6月23日 日曜日
【カナダ】 ハミルトン ~ ナイアガラ
「フミ、今日は休んだらどうだい?何日だっていていいんだぞ。10日でも1ヶ月でも、夏の間ずっといたっていいんだよ。一緒に曲作りしたりレコーディングしたりしようぜ。」
そう引き止めてくれるマーシャル。
嬉しい。
ずっとここにいたいと思える。
でも今日は日曜日。
ナイアガラの滝は観光客ですごいことになってるはずだ。
2~3日して戻ってくると言うと、マーシャルは嬉しそうに笑った。
そして犬に噛まれる。
ええ?!いきなり!?
いきなりです(´Д` )
さっきまでムツゴロウさんみたいにじゃれ合ってた、大人しくて可愛いタック。
ピザを温めてきたら、ご飯に興奮してしまったよう(´Д` )
あー、可愛いねぇ、可愛いねぇ、よーしよし、可愛いねぇ、
ガルルルウウウウ!!!!
アヒャァァァァイイイイ!!!!!(´Д` )
世界一周中に犬に噛まれるというのは旅人にとって非常に最悪な事態なわけだけど、アジアや南米の汚い野良犬ではなくキチンとした飼い犬でよかった。
もちろん予防接種の注射を打っているということなので安心。
マーシャルの彼女も一度噛まれたことがあるそうだし。
ていうか一度人を噛んだ犬なんだから、もっと気をつけさせてね、マーシャル。
「フミ、君に出会えたことで俺のやりたいことがハッキリ見えてきたよ。ああ!!なんて出会いだ!!フミ、君の周りには天使が舞っている。君の愛を世界中に広げてくるんだ!!」
そう言って抱きしめてくれるマーシャル。
大袈裟だよ(^-^)/
マーシャルにこそ、天使が舞っているよ。
こんな大きな愛を振りまいてる人、久しぶりに見たよ。
しっかりナイアガラで稼いで戻ってくるね!!
ここハミルトンからナイアガラまではバスが10カナダドル。
ヒッチハイクで行きたいところだけど、少しでも早く着いて路上したいので、バスで向かうことに。
10カナダドルでGOバスというやつに乗った。
バスは40分ほどでナイアガラの町に着いた。
町と言っても、ほんの小さな住宅地があるだけ。
んー、きっと大自然の中にズゴー!!っと滝があるんだろうなぁ!!
ものすごいスケールなんだろうなぁ!!
楽しみー!!と歩いて滝へ向かう。
しばらくすると、町の雰囲気が変わってきた。
お土産物屋さんが通りに並びはじめる。
まぁそうだよね。
こんだけの一大観光地だもん。
そりゃお土産物屋さんもあるわな。
と、先に進んでいくと…………
な、なんだこりゃ…………
もうぐっちゃぐっちゃ。
フェスティバル。
ただのフェスティバルが繰り広げられている。
お化け屋敷、
巨大ゲームセンター、
遊園地、
蝋人形館、
カジノ、
建物の上ではドンキーコングやフランケンシュタイン。
目がチカチカするど派手な看板。
なにこれ?
狂気みたいなテーマパークの中を、修学旅行みたいな子供たちや、団体のツアー客がうじゃうじゃと行き交う。
家族連れの子供たちは、気が狂ったようにはしゃぎまわって、あれー!!あれがいいー!!ってダダをこねている。
すべての建物から垂れ流される爆音の効果音。
なにこれ?
これだよ。そうだよ、これが北米だよ。
楽しむ、ということに全身全霊をかけている。
そしてその内容がとても子供っぽいんだよな。
ヨーロッパの観光地にはこんなのなかった。
ほんと、同じ白人なのに、北米とヨーロッパではこんなに人間の品が違うんだよなぁ。
とにかく!!
ナイアガラに来た目的は稼ぐこと!!
え?あ、もちろん滝も見るよ。
でも滝なんか後回し!!
人通りは申し分なし!!
ていうか多すぎるくらい!!
この見た目ばっかりで中身からっぽなハリボテの町の中、ギターを抱える。
楽しそうに歩く観光客たちが、みんな笑いながら俺の写真を撮っていく。
まるで俺も蝋人形館のコレクションのひとつのように。
イカれたインディアンがあなたと一緒に写真撮りますよってな具合か。
ギターを鳴らすも、周りの建物からのドガーン!!ズゴーン!!アメーイジイィィィグ!!!イヤッホオアオオ!!!!っていう爆音と、通りを走る観光客たちの車やツーリングのハーレーやらの爆音で、もう笑えるくらい何も聞こえない。
30分、写真を撮られるだけ撮られ、道化をして稼いだ金額は3カナダドル。
こ、これはヤベエ………
こんなとこまで道化をしに来たわけじゃねぇぞ(´Д` )
もうちょっと静かなところはないかと歩いていくと、少しして周りにお店がなくなり、綺麗な公園が広がった。
人の流れは公園の横を通って、この先のほうに続いている。
この歩道沿い、いいな。
車がバンバン走る通りの向こうに、なにか白くて巨大なものが見えた。
あ、あれ滝だ。
ゴーーーーって低い音が地鳴りのように響いている。
えー、こんなとこにあんのかよ?
もっとこう、周りには森か荒野が広がっていて、動物がたくさんいて、大自然の中に突如現れる滝、ってそんなイメージをしてたのに。
完全に整備されまくった一大テーマパークが作り上げられている。
さすがは北米。
滝に向かう歩道沿いでギターを鳴らす。
ここは周りに何もないので、視線独り占めだし、さすがに写真撮るのもみんな遠慮気味だ。
まぁ撮りまくりだけどね。
写真撮ったら金入れろとは言わない。
でも、写真いい?って聞くくらいはできるよな。
銅像じゃねえんだからさ。
まぁそれでも、ガンガンお金入っていく。
場所選びはほんと大切だなぁ。
カンカンに照りつける直射日光の中、意識朦朧としながら汗をボタボタ流して歌った。
根性ー………根性だぞー………
4時間近くやって今日のあがり80カナダドルと、4アメリカドル。
よっしゃうらぁぁぁぁあ!!!!
狙い当たったぜ!!!
稼げる!!
日曜日だから20時には人通りもまばらになるだろうと思っていたんだけど、全然そんなことない。
夜がふけるにつれ、喧騒はヒートアップする一方で、狂気のテーマパークは人々で溢れかえっている。
もう頭クラクラしてくると思ったら、極め付けに花火まで上がりだした。
盛り上げ方のテンションが異常。
なんでも詰め込めばいいと思ってる。
朝に残り物のピザをかじっただけなので極限にお腹が空いているんだけど、まぁすべてが目ん玉飛び出るくらい高い。
ただのホットドッグが4.5カナダドルとかしやがる。
トロントでは2.5カナダドルだった。
ケバブにいたっては8カナダドルとか。
さすがはスーパー観光地。
仕方なくウェンディーズのまずいラップをかじって空腹を満たし、寝床を探して歩いた。
え?滝ですか?
ナイアガラの滝がすぐそこにあるのに行かない。渋い。
ラーメンのチャーシューも最後にとっといたりするじゃないですか。
楽しみは後にとっとくもんですよ。
明かりをこうこうと焚いてドンチャン騒ぎをしているのは一本の通りだけで、そこから離れると一気にただの田舎を取り戻す。
外灯もまばらな川沿いを歩いていく。
あの対岸はアメリカ。
もうすぐそこだ。
歩いていると、レインボーブリッジという橋があった。
たくさんの車が行き来している。
そして橋の両側には、あの見慣れた、料金所のようなゲートが。
そうだ、ここが国境のカスタム。
もうなんだか国境恐怖症にでもなってるみたいで、この無機質なゲートを見るだけで鼓動が荒くなって、手に汗をかいてしまう。
来週、来週だ。
来週、ここを通ってアメリカに入国する。
入国できるか、拒否されるか。
必ず入ってやるからな。
カスタムをにらみつけ、夜の中を歩いた。
廃墟や貸家が目立つ住宅地の中、小さな公園を見つけた。
よし、ここにテントを張るか。
遠くのほうで、ゴゴゴゴゴゴ………と低いうなり声のような音が、夜の空気を震わせている。
こんなとこまで聞こえてくるなんて。
よっぽどでかいんだろうな。ナイアガラの滝。
明日は見に行ってやるかな。
あー、疲れた………
汗かきまくってるから、さすがに気持ち悪い………
こりゃヨーロッパみたいに3週間シャワー浴びてません、なんてこと出来ないなぁ。
まぁ、どうにでも順応していくだろ。
さ、お休みなさい………