2月13日 水曜日
【イスラエル】 エルサレム ~ テルアビブ
張り切ってイブラヒムの宿を出発。
シャワーもシーツも使わずに寝袋で寝たので、30シュケルだけ寄付金ボックスに投入しておいた。
茨城県民のショウゴ君と、愛媛県民と3人でアラブ人地区を歩く。
彼らは今日、死海に浮きに行くというのでバスステーションまで一緒に行くことに。
「ヘイ!!チャイナ!!ホアタ~!!」
「バカかお前?インシャアッラー。」
「…………インシャアッラー。」
びっくりしながら挨拶を返してくる。
インシャアッラー、効くね。
みんなもアラブ人におちょくられたらインシャアッラーって言おう。
途中6.6シェケル、1.3ユーロのトラムに乗り、一気にメインバスステーションへ。
ここから死海にもテルアビブにも行ける。
どちらのバスも30分ごとに出ているみたい。
「フミさん、ダハブで待ってますから。早く来るんだっぺよ。」
ショウゴ君たちと別れてテルアビブ行きのバスに乗りこんだ。
18シェケル。3.6ユーロ。
綺麗なバスは快適な高速道路を突っ走り、わずか30分ほどでテルアビブに到着した。
地中海に面したこのテルアビブ。
近代的な高層ビル群が目に飛び込んでくる。
街並みもきれいな大都会で、ここがイスラエルの首都だ。
え?エルサレムが首都じゃないの?
ここに面倒な食い違い。
イスラエルは自分たちの首都はエルサレムだと主張しているが、国連はテルアビブが首都だよ、と認めている。
最大の都市はエルサレムだ。
さて、遅くなったけどここらでイスラエルのミニお国情報!!!
★首都……エルサレム、ただし国連の主張はテルアビブ
★人口……720万人
★言語……ヘブライ語
★宗教……ユダヤ教、カトリック、イスラム、バハイ教
★通貨……シェケル
★レート……1シェケル = 22円くらい
★世界遺産……文化7件、自然なし
建国の歴史については、数日前に書いたとおり。
2000年に渡る戦いの末に勝ちとった領土に彼らは今、銃を携えて住んでいる。
今日はユダヤ教というものがなんなのか簡単に書いてみよう。
紀元前、中近東で起こったユダヤ人による民族宗教というのが一般的な捉え方。
唯一神ヤハウェを信仰し、聖書はキリスト教でいう旧約聖書。
キリスト教はもともとユダヤ教からの枝分かれであり、イエス自身ユダヤ人であった。
唯一神ヤハウェを冒涜する教えを広めているとしてイエスを告発し、裏切りを働いたのはどちらもユダヤ人。
これが長年のキリスト教とユダヤ教の対立の根っこかな。
まあ、そんなに特筆することが今のところ見つからないな。
良いことしたら永遠の魂が手に入り悪いことをしたら地獄に落ちるとか、そんな普通な教義。
元が一緒だからキリスト教とも似てるし。
まぁテキストで調べたものよりも、目で見て話を聞いて見識を深めていくとしよう。
さてさて、このテルアビブ。
観光地といった雰囲気はなく、経済の中心地であり、ショッピングを楽しむ地元の人たちの街ってなとこかな。
若干エルサレムよりも物価も高い気がする。
街の中心に向けて歩いていくと、屋台が並ぶ市場を見つけた。
たくさんの人々でごった返している。
その横に綺麗なショッピングストリートを発見。
カフェやレストラン。
路上ではマジックやギターのパフォーマーがしのぎを削っている。
よーし、気合いを入れて路上開始!!
それにしてもイスラエルの女の子はエロくてかなわん(´Д` )
しらばくイスラム圏にいたからこんなの久しぶりにお目にかかった。
生足いいいい!!!!
なかなかいい調子で稼いでいると、向こうの方のベンチで何やら人だかりを作っているパフォーマーがいる。
音楽ではなさそう。
マジックかなにかかな?
まぁ気にせずに演奏を続けた。
あがりは224シェケル。
しばらくすると、向こうの人だかりを作っていたパフォーマーがこっちに歩いてきた。
あ、なんか文句言われるかな。
近づいてきてわかった。
日本人だ。
「ハードワーカーだねー!!上を向いて歩こうなんて久しぶりにリッスンしたよ!!」
長髪を後ろで結び、日焼けした顔に清々しい笑顔をきらめかせる彼。
なんて綺麗な目してるんだ。
「野宿で回ってるのかい?!本当か!!俺もなんだよ!!」
彼の名前はカオルさん。
さっき人だかりを作っていた彼のパフォーマンスは、パームウィービングというもの。
パームツリーの葉っぱを編んで様々な虫や花などを作るのだ。
バスケットなんかも作れるとのこと。
なんと!!
カオルさん、このパームウィービングや麻の編み物、天然石の加工なんかの路上販売で世界中を5年旅しているという超ツワモノの旅人だったのだ!!!!
しかもしかも彼のスタイルは、自分のパフォーマンスに値段をつけないというもの。
目の前でお客さんとお話しをしながら物を作り、完全に気持ちでお金をいただいているんだそう。
すげえ!!
これこそ路上パフォーマー。
初めて日本人の路上パフォーマーに会った!!
それがこんなツワモノだなんて!!
「今夜カオルさんのキャンプ場所にお邪魔してもいいですか!!?」
「もちろんだよ!!よーし、じゃあトゥナイトは特製のカレーを作ってあげるよ!!」
日本をずっと離れてて日本人ともほとんど交流していないので会話に英語が混ざってルー大柴的な感じになるカオルさんと、さっきの市場で野菜の買い出し。
楽しい!!
マーケットで野菜の買い出しがこんなに楽しいものだったとは。
人々の活気の中で値段を聞きながらたくさんの野菜をゲットした。
カオルさんについてしばらく歩いてやってきたのは綺麗に整備された海辺の公園だった。
「ここ完璧なんだよ。人は来ないし、火も焚けるし、海で泳いでシャワーもトイレもあるからね。あ、Wi-Fi欲しい?すぐそこにカフェあるから、そこでコネクティング出来るから。」
さすがすぎる(´Д` )
近くのスーパーでビールを買い、公園の中から細い脇道に入り、破れたフェンスをこえる。
そしてだだっ広い空き地の中に進んでいくと、そこにカオルさんのキャンプ場所があった。
トタンで簡単な目隠しがしてあり、火が焚けるような石が置いてある。
「あそこのホテルからサムタイム人が見てるけど、何も問題ないよ。ここで今3ウィーク泊まってるけど警察も来ないし。この囲いも彼らのためにつけたんだ。一応マナーとしてね。あ、座って座って。土足厳禁だからね。」
そう言いながら手際よく木に火をつけるカオルさん。
ささっと野菜を刻み、トマトとアボガドのサラダを作ってくれた。
「ピクチャー?いくらでも撮ってよ。俺もいつもキャンプの様子をネットに上げてるんだから。」
このキャンプ場所の様子は、見た目には完全にホームレス。
今までもこういった旅人にたくさん会ってきたけど、彼らはみんなプライドもマナーもないただの世捨て人だった。
彼らはいつも目の中に惨めさをたたえていた。
だから俺はそうならないように一線を置いてきた。
カオルさんは違う。
彼の清々しい笑顔と真っ白な瞳には、旅人としてのプライドと、自分のやり方への自信がある。
そこにすっかり惹かれてしまった。
ああ、トマトとアボガドの美味さ!!!
夜の闇の中で野菜の甘みが口いっぱいに広がった。
「マイアミはいいよ、あとスペインも!!あそこならかなり稼げるしフレンドもたくさん出来る!!こうやってキャンプしながら路上パフォーマンスをして旅をやってるやつは世界中にいくらでもいるからね。」
火の上で鍋を振りながら話すカオルさん。
彼は世界中にこうした路上パフォーマーの友達がいるみたい。
もちろん物乞いの人々ともたくさん触れ合ってきたそう。
「物乞いもかなり稼げるんだよ。物乞いで彼女とホテルにステイしながら旅してるやつとかもいるし、ガソリンスタンドでガス欠になったから少しくれないか、ってやってるやつとかクレバーよね。でもやっぱりギブミーマネーだけはしたくないな。」
俺もたいがい色んな工夫をしている物乞いを見てきたけど、もっともっと賢いやつらがいるんだろうな。
彼らもある意味では路上パフォーマー。
路上でお金を落としてもらうという行為に、俺と彼らの違いはない。
プライドが、と言ったとしても、彼らだってそのやり方にプライドを持ってるかもしれないし。
しかし、やはり自分の中にある譲れない誇りだけはけがしたくないな。
「例えばフミがマイアミのビーチで車椅子に乗ってプレイしたとしたら、確実にワンマンス100万円は稼げるよ!!でもそれやっちゃったらもう後戻りできないけどね。」
出来上がったカレーに2人でスプーンを突っ込んで食べた。
インド生活も長いカオルさんのカレーは本格的な味。もちろんスパイスから全部作ってくれた。
なんて美味いんだ。
焚き火に木をくべる。
イスラエルの夜に2人の日本人路上パフォーマー。
星空の下、ひとつまみの矜恃に乾杯。