7月26日 金曜日
【アメリカ】 ダーハム
ところでなんでこんなに何日もヨシキさんのところに滞在しているかと言うと、ちょっとインターネットでお買い物をしたから。
何を買ったかというと、バッテリーです。
あれ?ついこの間トロントで買ったはずなのに?
そうです。
中華街のあやしげなとこで買ったんですが、見事一瞬で壊れました。
だいたい買った次の日には充電部分の接触が悪くなってた。
iPhoneを6回充電できるアルネ、とか抜かしてたのに本当は2回しかできなかったし。
品質悪いにもほどがあります。
中国製品のレベルをまざまざと見せつけられました。
今度はネットで買いました。
同じ5000円で本当に6回充電できるやつ。
みなさんも安い中国製品にはご注意。
さて、静まりかえった部屋の中。
カッピーたちはまだ寝ている。
俺は1人ギターを持って部屋を出た。
昨日歌ったスーパーマーケットの前にやってきた。
入り口のところで立っていると、向こうの方から元気に手を振りながら歩いてくる女性。
「ハーイ!フミー!!ちゃんと来てくれたねー!!」
笑顔がとってもキュートな彼女はスーザン。
昨日歌ってる時に声をかけてきて、明日ランチに行こうと誘ってくれていたのだ。
年は30ちょいくらいかな?
こののどかな田舎で生まれ育った、普通の女の人。
何かアレルギーの薬をつけているらしく、スーザンは人と握手ができない。
でもそんなことは関係ない。
ニコニコと弾けそうな笑顔のスーザンと一緒に日本食屋さんへ。
スーザンは日本が大好きみたい。
「フミ、私いくつに見える?ウフフ。」
きゃ、キャバクラ?!
「えーっとねー、多分意外な年齢だと思うなー。12歳かな。」
「アーヒャッヒャッヒャーーー!!!12!?アアアァァァァァッハアアアアアア!!!」
そ、そんなにおかしい?!
声が女の子みたいに可愛くて、よく笑って、身振り手振りで一生懸命話すスーザン。
可愛い人だなぁ。
ご飯を食べ、カフェでゆっくりとお喋りしていたら、なんだかすごく居心地が良くて時間を忘れてスーザンの笑顔を見ていた。
「フミはとってもスイートね。うふふ。」
いけねーいけねー。
女にほだされてる場合じゃない。
昨日稼げることがわかったスーパーマーケットバスキング。
稼げる時に稼いどかないといけない!!
これから南米が始まるんだから!!
「ごめんね、こんな時間まで付き合わせて。どう?近くにカントリーダンスのバーがあるんだけど、今夜行かない?無理ならいいのよ。」
イキます。
イクに決まってるじゃないですか。
下心なんてあるわけないですよ。
ほら、爽やかな笑顔。
ダメ!!南米行くんだから!!
女にうつつを抜かしてたら、抜かして、抜いてマチュピチュピチュウウウ!!!
ダンスってカントリーダンスですからね。
腕くんでスキップする健全なやつです。
僕の音楽の師匠のテディさんはカントリーロックのシンガーです。
なので高校生の頃からカントリーとカントリーダンスには親しんできました。
それを本物を見られる!!!
しかも見せ物じゃなくて、地元の人たちのためのバーで!!
うわああああああ!!!!
カントリーダンスで腕くんでスキップしてマチュピチュクチュクチュウウウウウ!!!!!!
そんな邪な気持ちでスーパーマーケットの前で演奏を開始したら3分で止められました。
うわあああああああ!!!!
嘘だろおおおおおお!!!!
昨日何も言わなかったのにいいいいー!!!!
あがりは50セント。
あががががが………
1日だけならやってもいいけど、居着いてしまうってのはやっぱりマズイってことか。
でも諦めるのはまだ早い。
車社会のアメリカ。
郊外にはこういった大型のスーパーやモール、レストランやホームセンターなどがずごんずごん並んでいる。
やる場所ならダウンタウンよりも無数にある。
そして人もたくさん行き交う。
よーし!!手当たり次第にやりまくってやる!!!
すぐ目の前にある別のスーパーマーケットに移動して、速攻で演奏開始!!
そして速攻で止められる!!
あへええぇぇぇぇぇぇええ!!!!!
「悪いな。もっと聴きたいんだけど決まりなんだ。すまない。」
「いえ………こちらこそごめんなさい!!」
「そうだ、お腹は空いてないかい?これあげるよ。」
そう言ってスタッフのおじさんはポケットから10ドルの商品券を取り出した。
サザンホスピタリティ………
ありがたいがこれはもらえない。
すごすごとスーパーを後にする。
あがりは12ドル。
まだまだぁ!!
まだ諦めんぞ!!
少し歩いたところにドラッグストアがある!!
あそこでやってやるぞ!!
ギラギラした日差しの中歩いていると、向こうの方から楽しそうに笑いながらカッピーとユージン君が楽器を持ってやってきた。
もう16時(^-^)/
まぁこのクソ暑いのに1番暑い時間帯にやる必要はないからね。
軒並み注意されたことを伝えて、一緒にドラッグストアへ。
スーパーに比べてお客さんは少ないが、それでも人の出入りはある。
どこでやるんだ?こんなとこで、みたいな顔をしてる2人。
いい場所を教えてあげた。
「よし、ここだね。ここがいいよ。ではどうぞ。」
そっとお店の玄関を指差す。
爆笑してる2人。
「うそー!!こんなとこでやるの?!」
「そうだよ、必ず稼げるからやってみなって。信じて。」
遠慮がちに音を出す2人。
俺は遠くからそれを眺める。
するとすぐにお店の中からスタッフが出てきてなにか言われてる。
ウケる(´Д` )
ここもダメだったかなと思ったら、少し話をしてスタッフさんは店に戻って行った。
「お金を稼いでなきゃいいよだって。タダ働きバンザイ!!」
しかしやってればお金は入るもの。
外に出さないようにすべて手渡しで受け取る2人。
コソコソと。
薬の売人か(´Д` )
しかし勢いに乗ってきたかというところで、カッピーがサックスを置いた。
どうやら体調が悪いみたい。
もともと肝臓が悪かったカッピー。
それがここにきて連日のお酒とブタ一直線の高カロリーフードで完璧に肝臓に負担がかかりまくってる。
しばらく断酒するわー………と元気なく帰って行った。
というわけで場を温めてもらったところで俺が思い切り歌い散らかして、1時間で42ドルのあがり。
どちらかが稼いでる時は補わなきゃいけないもの。
カッピーたちもたくさん稼いだ時はご飯代出してくれるからね。
みんなにビールとタバコを買って帰った。
あ、カッピー断酒するんだったね。
ひひ!!
ヨシキさんも帰ってきてみんなで晩ご飯へ出かけた。
そこにスーザンから電話がかかってきた。
電話はカッピーがアメリカ用のプリペイドを買っている。
残念なことに今夜は都合が悪くなったみたいで行けなくなったみたい。
これがビッチなら、あー、気が変わってめんどくさくなったかな、ってとこだけど、スーザンは本当に残念そうにしている。
これでお別れも後味が悪いな。
「スーザン、明日ランチ行かない?」
「ワァオ!!イエース!!行こう行こう!!明日が楽しみ!!えーっと、計画立てるわね。あそこに行こうかな、いやあっちがいいかな!!」
無邪気に喜ぶスーザン。
かわいいなぁ。
まぁ俺より結構年上なんだけどね。
え?下心?
そんなのあるわけないじゃないですか。
「あー、フミ君がアメリカ人とエッチするつもりだー。」
「しないよ。それにスーザン、アレルギーで肌に触れないもん。」
「肌にまったく触れずに入れちゃえばいいじゃん。コンドームつけたら一切触れないでいいし!!」
この男たちは(´Д` )
気がつけばヨシキさんの家で過ごすのもこれが最後の夜か。
明日からまたあてのない旅だ。