバーに強引に帽子を差し出して………車気をつけてね………」
2人ともハァハァと息を切らしている。
こんだけ激しく動き回ってパフォーマンスしたというのに、帽子の中にはたったの20セント。
寂しすぎる(´Д` )
ヘロニモたちのジャグリングは悪くない。
むしろなかなか上手いほうだと思う。
でもドライバーたちは窓さえ開けてくれない人がほとんど。
これまでもこの交差点ジャグリングをしてるマラワレスをたくさん見てきたけど、ほとんどの人が1回のパフォーマンスで車1台からお金をもらえるかもらえないかくらいの確率だった。
こりゃハードな仕事だ。
そして呼吸が整う前に信号が赤になる。
「よし、ハァハァ……フミ行くよ。ウヒャホオオオオオオイイイ!!!!アンバトーーー!!!!」
結局30分ほどやってコインは雀の涙ほど。
こりゃバスバスキングがどれほど効率のいいパフォーマンスだったかよくわかる。
ヒッピーたちもみんな苦労しながら稼いでるんだなぁ。
「ヘロニモ、俺バスで歌ってくるよ。1時間ほど歌ってくるからマリアンナ貸して。」
「ああ、ハァハァ………じゃあ俺ここでジャグリングしてるから1時間後に待ち合わせね、ハァハァ………イイイヤッホオオオオオオイイ!!!!とくとご覧あれええええ!!!」
ヘロニモを交差点に残して、俺とマリアンナでギターを持ってその辺を走っているバスに向かう。
3人とも道具とスキルは持ち合わせている。
この南米ではやろうと思ったらどこでだって稼げる。
久しぶりのバスバスキングだけど、10日間キトで鍛えたからな。
もう俺も慣れたもの。
マリアンナと息もバッチリでガンガンバスに乗り込んで行く。
同じ道をひっきりなしにやってくるバスに乗って行ったり来たりして、1時間で平均金額の21ドルをゲットした。
さっきの交差点に戻るとヘロニモがくたびれて座り込んでいた。
ヘロニモのジャグリングのあがりはたったの4ドル。
「ヘロニモ、歌のほうが稼げるよ。」
「そ、そうだね………」
そんなハードな仕事を終えて、時間は17時。
そろそろ約束の時間なので3人で市街地へ向かった。
待ち合わせ場所にやってきたのは、バニョスのホアンの家で会った女の子2人組だった。
「ハーイ!!よく来てくれたわね!!こっちよ。」
先日仲良くなったシンディとサラの2人の家に泊めてもらえることになっていたのだ。
綺麗で大きな彼女たちの家に着くと、早速晩ご飯を作ってくれた。
食卓を囲んでみんなで楽しく晩ご飯。
ヘロニモたちはこうやって先々で友達を作りながら旅を続けている。
2人と行動していたらまったく宿代がかからない。
晩ご飯を食べ終わったら、すぐに夜の仕事。
ギターを抱えて街に向かい、3人でレストランバスキング。
しかし3人とも初めての町なので人が入っているレストランの位置がわからず、結構歩き回ってたったの5軒しか演奏できなかった。
夜のあがりは13ドル。
「フミ、今日は俺ほとんど仕事してないから分け前3等分ってのはやめよう。マリアンナとフミが40パーセントずつで俺が20パーセントにしてくれ。」
いつも状況を考慮して正当にお金の管理をしてくれるヘロニモ。
ありがとうな、ヘロニモ。
このアンバトでやらないといけないのは、サンペドロの回収と歯医者さん。
お金はかからないのでその面では問題ないし、少しずつだけど貯蓄もできている。
それはありがたいこと、だけど、日数は容赦なく減り続けている。
早く進まないと。