6月24日 月曜日
【カナダ】 ナイアガラ ~ ハミルトン
あ………あああ…………あ…………
あちいいぃぃぃぃぃあああああああああ!!!!!!!!
ウオラアアアアアアア!!!!!
死ぬうううううううううう!!!!!
飛び起きてテントから転げ出た。
はぁはぁ………サウナにもほどがあるぞ………
この夏の日差しの中でテントの中はマジで自殺行為。
マジで乾き死ぬ5秒前。MK5。
外に出ても暑さは変わらん。
うだるような熱風と日差しの中でテントをたたんで街に向かう。
あ、あちぃ………
荷物が重くのしかかる。
昨日犬に噛まれた中指が痛くてギターを持つ手がギシギシ痛む。
握る手のひらに汁がにじんでベトつく。
消毒したい………
中指を怪我したらこんなに不便なんだな。
コンビニでショボい冷凍のブリトーみたいなやつを買って、レンジで温めてもらい、汗かきながら店先でかじり、さて、今日も路上。
あのイかれた観光通りは、日曜日だった昨日に比べたら落ち着いてはいるものの、やはりそれでもたくさんの人々で溢れていた。
昨日と同じ公園の前のベンチでギターを鳴らす。
うごー………暑ぃ………
殺人的な直射日光が後頭部を殴りつける中、気合いで歌いまくる。
暑すぎて人々も上半身裸とかで歩いているので、俺も耐えきれずシャツのボタンを全部はずして体をさらけだして歌った。
昨日に比べると、入りが悪い。
こりゃまずいなぁ………と思っているところに、
来てしまった。
警察。
「ヘイ、旅しながら歌ってるのかい。悪いんだがこの辺りは観光地域だから路上パフォーマンスは禁止なんだ。気持ちはわかるがストップしてくれ。」
うぐ…………
このナイアガラでガッチリ稼ぐつもりだったのに、早くも終了してしまうとは…………
大人しく荷物をまとめる。
あがりは37カナダドル、8アメリカドルと2ユーロ。
ハミルトンに戻るか。
マーシャルにメールしてみた。
すぐに返事が帰ってくる。
「フミ、今すぐ帰ってくるんだ。」
「ここはフミのカナダの家だ。」
「俺たちにはグレイトな仕事が待っている。」
「俺たちの音楽で世界を変えるんだ。すぐに帰ってくるんだ。」
怒涛のようにメールが返ってきた。
マーシャル、ありがとう。
ていうか忘れるところだった。
滝見なきゃ(´Д` )
えーっと、どんなもんなのかなー………
見えてきた見えてきた。
んー………
はっきり言ってこんなもんか。
あれ!?ナイアガラの滝ってもっともっと、とてつもなくすっごいんじゃなかったっけ?!
なんかイメージしてたのとあまりにも違ってて肩すかし。
周りにそそり立つ展望タワーや高層ホテル。
そっちのほうがよほど壮大に見える。
ナイアガラ、こんなもんか。
街から急いで歩き、ハミルトンに向かう道路沿いでヒッチハイク開始。
ヒッチハイクしてると必ず1人は中指立ててくるやつがいるけど、そんなこともうすでに気にならない。
そういうやつは車の中からだから出来るだけで、面と向かってはなんも出来んやつだ。
かかってきやがれこのヤローって思っているうちに10分で車が止まった。
「俺はネイティブなのさ。インディアンだよ。分かるか?本物のカナディアンさ。」
乗せてくれたのは車椅子のおじちゃん。
なんとこのおじちゃん、マジのインディアン。
つまり原住民。
カナダにイギリスやフランスからの移民が雪崩れ込んでくる前からこのカナダに住んでいた人々の末裔だ。
「俺たちは税金払わなくていいんだ。それにアメリカとの国境もチェックなしで自由に行き来できるのさ。」
なるほど、ここにカナダ政府、アメリカ政府が彼らにやってきたことの大きさを見ることができる。
ずいぶんとたくさんの優遇措置がとられているみたい。
原住民との権利・補償問題は未だに解決してないというのは知っていたが、これが現実の一端だ。
そして優遇措置があるということは、それがそのまま現在も続く差別があることを如実に表している。
日本のアイヌ問題、部落問題にしても根はどこまでも深い。
おそらくここカナダでも、逆差別を訴える人はいるはず。
差別はなくならない。
だからそれぞれに考え、真実を見つめる目を養うしかないんだろうな。
おっちゃん、ありがとう。
ハミルトンのダウンタウンまで送ってもらい、そこからバスに乗ってマーシャルの家へ。
静かな住宅地の中を歩いて近くにやってくると、家の外でマーシャルがソワソワしながら俺のことを待っていた。
「フミー!!よく帰ってきてくれた!!!嬉しいよ!!さ!!それじゃ曲作りをしよう!!それとも俺の曲を2人でアレンジしようか!!あ、先にシャワーを浴びたいよね!!あ、汚れものあったら洗濯するから出して!!」
子供のように興奮しているマーシャル。
「俺たちは世界を変えられる。フミ、信じるんだ。信じれば必ず叶う。」
一点の曇りもない目を1mmも動かすことなく話すマーシャル。
そんなマーシャルの腕には、こんなリストバンド。
「ビリーブ」って書いてある。
そうだよね、きっと俺たちは世界を変えられる。
ほんの少しのことでいい。
1人の悲しんでる人を笑顔にできるような、笑顔にできなくても、肩を抱いてやれるような、そんなバカみたいに臭いことを、俺もちょっとずつ考えられるようになってきたよ。
2人で夜中まで、時間を忘れてギターを弾いた。