12月4日 水曜日
【パナマ】 パナマシティー
今日ユウコちゃんは飛行機に乗って南米へと飛ぶ。
昨日奇跡的にパナマシティーまでたどり着いてよかった。
この中米最後の街で気の許せる仲間に全部のモヤモヤを吐き出せたことで随分心が軽くなった。
一緒にビール飲めたところがたまらなく嬉しいよ。
「フミ君、フミ君が来るまでとっとこうと思ってまだあそこ行ってないんだ。行こうよ。」
そう、パナマで最大で唯一の観光地といえば…………
もちろんパナマ運河。
北アメリカ大陸と南アメリカ大陸を分断する、ほんの小さな人口の水路だ。
中米の1番細くなってる部分に位置し、80キロの長さで太平洋と大西洋を繋いでいる。
運河ってのは海の近道。
もしパナマ運河がなかったら大西洋と太平洋を行き来するために、ぐるーーーりと大陸を上か下に迂回しないといけない。
半端な距離じゃない。
エジプトにあったスエズ運河もそう。
大幅なコストと日数の削減になる。
そのため、運河には通行料というものがある。
ぐるーーーりと迂回する手間を省かせてもらうんだからもちろん払わないといけない。
パナマもエジプトも、その通行料でもってる国といっても過言ではないほどの莫大な利益をもたらしている。
陸を削ってしまうという、人類の大仕事により世界は一気に近くなった。
世界が繋がっているという事実を海運を通して学ばせてもらえる場所だ。
パナマに来て運河を見にいかない手はない。
さて、行き方なんだけど、すでにこのパナマシティー自体、パナマ運河に面しているので、宿の窓から見えます。
はい、行く必要なし。
なわけなくて、運河には海抜を調整する水門が存在する。
運河といっても海抜が常にゼロなわけではなく、中央のあたりが海抜26メートルの高さがあるので、船を横断させるためには水位の上げ下げが必要となる。
それを水路に設置された巨大な堰で調整するというのが、このパナマ運河最大の見所。
タンカー船が水の力で上がったり下がったりするなんて、スケールがでかすぎてよくわかんねえ!!
楽しみ!!
ユウコちゃんとデートってのがまた楽しすぎる!!
ああ………あの地獄の中米南下から一夜明けたら、女の子とデート&荷物なしでのほほんと観光だなんて…………
頑張った甲斐があったってもんだ………
こうなったらもう、俺の軽妙なトークと爽やかスマイルを駆使してユウコちゃんのパナマ運河を開門してもらって俺の大型タンカーを…………
ヤバイ。元弁護士なのでいろいろマズイ。
これ以上書いたらヤバイ。
下手なことしたらぶち込む前にぶち込まれてしま………
よし、もう下ネタやめよう。
はい、その堰というのは運河の中に何ヶ所かあるみたいだけど、観光客が行くのは町から10キロくらい離れたところにあるミラフロレス閘門というところ。
ホテルの前からタクシー拾ったら2人で5ドルで行ける。20分くらいかな。
でも俺たちはバッグパッカー。
しかもユウコちゃんは1年以上世界を周り、旅人の誰もが避ける西アフリカを旅してきたツワモノ中のツワモノ。
ローカル移動なんてお手の物なので、俺も気を使わず一緒に市バスを乗り継ぐことに。
まずは古ぼけたショッピングストリートを歩いて、シンコデマヨというバスステーションへ。
このショッピングストリート、ボロすぎ。
治安悪そうな雰囲気しかしない。
ここじゃ歌いたくないな。
15分ほど歩いてバスステーションからアルブルックターミナルへ。
そここらはバスで一発でパナマ運河。
これだと1人1ドルくらいでいけるけど、はっきり言ってバス探すだけでめちゃ大変だし時間がかかるので大人しく人集めてタクシーで行ったほうがいいです。
途中土砂降りの雨が降るも、チキンバスがミラフロレスに到達したころにはちょうど止んでいた。
郊外の道路脇に降ろされ、工場の入り口みたいなところをテクテク歩いていく。
そして、そして!!
見えてきた!!
あれがそうか!!
パナマ運河だああああああ!!!!
嘘です。
ただのダムです。
クロコダイルいました。
え?ただの木にしか見えない?
僕もそう思います。
でも地元のオッさんが自慢げに言ってたのでクロコダイルということにしときましょう。クロコダイルやべえ。
そこからもう少し歩いて行くと、近代的な設備の入り口が現れる。
エスカレーターを登り、ビジターセンターの中へ。
運河の見学料は5ドル。
シアターとか博物館にも入れるやつは8ドルだったかな。
ビジターセンター自体が展望デッキになっており、エレベーターで4階に上がって、さぁ!本物の運河!!!
うん、小さいね。
ええ!?
もっとこう黒部ダムみたいに人類の叡智を集結させたすさまじくスケールのでかいものなんじゃないの!?
こんな狭くて大きな船通れるの!?
なんだか拍子抜けだけど、せめて船が通る実際の様子を見たい。
ガンガン順番待ちをして行き交ってるんじゃないかと思ってたけどそうでもなく、次の船は1時間半したら来ますよーっていうアナウンスが流れる。
うーん、14時半か………
ユウコちゃんは今日飛行機に乗る。
17時には空港行きのバスに乗らないとマズイ。
14時間半まで待ってたら帰りはタクシーだな。
まぁ仕方ない。
運河のメインは実際に閘門を利用して水位を上げ下げさせて船を通行させるところ。
それを見ずして帰れない。
そして待つこと1時間半。
これだけ待って小さなクルーザー船とかやったら悲しすぎるね、とか話していたら…………
来た来た、期待していためちゃ大きな船!!!
ていうかマジであんな馬鹿でかいやつがこの細い隙間に入るのか!!?
船の両側に車が並行して進んでいるのが見える。
目を凝らすと、その車がワイヤーで船を引っ張ってるみたいだった。
どうやらあの両側の牽引車が船の中心を水路の中心に保って進んでいるみたいだ。
水路に入ると背後の門が閉められた。
すると、みるみる内に水位が下がり、次の水路の水面と同じ高さになった。
そして門が開けられ、ゆっくりと進んでいく。
こうして階段式に水路を進んでいくわけだ。
もともとこんな感じで作り始めた運河。
それが今やこれ。
すげぇ。
さっきまでこんなもんかって思ってたけど、その細い隙間に巨大な船が進入してくるスリリングなまでの迫力は本当に圧倒的。
こうやって大陸を突っ切っていたんだー…………
人類の叡智、しかと堪能。
ちなみに通行料はトンいくらで重さで決められるようで、平均500万くらいだそう。
昔泳いで渡った変人がいたらしく、その人は35円だったという。
いやー、なかなかいいもん見せてもらった。
世界はいろんな仕組みの上で動いてると実感させてくれるよ。
見る価値ありだ。
さて、こっから急がないといけない。
ユウコちゃんが飛行機に乗り遅れてしまう。
「よし!!ユウコちゃん!!多分もう間に合わないよ!!だからもう1泊してビール飲みながら今夜は運河について語りあわない!?」
「うん!!そうだね!!タクシー乗ろうか!!タクシー!!街まで急いでください!!」
…………10ドルで街まで戻ってくれます。
しかもなかなかいい仕事をしてくれるので20分ほどでホテルの前に到着。
「ユウコちゃん!!もう間に合わないかもね!!今からバタバタしたら忘れ物とかしちゃうよね!!だから今夜までゆっくりビールを飲みながらジョジョ第2部について語りあわな………」
「よし!!じゃあ行こうか!!空港行きのバス停は魚市場の先にあるみたいだから途中でまたセビーチェ買って行こう!!」
2人で急ぎ足で歩き、魚市場でセビーチェを買い、ビールを持ってバス停へ向かう。
そしてバス停に到着して、慌てて乾杯。
セビーチェ美味い。
「ゆ、ユウコちゃん、こんなに慌てて食べたらせっかくの味がわからないよ。だからこのまま宿に帰ってビール飲みながらこれからの2人の未来について語りあわ…………」
「あ!!バス来た!!じゃあ私行くね!!楽しかったよ!!また南米のどこかで会えるといいね!!バイバイ!!」
「ああああああああああ!!行かないでくれええええええええ!!」
無情にもすごい勢いで走り去っていくバス。
ああ………また1人か………
うん、早くコロンビア行こう。
ユウコちゃんが残して行ったセビーチェとビールをたいらげてトボトボと宿に戻る。
1人で眺めるパナマの街はとても綺麗で寂しげだった………
綺麗だなぁ………
「あらー、彼女もう出ちゃったのー。挨拶したかったわー。」
宿に戻ると72歳バッグパッカーのトシさんがいた。
若くてたくましい欧米人旅人に混じって堂々としてるお姿が同じ日本人としてとても誇らしい。
「私も明日アメリカに帰るのよ。今度はどこに行こうかしらねー。」
ニコニコと笑うトシさんに、白人の若者たちがハーイ、トシ、と声をかける。
すでに彼女はこの宿の人気者。
人生を楽しむということにおいてトシさんほどの人はなかなかいないな。
宿は夜になると活気を増す。
みんな中庭のバーに集まり、欧米人宿らしい音楽が鳴り響く中、ガヤガヤとビールをあおる。
パナマの暑い気温がビールをより美味しくさせる。
ゴールのコロンビアはもう目と鼻の先。
安い船を探して一気に海を渡るぞ。
ユウコちゃん、また南米で会おうね!!