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パレスチナ自治区で歌う

2月19日 火曜日
【イスラエル】 ベツレヘム





パレスチナ自治区。


中東戦争によりイスラエルから締め出されたアラブ人たちが暮らす地区。


分離壁と呼ばれるコンクリートの高い壁で分断されている地区。



同じ国の中を真っ二つに割ったその地域にはどんな人が住んでいるのか、どんな街があるのか。



パレスチナに潜入だ。












イブラヒム爺さんの宿に大きな荷物を置かせてもらい、歩いて街へ降りる。

ダマスカスゲートの前にあるバスステーションから21番バスで、パレスチナの街、ベツレヘムに行くことができる。

ザ・バンドのベツレヘムの祈りを思い出す!!



7.3シェケル、1.4ユーロのバスに乗り込み、いざ出発。








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パレスチナ自治区はヨルダン川西岸地区とガザ地区の2つがある。

今日俺が行くベツレヘムは西岸地区の街。


これだけズバン!!と壁で仕切られているのだから、おそらく厳しいパスポートチェックがあるんだろうな。


バスの中、ドキドキしながらエルサレムを走り抜けていく。







しかし、いつまで走ってもチェックゲートがない。

おそらくものものしい警備がされているんだろうと想像していたのだが、一向にそういった場所を通過しない。




そしてバスは30分ほどしてある街の中で止まった。


「ベツレヘムだよ。」






え?パスポートチェックは?
分離壁は?

わけもわからずバスを降りると、タクシーの運転手たちが群がってくる。


「チャーチ!?センター!?ウォール!?10シェケルでいいよ!!」



汚いゴミゴミした街にはアラブ人たちが歩いている。

ここはパレスチナ自治区。





なんだなんだ。
こんなに簡単に入れてしまうとこなのかよ。パレスチナって。







とりあえず街の真ん中まで行ってみるか。
場所も全然わからないけど、とにかく歩く。
タクシーが10シェケルで全部回ってくれるってのは魅力的だけど、そんな値段で行けるということは歩いて充分回れるということ。


案の定、20分ほどで中心部に到着した。

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まぁ、汚い。
いつものアラブ人の街。

細いゴミだらけの道が入り組む迷路にゴチャゴチャとお店や露店が並び、人が行き交っている。

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ありのままの人の姿。
とても原始的な光景。

そしてそんな細い道を車がクラクションをアホみたいに鳴らしながら人を押しのけて通るもんだから、もう大混雑。

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ここまできたら笑えるわ。





ここでキリストが産まれたんだよな。

ここにあった納屋でキリストがマリアの腋から産まれたんだよな。

はるか昔からの信者たちの巡礼の地だったんだよな。


そう思いながら歩くと、路地のひとつひとつが芳醇な歴史の香りを放つようだ。

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そんな汚い路地を奥のほうに歩いて行くと、さらに汚なさ5倍くらいのバラック市場があった。
たくさんのムスリムでごった返している。

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まぁよほどアジア人が珍しいんだろうな。


絡む絡む(´Д` )


1歩につき1人に絡まれる(´Д` )


「ウェラーユーフロム!!」

「ワッツユアネーム!!」


お決まりの質問が飛び交い、ギターを弾けとジェスチャーしてき、トロールの髪の毛を鷲掴みにして離さない。

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子どもだけじゃなくオッさんも。


触んなコラ!!ってマジで怒っても、サンナコラァ~とおちょくってきてトロールの髪の毛をつかんでグイグイ引っ張ってくる。


マジバカ。




そんな市場の路上で、大きな釜に油を張ってファラフェルを揚げてる人を発見。

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「いくらですか?」


「2.5シェケルよ。」




ゲロ安ぃ(´Д` )
50円て(´Д` )

エルサレムでは平均で10シェケルなのに。
やっぱりここはアラブ人の物価なんだなぁ。



めちゃ美味いファラフェルを頬張りながら、紅茶売りの兄ちゃんに1杯ちょうだい、と声をかける。

紅茶1杯、1シェケル。20円。
エルサレムなら6~8シェケルはする。



汚いバラック市場の喧騒の中、アラブ人たちに話しかけられながらノンビリと紅茶を飲んだ。













そんな細い迷路をやっとこさ抜け出すと、広いスクエアに出る。

無数のタクシーがクラクションを鳴らしながら客引きをしているそのスクエアを突っ切ると…………




これが生誕教会か…………

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古びて乾いた雰囲気のその教会。

ヨーロッパにあるような豪華な装飾はひとつもない。
しかしその簡素で落ち着いた佇まいに貫禄が感じられる。



壁の一部にたくさんの白人の団体がワラワラと群がっている。
あと中国人ツアーも。


ドキドキしながらその人だかりの中に入っていくと、そこには小さな穴があった。

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ここが入り口。

入り口というか穴。



頭をかがめて中に入った。





カビ臭い堂内。

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薄暗い中にたくさんの観光客たちがいる。
巡礼者って雰囲気ではなく、バシャバシャと写真を撮りまくっている。

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奥に祭壇があり、その両脇から地下に降りる小さな階段があった。

かなり小さく、中も狭いようで、みんな順番を待って並んでいる。

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俺も人々に混じって地下に降りた。








そこには、薄暗い空間に人々がひしめいていた。

みな我先にとある場所に群がっている。

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群衆の真ん中にひざまずく人の姿。
小さな祭壇の下に頭を突っ込んでなにかをしている。

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強引に入り込み、俺も彼らの真似をして十字を切り、ひざまずいて頭を突っ込んだ。


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そこには、かすかな光に照らされた星型の穴が地面にあいていた。

隣の人が、その穴をさすり、頭をつけ、口ずけをしている、


こ、ここがキリストが生まれた場所なのか。


2013年前に、そうだ、この西暦が始まった時に、キリストは生まれたんだよな。



伝説としか思えないような話。

しかし世界中で十数億人の人が信じている話。


後ろから人々の歌が響いた。
みんなが声をあわせてクリスチャンの歌を浪々と歌っていた。

俺も穴をなでて、群衆から抜け出した。

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キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、そしてバハーイー教の聖地でもあるこのイスラエル。


こんなほんの小さな地域なのに、この地球上で最も重要な場所。
本当に来られてよかった。








よーし、歌うぞ!!
ちょっと怖いけど、やりたいと思う場所で歌うために俺は自由を選んでるんだ。



店がひしめき、人が行き交う細い通りでギターを抱える。

何度も言うけど、ここはキリストが生まれた町。

そんな場所で歌えるなんて!!




「わぉ!!お前今から歌うのかい?!このパレスチナで?!俺は42年この町で暮らしてるけど、ここでパフォーマンスをするのはお前が初めてだよ!!ギネスをやるよ!!」




ワラワラと周りのお店から人が出てきて、細い通りはたくさんのムスリムで埋め尽くされた。

そして思いっきり歌った。

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歌ってる途中でも話しかけてくる人なんて普通。
横から手を伸ばしてきてギターをバランバラン鳴らしてくるガキ、歌ってる途中なのに楽譜をパラパラめくるやつ。


彼らのほとんどは歌を聴いていない。
ただの珍しいもの見たさの野次馬。
それでもいいさ。

思いっきり声をあげた。







まぁー、面白いくらいに誰もお金を入れない。

みんな写真とビデオを撮りまくり、何も言わずに去って行く。

俺の横に来て記念撮影をして去って行く。

数曲聴いてくれた人も、お金は入れずに去って行く。





久しぶりの0円かな。それもまた面白いかなと思っていたら、たまに通る外国人観光客がパラパラとお金を入れてくれた。



地元のアラブ人たちからのお金は気持ちいいくらいの0だった。


それどころか、フラフラと近づいてきた汚いオッさんが当たり前のように足元のお金に手をのばして来たので、その手を鷲掴みすると、チッという顔で歩いて行く。


当たり前に盗もうとしてんじゃねえよ。


これがパレスチナか。
あがりは25シェケル。

見事なまでの玉砕。




「今はとても平和だよ。なんの危険もない。戦車も戦闘機もいないからね。」



そう言う土産物屋さんのおじさん。

ということは、かつては戦車や戦闘機がそこら中にいたってことなんだろうな。

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貧しいにしても、今こうして怯えることなく笑って暮らしていられるだけで彼らにとっては平穏で幸せなことなのかな。

そんな場所で、物珍しいってだけでもいいから少しでもこの町に活気を与えられたなら、歌った価値もあった。









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旧市街を後にして、汚い町を歩くこと20分ほど。
北に歩いていくと、突然大きな壁が見えてきた。




工業地帯のコンクリート塀のように高くそそり立っているこの壁。

これが分離壁か…………

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この向こうはイスラエル。
こっち側がパレスチナ。



ゴミだらけで、無機質に続くその壁が、子供のころに遊んでいた延岡の工業地帯を思い出させる。

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壁にはどこまでも続く落書き。

落書きというかメッセージ。

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「パレスチナに自由を」

「世界平和~!!!」



みたいなラブ&ピースのペイントが隙間なく描かれている。





ユダヤ人とアラブ人を両方見てきたけれど、はっきりいって性格があまりにも違う。

歴史の確執や差別心もあるんだろうけど。


そんな人種同志が共存なんて出来るのか?

それぞれに分かれて、ある程度の距離を保ったほうがお互いストレスもなく暮らしていけるはず。


パレスチナ問題はもっともっと根深く、人種や宗教の違いだけで片付けられる問題ではないんだろうけど。


この壁はなにを象徴しているのかな。






パレスチナに自由を、か。

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メッセージを見ながら壁沿いに歩いていくと、しばらくして人だかりができてる場所を見つけた。

八百屋なんかの露店が賑わっている。

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行ってみると、そこは分離壁のゲートだった。
ここから出入りしてるんだ。


あれ?じゃあ俺どうやって入ったの?


なんのチェックもなくバスでパレスチナに入ったよな?



わけもわからず、ゲートへの細い道を歩いて行く。
仕事帰りなのか、たくさんの人々がイスラエル側からパレスチナ側に戻ってきている。

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ゲートをくぐり、寂れたオフィスの中で、ほぼ自己申告といってもいいようなテキトーな荷物チェックをし、パスポートをチラリと見せ、一瞬でイスラエル側に出てきた。


なるほど、行きでチェックがなかったのもうなづける。
あってもなくても同じようなもんなんだな。




現在、パレスチナに行くのに構える必要はまったくないです。

たぶん茨城のイトーヨーカ堂に行くほうが厳しいボディチェックを受けます(´Д` )








ゲートをくぐったところにはタクシーがワラワラと群がっていて、


「マイフレンド!!バスフィニッシュ!!バスフィニッシュ!!」

「ジェルサレム、チープチープ!!」



バスはもう終わったから!!と言うタクシードライバーの話はまず嘘なので信じてはいけません。

あいつらバスの目の前でバスフィニッシュ!!って言うから。




10分くらい歩くと、バス停があり、そこからミニバスに乗りジェルサレムに帰った。
5.3シェケル。110円。

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イブラヒム爺さんのとこに戻り、日本人だらけの中でご飯を食べる。



なんと今日、同じくパレスチナ自治区の街に行っていたキョウコさんがバスの中で一眼レフのカメラを盗まれたそう。



あぁ、アラブ人…………

品はねぇし、プライドねぇし、アジア人なめてるし、嘘つくし、盗むし、それでパラダイス行って処女とやりまくれると思ってるし………



もちろんいい人もいるし、悪い奴はどこに行ってもいるよ、と人は言うけど、やっぱり下品な奴らの割合多すぎ。


ユダヤ人はみんな上品だった。それは金を持ってるからか?

いや違う。
アラブ人の性格は貧しさだけではない。
女性旅行者はアラブ諸国に行くとほぼ全員下品なチカンに遭っている。


ああ、アリー、ムハンマド。
あなたたちがくれたアラブ人に対する崇高なイメージがドンドン崩れていくよ。









「あ、フミさんも明日ヨルダンに戻るんですか?一緒に行きませんか?」



この中東地域は日本人旅行者にとても人気があり、安宿もあるのでみんなどうしてもそこに集まる。

観光地やルートも同じようなものなので、みんな一緒に動くってのが普通になるんだな。

そしてこのあたりでは公共のバスなんかが時間通りに走ったりしておらず、乗り合いバスで人が集まり次第出発ってパターンなので、ある程度の人数で動いたほうがスムーズに移動できるってわけだ。







明日、イスラエルともおさらば。

あー、あんまり深いところに潜り込めなかったなぁ。

まぁ出会いってやつは、いつも意思とは無関係にやってくるものだからな。

なかったならなかったで縁がなかったと思うしかない。




さあー、イスラエル出国はスムーズに行くかなー。



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