4月12日 日曜日
【ポルトガル】 ポルト
~【スペイン】 サンティアゴ・デ・コンポステーラ
「えー、私もそこ行っちゃおうかなー。これも縁だしねー。」
宿で朝ごはんを食べながらミユキさんと話す。
彼女はまだポルトでゆっくりする予定だったそうだが、聞けば今後のルートは俺と同じくフランスだという。
「行こう行こう。行きましょう。スペインではサンティアゴ・デ・コンポステーラは行かないといけませんよ。」
「んー、そこ全然予定になかったんだけど、行ってみようかー。」
てな感じで一緒にスペインに行くことに。
ミユキさんはちょっと考えるところがいろいろあって、このまま横浜にはいられないと思って旅に出てきたんだそう。
明るい人ではあるけれど、ところどころに影がのぞいて、考えこんでしまうところがあるように見える。
悩み深いミユキさん。
アホみたいに楽観的な俺。
変な2人の旅の始まり。
向かう先は、スペインのカトリック巡礼終着地、サンティアゴ・デ・コンポステーラ。
30分ほどかけてバスターミナルまで歩いて行く。
ゴロゴロとキャリーバッグを転がす俺。
大っきなオレンジのバッグパックを背負ったミユキさん。
ターミナルに到着し、31ユーロのチケットを購入。
待合室に旅人っぽいオーラをまとった日本人のバッグパッカーがいた。
「うわー、久しぶりに日本人に会いましたー。ヨーロッパでは日本人に会わないですもんねー。」
顔をクシャクシャにして笑う彼は、陶芸や土関係の美術をやっているダイスケ君。
彼もこれからサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かうところだった。
3人で同じバスに乗りこんだ。
サンティアゴ・デ・コンポステーラ。
ここはどんな町か。
1番に言えるのは、名前を打つのがクソめんどくさいことです。
スペイン北部には、四国お遍路と同じようなキリスト教の巡礼道が存在する。
カミーノって言われる道で、始まりは南フランスの町。
終点がここ、サンティアゴ・デ・コンポステーラだ。
イエスの弟子であったヤコブさんのお墓の上に大きな教会が建てられ、信者たちがそこを目指して巡礼を始めたことが起源。
1番古い記録は951年だそう。
道程は800km~900kmてとこ。
四国お遍路が1200km。
四国お遍路の善根宿やお接待のように、巡礼者のための無料の宿泊施設や、食事の提供などもあるそう。
古くからのスタイルとしては、もちろん歩き。馬やロバ。
最近では自転車や車で回る人も多く、お遍路と同じようにバスやツアーもあるそうな。
スタンプを集めるってとこも一緒やね。
もちろん信仰のための道なんだけど、ただのアトラクションとして楽しむ人も多くなっているそうだし、それがこの地方の観光の目玉になっている。
24歳の時にお遍路をやったのが懐かしい。
歩き、通し、野宿で45日。
ギターかついで所持金200円くらいで出発したなー。
世界一周もやってること一緒だな。
エルサレム、バチカン、に並ぶキリスト教3大聖地のひとつであるサンティアゴ・デ・コンポステーラ。
どんな場所だろう。
ていうかスペインに戻るううううううううううううりりりイイイイイイイイイ!!!!!!!!
スペイン大好きだからああああぁぁぁあ!!!!!!
そしてミユキさんの日記可愛いいいいいい!!!!
バスは、どこが国境だったかもわからないうちにポルトガルを出た。
ポルトガル、うん、悪くなかったよ………
悪くはなかった………
これといったこともなかったけど…………
うん!!悪くなかった!!……かな!!
あれ?ポルトガル、なにがあったっけ?
観光して………歌って………ザビエルで………ザビエル?
うん、ポルトガル、オブリガード!!!!
バスは夕方18時くらいにサンティアゴに到着した。
今日はもう路上はやめて寝床を探すとしよう。
田舎なのでテントを張るところはいくらでもありそう。
巡礼道なので、俺みたいなキャンプ者も珍しくないはず。
ダイスケ君はこれから目星をつけていた12ユーロのホステルに向かうみたい。
「ミユキさん、どうします?僕はテント張りますけど。」
「あ、あの、も、もしよかったら私もテントにお邪魔していい……?」
「え、い、いいですけど、シャワーとかないですよ?」
「キャンプしてみたいんだー。なんかここに向かいながら、ふっと松任谷由実の曲の詩が浮かんでねー。自然のベッドで目覚めた日から世界が変わるよー、っていう歌。だからしてみたくなって。」
悩む。
モロッコのことがある。
女の子を危険な空気が漂う場所に連れて行ったことは、この旅最大の過ちだった。
ここはスペイン。
あの神の人種の国。
キャンプをして危険なことはまずないはず。
それに彼女はアフリカをひとり旅してきたツワモノバッグパッカー。
観光旅行者とは免疫が違う。
大丈夫かな。
あ、もちろん、僕らは大人なのでそういうことにはなりません。
2日一緒に飲んだけど、そんな気はまったく起きません。
ダイスケ君と3人でご飯を食べに行き、明日町で会いましょうと約束して別れた。
キャンプ場所はすぐに見つかった。
丘を登ったところの閑静な住宅地の中にある、綺麗な公園。
静かで、大きすぎず、ポツポツと犬を散歩をしている爺ちゃん婆ちゃんの姿。
芝生が刈り込まれているのは手入れが行われている証。
街に近すぎず、遠すぎず、
人がいなさすぎず、多すぎず、
整備が行き届きすぎておらず、寂れすぎず、
俺が寝床を決める条件を完璧に満たした公園。
完璧。
垣根に囲われた一角にテントを張る。
手伝ってくれるミユキさん。
うおー、このテントを立てる作業、いつも1人だけど誰かといると楽しい!!!
はかどる!!!
テントの真ん中に2人の荷物を積み上げ、両側に別れて座り、荷物をテーブルにしてビールで乾杯。
ホステル金丸。
あああああ、これ夢だったんだよなぁ。
テントに誰かを招待して中でビール飲むの!!!
いつもの1人野宿のビールも、孤独を肴にめちゃくちゃ美味いけどさ、誰かとその美味さを共有することがこんなに嬉しいなんて。
「テントで寝るのはじめてー。こんなふうになってるんだねー。なんかワクワクするね。」
そう言ってもらえると余計嬉しいよ。
オレンジの外灯が公園にともる。
テントの幕ごしに淡く中を照らす。
秘密基地の中で、仲間とその秘密を共有したあのドキドキ。
この狭い空間の中で語り合う旅の話のなんてエキサイティングなことか。
イスラエルのカオルさんに続いて、この旅2人目の野宿仲間だ。
でもカオルさんと違って、ミユキさんは鍋を持ってないし、香辛料を持っていないし、寝袋もマットも持っていない。
ので、寝袋とマットを貸してあげた。
スペインも北部まで来るとそこそこ寒い。
バッグの中の服を全部引っ張り出して体に巻きつけて寝たんだけど、まぁ寝れんことはなかった。
あー、いい夜だ。