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持ってる男たちとBBキング

7月12日 金曜日
【アメリカ】 ニューポート





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朝、テントをたたみ、いつものマクドナルドで腹ごしらえ&Wi-Fi。



「いやー、BBキング楽しみやねー。」


「BBってブルースボーイの略みたいだね。」


「87歳だって。すげえ!!よくライブなんてできるな。」


「またポールみたいに会えるかもしれないね!!」






アメリカのレジェンド、ブルースの巨人、BBキングが今夜この町の小さな仮設テントでライブをするという情報をつかんだのは昨日のこと。


これまたポールの時と同じように、まったく下調べなしの偶然。


87歳だぞ?
この年齢になってもライブをやり続けているなんて、もうとことん音楽が、ブルースが、そして人前で演奏することが好きなんだろうな。純粋に。

金とか、名誉とかそういうの抜きして、一生音楽とともに生きるというその人生にこそ、BBのレジェンドたる所以がある。







とりあえず夜まではキッチリ路上やろうと、てっちゃんの運転で町に戻る。



朝方は悪かった天気も、昼前になると雲も晴れて青空がのぞきはじめた。

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ニューポートの町は週末の活気にわきかえり、通りをお金持ちそうな白人たちが優雅に闊歩している。

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大きなウミネコが旋回し、ニャーニャーと鳴く声に、北欧の空気を思い出す。

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昨日よりもはるかに人通りが多い。

昨日、見事100イーチをたたき出した俺たち。

この雰囲気だったらさらに稼げるはず。



「いやー、もうBBキングその辺にいるんじゃない?」


「レストランで飯食べてるんじゃない?」


「俺たち持ってるからなぁ。偶然会えちゃうかもなー。」



「あ、見て。ああいうバスが芸能人が乗るようなバスなんだ。後ろに窓がないでしょ。中が居住スペースになってるんだよ。BBかもしれないねー。」


「それはさすがにないやろー。」




このバスね。

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ん?








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ちょ、ウケる(´Д` )

ナンバープレート(´Д` )






俺様が登場だぞ、というこれみよがしなアピール。

これぞまさにキング。




「いやぁぁぁぁ!!横!!今横にいる!!」


「3mだって!!またBBキングが3mのとこにいる!!」


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本人が乗っているバスの横を、大騒ぎしながら並んで走る!!!

でも窓がほとんどないし、スモークが貼ってあるので、中の様子は一切見えない!!


そしてバスはライブ会場のテントの方に曲がっていった。



おおお、すげえ………

またすげえ近くまで行っちまった………


持ちすぎだって俺たち!!!



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持ちすぎだって!!









よーし、BBパワーでいっちょ稼いでやろうか!!と勇んで路上へ。

風が強くて譜面が何度も吹っ飛んでしまう中、気合いで歌った。

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さぁ!!100ドルいくぞー!!










なのだが………なぜかみんなお金を落とさない。

あれ?人通りは昨日よりも多いのに。

やっとこさ入れてくれたとしても、みんな1ドルがいいところ。


こりゃおかしいなぁ、と思いつつも頑張って歌い続ける。

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まぁ、夜までやれば50ドルくらいにはなるかなと思っていたんだけど…………






来ちまった…………










警察。







「よー、兄ちゃん、グッジョブだぜ。」


「あ、は、はい、ありがとうございます。」


「じゃ、とっとと荷物まとめてどっか行きやがれ。」



怖え(´Д` )

めちゃビビりながら即座にギターをしまって、そそくさとその場を立ち去った。



あがりはたったの25ドル。

まぁ罰金とか言われなかっただけマシか。












カッピーたちのほうに行ってみると、こちらもすごい人通り。

こりゃものすごい勢いで稼いでるんじゃねえか!?




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と思ったらなぜかカッピーたちも全然稼げてなかった。

入れ物の中にはわずかに7ドルくらいしか入ってない。


「ダメだこりゃー。」



路上ってのは不思議なもので、めちゃくちゃフィーバーする時があれば、同じ町なのにサッパリって時もある。

結局人を相手にしてるわけだから、コンスタントに稼ぐってのは不可能なんだけど、それをどれだけフラットに持っていくかが路上の大きな技術の一つだ。


町選び、場所選び、曲選び。


これで驚くほどあがりは変わってくる。



のだが、それでもやっぱり路上は生き物だから、いくら条件が揃っててもサッパリって日もたまにあるもんだ。


最後のスパートでちょぼちょぼと入り、カッピー&ユージン君のあがりは50ドル。


















さて!!!!!


路上はこの辺にして!!!







BBキング、行ってみよう!!!!






まずは開演時間の19時に、テントに様子を見に行ってみた。

漏れ出てくる音楽は………










BBじゃない。
どうやら前座がやってるみたいだ。


さすがに87歳だからな。
実際のステージは1時間くらいのもんだろう。













軽く晩ご飯を食べに行き、しばらくしてからテントに戻った。

するとすでにテントの周りには数人の音楽好きそうな人たちがたむろしていた。

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流れている音楽は、ブルース。


陽気なブルースが観客を盛り上げていた。


ヤバいヤバい!!

もうすぐBBの出番じゃねえか!?


ドキドキしながら耳をすませる…………





バックバンドのブルースが勢いを増して行く………





「レディースアンドジェントルマン!!!BBー!!キーング!!!!!」



大歓声が巻き起こる!!!

うわ!!今、この中に神がいる!!伝説がいる!!







ポワワ~~ウィンウィ~~ン………




「あ!!うわー!!」


「すげすげーー!!!」



一瞬でわかる。BBの音だ。

単音のチョーキング1発ですぐにわかる、攻めまくりの奏法。




はい、そっからまたウンコ全開漏らしまくりの1時間ですね。


入り口ゲートのわずかな隙間からステージが見えるんです。


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神は椅子に座ってギターを弾いていました。


87歳とはとても思えない、キレとパッションがとめどなく溢れるような、濃厚なギター。


そしてこれこそ87歳とはとても思えない、野太く絞り出すようなボーカル。


この50~60年代のマジのミシシッピーブルースミュージシャンたちは、なんつったらいいか、


墨汁ぶちまけたみたいな濃厚さがあるんだよな。

ラーメンで言ったら天下一品とか二郎みたいな、やりすぎくらいのドギツサ。






でも彼らはこれが自然なんだろう。
自然に湧き出てくる感情を音にして歌にしたらこういう音楽になったんだろう。

今BBを目の前で聞きながら、こういうことか、と素直に納得できた。




「スリルズゴ~~ン………」


凄まじい修羅場をくぐり抜けてきたであろう87歳の老人が、もう何にも興奮しなくなっちまった、と歌い上げる。


人生の儚さや、辛さ、成功した者の孤独を、これでもかというくらい雄弁に語るギターのチョーキング。


やっぱこの人神だわ。


ギターで、歌詞のあるボーカル並みに感情を表現できる数少ないギタリストを、俺はもう1人ジェフベックしか知らない。


死ぬ前にこの人のステージを見られてよかった。




ユーアーマイサンシャインの大合唱で和やかに終わるところも、大御所、というか、アメリカの昔ながらのミュージシャンの姿そのまま。

古き良きアメリカ。
BBはもう50年以上も前から、こうしたドサ回りを続け、変わらぬスタイルで楽しいブルースエンターテイメントを披露し続けているのか。


観客も総立ちで踊っている。













バックバンドの演奏の中、付き人に支えられながら椅子から立ち上がるBB。

ステージ上でトレンチコートを着込み、渋いハットをかぶる。


そして観客に手を振り、ゆっくりゆっくりとステージを降りて行く。


行くしかねぇ!!



ダッシュして裏口へ回る。






そこにはすでにたくさんの人だかりが出来ており、BBが出てくるのを待ち構えていた。



ドキドキする!!
胸が張り裂けそうだ!!

あの伝説をこの目で見られる!!
しかも柵越しだけど、わずかに5mの距離。


贅沢を言えばピックが欲しい!!!









そしてついに、出てきた!!!

車椅子に乗って、ゆっくりゆっくりと、ファンの人垣をかき分けてくる。


うわああああああ!!!!
本物のBBキングだぁああ!!!

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ファンたちが差し出す無数のレコードやポスターに、丁寧に熱心にサインを書いてあげてる。

なんてサービス精神旺盛なんだ!!

もう87歳だぞ?


ポールにしても、BBにしても、海外の大御所はとにかくエンターテイナーで、全然偉そうにしない。

当たり前のようにファンと触れ合っている。

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そんなBBの進む先に、バンが待機してるのが見えた。

おそらくあれに乗り込むはず!!



先回りして、バンの横にやってきた。

ここにいれば1mの距離で見られるぞ!!












そしてBBがやってきた!!!

ゆっくりゆっくり、車椅子を押されながら。

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うわー!!!黒人だぁぁ!!!
黒人のブルースギタリストだぁぁ!!!

爺さんだぁぁ!!!

やべえええええ!!!!
存在自体が濃すぎる!!!






カメラのフラッシュがまたたき、いたるところからBB!!アイラブユー!!という歓声が飛び交う中、1人の熱烈なおばちゃんファンがBBを呼び止めた。

強引に写真を懇願するおばちゃん。


するとBB、車椅子を立ち上がり、それに快くこたえた。

これはチャンス!!!


バンの横を離れて、おばちゃんの方に潜り込んだ!!


BBに抱きついて写真を撮るおばちゃん。
よほど愛しているのか、BBの頬に思いっきりブチューっとキスをした。

にこやかに笑ってるBB。

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よし!!ここで、俺も!!




「BBー!!写真撮ってえええ!!!!」



大声で叫んでBBにお願いするが、周りの喧騒でかき消されてしまった。


ゆっくり車に進んで行くBB。



あああ!!ダメかああ………





そのBBがふとファンの方を向いて、無数に差し出された握手を求める手の中からひとつを選んで握りしめた。






その手の主は…………












ユージン君…………








があああああ!!!!
俺がさっきまでいた場所だああああああ!!!!


ダッシュでユージン君の横へ。

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てっちゃんもいる。





大興奮でちょっと色々マズイ顔になってるユージン君。



「はぁぁあいああちえかあ!!!アイムジャパニーズギタリスト!!!!」


「オーゥ、アーユージャパニーズ?」


「イ、イエス!!!」



BBはニコリと笑ってこう言った。




「ドウモアリガトウ。」















はい、BBキングの日本語いただきました。


「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」



気が狂ったようにのたうちまわってるユージン君。


か、顔がマズイ(´Д` )








えーっと、










BBキングにドウモアリガトウって言われた日本人んんんんんんんんんんんんんんんああああああああ!!!!!!!!


一生自慢できるううううううううう!!!!!


よし、もう帰国しよう。

もうこれ以上のことないよ。

あれ?3日前にポールマッカートニーに会ったんだっけ?


ウケる(´Д` )
何この奇跡の連発(´Д` )



もうユージン君とてっちゃんと俺で爆笑。

笑いしか出てこねぇ。


するとそこに、車で休んでたカッピーがやってきた。



「え!?なに!?何があったの!?」


「BBキングと握手してドウモアリガトウって言われた。」


「ぶーーーーーー!!!!ウケる!!」


みんなで大爆笑。








いやー、アメリカすげーよ。

信じられない出来事が立て続けに起きすぎだ。

しかもこれでもまだまだ終わりじゃねぇからね。


このあと、カッピーたちにとってのとんでもない奇跡が起きる。



「いやー、ハァハァ……ポールとBBキングに会っちゃったね………全然下調べもしてないのに。」


「次誰に会えちゃうんだろ?」


「もうポールとBBキング以上って言ったら宇宙人だよ。」


「もう誰か死ぬんじゃねえ?」


「それは嫌だね。」


「うん、嫌だね。」




男4人のハチャメチャなアメリカバスキング旅。


とりあえずみんな仲良すぎです(^-^)/



さー!!
次の目的地はここから車で5時間!!!

完全に俺のワガママにみんなに付き合ってもらいます!!
しかしこれが長年の夢だったんだ!!

グランドキャニオンなんかよりももっともっと大事な、アメリカ最大の目的のひとつと言ってもいい!!


アメリカ!!

なんでもできそうな気がするぜ!!!





BB、どうもありがとう!!!

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