1月8日 火曜日
【トルコ】 コンヤ ~ アクサライ
「兄弟、なんでそんなに急ぐんだよ。行かないでくれよ。」
「フミ、ここは君の家なんだよ。何日だって居ていいんだ。みんな君のことが大好きなんだ。」
実は昨日の朝もこのやりとりがあった。
引き止めてもらえるのが嬉しくて滞在をのばしたんだけど、いつまでもこうしてはいられない。
つらい。
こんなに心を許せる仲間がたくさんできたこの街から離れるのがつらい。
ここがホームタウンなら、いつもみんなに会えるのに。
でもここは日本から遠く離れたトルコなんだよな。
俺がいなくなっても、彼らの日常は変わらず続いて行く。
俺の旅も変わらず続いて行く。
旅をする以上、別れは必ずやってくる。
離れなければいけない。
「フミ、愛してる。初めて出来た日本人の友達が君でホントによかった。」
バス停にミニバスがやってきた。
トルコのミニバスは運転が荒い。ドアが閉まってなくても平気で走り出すし、みんな動いてるバスから飛び降りたりしている。
そんな荒いバスに乗り込み、走りながらみんなとハグをした。
動いてるバスから身体を乗り出して両方のコメカミを合わせた。
運転手さんがそれを見てくれてるのか、なかなかドアを閉めないでいてくれた。
浪花節のわかるドライバーさんでよかった。
マジで久しぶりに泣きそうになりながら閉まるドアの向こうで手を降るみんなにありがとうと言った。
バスステーションで次の街、アクサライへのチケットを購入。
18トルコリラ。750円。
綺麗なバスに乗り込み、2時間でアクサライに到着した。
うおー、寒い!!!
雪まみれじゃねぇか!?
ここトルコか?!
マジかよ………
サラエボ並みに寒いぞ。
目がしばしばする!!
とにかくどこかで温まろうと、今日まだ何も食べていないので適当にケバブ屋さんへ。
チキンケバブ、ヨーグルト付き。
これで2.5トルコリラ。100円。
安い!!
イスタンブールなら7トルコリラ。
コンヤなら4トルコリラはするセット。
頼むからゆっくり食わせてくれ(´Д` )
さすがコンヤ以上に観光地のない地味な町、アクサライ。
あ、ちなみにコンヤには、大昔の偉大な宗教家メルリャナさんの博物館がある。
たくさんの観光客がそこに行くようで、みんなコンヤに来たのなら行かなきゃいけないよ、と言っていたんだけど、結局行かなかった。
JBカフェ以上の素晴らしい場所はないからね。
あとほとんどの人が言うことだけど、トルコはアンカラを中心にして西側と東側に分けるという意識が人の中にあるようだ。
イスタンブールやイズミルのある西側は、ヨーロッパに近く先進的でみんな平和な人ばかりで、アラブ寄りの東側は貧しい地域でテロも多く危険だという。
完全に違う人種、というふうに捉えている人が多い。
ここアクサライから、東側に入って行く。
さらに気を引き締めて行かないと。
とにかく、まずはWi-Fiにつないで地図で今自分がどこにいるのか確認がしたい。
iPhoneをWi-Fi画面にして歩きながら電波探し。
しかしなかなか見つからない。
どれも鍵つきだし、たまに鍵なしがあってもニセWi-Fiで使い物にならない。
鼻の感覚がなくなり、指が引きちぎれそうに痛む。
こりゃマイナス10℃はいってるぞ……。
雪と氷で滑りながら歩き回り、寒さが限界に達したころ、寝静まった町に小さな店の明かりを見つけた。
急いで飛び込んだ。
そこはパン屋さんだった。
もう閉店しているようで明かりが消えており、奥のほうで数人の人たちが忙しそうに動き回っていた。
「すみませーん!すみませーん!」
こんな夜中に突然やってきたアジア人なんて怪しくてしょうがないよな。
しかし出てきた兄さんはめちゃ笑顔。
Wi-Fi持ってますか?と聞くと、英語喋れないんだけど懸命に理解しようとしてくれ、すぐに繋いでくれた。
やった!!ありがとうございます!!
とパンを買うことに。
いつもレストランやカフェに入る時は、Wi-Fiがあるかを聞いてから入るようにしている。
せっかくお金払ってお店に入るんだったらWi-Fi欲しいからね。
たいがい、「オンリーフォーカスタマー」、と言われる。お客さんにしか使わせないよと。
いや、確認しただけやん、といつも思うんだけど、トルコではこの言葉を聞いたことがない。
Wi-Fiありますか?と聞いたら、すぐに繋いでくれる。
このパン屋さんでもそうだった。
俺がパンを買うかどうかなんて問題じゃなく、すぐにWi-Fiを分けてくれた。
もちろん、お礼に買い物をしようと適当にスィーツを注文した。
これ、甘いやつ。
しかしだ………
お金を払おうとしたら彼らは、いらないよって言った。
プレゼントするって………
ダメです!!って小銭を手のひらに乗せて差し出したら兄さんは0.5トルコリラだけを取ってウインクした。
そして椅子をだしてくれ、ここでインターネットしなって言ってくれた。
さらにさらに………
紅茶………
もう、なんなの?トルコ人?
ホントに地球人?
こんな閉店した夜中、次の日のためのパンを焼いているところにいきなりやって来たアジア人。
そんなどこの馬の骨とも知れないような奴にここまでしてくれるってどういうことだよ。
俺は友達じゃない。
常連でもない。
金持ちでもない。
ましてトルコ人でもない。
これが人間のあるべき姿なのかなぁ。
目の前の人を見返りなしに助けたいと思える心を俺たちは持っているはずなのに、どうしてそれが出来ないのかなぁ。
それが完璧にできたら神だよな。
兄さんが焼きたてのパンをくれた。
ホクホクのふっくらしたパン。
神に限りなく近い人種、トルコ人。