12月26日 木曜日
【コロンビア】 メデジン
「金丸さん、おはようございますー。」
「おはよー、」
「コーヒー、ミルク入れます?ブラックがいいですか?」
「ブラックかなー。ケータ君、今日は何時からバイク見に行く?」
「昼前くらいに出ようかと思ってますー。一緒に出ます?」
コーヒーカップから湯気がのぼる。
美味しそうな朝ごはんをサキちゃんとナオコちゃんが作ってくれる。
ゆったりとした朝の時間。
おだやかな空気が流れる。
ちょ、カオリさん(´Д` )
みんな何事もないかのようにテーブル囲んでるし(´Д` )
いやー、いい写真だ。
「ちょっとー!!なんて写真撮るのよー!!それブログに載せるのー!!」
「カオリさん、コーヒーどうぞ。」
「あ、ありがとう。ゴクゴク………ぷはー、美味し。」
さてさて、恒例の朝のカオリさん劇場を終えて今日も歌いに行くぞ。
昨日はセキュリティがいなかったから歌えたけども今日はそうもいかないぞ。
なんとか網の目をかいくぐって稼がないと。
バイクを見に行くケータ君とナオコちゃんと3人でタクシーに乗ってセントロへ。
今日でバイク見つけてきます!!と張り切るケータ君たちと別れて、俺はいつものショッピングストリートにやってきた。
おほー、今日も賑わってるなぁ。
この熱帯のコロンビアも、汗ばむ年の瀬に向けて活気を増している。
俺の性欲も増してい…………
なんでもないです。
稼げるほうの通りはセキュリティが厳しいので、まずは手始めに稼げないけど注意されないほうの路地で始めることに。
目の前のチキン屋さんで腹ごしらえして、いざ、ごった返す人ごみに声を上げた。
んー、怒られない。
まったく怒られないけど、
やっぱりこの通りは反応が悪い。
他の国なら商売敵であるはずの物売りのおじさんたちもみんなフレンドリーだけど、お金の入りは悪い。
2時間やって足元には20000ペソほどのコイン。10ドルくらい。
悪くはないけど、やっぱり向こうの通りに比べたら全然だ。
時間は16時。人が1番歩く時間帯。
よし、そろそろ頃合いだな。
ギターをしまって場所変えだ。
ボリバル公園からのびるもうひとつのショッピングストリート。
こちらはさっきの通りに比べてみんないい服を着ている裕福なエリアでマクドナルドもある。
路上をするのにもってこいの通りだけど、今日はやっぱりセキュリティがキッチリ見張っている。
でもだからといってハナから諦めたりしないぞ。
なんとかしてやる。
通りを歩いていると、向こうの方から何やら歌声が聞こえてきた。
なんだなんだ?
人だかりも出来てる。
近づいて行くと、そこではどっからどう見ても旅人風の欧米人のおじさんが路上でギターを弾いて歌っていた。
ガットギターをジャカジャカやりながらラバンバを陽気に歌っているぞ。
満面の笑顔でものすごく楽しそうだ。
おじさんの隣には年季の入った自転車。
大量の荷物がくくりつけられており、一目で自転車旅をしてるんだとわかった。
こんなサインも出している。
すげぇ、8年も旅してんのか。
しかも自転車でアフリカ縦断?
ヤバイ系の人だこの人^_^
おじさんの笑顔ニコニコの賑やかな演奏を楽しそうに眺める人だかりの中に、いつものセキュリティのお姉さんがいた。
ここらを担当してる彼女とはもう顔見知りだ。
何度も止められてるからね^_^
彼女、アンナのとこに行くと、俺のことを見てはぁ~と苦笑いしながら頭を抱えた。
「アンナも忙しいね。」
「まったく、また違う人が来ちゃったわよ。私は音楽好きだから何も言いたくないんだけど決まりだからねー。」
そう言いながらアンナは曲を終えたおじさんのところに行き、事情を伝える。
すると、オー!!そうですね!!わかりました!!とニッコニコですぐにギターを片付け始めるおじさん。
さすが、やり慣れてる人だな。
「ハロー、自転車で旅してるんですか?」
「ハロー!!そうだよ!!僕はラファエル!!ポーランドから来てるんだ!!」
「僕もギターで弾き語りをしながら旅をしてるんです。ポーランドは大好きな友達がいるところです!!」
「ワオ!!そうかい!!僕も日本に行きたいと思ってるんだよ!!」
同じ旅人、しかも弾き語りの路上パフォーマー同士、いろんな話をした。
旅のトラブルとか、良かった国とか。
アフリカでは自転車で走ってるところを後ろからトラックに追突されて背骨と顔面を骨折してズタボロになり生死の境をさまよったこともあるんだって。
「でも僕はこうして元気さ!!そして路上で1番大事なのは笑顔!!ビッグスマイルで演奏していたらみんな立ち止まる。暗い顔でやってても誰もポケットの中のコインを取り出したりしないからね!!」
そんなラファエルと分かれ、さぁ俺もやろうかな。
いやいや、今ラファエルが止められたところじゃないか?
分かってる。でもだからってやらないわけにはいかない。
セキュリティのアンナに相談してみる。
これまで数日、いくら注意しても毎日しつこくやってくる俺のことをアンナも仕方ないわねぇと優しく見てくれている。
いつも1時間は時間をくれるアンナ。
その1時間だけでも他で3時間やるより効率がいい。
「あははは、もう。でもねぇボスが来たらすぐ怒られるわよ。」
「その時はすぐやめます。」
「わかったわ、ボスが回ってきたら教えるからちゃんとやめてね。頑張ってね。」
アンナ、ありがとう!!
周りをキョロキョロしながらアンナ以外のセキュリティがいないか確認して、ギターを音速で取り出して準備。
急いでチューニングしていると誰かがジュースを横にコンと置いた。
後ろの中華料理店のママだ。
「あなたの歌は素晴らしいわ。何かあったらすぐにお店に来るのよ。何でも言いなさい。お腹はすいてない?」
ものすごく優しい笑顔のママはコロンビア人。旦那さんが中国人で、ハーフで美人の娘さんは英語を喋れて、いつも店内から手を振ってくれる。
ママだけじゃなく、店員のコロンビア人のみんなが全員笑顔で気遣ってくれる。
そうこうしてるいちに、すでに人だかりが出来上がって演奏が始まるのを待っている。
よーし!!
気合いで歌うぞ!!!
人だかりは絶えることなく道を埋め、どんどんお金が入っていく。
子供に折り鶴を渡すと、観衆たちから、わぁと声が上がる。
最高の時間。
これが3時間も出来たらコロンビアにいつまででもいたいところなんだけどな。
人垣の後ろにアンナがやってきた。
もうそろそろ終わって、とジェスチャーしている。
もう1曲だけと指を立てると、申し訳なさそうに指でバッテンを作った。
ごめんごめん、アンナ、ありがとうね。
1時間はやれたかな。
今日もたくさんの人に聞いてもらえた。
わずか1時間なのに足元にはすごい紙幣がたまっている。
あがりは69200ペソ。35ドル
1時間で25ドルくらいもいってしまった。
「あー、稼いじょりますねー。」
ギターを片付けているところにケータ君たちがやってきた。
「まぁまぁかな。そっちはどうだった?」
「見つけました。いいやつ見つけましたよ。明日お金払いに行きます。あー、やったぞー!!」
嬉しそうに話すケータ君。
なにやら英語を話せるバイク屋さんのおじさんが一緒に色んなお店を回ってバイクを選んでくれたんだそう。
心配していたエンジンのことも、プロのおじさんがちゃんと音を聞いてくれたというから安心だ。
値段は10万円の予算以内である8万5千円。
税金やら手数料やらコミコミでこの値段なのだそう。
ケータ君の喜び方からして、よほど満足いくものが見つかったみたいだ。
あの凹みまくっていたクリスマス前から一変してかなり好調。
ケータ君も順調に目的に向かっている。
2人ともここに来て南米に受け入れられてきたみたい。
「やっといい調子になってきたね。」
「そうですね。やっとバイクが手に入るぜー!!」
人でごった返す街を笑いながら歩いた。
長く続いたケータ君との旅も終わりに近づいている。